表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/301

第22話 宝積寺玲奈-6

「魔女は、中心都市の住民の中から、特に魔力量の多い者を集めて選ばれます。そして、『闇の巣』の向こうに存在する世界を破壊し、脱走者を抹殺する、という名目で派遣されます」

「……ちょっと待てよ。異世界の連中は、『闇の巣』の向こうに、この世界があることを知ってるのか?」

「はい。どうやって知ったのかは分かりませんが……何らかの強力な魔法を使えば、この世界の様子を知ることができるのかもしれません。強大な魔力を有する何者かが、この世界に来てから、向こうの世界へ帰った可能性もあります。あるいは……」

「……何だ?」

「……いえ。情報が伝わったことの証拠として、異世界の中心都市では、『闇の巣』の向こうにある世界の言語として、日本語が知れ渡っています」

「日本語が……? それじゃあ、この世界のことが、かなり詳しく知られてるんだな」

「……違います。不思議なことに、捕らえた異世界人の中に、この世界のことを事前に知っていた者はいなかったようなのです。この世界が実在すると確信して、こちらに来るわけではありません」

「……どういうことだ?」

「分かりません。『闇の巣』へ飛び込む人を減らすために、詳しい話については、広まらないようにしているのかもしれません」

「だったら、魔女は、この世界について何も知らないまま来るのか? 何がしたいんだ、異世界の連中は?」

「魔女の派遣は、宗教的な意味合いの強い儀式なんです。一度に派遣される魔女は、11人と決められています。異世界の人間にとって、11という数字は神聖なものです。11人の聖なる女が、裏切り者を、本当に存在するのか分からない異世界まで……あるいは、死後の世界まで追いかけて、神に代わって裁きを与える。そこに、異世界の民衆は、美しさと尊さを見出すのです」

「理解できねえな……」

「……現実的な話をするのであれば……中心都市の人間としては、強大な魔力を有する者が魔女になり、『闇の巣』の向こうに行ってしまうことで、ライバルとなる女が減ってくれた方が助かるのだと思います」

「酷いな、色々と……」

「馬鹿馬鹿しく思えるかもしれませんが、魔女は、この世界にとって脅威です。遭遇したら、逃げるしかありません。黒崎さんも、覚えておいてください」

「……まあ、警戒はするが……」


 俺はため息を吐いた。


 この世界は、異世界人の事情で、大きな迷惑を被っているようだ。

 勝手に憧れたり、ゴミ捨て場にしたり、殲滅しようとしたりするのはやめてもらいたい。


「……すいません、一度に色々と話してしまって。お疲れですよね……?」

「まだ、色々と話したいことは残ってるんだが……今日のところは、これぐらいにしてくれ。実は、御倉沢の家で、一度倒れちまってな……」

「そんな……! 大丈夫なんですか!?」

「大したことはねえよ」


 俺がそう言っても、宝積寺は、不安そうに俺のことを見つめた。

 しばらくして、深々とため息を吐く。


「……だったら、良いのですが……」

「心配させて悪かったな」

「いえ……」

「……なあ。俺の、結婚のことなんだが……」

「その話はやめてください」

「……」

「すいません……。まだ、頭が整理できないんです」

「……分かった」

「明日は、今までと同じように……登下校をしていただいてもよろしいでしょうか?」

「ああ」

「……ありがとうございます」

「礼を言うべきなのは俺の方だろ。今まで、異世界の侵略者から、俺のことを守ってくれてたんだよな?」

「……私が、やりたくてやったことですから……」

「ありがとな」

「……」


 宝積寺は真っ赤になって俯いた。

 それから、意を決した様子で言った。


「……あの……こんなことを言うと、不愉快だと思われるかもしれないのですが……」

「何だ?」

「御倉沢のことは、なるべく信用しないでください。本家の人だけではなく、麻理恵さんも、一ノ関さんたちも……。あの人たちは、黒崎さんに害を及ぼすおそれがあります」

「生徒会長は、確かに胡散臭い人だったが……平沢や一ノ関は、悪人じゃないと思うぞ?」

「あの人たちは……悪い人ではないのかもしれません。ですが、御倉沢の命令であれば、黒崎さんに酷いことをするかもしれません。御倉沢は、所属している者に対して、忠誠と服従を要求しますから……」

「じゃあ、神無月は違うのか?」

「神無月は……どちらかといえば、自由放任主義です。御倉沢と違って、所属している方々に、結婚を強制したりはしません。町の外に出て行った人を、裏切り者扱いすることもありませんから……」

「でもな……俺をこの町に呼んだのは、神無月だって聞いたぞ?」

「……申し訳ありません」

「いや、恨んでるわけじゃないんだが……」

「町の外にいて、魔力を有する人は、そのほとんどが神無月の子孫です。神無月は、所属する人間を、積極的に町の外へ送り出していますから。ですが……黒崎さんは、御倉沢の脱走者の家系でした。神無月の調査不足です……」

「脱走者、か……」

「……すいません」

「いや、事実が分かって良かった。話の続きは、また今度にしてくれ」

「……当面は、異世界の魔物に注意してください。それと、黒崎さんは異世界の言語を話せませんから、異世界人と会ったら、なるべく刺激しないようにしてください。相手には、掌を見せないように、注意してくださいね? 握った両手を掲げると、敵意がないことを表せますから……」

「分かった」



 俺は、宝積寺に見送られて、自分の家に戻った。


 宝積寺と俺の関係について、話ができなかったのは残念だが……今すぐに宝積寺と縁を切れば、俺は、完全に御倉沢の配下になってしまう。

 まだ、御倉沢のことを、それほど信用することはできなかった。


 今日は、色々な意味で疲れた……。

 俺は、普段よりも早く寝ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ