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金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


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第191話 大河原桜子-22

「先生……それを悪用しないでくださいね?」

「当たり前よ。玲奈ちゃんに知られないように、神無月のことを説得するから任せて」

「……」


 やはり、先生に解決を委ねるのは心配だ……。

 だが、自分で解決しようとして、早見に殺されるなんて冗談じゃない。

 ここは、先生や花乃舞の力を借りるしかないだろう。


「良かった、話がまとまって。それじゃあ、お祝いしようよ」

「お祝い……?」

「お兄ちゃん、お姉ちゃんに誓いのキスをして」

「何でだよ!?」

「だって、結婚の約束は、ちゃんとした方がいいでしょ?」

「……俺達は、もう身体の関係なんだぞ? 改めて、結婚の約束なんてしなくても……」

「でも、それは催眠術で強制されたからだって言い逃れできるよね? きちんと愛の誓いをしてくれないと、信用できないよ。お兄ちゃんは、宝積寺先輩の目を盗んで、お姉ちゃんと逢い引きすることになるんだから」

「……」

「黒崎君、私は無理強いするつもりはないわ。貴方にとっては、リスクの大きなことだもの。御倉沢の子については吹雪様の命令があるけど、私との関係を続けたら、玲奈ちゃんが……」

「……いえ。俺は、先生のことが好きですから……」

「……」

「ただ……性的なことは、俺が卒業するまで待ってくれませんか? そうじゃないと、教室で、歯止めが利かなくなりそうなんで……」

「構わないわ。でも……子供は2人欲しいんだけど、大丈夫かしら?」

「……頑張ります」

「お兄ちゃんなら、卒業した後でも、3人までは余裕でいけるよ。この町で妊娠した子なら、外に行っても魔力は保有できるんだから」

「桃花、お前……気軽に言うなよ。俺の相手は、先生だけじゃないんだぞ?」

「大丈夫、大丈夫。じゃあ、早くキスして」

「……」

「……」


 俺が向かい合う位置に立つと、先生は目を閉じた。

 俺は、先生と唇を重ねた。


 こういう行為も、以前に比べれば慣れてきた。

 だが、年上の女性にこういうことをするのは初めてであり、内心ではドキドキしていた。


「おめでとう、お姉ちゃん。お兄ちゃん、これからよろしくね?」


 桃花は、自分のことのように喜んでいる。

 俺は先生から離れて、桃花の両肩に手を置いた。


「桃花。覚悟はできてるんだろうな?」

「覚悟って……何の?」

「これからは、俺に実の妹がいた時と同じように接するからな。お前もそのつもりだったんだろ?」

「いいけど……妹に対して、勝手にエッチなことをしたら駄目だよ?」

「そんなことはしない」

「あと、分かってると思うけど、暴力は駄目だからね?」

「悪いことをしたら尻を叩くのが御倉沢の流儀だ。当然、俺は御倉沢の人間だから、その流儀に従うつもりだ」

「やだ、お兄ちゃんって……そういう性癖もあったの? 確かに、メールの文面で、力で女を服従させたい願望があることは分かってたけど……」

「普通なら、女を叩いたりはしねえよ。それでも、お前の尻だけは遠慮なく叩いてやる。お前は、放っておいたら何をするか分からないからな」

「……ちょっと待って。ひょっとして……冗談じゃないの?」

「冗談なわけがないだろ」

「外では、体罰って禁止されてるんでしょ?」

「都合のいい時だけ、この町の風習に従わせるのはナシだ」

「……お姉ちゃん。お兄ちゃんが変態なんだけど……」


 桃花は、困った様子で先生に助けを求めた。

 キレて攻撃されることも覚悟していたが、俺を殴らないところを見ると、一応は兄として扱うつもりがあるらしい。


 殴り合ったら、確実に負けることは分かっている。

 だからこそ、ここで引き下がったら、生涯に渡っていいように利用されるだろう。

 たとえ外の倫理では良くないとされている方法であっても、ここで兄妹の上下関係を押し通すしかない。


「黒崎君……さすがに、叩くのは可哀想じゃないかしら?」

「全く可哀想じゃありません。こいつ以外だったら可哀想ですけど」

「酷いこと言ってる……」

「お願いだから落ち着いて。桃花は大切な妹なの。お尻を叩くなんて認められないわ」

「そう感じるのは当然です。でも、桃花は、他人を痛め付けるのが楽しいんでしょう? だったら、自分だってそういう行為の対象にされても、文句を言う権利はないはずです」

「私、理由もなく他人を痛め付けたりしないよ! お兄ちゃんのことだって傷付けなかったでしょ?」

「御倉沢の人間だって、自分の妹を叩いて服従させたりはしないわ。平沢さんは、規律を守るために権限を与えられているから叩くのよ? 気に入らないことがあったとしても、無制限に叩いていいわけじゃないわ」

「だったら、誰の許可を受ければいいんですか? 生徒会長の許可があればいいですか?」

「それは駄目よ。吹雪様に、今回の経緯を全て報告するのはまずいでしょう?」

「だったら、代わりに先生が許可してくれますか?」

「……」


 先生は、考え込むような素振りをした。

 それを見て、桃花の表情が固まる。


「お姉ちゃん……?」

「……そうね。掌で叩くなら、私が許可した時は叩いてもいいわ」

「お姉ちゃん!?」

「今日みたいなことがあったら困るもの。私には桃花を叩くことなんてできないけど、黒崎君がお仕置きをするなら、止められないこともあるわ」

「……」


 桃花はショックを受けているようだった。

 先生も、顔を逸らして、妹を見ないようにしている。


「でも、黒崎君……服を脱がすのはやめてね? どんな理由があっても、女の子のお尻を丸出しにするなんて……あんまりだもの」

「……スカートは捲ってもいいんですか?」

「エッチ! いい加減にしないと怒るよ!?」


 さすがに、桃花は強く抗議してきた。


 交渉術として、わざと無茶な条件を出してから取り下げて、より軽い条件を押し通すという手法があるらしい。

 いくら俺の記憶を消そうとした女でも、来年には高校生になる女子のスカートを捲って、ショーツを丸見えにしていいわけがない。

 この提案を取り下げて、尻を叩くことは受け入れさせる……その予定だった。


 だが、先生は意外なことを言った。


「そうね。下着までなら許すわ」

「お姉ちゃん……!?」

「いいんですか!?」

「ちょっと! 喜ばないでよ!」

「いや、喜んでるわけじゃ……」

「嘘だよ! 絶対に喜んだでしょ! 義妹の下着が見たいって、病気なんじゃないの!? このケダモノ!」

「お前は、さっき、脱いでキスするとか言ってたじゃねえか!」

「自分で脱ぐのと捲られるのは違うでしょ!」

「桃花。本当に嫌なことをされるリスクがなかったら、貴方は無視するかもしれないでしょう? そういうわけだから、変ないたずらをしては駄目よ? 私は、貴方を叩く許可なんて出したくないわ」

「……分かったよ」


 桃花は、先生には逆らえない様子である。

 とても不満そうではあるが、先生の言葉を受け入れた。

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