第100話 一ノ関水守-11
「ちなみに……先生の妹と一緒にいたのは?」
俺は、大河原桃花と一緒にいた、黒髪の女子を思い浮かべて言った。
「あの子は、館腰美樹さんの妹よ。さっきの2人は中学3年生で、すごく仲がいいの。そして、2人とも、お姉さん達に匹敵するような、とんでもない量の魔力の持ち主なのよ……」
「……そうか」
その後は、蓮田と先生の妹の思い出話を聞くなどしながら、一ノ関の家に辿り着く。
俺達は、須賀川や蓮田と別れて家に入った。
その際に、須賀川が一ノ関に何かを言ったが、内容は分からなかった。
家の中に入っても、何を話すべきなのか分からなかったため、しばらくの間、俺は黙っていた。
一ノ関も、何を話すべきか分からない様子である。
「今日は助かったわ」
リビングのソファーに、一旦2人で座った後で、一ノ関はそう言った。
「俺は、何もしてないが……」
「そんなことはないわ。貴方が一緒に来てくれて、心強かったもの」
「……」
「魔法が使えるようになったのね。おめでとう」
「まだ、走ることしかできないんだけどな……」
「謙遜することはないわ。魔光を生み出せるようになってから、こんなに短期間で、扱えるようになるなんて……やっぱり、貴方は天才なのよ」
「……そうか?」
「ええ。でも……貴方が魔法を使えるようになったのは、早見アリスの指導のおかげでもあるのよね。少し、悔しいわ……」
「早見だけじゃない。お前や平沢が、訓練に付き合ってくれたおかげだ」
「……優しいのね」
「そうでもないと思うが……」
「……風邪をひいたらいけないわ。髪を乾かしましょう」
そう言ってから、一ノ関はドライヤーを持って来て、俺に差し出した。
「いや、俺はいい。お前は、毛先とかが濡れてるだろ? お前が乾かせば、それでいい」
「……そう?」
俺が頷くと、一ノ関は、自分の髪を乾かし始めた。
手持ち無沙汰なので、俺は一ノ関を眺め続けた。
濡れていたのが一部だったためか、一ノ関は、すぐに作業を終えた。
それから、こちらの方をじっと見てくる。
「……どうした?」
「制服が濡れているわね。乾かした方がいいわ」
「……そうか?」
「ええ。ブレザーを脱いで」
「ああ」
俺は、言われた通りにした。
そして、脱いだ服を一ノ関に手渡す。
「……ついでに、私も制服を乾かすわ」
そう言って、一ノ関もブレザーを脱いだ。
「……!」
一ノ関が、白いブラウスだけの姿になって、俺は目のやり場に困った。
こいつの大きさになると、服を着ていても、膨らみの存在感はハンパじゃないのである。
動揺していることが伝わったらしく、一ノ関は、恥じらうような素振りを見せた。
「黒崎君……あんまり見られると恥ずかしいわ。できれば、目を閉じてくれないかしら?」
「あ、ああ……」
俺は、言われたとおりに目を閉じた。
すると、その後も、衣擦れのような音がする。
違和感が生じた。
ブレザーは、もう脱いだはずだ。
一体、何を脱いでいるんだ……?
「黒崎君、目を開けて」
一ノ関に、硬い声でそう言われた。
嫌な予感に襲われながら目を開けると、そこには、肌を露にした一ノ関が立っていた。
身に着けているのは、紫色のブラジャーとショーツだけである。
「!?」
驚きのあまり、全身が硬直して、すぐに身体を動かすことができなかった。
その隙に、一ノ関は俺に迫ってきて、有無を言わせず唇を重ねた。
頭が真っ白になる。
一ノ関を押し退けるとか、抱きしめるとか、そういうこともできない。
ただ、座ったまま、固まったようになっていた。
「……貴方は、私の寝室に行っていて」
俺から離れた後で、一ノ関は、平静を装いながらそう言った。
「……ああ」
俺は、自分でも不思議なほど、淡々と応じた。
寝室に向かうため、階段を昇りながら考える。
……おかしい。
これは、一ノ関を説得するべき状況だろう。
どうして、言われたとおりに動いているんだ、俺は?
そう思いながらも、一ノ関の寝室に入り、ベッドに座る。
この後の展開なんて、1つしか考えられない。
それを避けたければ、今すぐに逃げるべきだ。
頭では分かっている。
だが、身体が動かない。
このまま、一ノ関の誘いに乗れば、大変なことになるだろう。
そう考えたが、一方で、この後の展開に期待する感情を抑えられなかった。
やがて。
部屋に、その本来の所有者が戻って来た。
一ノ関は、身体に、バスタオルを巻いた姿だった。
胸にボリュームがありすぎて、上半分はほとんど隠せておらず、谷間が大変なことになっている。
どうやら、シャワーを浴びてきたらしい。
近寄られて、肌がしっとりしているのに気付く。
「……いいでしょ?」
一ノ関は、そう尋ねてきた。
「ああ」
まったく良くない。
そんな心の中とは裏腹に、俺はそう応じていた。
「服を、全部脱いで」
一ノ関の言葉に、俺は従った。
時間が経つにつれて、欲望がこみ上げてくる。
ここまで準備を整えられてしまうと、もはや、嫌だと言われても止められる状態ではない。
一ノ関は、バスタオルを脱ぎ捨てた。
そして、俺に抱き付くようにしてから伸び上がり、キスをした。
今度こそ、俺の理性は完全に消し飛んだ。




