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金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


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第154話 蓮田香奈-10

「本音を言えば……私は、春華さんのことも恨んでいます」


 長町は、暗い顔で言った。


「……そうなのか?」

「はい。玲奈さんをこの町に置き去りにして、自分は外に行ってしまうなんて……いつ爆発するか分からない時限爆弾を設置するようなものじゃないですか」

「……」


 表現は悪いが、言いたいことは理解できる。

 宝積寺は、1人にしておくと、何をするか分からないからだ。


「……これも、内緒にしてくださいね?」

「ああ」


 当然である。

 宝積寺には狂信的なところがあるので、長町が春華さんに対して悪い感情を抱いていると知られたら、無事で済むか分からないのだ。


「……色々と話して、気分が楽になった気がします。ありがとうございました」

「いや……」

「蓮田先輩の部屋に戻りましょう。美咲さんを、いつまでもお待たせしたら申し訳ないです」

「お前……桐生と面識があったんだな。神無月家で会ったのか?」

「いいえ、私達の家にお招きしました」

「……そうだったのか」

「美咲さんは素敵な人です。魔力が多いことはもちろんですが、いつも笑顔で……こう言っては失礼かもしれませんが、とても可愛らしい方だと思います」

「ちなみに……桐生は、宝積寺とあかりさんに何があったかを知ってるのか?」

「……知らないと思います。私とお姉様にとっては、気軽に話せるようなことではありませんし……玲奈さんだって、あのことは話せないはずです。……ひょっとしたら、アリスさんが話したのかもしれませんけど……」

「……そうか」



 俺達が蓮田の部屋に戻ると、蓮田は桐生と打ち解けた様子で談笑していた。


「あっ、黒崎君、あきらちゃん。もうお話は終わったの?」

「はい。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません」 

「気にしないで。蓮田さんと仲良くなれて良かったから」

「……私も、桐生さんと話せて良かった」


 蓮田は、本当に嬉しそうな顔をしながら言った。

 魔力が多い人間が好きな蓮田にとって、早見と同レベルの魔力を保有している桐生は、憧れの存在なのだろう。


「お前が元気そうで安心した。目が覚めてから、身体に異常はなくて済んでるのか?」

「大丈夫だよ」

「そうか。それじゃあ、俺は、渡波や一ノ関の様子を見てくる」

「水守と鈴は、もう退院したよ?」

「……そうだったのか?」

「そうなの。鈴は身体に異常がなかったし、水守も手の感覚が戻ったみたい」

「そうか。一ノ関は治ったんだな……」


 朗報だと言える。

 蓮田も元気そうなので、あとは渡波さえ治れば、御倉沢の家で全員揃って生活できるだろう。


「雫ちゃんも、自分で立てるようになったから、このまま良くなるかもしれないって聞いたよ」

「そうか」

「でも……しばらくは、身体を自由に動かせるようになるまで、訓練が必要みたい」

「……大変だな」

「そうなの。だから、黒崎君は雫ちゃんの所に行ってあげて。今、身体を動かすための練習をしてるはずだから……黒崎君に励まされれば、辛くても頑張れると思うの」

「分かった。渡波は、今、どこにいるんだ?」


 俺が質問すると、長町が手を挙げた。


「私がご案内します」

「じゃあ、任せた」

「その前に……黒崎先輩には、やるべきことがあるのではないですか?」

「……何だ?」


 質問を返すと、長町はため息を吐いた。


「黒崎先輩って……駄目な人ですよね……」

「おい……」

「身体に異常がなくても、蓮田先輩を、きちんと励ましてあげてください。私と美咲さんは、外に出ていますから」

「……」


 長町は、桐生を連れて、本当に部屋から出て行った。


「あきらちゃんって……まだ小さいのに、しっかりした子だね……」


 蓮田は感心した様子でそう言った。


「同じクラスにいたら、男子に対して口うるさいタイプだな」

「そういうことを言ったら駄目だよ……。とってもいい子だよ?」

「お前、長町と面識があったのか?」

「まさか。あの子は、長町あかりさんの妹さんだよ? 年下だけど、私にとっては雲の上の存在だよ……魔力も多いし……」

「お前は、そればっかりだな……」

「いいでしょ。黒崎君だって……」

「……何だ?」

「……大きい子が好きなんだから」

「……」


 何が大きいのかを尋ねなくても、もはや常識として扱われているため、意味は明らかだった。

 蓮田は、自分の胸を押さえながら、ため息を吐いた。


「でも……良かったよ。ひょっとしたら、それが理由なのかもしれないけど……黒崎君が鈴のことを好きなら」

「……ちょっと待て。何の話だ?」

「鈴から聞いたよ……2人の関係が進んだこと……」

「……!」

「さすがに、病室でするのはどうかと思うけど……鈴は、自分が黒崎君に嫌われてないかって気にしてたから、きっと、気持ちが楽になったと思うな……」

「須賀川は、俺と仲が悪いことを、そんなに気にしてたのか?」

「当たり前でしょ? お風呂から出てきたら、黒崎君は眠ってたんだから、気にするよ……。私だったら、泣いちゃったかも……」

「……そうか」


 家に泊まった、あの夜……須賀川は、俺に対する態度とは裏腹に、かなり積極的だったのかもしれない。

 だとしたら、あの頃は宝積寺に遠慮していたとはいえ、俺の体調に問題がなければ、勢いでヤッてしまった可能性は否定できない。

 蓮田や一ノ関の家に泊まった時には、2人が迫ってこなかったから、何事もなく終わったが……。


「……ねえ、黒崎君……」

「何だ?」

「……私とも、してよ」

「!?」


 とんでもないことを言われて、俺の頭の中は真っ白になった。

 何と言えば良いのかが分からないでいると、蓮田はため息を吐いた。


「……冗談だよ。外に桐生さん達がいるのに、できるわけがないでしょ? そんなことをして、宝積寺さんに知られたら、どうなるか分からないし……」

「……だよな」

「でも……さっきのは、喜ぶところだよね……?」

「それは違う」

「えっ?」

「はっきり言っておくが、女に肉体関係を迫られたら男が喜ぶっていうのは勘違いだ」

「……そうなの?」

「ああ。こっちがその気になってればともかく、いきなり誘われて、喜んで応じる男なんて少ないはずだ。……世の中には、そういうのに慣れてる男も、いるのかもしれないけどな……」

「だったら……キスだけはして」

「……」

「いいでしょ?」

「……分かった」


 キスだけなら、一ノ関ともしている。

 俺は、目を閉じた蓮田の唇に、自分の唇を重ねた。

 すぐに離れたが、蓮田は満足した様子だった。


「……ありがとう」

「ああ」

「雫ちゃんの所に行ってあげて」

「分かった」


 俺は、蓮田の頭を1回撫でてから部屋を出た。

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