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金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


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第43話 宝積寺春華-2

「黒崎君、大丈夫? 顔色が悪いけど……」


 蓮田が、心配そうに尋ねてくる。


「……大丈夫だ」

「まあ……やっぱり、ショックだよね? 宝積寺さんって、普段はすごく大人しい子だから……」


 蓮田は、俺に同情している様子で言った。


 こいつは、俺が宝積寺の裏の顔を知っている、という事実を知らない。

 勘違いするのも無理はなかった。


「……殺す必要のない相手を殺して、宝積寺は責任を問われなかったのか?」

「雪乃様は、宝積寺さんを厳しく罰するべきだと主張したよ? でも、神無月はそれを無視したの。悲惨な結果になったのは、宝積寺姉妹に頼り切った自分たちの責任だって主張して……。花乃舞も神無月の主張を支持したから、結果としては、お咎めなしで終わったんだよ」

「相手が魔女とはいえ、無抵抗の人間を殺して、何の罪にも問われないのか……」

「宝積寺さんの魔力量は、麻理恵さんよりも多いからね……。今回の『闇の巣』の出現まで、失うわけにはいかない人材だった、っていう事情はあると思う。それに、春華さんにお願いされたら、宝積寺さんに手を出すわけにはいかないよ……」

「春華さんは……妹を庇ったのか?」

「そうなの。それだけじゃなくて、宝積寺さんに『よくやった』って言ったらしいよ?」

「……」

「それについては、さすがに非常識だろう……ということで、春華さんを非難する人もいたんだよ。それが、後になって、春華さんが生徒会長になるのを、辞退することにつながったんだけど……。それよりも、3年前のイレギュラーの結果、求心力を失いそうになったのは御三家の方だったんだよね……」

「イレギュラーに対応できなかったから、だな?」

「そういうこと。特に、明らかに戦える年齢だったのに、春華さんが倒れるまで動かなかった雪乃様は、一番の非難の的だったの。常に配下の人間に対して厳しかった人だから、余計に、ね……」


 そういえば、御倉沢雪乃が配下の者を処刑していた、と生徒会長が示唆していた。

 部下には厳しいのに自分には甘い、などと思われれば、嫌われるのは当然だろう。


「御倉沢雪乃は、どうして動かなかったんだろうな? 非難されることは、明らかだと思うんだが……?」

「それは……花乃舞も神無月も動かなかったから。雪乃様に万が一のことがあったら、御倉沢を潰されるかもしれないでしょ?」

「そんな理由かよ……」

「……でもね。これは、絶対に内緒にしてほしいんだけど……雪乃様が吹雪様を信用していなかったからだ、という見方もされたんだよね。雪乃様が戦って、もしも命を落としたら、次のご当主は吹雪様になることが決まっていたけど……とても吹雪様には任せられないと思っていたんじゃないか、っていう噂が流れて……」


 そういえば、御倉沢吹雪からは、当主や生徒会長といった肩書きに反して、好き勝手に動いている印象を受ける。

 威厳や風格はあっても、あまり指導者らしい人物ではない、と言えるのかもしれない。


「まあ、もっと残酷な意見としては……雪乃様は、自分が春華さんと比べて見劣りすることを懸念したんだ、っていう話もあったり……。とにかく、当時は散々陰口を叩かれたんだよ……」

「……」

「結局、求心力を失った雪乃様は……高校を卒業する前に、自殺しちゃったんだ……」

「!?」


 御倉沢の当主が……自殺した!?

 まさか、そんな深刻な事態が発生していたとは……!


「そういう経緯があったから、雪乃様が亡くなる原因を作った宝積寺姉妹に対して、御倉沢は強い恨みを持ってるの。だから、春華さんの話は、御倉沢ではタブーなんだよ。当然のことだけど、妹の宝積寺さんも、御倉沢からは嫌われてるの。あの子は、神無月からも嫌われているせいで、誰とも仲良くしてないような状態なんだよね……」

「俺が宝積寺と初めて会った頃に、やたらと荒れてる雰囲気だったのは、そのせいか……」

「嫌われたことだけじゃなくて、宝積寺さんは、自分のせいで春華さんが生徒会長になれなかったって気にしてるんだよ。春華さんが卒業後に、もう片方の黄門町じゃなくて、外に行っちゃったことについても、自分のせいなんじゃないかって、随分と気に病んでたみたい。それで、去年の1年間は、ほとんど不登校だったんだよね……」

「……不登校だったのに、中学を卒業できたのか?」

「この町のルールは、外とは違うから。早見さんと北上さんが頑張って、宝積寺さんが留年しないように、勉強を教え続けたらしいよ? でも、そこまで親切にした早見さんに対して、宝積寺さんは、顔が腫れるほどの暴力を振るったんだよね……。そのせいで、宝積寺さんは、神無月からも決定的に嫌われちゃったの」

「……早見は、今でも宝積寺のことが好きみたいだが?」

「そうなの。早見さんは、宝積寺さんが自分に暴力を振るったのは『愛の証』だって言ったらしいけど……ひょっとしたら、そういう趣味なのかって、女子の間では話題になったんだよ」

「……」


 早見が実はマゾヒストだった、などというのは考え難いことだ。

 おそらく、宝積寺を激しく怒らせるような言動をしたのだろう。


「……なあ。万が一、御倉沢と神無月が手を結んだら、花乃舞は、この世界の危機だと感じると思うか?」


 俺がそう尋ねると、蓮田は酷く迷った様子を見せた。


「それは……鈴の家で、黒崎君が襲われた、っていう話についての質問だよね?」

「ああ」

「……あり得るんじゃないかな? 御倉沢と神無月が仲良くなったら、たくさんの子供を作って、外に送り出すことが出来るようになるでしょ? そうしたら、純粋なこの世界の人間は減っていくはずだから。事実上、この世界の人類を滅ぼしているって、花乃舞の人が感じる可能性は否定できないよ……」

「……そうか」

「でもさ……誰だって、生まれ持った才能が優れていたら、嬉しいんじゃないかな? 私たちは、魔力が多いか否かで、人生が大体決まっちゃうから……優れた遺伝子が欲しくなる気持ちは分かるよ」

「だからって、異世界から来た遺伝子を、無断でこの世界に広めるのはおかしいだろ」

「……そうだよね。私も、神無月の人達の方針には賛成してないよ」


 仮に、どれほどすごい人間が産まれるのだとしても、純粋な異世界人の遺伝子を有していると、女が男の10倍以上産まれることになるという。

 それは、あまりにも偏っており、望ましいことだとは思えなかった。

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