表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リーングラードの学び舎より  作者: いえこけい
第二章
74/374

生徒会システム絶賛開業準備中

 生徒たちに『生徒会システム』の説明をした時の反応です。


「えっ……、と。ようするに冒険者みたいなことをしろってこと?」


 マッフル君は大雑把に理解したようです。


 全員、何か思うことがあったのか自信満々だったり、首を傾げていたり、困惑したり、無表情だったり、興味なさそうだったりしています。

 これだけで誰が誰の反応かわかってしまいそうです。


「そうですね。そろそろ君たちも自分がこの2ヶ月で得たものがどんなものか、知りたいと思うでしょう」

「そりゃぁ、そうだけど。こんなので実力ってわかるの?」

「もちろんです。『生徒会システム』で依頼されるものは全て、実際の冒険者が請け負う依頼とさほど変わりません。退治や討伐の依頼こそ少ないものの仕事という面では各人、己の能力を試されます」


 仕事というのは一つの指針みたいなものです。

 自分が持つ能力を自分自身の能力を理解して、効率よく自分を配分していく。


 できることができるのは当たり前なのです。

 できないことができないのも当たり前です。


 できること、できないことの差を理解し、実社会に自らの能力をどう活かすのかの判断力こそが問題視されるのです。


「どの仕事が自分の力で出来、どれだけの労力を必要とされるのか。こればかりは実際にやってみないとわかりません」


 中にはやらなくても、なんとなくわかる人もいるでしょう。

 そういう人は今までの積み重ねで自分をよく理解して、ちゃんと未来のビジョンを描ける、具体性を掴む力が強いのでしょうね。


「以前の自分なら出来ないと思ったこと。やっぱり出来ないと思ってしまうこと。なんでもいいです。この機会に自分がどれだけのことができるのか試してみなさい。そして新しく得た自分の能を試してみなさい」


 半信半疑ではあっても、生徒たちのテンションは心持ち、上昇気味のようです。

 明確に自分がどれだけやれるのか、理解できる機会が訪れたのです。


 そりゃテンションの一つもあがりますよね。


「身の丈にあったものを選ぶも良し、チャレンジしてみるも良しです。その判断もまた君たち自身に委ねられていると言っていいでしょう。ただ、先生からはこう言っておきましょう」


 教壇に手をつき、生徒たちを見下ろします。

 それぞれの個性、それぞれの気持ち。


 ここからだと、なんでしょうね。

 なんとなくわかってしまうような気がします。


「今の自分より少し難しいものや初めてやるものを選びなさい。掃除、洗濯、採取。そう言った仕事もあるでしょう。どれも大事なことです。やったことがないというのなら、是非、チャレンジしてみてください」

「先生」


 手をあげたのはマッフル君です。


「はい、マッフル君」

「それって討伐依頼もあるの?」


 おや? てっきりその話は自意識過剰クリスティーナ君か好奇心全開エリエス君あたりから飛んでくると思いましたが。

 意外とノリ気なのかな。


「あります」


 その一言で、猫の目のように鋭くなる者もいれば、ビクリと肩を震わす者もいます。

 つまり、前者はクリスティーナ君で、後者はセロ君です。


「ふ~ん」


 何やら感慨深そうなマッフル君はさておき、隅っこで手を上げているリリーナ君がいますね。

 嫌な予感しかしませんが、質問があるのなら答えなくてはいけないのが教師です。


「エロい依頼はあるでありますか?」

「ねぇよバカ」


 つい素が出てしまいました。

 

「えー、あえて言うつもりなんかこれっぽっちもありませんでしたが良い機会なので言いますと」

「ロリコンなのをカミングアウトでありますか?」


 いちいち五月蝿いエルフをアイアンクローしてから、全員を見渡します。


「実際、冒険者ギルドの依頼の中にはそういう風な依頼はあります。ですが、『生徒会システム』は風紀面の考慮からエロ系は排除されています。そういった依頼が出た場合、先生が依頼者ときっちり『お話し合い』をしますので、何かおかしい依頼があったら、是非、知らせてくださいね。後日、そのことを知ったりしたら、君たちを――」


 爪を剥がすのはさすがにやりすぎですよね。

 生皮剥がすのもアウトですよねー、剥がす系はダメですね。

 鞭打ち、生理現象を制限する、そういう系もダメでしょうし。


 う~ん、打つ、裂く、刺す、掴む、塞ぐ、圧す、伸ばす、固める、締める、火、水、あたりを制限されると難しいですね。

 要課題です。楽しんでませんよ? 生徒をいぢめるとか、そんな教師らしくないことで心踊ったりしませんよSじゃあるまいし。やっべー、ワクワクする。


「ともかく、安心してくださいね」

「安心できるかー!?」


 マッフル君が騒ぎ出したのは何故でしょうね。


「何されるわけ!? ていうかなんで途中で止めるの! 気になるし聞きたくない!」


 絶賛、アイアンクローでぐったりした実例が目の前にあるだけに、これ以上を想像して怖くなったというところですか。

 いいですね、そうやって順調に想像力をつけていきましょう。


 恐怖ほど想像力を掻き立てるものはありませんよ。


 しばらく、各々でこのシステムを理解しようとする試みが始まりました。

 隣の席に意見を聞き、己の意見を語り、必要ならば自分が詳細を語る時間。


 やがて、それも収まり始めると最終確認とばかりにマッフル君が手をあげました。


「先生さ、この『生徒会活動』の日の最後の項目って何?」


 配られた羊皮紙の最後を指差すマッフル君。

 お、さすが商人。目の付け所がシャープです。


「そうですね、一番、重要なところです」


 『生徒会活動』は色々な条件がつきます。

 教師側は以前、言ったとおり生徒の依頼についていかねばならない等の事柄があるように生徒側にも別の条件があります。

 条件というかルールというか、まぁ、こんな感じですね。


 一つ、依頼は難易度によって増減するポイントが与えられる。


 一つ、依頼の失敗は依頼のポイント分を減少分とする。


 一つ、毎月ごとにクラス累計ポイントの一位のクラスには、学園から優待措置が付与される。


 一つ、一年間通して最優秀ポイント取得者は学園主席とは別に、学園最優秀者として主席ともども国王ランスバールより直々の恩賞を賜われる。


「最後のって、すごくね?」


 一般市民が受ける最大級のご褒美でしょうね。

 自分から見たらバカ王の直々の恩賞なんて、そこらのゴミが勝るようなものですが。


 仰ぎ見るべき主君が、わざわざ自分のためだけに褒美と労苦を労わるとか、神の啓示を賜るような……、んー、伝わりにくいですね。


 リィティカ先生に「大好き!」と言われるくらい、嬉しいことだといえばわかりますね。


 ……うん、テンションあがってきた。

 自分もそう言われるように頑張ろう。


「恩賞の内容は『生徒会』ポイントの優秀者が決定した瞬間、優秀者の希望と国王が提示できるものが合致した場合、恩賞として戴けます。実質的な貴族地位や土地なんかは無理ですが、王都での販売権利や騎士の取立てみたいなものだと比較的、簡単に要望が通ると思いますよ」


 王都での販売権利や騎士の取立てなんか、実際、もらえるものの中でも結構なものですよ。


 販売権だけをとっても、その苦労は並のものではありません。

 通常ならギルドを通して、ギルドの販売権を借り、独立するまでにコネや資金を作りあげ、ようやく独立してもギルドの影響からは逃げられず、ギルドに対抗するためにギルドを立ち上げるといった間に、商人として致命的な失敗をしてはならない。


 常に他の商人の罠を警戒し、相場に敏感になり、他人よりも利益を得ようとする姿勢を取り続けなければならない。


 騎士だって大変ですよ。

 クライヴを見ているとどうにも苦労してないような感じになってしまいますが、アレは特殊な例です。訓練大好きっこですからね。

 倍率が高すぎる騎士団のテストを受けて初めて受かります。

 どれくらい高いかというと、メルサラと打ち合って、一合受けてもまだ立っていられるレベル?


 どちらにせよ、この学園にいる冒険者では騎士の見習いにもなれない、というレベルだ。

 幼い頃から騎士としての訓練を受けて、ある程度の才能を求められる。


 きっとどちらも狭き門だろう。

 その門へのショートカットが学園にあると知ったら。

 途方もない求心力をもって学園は動き始めるでしょう。


 今はそれほどの効果がなくとも、五年後くらいには必ず効果を発揮する。


 一つの策としては上出来でしょうね。


「それよりもこっちもいい感じじゃん」


 そうマッフル君がわざわざ自分から見えない位置でクラスメイトに見せつける。


 地味な先生いじめ、やめてくれないかな。


「これ、もしかして」

「その限りはないですわ」

「でも、ありえそうなのです」

「……今の学園を考えれば十分、可能性ある」

「色々、面白そうでありますなー」


 ずいぶん肯定的な意見ばかりですが、なんですか?

 まぁ、あの項目で考えられるのは一つしかないんですが。


「先生。この優待措置ってさ。もしかして担当教師とか関わってる?」


 マッフル君はこういうところばっかり鋭い子です。


「そうですね。基本、担当教師がクラスの生徒たちに施す何かでしょうかね」


 自分なら術式具、リィティカ先生なら錬成アイテム。ピットラット先生なら上質のお茶菓子でしょうかね?

 他の教師はちょっと思いつきませんが、少なくともどのクラスの子も喜ぶことになるでしょうね。


「ふふふ……、これでようやく先生にハイルハイツの実力というものを魅せつける時が来たわけですわね」

「……内弟子、内弟子」


 若干名、邪悪な奸計を企んでいるようですが、バレバレです。


「妥当なところで術式具になりますが、君たちの有利になる術式具は禁止されていますから別の、実生活に密着した何かに」

「待った! 勝手に決めないでほしーなぁ。優待ってことはさ、あたしたちに有利な何かってことだよね。それくらいあたしたちで決められるし、先生はドンと構えててよ」

「必殺の構えですか?」

「違うし! なんで先生はそこで暴力に走るかな!」


 怒られました。


「先生に白紙のチケットを切らせて何をするつもりです」

「む、バレてる」

「まぁ、いいでしょう。君たちが月間優秀とれるか見物ですね」


 これに極端な反応をしたのはプライド高いクリスティーナ君。

 そして意外なことというか、やっぱりというかエリエス君。


「言いましたわね! 先生!」

「先生はちょっと私たちを舐めてる」


 おー、おー、この2ヶ月の勉強でこの子達もそれなりに自負みたないなのが生まれて来たのですかね。

 となると、ようやくこの子達のプライドをくすぐる教育も使えるようになったみたいです。


「すぐにでも月間優秀を取ってみますわ、えぇ、今月にも」

「あ、言い忘れましたが今月と来月は月間優秀発表はありません」


 全員、ぶっ倒れなくても。

 ノリだけはいいんですよね、本当に。


「慣らし運転も必要ですし、今月ももう半分。今から優秀クラスを決めるには少々、不公平感があります。なので今月はなし。そして来月ですが、忘れていませんね? 来月は義務教育計画の在り方を問われる最初のテスト。貴族院の試練があります」


 貴族院の試練。

 その言葉に、誰もが目に力を込める。


「まだ一ヶ月と半月の時間があります。とりあえず、今、君たちに言えることは一つです」


 貴族院。

 自分にとって最悪にして災厄な存在。

 内紛を引き起こした諸悪の根源を断つ、最初の試練。


「度肝ぬいてやりなさい」


 確かな言葉は五つの意思にどのような結果を導くのか。


 今はまだ準備段階ですからね。

 この学園も、生徒たちもまだまだ、発展途上です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ