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金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


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第182話 大河原桜子-18

 その部屋は寝室だった。


 ベッドがあり、飾りはほとんどないものの、綺麗に整えられていることが窺える。

 場所が場所だけに、少し怯んだ。


「先生……?」


 部屋の中に声をかけるが、先生からの反応はない。

 そして、部屋のどこにも、先生の姿は見えなかった。


 一体、先生はどこに……。

 そう思った時、俺の身体は、何者かによって部屋の中に引っ張りこまれた。


「うわっ!」


 思わず叫んでしまう。

 俺が転んでいるうちに、部屋の扉が閉められて、鍵をかけられてしまった。


「やっと、この時が来たわ」

「せ、先生……!?」


 大河原先生は、服を脱いでいた。

 黒いブラジャーとショーツのみを着けており、楽しそうな顔でこちらを見下ろしている。


 イメージに違わない、とてつもないボリュームだった。

 胸のインパクトが凄すぎて、思わず凝視してしまう。

 それは、性的な対象として見るのではなく、異常な存在に注意を向ける感覚に近かった。


「私が姿を消す魔法を使えることは、アリスから聞いていたはずよ。忘れていたのかしら?」

「先生、あんた……俺を騙したのか!? それでも教師かよ!?」

「あら。私、嘘なんて吐いてないわよ? 証拠を見せるって言ったでしょ?」

「これのどこが証拠だ!?」

「その様子なら、確認するまでもないと思うけど……私と身体の関係になりたいと思う?」

「なるわけないだろ! 普通に口説かれたならまだしも、こんなやり方をされたら、嫌悪感しかねえよ!」

「……それはとっても残念だわ。せっかく、黒崎君が好きそうな下着を用意したのに。でも……今だけは好都合ね」

「どういう意味だ!?」

「こういう意味よ」


 先生は、有無を言わさずに、俺を抱えるようにしながら唇を重ねた。


 突き飛ばそうと思った。

 だが、身体が固まったように動かない。

 痴漢をされた女は抵抗できないと聞いたことはあるが、こういう状況なのだろうか……?


「抵抗できないでしょ?」


 俺から離れた先生は、急に真顔になってそう言った。


「……」

「それはね、人間の自然な防衛反応とは違う現象なのよ」

「……」

「まだ疑っているわね? だったら、最後までやるしかないわ」

「……」

「全部脱いで」

「……分かりました」


 断れなかった。

 俺は、先生に言われたとおりに、全てを脱いでしまった。

 何も隠さず、全てをさらけ出す。


「まあ! 期待以上よ。嬉しいわ」

「……」

「分かった? これが証拠よ。まだ足りないかしら?」

「……」

「だったら、最後の証拠を見せてあげる。貴方は、嫌悪感しかないはずの女と肉体関係を持つことになるわ」

「……」

「しましょう」

「分かりました」


 冗談じゃない。

 そんな俺の感情とは裏腹に、俺は受け入れる言葉を発していた。


 こんな経験は2回目だ。

 だが……まさか、そんな……!


 混乱する俺の前で、先生は下着も脱ぎ捨てて全裸になった。

 そして、先生は俺にキスをした。



「……」

「……」



 行為を済ませた後で、俺は放心状態になっていた。

 全てを搾り取られたような気分である。


 一方で、先生は満たされた表情で、自分の下着を着け直しながら言った。


「これで分かったでしょ? 初めての時に、黒崎君は行為を強要されたのよ」

「……」

「まさか、まだ疑っているわけではないでしょう?」

「……疑ってません」


 認めるしかなかった。


 下着姿を見せてキスをする。

 全裸になってから、もう一度キスをする。

 同じ方法によって促され、俺は一ノ関との行為に及んだ。


 わずかな可能性として、一ノ関の時も今回も、欲情した俺が、自分から行為に及んだことが考えられる。

 しかし、俺がそう考えないように、先生は俺が怒るような方法で迫ったのだ。

 かなり怒っていた状況で、下着姿でキスをされたからといって、自分から服を脱ぐのは考えられない。


 それに……自然にムラムラしたとしても、女に裸を見せる趣味のない俺が、隠しもしないのは自然な動きではない。

 間違いなく、正常な状態ではなかった。


「さっきのは……他人を操る魔法か何かですか?」

「いいえ。黒崎君には、初体験よりも前から催眠術がかけられているの。だから、脱いでキスをしたのが他の女性であっても、私と同じ方法で行為に至るわ」

「催眠術……!?」

「かけたのは吹雪様でしょうね。御倉沢のお屋敷に行った時に、貴方には、気を失っていた時間があったはずよ」

「!」


 御倉沢の屋敷で地下に行った時に、俺は意識を失った。

 急性魔素中毒だと言われたが……本当は、生徒会長に意識を奪われたのか!?


「そして……この方法は、下着姿じゃなくて、水着姿であっても使えるはずよ。ビキニなら、だけど」

「ビキニでも……?」

「だから、地下で、女の子達はビキニ姿で待っていたのよ」

「……!」


 言われてみれば……ずっと、不自然だと思っていたのだ。

 俺を誘惑する必要があったとしても、あの状況で、3人の女子をビキニ姿にする必要はなかったはずである。


 必要性があったとすれば……既成事実を作らせるためだ。

 もしも、あの時……結婚を了承しなければ、あの格好のままで、3人は俺にすがりついてきただろう。

 その時に、一ノ関が俺にキスでもすれば、そのまま身体の関係になったということだ。


 いきなり3人の女子のビキニ姿を見せられて欲情し、行為に至った……という筋書きでは、不自然なところがあったとしても、俺は納得するしかなかっただろう。

 肉体関係を持った男が、物理的に強要されたり、脅されたりしたわけではないのに「そんなつもりはなかった」などと言っても、誰も信用してくれない。

 言い訳すればするほど軽蔑されるだけだ。


「でも……どうして、生徒会長がそこまで……?」

「玲奈ちゃんから、貴方を取り戻すためよ」

「……何のために?」

「魔力が少ない女性が相手であっても、自然な行為ができる貴方がいれば、衰退した御倉沢の底上げできるでしょう?」

「そんな理由で……!?」

「それだけじゃないわ。遠縁とはいえ、御倉沢家の血を継いでいる貴方が玲奈ちゃんに取られるなんて、吹雪様にとっては許せなかったんじゃないかしら」

「……今、何て言いました?」

「黒崎君は、御倉沢家の血を継いでいるのよ。それを知ったから、渡波さんは態度を変えたの。御倉沢家の血を継いだ子供を産むことは、あの子達の夢だもの」

「……!」


 俺が……御倉沢家の遠縁!?

 それが本当なら、御倉沢と因縁のある宝積寺の恋人が俺では、快く思われないのも分かる。

 さらに、渡波や須賀川が、俺に裸を見せても良いと思った理由としても納得できる。

 御倉沢家は、あいつらにとって絶対の存在だからだ。


 だが……そんな理由で、あいつらは、俺と身体の関係になることを望んだのか……。

 まるで、自分の価値を否定されたような気分になった。

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