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金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


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第140話 早見アリス-21

「……ちょっと待て。今の話は本当なのか?」


 俺が疑問をぶつけると、早見は意外そうな顔をした。


「あら、疑っていらっしゃるのですか?」

「だって、おかしいだろ。そんなに都合良く、女の胸や尻を触るなんて……狙ってなけりゃ、難しいんじゃないか?」

「まあ! あの時には気付かれなかったのですが……成長なさったのですわね」

「……どういうことだ?」

「要するに、接待の一環ですわ。黒崎さんに訓練を続けていただけるように、触っても不自然ではない状況を、何度も故意に生み出したのです。そのような機会において、触ったこともあれば、触らなかったこともありましたわ」

「おいおい……」

「後になって考えると、やり過ぎであったと思います。下着を見せるだけでも喜んでいただけるのであれば、触らせる必要はなかったのですが……外の男性を楽しませるために、確実に効果があるイベントを選びましたので」

「……」


 当時の俺……さすがに、気付けよ……。

 俺は頭を抱えた。


「つまり、お前は……俺にエロいイベントを用意して喜ばせていたから、許せっていうのか?」


 俺が睨んでも、早見には余裕がある様子だった。


「そうですわね」

「……そんなに簡単に許せることじゃないだろ」

「ですが、記憶を失ってしまう前の黒崎さんには、自分が気に入った女性であれば、酷いことをされても許してしまうところがありましたわ」

「……」


 今でも、そういうところがあることは否定できない。

 だが、俺にそういう性質があったとしても、それを加害者の立場である人間が言うのはどうなのだろうか?


「分かっております。納得できないのは当然ですわ。ですから、責任は私が取ります」

「……お前が?」

「黒崎さんを騙し、記憶を消すような状況に至らせたのは、私と愛様ですもの。天音さんも利亜さんもあきらちゃんも、私が強引に説得して協力していただいたのです。ですから、償いは私が代表して行いますわ」

「その償いが、お前の今の格好か?」

「はい。これだけでは物足りないでしょうか?」

「……そりゃあ、俺がコスプレを希望したわけじゃないからな……」

「では、大河原先生が黒崎さんになさったことと同じことであれば、私もサービスとして提供いたしますわ」

「……!?」


 先生がしてくれたのと同じことを……早見も!?

 それは、非常に魅力的な提案……なのか?


 よく考えてみると、俺が先生にしてもらったエロいことなんて、それほど種類があるわけではない。

 先生は存在自体がエロいので、脱いでもらったり、触らせてもらったりしなくても、自然とムラムラしたのである。


 思い出深いエピソードとしては、何回か、後ろから抱き締めてもらったことだが……それは、早見にもやってもらったことだ。

 あとは、昨日、顔に胸を押し付けられたことだが……。


「あれは、頼みづらいな……」


 俺がそう言うと、早見は意外そうな顔をした。


「そうなのですか?」

「お前……俺がどういう行為を思い浮かべたのか、分かってるのか?」

「はい。昨日の出来事は、私も近くで見ておりましたので」

「……お前、まさか……あれをやるつもりだったのか!?」

「黒崎さんの性癖は、よく理解しているつもりですわ」

「……」


 要するに……こいつは、自分も先生と同じ行為をして俺と和解する、という結末までの流れを想定して、今の格好を選んだということだ。

 ある意味では凄い覚悟だが、計算高さも感じられる発想である。


「私に、それを要求なさらないということは……私の胸では物足りないということでしょうか?」


 早見は、不満そうに言った。

 先生と同じ行為を要求されなかったことで、プライドが傷付いたようである。


「そりゃあ……魅力的な提案だし、気持ち良さそうではあるんだが……」

「……黒崎さんは、要求する場面と躊躇する場面が間違っているように思いますわ」

「……」


 そんなことを言われても、早見にやってもらいたいことと、先生にやってもらいたいことは違うのだから仕方がない。

 そもそも、早見の魅力と、先生の魅力は性質が異なるものなのだ。


 だが……早見の胸が魅力的なことも確かだ。

 このチャンスを逃したら、一生後悔するかもしれない。

 俺は早見の胸の谷間を見つめながら、しばらくの間、本気で悩んだ。


「黒崎さん……真剣な顔で、下品なことを考えるのはやめてください」

「仕方ないだろ! 俺にとっては重大なことなんだよ!」

「……」


 早見は、こちらを白い目で見ているが、俺は悩むのをやめなかった。

 そして、ふと下を見て、早見の白い脚を観察した。


 早見にビキニ姿で膝枕をしてもらったことは、とても良い思い出である。

 こいつの脚は細いのだが、きちんと柔らかさを備えており、とても感触が良いのだ。


「ひょっとして、また膝枕をしてほしいと思っていらっしゃいますか?」


 早見が、俺の考えを見透かしたように言ってくる。

 だが、俺は、それだけでは満足できなかった。


「……今回だけは、自由に触らせてくれないか?」

「駄目に決まっているではないですか」

「何でだよ!?」

「条件は守ります。先生が、多少なりとも、ご自身の脚を触らせたのであれば、我慢しようと思いますが……そのような経験があるのですか?」

「それは……確か、前に、そんなことがあったような……」

「念のために申し上げますが、いくら私に非があっても、この状況で嘘を吐いたら絶交しますわよ?」

「……」


 残念ながら、先生の脚を触ったことはない。

 先生の脚は魅力的なのだが、あの人の場合は、やはり胸が一番なのである。


「どうして、お預けをされた子犬のような目をなさるのですか?」

「……考えようによっては、顔を胸に押し付けるより、下品じゃない気がするんだが……?」

「嫌です。男性に脚を撫で回されるなど、生理的に耐えられません」

「……」

「……嫌ですからね?」

「……」

「……貴方は、このような執念で、玲奈さんの下着の色を聞き出したのですわね?」

「!?」


 こいつ……どうしてあのことを!?

 まさか、宝積寺から聞いたのか……?

 あのことを、2人だけの秘密にしてほしいと言ったのは宝積寺なのだが……。


「玲奈さんが、黒崎さんのことが好きであっても、執拗に問い詰められて屈辱的なことを話すように強要されたら、傷付くに決まっているではありませんか。貴方は、玲奈さんが私に相談した理由を、真剣に考えるべきですわ」


 早見は、深々とため息を吐きながら言った。


「……男と女の間には、色々とあるだろ」

「今度、玲奈さんのことをいじめたら、絶対に許しません。黒崎さんを気絶させて全裸にしてから、頭に私のショーツを被せて、麻理恵さんのお宅の庭にでも転がしておきますわ」

「おまっ……!」


 どうやったら、ここまで凶悪な計画を思い付くのだろうか……?

 早見の悪魔のような頭脳に、俺は恐怖を覚えた。

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