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金色の箱庭  作者: たかまち ゆう


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第11話 大河原桜子-1

 登校して、朝のホームルームの時間になっても、一ノ関は姿を現さなかった。


 雨に濡れて、風邪をひいてしまったのだろうか?

 いや……ひょっとしたら、俺に申し出を断られて、そのショックで……?


 かなり不安だったが、あのような事情では、誰かに相談することもできない。

 放課後になったら、一ノ関の家に寄ってみよう。そう思った。



「今日は、全然集中できないみたいですね」


 2人だけの授業中、大河原(おおがわら)桜子(さくらこ)先生は、俺のことをじっと見つめながら言った。


「いえ、そんなことは……」


 俺はそう言って誤魔化そうとしたが、大河原先生は首を振った。


「黒崎君は、最近そんな日が増えています。何を教えていても、集中力を欠いているように思えて、先生は心配です」

「……すいません」

「何かを悩んでいますね? 相談したいことがあるのでしたら、乗りますよ?」

「いえ……」

「さしずめ、女の子のことで悩んでいるのでしょう?」

「……」

「やはり、そうでしたか。朝のホームルームの時に、一ノ関さんがお休みしていることを、気にしていましたよね?」

「……先生に相談しても、どうにかなることではありませんよ」

「分かります。年頃の男の子ですし、きっと悩みもデリケートな内容なのでしょう? 無理強いはしません。ですが、話しても良いと思えたら、是非私に相談してください。先生は、いつでも貴方の味方ですから」


 大河原先生は、こちらを安心させるように笑みを浮かべ、俺の手に、自分の手を重ねてきた。


 本当は、今すぐ相談したい。

 むしろ、全力で叫ばせてほしい。


「生徒を誘惑するような格好と言動はやめてください!」


 そう言えたら、どんなに楽になるだろうか?


 大河原先生は、かなり若い。

 現役の大学生だと言われても、確実に信じる容姿である。

 顔だけ見れば、高校生だと言われても違和感がない。

 間違いなく、俺と10歳は離れていないはずだ。


 そして、服装が凄い。

 いつも大胆に胸元を開いており、谷間が見えるため、目のやり場に困ってしまう。

 おまけに、先生の胸は、一ノ関すら上回る大きさだ。はっきり言って目の毒である。

 さらに、ミニのタイトスカートから伸びる生脚も、かなり刺激が強いものだ。

 一言で表すなら……エロい。


 そんな教師とマンツーマンで、特別授業を毎日受けさせられているのは、一体何の刑罰なのかと思う。

 中高一貫校であるこの学校で、高校から入学する者は僅かであり、他の生徒と一緒に授業を受けても付いていけないから、ということらしいが……。

 実は、この、俺のクラスの担任教師でもある先生こそが、俺にとって一番の悩みの種なのである。


 それにしても、高校教師でありながら、全科目を1人で教えてしまうこの先生、一体何者なのだろうか……?

 そんなことを考えていると、頭の後ろから、先生の両腕が伸びてきた。


「ほら、またぼんやりしてる」


 後ろから甘えるように抱き締められて、耳の近くで声を出され、俺は思わず叫びそうになる。


「ちょっ……先生、身体がぶつかってます!」

「あら、ごめんなさい。男の子は、あまりベタベタされるのが好きではないのでしたね。妹は、こうすると安心してくれるのですが」


 そう言いながら、先生は離れてくれた。


 この先生、男の異性に対する欲求について、理解があるようなことを時々口にするのだが……とても、本当の意味で理解しているとは思えない。

 絶対にあり得ないと思うが……ひょっとしたら、全てが演技で、俺を誘っているのかもしれない……などと疑いたくなるほどだ。

 特に、一ノ関から誘われた昨日の出来事の後で、この先生の相手をするのは辛い。


 そういえば、伊原はこの先生のことも、何も言わなかった。

 大河原先生はミニスカートだし、脚も綺麗だと思うのだが……どこかに、伊原の好みでない要素があるのだろうか?


 結局、俺は全く集中できないまま授業を受け続けた。

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