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リーングラードの学び舎より  作者: いえこけい
第三章
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布団虫の小さな懺悔

 最近、日課にもなった医務室通いのお時間です。


 いつもは授業が終わった後に行くのですが、今日は最後の見回りの日だった上、会議も伴い、大幅に時間がズレこみました。

 もっとも昼の内にいつもより遅れることを女医さん(36)に伝えているので問題はないでしょう。


 連絡は社会人の基本です。

 自営業はその限りではありませんがね。


 医務室のドアをノックして入ると女医さん(36)が、香茶片手に出迎えてくれました。

 出迎えている、というより、座ったままこっちを見た感じでしたが。


「あら、いらっしゃい」

「今日もお願いします。あぁ、それと」


 セロ君のことを一番に聞かねばなりません。

 自分は彼女たちの教師ですからね。

 何時如何なる時だって、心配するものですよ。特に――


「どうしてセロ君がベッドの上で懺悔をしているかについて聞きたいのですが?」


 ――見事な懺悔をしていたら、なおさらです。

 両膝をつき、背筋を伸ばし、両目を閉じ、両手を組み合わせていました。

 まごうことなき祈りと懺悔の姿に、自分は冷静な瞳を持って観察してやりました。


 一番、奇行の少ない生徒だったのに……、どうしてこんなことに。


 何が一番、今の自分に浮かんでいる感情かというと、慙愧の念しかありません。


「起きてからずっとよ。よほど罪深い行為でもしたのかしら? 神に祈ったところでお腹は膨れないというのに」

「根性入れて祈れば少しだけ空腹を紛らわせられるかもしれません」

「不毛な行為ね。結果的に救われないのが特に」


 同意してやりたいのはヤマヤマですが、信心深い子の傍で言うほどではありません。


 そういえば教会は道徳や教育を司る一面もありましたね。

 偉ぶって説法ばかりしているイメージがありますが、有志が行う日曜教室は教会で開かれるのが世間様では一般的です。

 義務ではないので、本当に余裕のある農民や地主、商人の子供たちが通うのが通例です。


 となると『義務教育推進計画』はある意味、教会を敵に回す可能性もありますね。


 今まであまり教会を意識しなかったのは理由があります。


 先代【タクティクス・ブロンド】の一人がヒュティパ教の司祭だったからです。


 腐れ司祭が死んで以来、ヒュティパ大教会と法国はリスリア王国の政治から手を引き、期もせず政教分離の根が生まれたのです。

 後はバカ王が国王になったのをダメ押しに、『政治は特定思想による価値観だけで動かさず、神を尊びこそすれ神のせいにすべきではない。人の世の過ちは人のせいであるべきだ』と偉そうに法王に言い放ちました。


 台本を考えたのは、自分とベルベールさんなのは言うまでもありません。

 もっとも台本を吸収して、独自の言葉に直したのはバカ王そのものです。


 アレで知能指数だけは高いですから。でも、バカですけどね。

 訂正しましょう。

 タチの悪いバカですけどね。


 法王もリスリア国内の鷹派を物理的に殲滅させられたあげく、内乱が終わってしまって、付け入る隙もなくなったので、ヒュティパを祀る代わりに教理と政務の混同を信徒に放棄させました。


 要するに『リスリアに内政干渉しないから信徒を置いてあげてね? お布施だけくれたらいいから』と、ちゃっかり絶滅だけは避けたようです。

 以降は友好的な関係を築けていると思いますよ? 一歩間違えたら帝国のように二正面で戦わなければなりませんから、特に注意を払いました。


 なので『義務教育推進計画』で表立った何かに出ることはないと信じています。


 ……いえ、信じさせてください。

 ただでさえ法国に近いんですから、リーングラードは。

 法国からイリーガルとかリーガルとか送られてきてますが、勘弁してください。


「そういえば聖女バレンといえば、ヒュティパの神託を受けた聖女でしたね」

「あぁ、あの子、バレンの使徒なのね」


 女医さん(36)はあまり宗教に興味がないようです。


 自分もあまり首を突っ込みたいジャンルではないので、この話題はここで打ち切りたいのですが、話題が話題ですしね。我慢しましょう。


「バレンなら、禁忌は贅沢と食の冒涜。あとは……」


 有名な三人の聖女の内、バレンは怠慢、暴食、そして淫欲を嫌いました。

 そのせいでバレンの使徒もその三つの欲求を目の敵にしているのです。


 当然、セロ君も同じでこの三つとは無縁の生活を送っていたのでしょう。


 なるほど、懺悔の理由を理解しました。


「実は生徒の一人が『いかがわしい本』を持ちこみましてね」


 セロ君の肩がピクリと動きました。

 間違いなく『いかがわしい本』に反応していますね。


「そういえば、そういうことに興味を持つ頃合ね。いいじゃない。意欲旺盛で」

「旺盛なのは結構なのですが、この手のものは正しい知識と間違った知識、両方を貪欲に吸収してしまいます。白紙にインクが滴るように、ありありと。なら、なおのこと正しく教えておかないとダメでしょう?」

「あぁ、そういうこと。正しいか間違いかわからないまま吸収してしまうから、ダメなのね。興味深い分野でもあるわね。私的にも」

「で、実際、リスリアではどれくらい、その手の学問が発達しているのか聞きたいのです」


 備えのテーブルに招かれ、香茶を振舞われました。

 いや、だから……、香茶より紅茶のほうが好みなんですが。

 しかし、振舞われた以上は飲まなければいけません。


「学問。面白い考え方ね。包帯を変えながら答えていきましょうか」


 そう言って、女医さん(36)は新しい包帯を取り出しました。

 自分も何も言わず、デザインシャツを脱いで、上半身裸になります。

 冬場でなくて良かったと思います。


 あと、地味にベッドの上のセロ君がまた反応しました。

 ガタ、と、ベッドが揺れる音がしましたからね。


「そういえば異国人なのだから、聞きに来るのは当たり前よね。実際、住んでいてもわからないことくらいあるでしょうし」


 そう女医さん(36)はつぶやきました。


「地味に秘匿されている知識に当たりますからね。国によっては独自の方法を取っていると思うのです。それこそ文化、宗教、様々な要素が絡みますから、実際、リスリアに子供の頃から住み、ある程度の経験があり、学術にも明るい人間でないと聞けません」


 井戸端で会議しているおばさんの話じゃ、ダメなんですよ。


「シャルティアやリィティカに聞けばいいじゃない。他にもピットラットさんやヘグマントさんなんか、聞けそうじゃない。歴史的な要素も含むからアレフレットさんなんかは一番、適役でしょ」

「あぁ、アレフレット先生は盲点でしたね。後で聞いておきましょう。

「それで、この国の性文化よね」


 体を締め付ける緩やかな包帯を解くと、肌が開放される気持ちになります。

 服を脱ぐような気分ですね。


「多くは吟遊詩人の愛の歌よね」

「愛の歌?」


 意外な答えで素直に驚きました。


「そう。秘匿されていると言ったわよね? その秘匿されている感を出しているのが吟遊詩人たちなのよ」


 吟遊詩人。

 当たり前のようにそこらに存在しているように見えますが、普通に暮らしていると一風変わった職業ですよね。

 音楽を奏でて、歌を歌い、誰かの無聊を慰めてお金をもらう人々。


 あれってどれくらい儲かるものなんですかね?


 おひねりを投げた時は銅貨一枚程度でしたし、自分のような人間が何人か居て、トータル的に稼げているので暮らしていける?

 あぁ、店と契約しているのかもしれませんね。


 いくつかの店と契約して、決まった収入を得るところは自分のメンテ契約と同じ流れです。


「バレンのように淫欲を嫌う者も居たわ。多くはヒュティパの像の前で子守唄を歌ってくれる神父さん。そして、街の中でもっとも道徳や教育を語るのは教会よ。子供の頃から言い聞かされてきたわ。『女性は貞淑に、肌をみだりにさらさない』とね。一方で街の酒場じゃ、吟遊詩人たちがボカした愛の歌を歌うの。愛の素晴らしさ、想うことの尊さをね。時には体を委ねる熱い夜を語る。その二つを聞きながら私たちは育つんじゃない?」

「それは街生まれの人だけですよね」

「貴方、私が街の外でウロウロと集落や村を回っていたと思うの? 街のことしか知らないわよ」


 別に流れの医者というわけでもないのでしたね。

 となれば、必然、生まれ育った街が基本になるわけですか。


「でも、わからないというほどではないわ。村に関しても似たようなものよ? 大なり小なり似たような感じじゃないかしら」


 むしろ自然から性について学ぶことのほうが多いのではないでしょうか?

 動物なんかごくごく自然に繁殖してますからね。


「その愛の歌は、性的なものをボカして、空想のことを歌っていたと考えると……」

「そうそう。ぶっちゃけると不貞の愛よね」


 浮気ですか、そうですか。

 不実は罪とかって誰が言ったんでしたっけ?


 商人以上に、実際にありそうなことを大げさに語る者がいるとすれば吟遊詩人か詐欺師くらいなものですよ。

 でも、空想――つまり、妄想で作られたものほどスキャンダラスで心地良いのです。


 ちょうど『ウィンスラット私性露本』のように。


「今、考えるとおかしな話よね。『エロいことはいけません』という教会の神父さんが、何人も子供を生んでいるのよ。馬並だって評判だったわ。そのくせ、神に仕える者は結婚できない、だなんて一言も言わないもの」

「神父だって人間ですよ。やることやってます」

「あれは実際、なんだったのかしらね? あぁした矛盾をどうしてやろうと思ったのか。こんなこと教会の人に聞かれたら異端だと思われるわね」


 教会ではありませんが、親戚みたいな存在の修道院の申し子ならそこにいますけどね。


「………っ」


 懺悔しているのですが、ちょっとずつ、ちょっとずつ、こっちに傾いてきてます。

 かすかに頬も赤いですね。


 うん。これは羞恥プレイに当たるのではないでしょうか?


「ちょっと待ってもらえますか?」


 さすがにいたいけなセロ君にマニアックなプレイを要求するつもりもありません。


「セロ君」

「ひゃぃっ」


 すごい反応が返ってきました。

 具体的にはベッドの上で飛び跳ねましたよ、この子。


「盗み聞きははしたないですよ」

「ぬ、ぬすみぎきなんてしてなぃですっ」


 お、珍しく強気ですね。


「そうですね。熱心にお祈りしてましたものね」

「そうなのですっ、変なことなんかかんがえてなぃですっ」

「ところでセロ君。顔が真っ赤ですよ?」

「ひゃぅっ」


 顔を隠して小さくなってしまいました。

 なにこれ、かわいいですね。


 ベッドの布団を使って隠れてしまいました。

 でも、自分が気になるのか、ちょっとだけこちらを見れるくらいの隙間がありますね。


「セロ君。まぁ、恥ずかしいのはわかります。ついでに興味があるのも」

「興味なんてなぃ……、です」

「ところで、何故、『いかがわしいこと』というのはいかがわしいと言われるのでしょうか?」

「はひ?」


 セロ君がそろりと動きました。


「きっとセロ君は修道院でこう聞かされてきたのではありませんか? 『男女の営みは不潔なことであり、神様はお許しにならない』と。またはこう言いかえられますね。『性に関することは下品なことだ』とね。しかし、実際、自分もセロ君も両親がいなければ、生まれてこれません」

「………」


 あえて両親について、触れました。


 セロ君は両親の顔を見たことがないそうです。

 その経緯は不明ですが、セロ君が赤子のころ、貴族のものとされる指輪と共に母親の手で修道院に入れられたそうです。

 その母親もすぐにどこかへと逃げていった様子だったので、おそらく追われていたのではないかと睨んでいます。


 では誰から、となれば、犯人は間違いなくその貴族の関係者でしょう。


 修道院でもセロの両親について調べていたようですが、指輪だけではどの貴族の者なのかわからなかったようです。

 もっとも、修道院は基本、内部に引きこもりがちなのでルーペで砂漠のおとしものを探すようなものです。

 見つからないのも頷けます。

 

 問題はセロ君が両親の顔を知らないことです。


 でも、セロ君だってここまで育てば大体、わかってくるものです。

 両親が居て子供がいる、という家庭が当たり前で、両親がいないのはなんらかの事態に陥ったからだということくらい、理解できるでしょう。


 もしかしたら両親というものはセロ君にとって、もっとも近くにあるはずなのにものすごく遠い、よくわからないことなのかもしれません。


 だからこそ、疑問を覚え、真実を知りたがる。

 それは同時に興味と言ってもいいでしょう。


 そして、疑問の裏には常に恐怖が隠れているものです。

 どうして? と問うことは理解の及ばない何かに対して究明し、心を落ち着かせることにも繋がるのです。


 セロ君は両親を知りたいと望みつつも、知りたくないとも思っているのでしょう。

 そして、もし知ることができなくとも、『生まれた方法』さえわかれば。

 なんとかセロ君自身をごまかせる。


 セロ君の『恋愛』に対する興味は、この辺が元だと睨んでいます。


「本当に『男女の営みは不潔なことであり、神様はお許しにならない』のか? 教会において子供は祝福されるべき新たな隣人であり、新たな同胞とまで言われているのに」


 この矛盾に気づかなくても、不思議に思う子くらいいるのではないでしょうか?


 なんとなく神父さんが言ってるからと納得してしまうのではないでしょうか?


「興味を持つということは、真実を見つけ出そうとする意思に他なりません。もしもセロ君が今までの教義、そして出来事、暮らし、生活。修道院の教えの意味を本当に知りたいというのなら、あえて触れてはいけないものまで知らなければなりません。そのうえで君の周囲に居た人たちが何故、セロ君に訓戒を、教義を教えたのか。何故、いけないことと言ったのかを知らねばなりません」

「……はぅ」

「時に下世話に聞こえるでしょう。恥ずかしく感じるでしょう。その気持ちは否定しません。でもセロ君に本当のことを知りたいという気持ちがあるのなら、求め、そして問いかけなさい。納得できないのならそれこそ何度でも問いかけなさい」


 何が良くて、何が悪いか。

 その判断は知識がなければいけません。


「それが学びの徒として、正しい在り方です」


 でも、知ろうとしていることは性に関することですけどね?


「同時に無理をしてはいけないというのもあります」


 布団虫に近寄って、そのうえからポンポンと優しく叩いてあげます。


「聞きたくない、というのならそれは仕方ないことです。どちらにしてもセロ君が敬虔なバレンの使徒であることに変わりはありません。求めに行くか、それとも知らぬ顔をするか。その判断はいつだって個人に委ねられるのです。これ以上、聞きたくないのなら先生も話を聞かないことにします。あとでこっそり聞きに来ますから」

「あ、ぁの……」


 布団虫が顔を出しました。

 その顔は何か困っているような、おずおずとした様子でした。


「……む」


 む?


「虫とかつかわなぃですか?」


 ……一瞬、何を言われたのかわかりませんでした。

 というか、何故、昆虫が今の話に関係するのでしょうか?


「だって……」


 戸惑いながら、プルプル震えているセロ君の様子でようやく理解しました。


 あ、あの『ウィンスラット私性露本』!

 昆虫姦について書かれていたのか!?


 虫が苦手なセロ君からすれば、そりゃ衝撃的ですよ!

 というかマニアックすぎます、どれだけ衝撃さに比重を置いた作りにしたのですか。


 真っ白な紙にインク、どころの話ではありません。

 紙に火を点けるような話じゃないですか……、そりゃ倒れますね。


 世の人々は一体、ウィンスラットをなんだと思っているのでしょう。

 悪意だけではない、巨大な何かすら感じてしまいそうです。


「断言しましょう。この世の男女の仲にそんなものは一切、含まれません。ありえません。空想で妄想もいいところです。虫とかは絶対にないので、安心してください」


 今すぐ、セロ君の中に染みついた、くだらない内容をかき消してしまわなければ。

 将来のセロ君が不憫でなりません。あと夫を迎えることがあるのなら、なおさらです。


 くそ……、リリーナ君の毒爪がこんな効果を及ぼすとは予想の外でしたよ。


「でも本に」

「あれは嘘の塊です。ちゃんとした知識があればすぐわかることです」

「……ぁぅ」


 ようやく、ゆっくりとですが布団からセロ君が出てきました。


「怖いなら止めにしますか?」

「……は、はずかしぃ、ですけど、お、教えてくださぃなのです」


 ゆっくりと恥ずかしながら頷くセロ君は、バレンの使徒でありながら、学びの徒でもありました。


「『敲けよ、さすれば開かれん』という言葉があり、それは神に対する信仰の言葉であり、知恵についての訓戒でもあります。ようこそ学びの徒セロ・バレン。君は今、知る勇気を得ました」


 安心させるようにセロ君の頭を撫でてやりながら、なんて、格好よく言ってみました。


 セロ君はまだ恥ずかしいのか、ちょっと俯いていますが、すぐに元に戻るでしょう。


「アレよね。このシーンだけ見たら、先生と生徒のいけない関係みたいよね」


 セロ君がその言葉の内容を理解して、びっくりした顔で固まってしまいました。

 せっかく開けたドアがとじたらどうするつもりですか、この女医さん(36)は。


「自分は年下に興味はありませんよ?」

「あら、なら年上好み?」

「二十代前半だけです」

「それはそれでどうなのかしら。その年代ってほとんど既婚者でしょ」


 あぁ、セロ君が自分から少しだけ逃げてしまいました。

 ついでに頬を膨らませているのは何故でしょう?


 セロ君が恋愛に興味があるのはわかっています。

 それでもって自分は男ですから?

 対象としては悪くない方向です。色んなものを抜かして考えれば、という言葉を除けば。


 ですが、正直な話、セロ君が自分に向けているだろう好意は恋愛のものではないでしょう。

 本人が恋愛の好意と親愛の好意を分けて自覚しているかは別ですが、それでも、この子の自分を見る目は『恋愛の時に自制できない欲しがるもの』ではありません。


 しかし、現実、この拗ねっぷりは何を意味するのでしょうか。

 好意を抱く何かが誰かのものになることに対する、ちょっとしたひねくれ、と言うべきでしょうか?


 お気に入りのぬいぐるみを盗られた、みたいな気分ですね。


「大丈夫、大丈夫です。先生、不貞の愛とかには興味ありませんから」

「……神様にちかえるのです?」

「ヘッドバットも追加します」

「神様はえらいので、たたいちゃダメなのですっ」

「知ってますか。例え偉くても、悪いことをした神様は斬首されるのですよ?」

「神様の世界も恐怖政治だったのね、そりゃ人の世も荒れるわ」


 最後のは女医さん(36)の手痛い風刺でした。


「神様に誓いましょう。誓いを受け付けないようなら校舎裏に呼び出して、ボコってでも誓います」

「せんせぃは神様がきらぃなのです?」


 真っ赤な顔のまま、涙目で言われました。

 正直に答えると、ヤツとは一生、仲良くなれる気がしませんね。


「嫌いかどうかはともかく、早く授業を始めないと遅くなってしまいますね。夏は日が長いとは言いますが、暗くなるときは何時だってすぐにです」


 しぶしぶ、という形でセロ君は引き下がりました。

 たぶん、言っても無駄だろうと思われたかもしれません。


 純粋無垢というのも、結構、大変ですね。

 主に扱いの面で。


 しかし、冷静に考えると教師と一緒に性について女医さん(36)に訊ねる光景って、シュールというか、何かが著しく間違っているような、そんな気がします。


 ま、まぁ、知るということのリスクと考えれば、なんとかなる気もしなくもないですね。


 というわけで、今度はセロ君を加えてテーブルを囲むのでした。


「ところで、ずっと気になっていたのだけど」

「はい?」

「貴方、上半身裸のままよ?」


 ……あ、セロ君の顔が真っ赤なままなのは、そのせいでしたか。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ふと思ったのですが、中世並とまでは言わなくてもこの文明レベルの時代に政教分離をしても良いものなんでしょうか。ブルジョワジーが増えてきたら王権の正統性を主張出来なくてクーデターとか起こさ…
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