第一話 いきなりクライマックスかも
創世記を下敷きにしております。
リリス、アダム、イブの解釈は作者の妄想によるフィクションです。
目の前の少年が、脱衣所にいるような動作で、着ているものを脱いでいく。
シャツを脱ぐ動作の中で、薄い胸板から肋骨が浮き上がっているのが見える。
均整のとれた身体だが、ルイナの好みより全体的に細かった。この年齢の男は、これが平均的なのかどうかまではわからないが、未熟な印象はぬぐえない。
こんな若い相手と身体を重ねるのは初めてだ。なんだか少し、心苦しい。
「どーした? こんな明るい時間に初対面の男とするの、やっぱ、恥ずかしい?」
恥ずかしいかと訊かれれば、べつに恥ずかしくはない。初めて人間の身体を間近に見て、ぼーっと観察していただけだとは言えずに、ルイナは首を振って服を脱ぎ始めた。
「へえ、思ったよりエロい身体、してんじゃん」
少年の目に色欲が宿ったのを見て安堵した。生まれつき欲情させる身体のはずだが、ひとの好みは複雑で、人間との交歓が初めての自分がどう見られるか気になっていた。
それに、いままで周りにいた仲間は、みんな自分よりはるかに魅惑的な肉体だった。人間の目にも、物足りなく映ったらどうしようと、心配だったのだ。
「そう? よかった。じゃ、してもいい?」
「お前やっぱ、変な女だな。ま、嫌いじゃねーけど」
少年がルイナの腕を引き寄せた。
少年の胸に顔を埋めながら、こんなことして怒られないかな、と一瞬不安になったが、これから始まる行為への興味が、不安を押しのけた。
「愉しませてね」
「? おう…、そうだな」
少年はやはり、普通の人間にしか見えなかった。好奇心が強く、怠惰と享楽に弱い、どこにでもいる十六歳の男の子だと思った。
その瞳の奥に、魔族の魂が潜んでいるようには、どうしても思えなかった。
ルイナは、この少年と出会うことになった経緯を、ふと思い出した。




