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リーングラードの学び舎より  作者: いえこけい
第五章
309/374

短気は損をしますよ?

 怪我人に対して夜明けに訪れるなんて普通なら考えられないことでしょう。

 しかし、相手にとって非常に重要事であるのならその限りではありません。


 急ぎの要件か、重要な案件か、どちらにも心当たりがあります。


「失礼する、グラム殿」


 こちらの返事を待たずに入ってきたインガルズさんとアンドレアスさん。

 そして、最後に入ってきたのは妙に目が赤いアルファスリン君でした。


「怪我の具合は――聞くまでもないか」

「えぇ、おかげさまで」


 社交辞令もそこそこに、まずアルファスリン君がアンドレアスさんの敷いたハンカチの上に座り、インガルズさんとアンドレアスさんはその両隣に腰を落としました。


 つまり、自分は今、出口を塞がれました。

 逃がす気は一切、ない模様です。


「まず、事情をお聞きする前に今回の話――『これ』は調査隊の調査対象並びに調査案件とは関係ないことを宣誓しておきます」


 アンドレアスさんははっきりとそう口にしました。

 配慮というにはあまりに剣呑な目つきだったのは仕方ないことなのでしょう。


 あえてこうした言葉を口にしたのは【ナカテー】が法国にとって重要な秘密である証拠でしょう。

 三国協定の調査記録に載せたくない、という意思の表れです。


 同時に自分にとっても光明になりますが、見えている光明ほど危なっかしいものはありません。


「グラム殿の怪我にまつわるいくつかを何度か聞かせてもらう形ですが、よろしいか」


 アンドレアスさんの言葉は間違いなく事情聴衆の定型文みたいなものです。

 この時点で交渉に入っている段階なので、ここらで手を打っておきましょうか。


「【ナカテー】についてですか」


 上体を起こした格好のまま、肩をすくめて、激痛に呻きました。

 格好もつけられませんね。


「それもあります」


 とりあえず先制してみたら、あっさりと避わされました。


「ですが、まず先に説明が必要でしょう。【ナカテー】と呼ばれる場。それは法国にとって秘術にもあたる――大きな秘密です。神務代行ヘルメ=フィリネ様を筆頭に次代の神務代行、法国設立に関わる始まりの氏族、そのうちのヒト種を除く六貴種の代表にしか知らされておりません」


 法国の秘密というわけですか。

 モフモフを見ると静かにしっぽを振りました。


 知らないそうです。考えてみれば当たり前ですね。


「となると、アンドレアスさんやインガルズさんは代表氏族の?」

「そうなります。もちろん元からアルファスリン姫様の従者を務めていることに変わりはありません」


 意外ではありません。

 王家専属の従者が公爵家の長男だった、なんて話はよくあることです。


「言わば【ナカテー】は法国の重要機密です。その機密を知る者は我々以外にもおられます。『我々があまり口に出さないだけです』。それは神獣様の加護を持つ者たちも同じように口に出さない事柄かと」


 ようするに知ってしまったのなら仕方ないが喋ればどうなるかわかりますか、と言いたいのでしょうね。


「そうですね。正直、他者に説明しようにも表現に困りますし、隠しておきたいのはこちらもです」


 どうやらモフモフの正体に気づいていたようです。

 今はまだモフモフの加護を受けているという認識でいるはずです。


「貴方があそこで何をし、何を起こしたか。その内容が想像通りであったら我々ももはや吃驚を超えて無感動になるほどでしょう。さらにはそちらの神獣様に置かれましては――」

『くどい』


 モフモフが一喝すると、アンドレアスさんは目を見開きました。

 インガルズさんもアルファスリン君までも驚き、身じろぎしています。


『お前たちがどのようなものかは知らぬ。怪我の治療と同胞を救ったことには感謝しよう。だが、我らが道を阻むつもりがあるのなら心得よ』

「いえ、そのような……」

『ならばね』


 強烈なプレッシャーを放つモフモフに三人は気圧されていました。

 もしかしてご機嫌ナナメですか?


「まだ何も始まっていません。短気は損をしますよ?」


 モフモフも余力がない証拠なのでしょう。

 唸るモフモフの頭を撫でると剥き出した牙を引っ込めました。


 モフモフの目指す意図に従って肩が痛もうとも格好はつけねばなりません。


「こちらにアルファスリン君たちと敵対する意図はありませんが、程度による、ということを言いたかったのだと思います」


 モフモフがここまで過剰反応したのは怪我をしているだけではなく、自分の怪我も慮ってのことだと思っています。


 でも正直に言いましょう。

 ごくごく普通にモフモフの殺気に体が反応して、傷が痛むんですよね。

 両肩が特にジクジクと痛みます。動かしているからさらに痛みます。


 加速度的に怪我が悪化していく気分です。


 モフモフの威圧が通用したのか、あるいはやりづらくなったのでしょう。

 アンドレアスさんは一瞬、戸惑いましたが逆に躊躇わない子がいました。


「去らん!」


 アルファスリン君でした。


「如何に森の賢狼様であろうと聞かねばならんのじゃ! こんな! こやつはこんな大怪我をしておったのだぞ! 死んでおったのかと思ったのだぞ! インガルズが言わねば生きとるのかどうかもわからんかった! 妾たちに言わず、勝手に一人で何をしとるかと思えばこれだ! 妾とインガルズしかおらんかったせいで運ぶのも大変じゃったのじゃぞ!」


 ポロポロとこぼれている涙。

 泣きながらも怒りの矛先が飛び散ります。


「責任じゃなんじゃと口にしておったくせに!」


 真っ赤な目で睨まれました。


「妾は心配したぞ! 妾が心配した責任はどうしてくれるのじゃ!」

「すみません。アルファスリン君」

「言葉が軽いのじゃ!」


 わりと真剣に言ったのに怒られました。

 たぶん、何を言っても怒られるパターンですね。


「態度も軽いのじゃ! 死人のような顔をするな! なんでそんなに吹っ切れたような顔をしとるのじゃ! もうなんか色々と許さん!」


 挙句、今度はアルファスリン君が牙を剥きました。

 これにはモフモフと目線を合わせてしまいました。


「落ち着いてくださいね。アルファスリン君」

「あぁん!? 一周回って怒り心頭じゃ!」


 本当に落ち着いてください。言葉遣いがメルサラです。


「姫様! そのように激昂されては姫様の清らかなる印象が!」


 このままではアルファスリン君のイメージに非常に重要な遺恨を残します。


『ここは一度、交渉抜きで手を貸していただきたい』

『わかりました』


 アンドレアスさんとアイコンタクトしてからは素早かったですね。

 一緒にアルファスリン君を慰め続けました。


 必死でした。

 へそを曲げた子供の相手はいつだって根気のいる戦いです。


 そうこうしている内にいつの間にか夜明けも越えて、鳥たちがチュンチュンと鳴き始めていました。


「もう二度と勝手に死にかけるようなマネをするのではないぞ!」

「えぇ、わかっています」

「それとちゃんと法国に来るのじゃぞ」

「それはわかりません」

「反省が足りん! そこは法国に行きますじゃろ!」


 くわっ、という顔で吠えられました。


「この際だ。お互い、腹の探り合いはやめて事態のすり合わせだけを考えないか。もちろん、このことはお互い隠しておいたほうが賢明だろう」


 慰め疲れた自分たちにとってインガルズさんの提案は渡りに船だったと思います。


「わかりました。ではまず自分から。そうですね……、どこから話しましょうか」


 前から自分とモフモフは知り合いであったこと。

 義務教育計画の邪魔をする勢力がいるということ。

 それが魔獣信仰組織であり、実行犯はクリック・クラックと呼ばれる少年であること。


 ここまでは前知識として話しました。


「となるとグラム殿は神狼様の加護を持っていたか。なるほど、道理で【ナカテー】に入り、耐えきれたわけだ」


 インガルズさんの呟きは非常に重要な意味を感じさせます。


「ちょっと待ってください。加護がない者が【ナカテー】に入るとどうなっていたんですか?」

「死んでいた。あるいは溶けていたか」


 溶けるってどういう意味ですか。

 フィヨも似たようなことを言っていましたし最近、トレンドの死に方だったりしますか?


 思わずモフモフを見ましたが、モフモフは静かに頭を床に落としただけでした。

 あ、モフモフ的にはどうでもいいことなんですね。


 でも、その内容だと下手したら自分、死んでいるところでしたよ?

 そういう危険なことは先に言っておいてください。


「【ナカテー】に侵入できた経緯は大体、察していた。あとは何をしていたかを聞かせてくれ。あそこには【無色の獣】を封印する【大伽藍】があったはずだ」


 【大伽藍】というのはおそらく【無色の獣】を封じていた鳥の巣のことでしょう。名前があったんですね。


「それがなく、そして、グラム殿と神狼様が倒れ、しかし、『戦ったであろう相手』がいなかったというのなら――」

「【無色の獣】は倒しました」


 バレていることを意味なく隠す必要もありません。


「――やはりか」


 インガルズさんも予測していたのでしょう。

 驚きよりも先に出たのは苦々しい困り顔でした。


「何故じゃ」


アルファスリン君はワナワナと震える手を隠さずに、涙目で睨みつけていました。


「何故、そのような無謀を犯したのじゃ」


 無謀と言えば、間違いはありません。

 戦力を見誤った部分もありました。


「ヨシュアン先生がやるべきことではなかったはずじゃ。これは妾たちの役目であった! いくら神狼様の加護とお力があったとしても一人で戦わんでも良かったじゃろ。妾たちがおった!」

「学園教師には生徒たちを守る義務があります」

「義務!? それがなんじゃ! 【神話級】じゃぞ! 神々をも屠った大敵の一つじゃぞ! ヒトの身で挑もうなどと思いはせんじゃろ! それを義務なんぞで」

「勝算がなく立ち向かってはいませんよ」

「それがそのザマじゃ! 【無色の獣】の封印を強めるだけでも良かったはずじゃ!」


 そういう手段は思いつきませんでしたね。

 自分には叩いて潰すくらいの考えしかなかったのですが法国の奇っ怪な技術があれば可能だったのかもしれません。


 当初は法国を巻きこむつもりでしたが、アルファスリン君が居たために断念しました。


 アルファスリン君も自分の生徒ですからね。


 巻きこむわけにはいきません。


「実際に可能ですか?」


 インガルズさんに目線を向けると、小さく頷きました。


「条件はあるが、【守護者】がいれば可能だったろう」

「妾に聞けばよかろう! インガルズも真面目に答えるでない! 不敬じゃぞー!」


 プンスカと煙を出すアルファスリン君は横に置いておいて、インガルズさんから静かで重い視線を感じます。


「せっかくです。姫様。発言をお許しいただいても」

「……むぅ! 知らんのじゃ!」


 綺麗に拗ねましたね。

 アンドレアスさんが宥めている内にインガルズさんは口を開くことにしたようです。


「グラム殿は正気か?」

「正気のつもりですよ」

「怪しいものだ。本当にそんな理由で【神話越え】を目指し、成し遂げたのか?」

「子供の身を守るために危ないものは撤去する。間違いではないはずです」

「程度による。その勝算というのは、隕鉄製の剣ではあるまいな。それも歴史にないはずの四本目の隕鉄の刻術武器だ」

「そういえば【愚剣】はどこに?」

「【愚剣】というのか。今も術式師が封印を施している」

「返してもらうのが一番の封印なんですが」


 これにインガルズさんは妙に居心地の悪そうな佇まいでした。


 返したくないんでしょうね。

 法国からすれば隕鉄製の武器は魔獣を倒す武器であり、神々より贈られた聖遺物でもあります。


 『神様が魔獣を倒せと言ったら当然、倒せる武器だって与えてくれるよね。だったら管理義務とかあるしウチのもんだよね』といい始めます。


 彼らは神から魔獣退治の命を与えられているので拡大解釈できるんですよね。


 何度か【樫の乙女】でも似たようなやり取りがあったと聞いています。


「……仕方あるまい。盗人のように奪うわけにも行かぬ。何より、他の剣と違い、気を抜いたら全ての源素を食いつくそうとする。他の聖剣とは違いが過ぎる。さすがにこれでは我々の身が持たん」

「そのままにしておくと自爆しますよ」

「冗談か?」

「消化器官のない剣がいつまでも源素を貯めこめるわけがないじゃないですか。そのうち高密度の源素を排出して――」

「……実害が出る前に返却しよう。今の我々では手に負えん」


 素直に返してくれるようです。


 自分を消してまで持っていこう、と考えなかっただけありがたいでしょうね。

 いえ、それはできないのでしょう。


「本当に、それだけの理由なのかの?」


 復活したアルファスリン君がのめり込むように前に出てきました。

 ほとんど布団に手がかかっています。


「先生がそうしたいと願い、行動したことは納得できませんか」

「……わからんのじゃ」


 アルファスリン君はこう言いたいのでしょう。


 自分の子供でもない生徒にどうしてそこまで生命を賭けられるのか、と。

 自分からしてみれば愚問でも、考えてみれば非常識な行動だったかもしれません。


「昨日、バカの話と一緒に責任の話をしたことがありましたね、あのバカの話には続きがあります」


 根元から断てれば、とは言いますが勝つ前提で動いていた、というよりも『死に場所として十分だった』と考えていた節もありました。


 それは帝国に単身で乗りこんだ時が一番、顕著でしたね。


「国を救ったバカはですね。本当は国を救いたかったわけではありませんでした。誰もいなかったからです。誰もバカの代わりに全てを背負える者がいなかったのです。高尚でもなんでもない、どこにでもある普通の理由でもバカは国を救ったのです」


 国という重さを支えるだけの責任をアレはバカでも持っていたのです。


「願いと困難に挑むことは釣り合うだけではありません」


 そして、願いとは裏腹に極めて困難だったと思います。

 劣勢から押し返し、食事を賄いながら進み続け、最後まで貫き通したのです。


「アルファスリン君は言いましたね。これは『アルファスリン君たちの使命』だと。その使命を先生がやってはいけない理由はありますか?」

「……え、いや、ダメじゃろ。妾は母上に言われておるし、妾もそのつもりじゃし」

「できる者がやっても問題ないと思いますよ」


 アルファスリン君が本気で頭を抱え始めました。

 まだ消化しきれていないのなら、仕方ありません。すぐに答えが出るものでもありません。


「悪いが口を挟ませてもらおう」


 見かねたインガルズさんにバトンタッチするようです。


「理想論だ」

「ですね。正直、義務教育計画の邪魔なので排除しただけです。偽りではありません。そこで提案なのですが」

「【神話越え】の偉業を我らに託す、などとは言うまいな」

「言うつもりです。【無色の獣】討伐も視野の内だったんじゃないですか?」

「我らの任はあくまで予言の確認だった。【神殿騎士】たちの出番が必要かどうかのな」


 できれば調査隊と合同で撃破した、という名目がほしかったのですが、そう甘くはないようです。


「グラム殿はどれだけの重大事を成したか理解されておられるか」

「一応、それなりに」


 神話生物の実在の確認に、その撃破は偉業でしょう。

 国が国なら勇者として歓迎するでしょうね。

 しかし、自分は名前を売れない理由がいくつかあります。


 一つは【輝く青銅】であること。


 【輝く青銅】はあくまで貴族を殺すための装置でなければなりません。

 貴族に放蕩させないために【輝く青銅】がいるのです。


 畏怖されるならともかく、勇者のような好印象を持ってもらっては困ります。

 色々と悪名高いのも一応、計算の内です。

 それは表の顔もセットだからこそ発揮する面もあります。


 自分と【輝く青銅】は表向き等号記号ではありませんが、自分が目立てば【輝く青銅】の正体に気づく者も多くなるでしょう。


 一つは貴族に目をつけられたくない、ということ。


 これは単純に名声を得たら、会おうとする貴族が増えるからです。

 いちいち貴族に呼ばれて出ていくつもりはありません。

 角が立たないように断るのも限界があります。もちろんこの限界とは自分の堪忍袋のことです。


 一つは義務教育計画後の話です。


 このまま順調に義務教育計画が終わればエリエス君は内弟子としてついてくるんじゃないかと思っています。

 一緒に暮らすかはともかく、少なくとも自分の工房で働く体裁は整えるつもりです。


 エリエス君には刻術技術だけではなく、一般生活や王都での暮らし方、自分の伝手を教えてあげないといけません。


 義務教育中では教えられない技術も数あります。


 そうした技術の伝承に重たい名声は不要です。

 適度な名声はあるに越したことはないのでしょうが、無意味に重いとエリエス君に悪い影響を与えかねません。


 ちょっと不安なんですよね。

 ただでさえエリエス君は無垢なところがありますし、ちゃんと教えないと変な癖がついてしまいそうです。


「この時点で十分な偉業だ。それでも【無色の獣】には届かなかっただろう。少なくとも法国の【禁域】に封印された魔獣と同じ格であったら武器や力でどうにかなる問題でもない」


 やはり他にも【ナカテー】に魔獣が封印されているんですね。

 【無色の獣】と同格だとか、ちょっと勘弁してもらいたいところです。


 ようするに名声を得たら、それらも倒しにいかないといけない流れになります。

 自分は生徒たちに教育を施したいんですよ。そんな暇はありません。


「たとえグラム殿が【タクティクス・ブロンド】であっても結果に変わりはしないだろう」


 知られたことになんの衝動も起きませんでした。

 頭は冷静にバレた理由を探します。


 おそらく治療の際に『アルベルヒの指輪』を見たのでしょう。

 そして、インガルズさんは『アルベルヒの指輪』の意味を知っていたようです。


「しかし、成し遂げた」


 まるで力以外の理由がある、みたいな言い方ですね。


「正直に言おう。グラム殿。法国に来てもらえないだろうか」

「お断りします。【タクティクス・ブロンド】の引き抜きは大事になりますよ」

「多額の賠償も視野に入れての引き抜きだ。国の宝具を出す、その価値すらある。それでもなお断る理由を聞いても……いや、子供たちのためか」


 これに自分は頷きました。

 結局のところは『生徒たちのため』なんですよね。


「ここにもグラム殿の生徒であるアルファスリン姫様がおられる。必要であれば義務教育計画の参加者全員をそれなりの待遇で引き受けよう。神務代行様も許されるだろう。それでもか」

「インガルズ殿! さすがにそれは越権行為では」

「我らが神々より与えられた役目、それを行える人材をみすみす見過ごせるはずもなかろう。必要ならこの首、持っていくがいい」

「無茶な……、どちらにしても協議を必要とする案件です。ですが、ハッキリ言えます。それくらいの要求が通る、一笑に付すような議案を族長会議にあげられるほどの快挙であることに間違いはありません。急には言いませんが一考されるだけの価値は保証します」


 慌ててインガルズさんの言葉を引き継いだアンドレアスさんでしたが、答えはすでに決まっています。


「残念ながら」

「……ん? 【タクティクス・ブロンド】?」


 アルファスリン君が非常に不思議そうな顔をしました。


「誰がじゃ?」


 もしかしてインガルズさん、アルファスリン君に報告してなかったんですか?

 あれ? ということはこの人、確証がなかったから今更、言質を取りに来たんですか。


 睨みつけたらインガルズさんは目を閉じました。


「実力に隕鉄の指輪、【愚剣】なる魔剣。そして神狼様の加護を持つ教師など普通にいるわけがない。元より応じた実力者が実力を隠して教師をしていたと考えるのが無難だ。確証があったわけではない」


 筋書きは違いますが大正解でした。

 自分もバレていると思いこんでいたのが脇の甘さでした。


 頭がクラクラしますね。

 血を失っただけではなく、こんな罠を普通に見逃すなんて失態にもです。


「な、なんで【タクティクス・ブロンド】が教師をやっとるんじゃー!?」


 極めて根本的な疑問を今更のように叫ばれました。


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