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いつも誤字や脱字、おかしい所など修正や指摘頂きありがとうございます。
食事を終えてから作業を続けていたので大分形にはなってきた。
荒地方面は土を積み上げ石に変えて防壁っぽくなっている。
他がある程度できたら作り直すかもしれないみたいだけど、とりあえず形にしたようだ。
建物もそんなにスペースがあるわけじゃないので限られているから基礎は終わったみたい。
まだ決まっていないスペースもあるけど出来ても小屋が2つぐらいだろうか。
決まっている建物は広いスペースで作られており基礎部分しかまだできてない。
そんな中、急ピッチで作られたのが調理場と言うか食堂かな。
建物自体は牛丼チェーン店ぐらいの広さはあるかな?
コンロ等の魔道具がある調理器具に関しては事前にサロユさんにお願いしてあったので用意して持ってきていた。
その為竈は作っていない。
ただ燃料として魔石を用意するか魔力を使う必要はあるかな。
コストを落としたのでホームよりは設備の質は下だけど、その分一度に作業出来る量を増やす為に数を用意した。
テーブルやイスは木材を加工して用意したし、とりあえず食事処っぽくなってる。
思った以上に早く形になった建物が嬉しくて見渡していると。
「ユキ様ー。敵襲です!」「違うよ。お客様だよ」「冒険者なのよー」
妖精達が誰か拠点に来たようで私を呼びに来たみたい。
チームの人でいるのは喋らないと言うプレイスタイルのボルグさんとちょっと人見知りするミナちゃん。
対応は出来そうだけど片言のタイラントクイーンワスプ・ガードといい加減で何かしでかしそうな妖精達。
対応出来るのがガードしか浮かばない!?
妖精達を追い越して急いで向かう。
今は荒地側に築いた防壁に入り口がないので、来ているのは森側だろうと考え向かう。
森側に築く防壁予定地の辺りにいたのは5人組のPTのようだ。
「すみません。お待たせしました」
「おぅ、このにーちゃん喋らないんだが大丈夫か?」
「そう言うプレイスタイルだそうなので…、すみません」
話しかけてきたのはリーダーなのか他の人よりちょっと装備が良さそうだけど、黒くて刺々しい鎧が威圧的だ。
妖精達は警戒してるのか遠目に見ているようだった。
ガードや蜂達は武器を手にちょっと臨戦態勢?
ミナちゃんはオロオロしていた。
「ぁ、兄貴。アレは妖精さんっすよ」
「あん?見りゃ妖精ってのはわかるぞ」
「種族じゃなくて雪月風花の雪妖精さんですよ」
「強えのか?」
「ヤバイらしいっすよ。何でもボスを一刀両断したとか。蜂のボスを従えてるとか。他にも噂だけなら色々あるっす」
「面白えじゃねえか!」
何か言われてる…。
ボスを一刀両断とか何のことだろう…。
イビルトレントのことかな?
アレはシュティやルナが、伐採スキルを付けて色々したら他の人もできたって掲示板に書かれてたと言ってたはず。
蜂のボスってメーアのことだろうけど従えてないから!
私よりルナの言う事の方が何でか聞いてくれること多いんだよなぁ…。
「よし、殺し合おうじゃねぇか!」
え、私を指差して言ってるって事は私に言ってるんだよね。
「イヤです」
「な、何だと……」
断ったら両手と両膝を地面についてがっくりと項垂れた。
周りの人達がしっかりしてくださいとか、みっともないから立ってくださいなんて言ってるけど…。
「何しに来たんですか…?」
「おぉ、そうだった。俺達が荒地に来た時は何も無かったからな。確認ついでに寄ったんだ」
私が聞くとサッと起き上がって答えてくれる。
何かノリの良いと言うのか軽い人だなぁ。
ルナと気が合うんじゃないかな…。
「もう満足しました?」
「いや、まだだな。この拠点はどういう意図で作ってんだ?」
「ギルドの依頼で中継地点として作ってます」
「ほー、俺等も利用して良いのか?」
「それは構いませんけど…。まだ何もないですよ?」
「何言ってんだ。街に戻らなくても寝れるとこがあるんだ。十分だろ?」
どうなんだろうと思ってボルグさんを見ると頷かれた。
どういう意図だろう…。
構わないって事かな?
それにしても何で妖精達やガード達は警戒してるんだろう。
気になったので質問してみる。
「あー、そりゃアレだ。マップで見りゃわかると思うが俺はPKしたことあるからな!」
「でも兄貴は一方的に誰か襲ったわけじゃないんですよ?」
「街の外で強そうな相手を見つけると勝負を挑むんっす!」
「断られたらさっきみたいに項垂れて諦めてるんだ!」
「兄貴の挑戦を受けてくれる奴なんて滅多にいないけどな…」
確認すると兄貴と呼ばれる人はPK表示になってるけど周りの人は普通だ。
PKというと悪いイメージの方が強いんだよね。
言ってることは本当に思えるけど…。
「何でそんな事してるんですか?」
「決闘は楽しい。これでも色々ゲームをやってきた。だがな!殺気なんかはこのゲームでしか味わったことがねぇ!現実じゃ本気の殺し合いなんて犯罪だが、ゲームなら…わかるだろ?」
「いえ、全然わかりません。それにゲームでも犯罪ですよね?」
「あー、はいはい。真面目ちゃんだな、まったく…。それより俺達はここにいても良いのか?」
そう言うとリーダーの人は周りを見渡す。
妖精や蜂達が警戒してることを言ってるのだろう。
正直言ってどう対応して良いか迷う。
「あ、あのね。このお兄さん、ミナのこと助けてくれたことがあるの」
私が迷っているとミナちゃんが声を上げた。
それに真っ先に反応したのはリーダーの男だ。
「あぁ?助けただぁ?」
「あー!あの子、ほらこの前草原で助けた子っすよ」
「んなことあったか…?」
「よく見たら初心者狩りのクズ共に襲われそうになってたちびっ子だな!」
「おーおー、言われりゃ確かにいたな。だがこんな良い装備なんかしてなかっただろ?初心者丸出しの格好だったぞ」
「兄貴、雪妖精さんと一緒にいるって事はチームに入ったんだと思うよ」
私達を無視して話を続ける5人組。
ミナちゃんはオロオロしながらも私の側に来た。
「ユキお姉さん、何とかならないかな?」
不安そうに私を見上げるミナちゃんの様子を見るに助けられたことは本当だろう。
初心者狩りのクズ共って仲間の一人が言ってる事から、PKに当たる行為をしてるけど初心者を襲ったりする人物ではないんだろう。
と言うかミナちゃん、私達に会う前にも襲われてたんだね…。
無差別にPKをするような人物なら周りの4人に嫌われていそう。
でもメンバーは皆兄貴と呼び慕っているように見える。
んー。
「居ても良いですよ。その代わりここでは決闘以外の戦闘はしないでください」
「おぅ。だがモンスター共が襲ってきたら戦うぞ?」
「その時はお願いします。宿泊費を取れる状況でもないですが、ここにいる子達の食事の用意は手伝って貰えると助かるんでお願い出来ますか?妖精達には果実か甘味を、蜂達には肉を調理したモノを出して頂ければ嬉しいです。屋根のあるあそこは食堂になってますけど、雑魚寝で良ければ使って貰っても構いませんよ」
そう言って唯一建物が出来ている食堂を指差して言う。
「マジで良いのか?俺はPKしたことある人間だぞ」
「ミナちゃんや一緒にいる人達の話を聞いて決めました。代表は私なので、問題ないよね?」
私が妖精と蜂達の方を見て尋ねる。
「ユキ様が言うのなら…」
「ウマイ ニクヲ キタイ スル」
妖精達の一部はまだちょっと警戒しているようでチラチラと見ているけど片付けに戻っていく。
日が傾いてるので今日の作業は中断して、私と帰る妖精達もいる。
蜂達は武器を下ろし防壁に上がり見張りをするモノと休憩のため仮眠をするモノに別れる。
基本的にはガードは休んでいて誰かが来たら対応、スレイブワスプ達が見張りをする事になったみたい。
「あー、肉か。ちょうど飯時だな。よし、任せたぞ!」
リーダーに言われて1人が苦笑しながら私の方へ来た。
火を使って良い場所を聞かれたので、できたばかりで扉はない食堂に案内する。
「ほー。ここはもう使えそうじゃねぇか」
リーダが建物の中に入って言うと他のメンバーも入って見渡す。
元々は調理場として作られた建物だけど、食べる所を確保して食堂の様な感じにしたので広めだ。
5人組と片付けを終えたボルグさんとミナちゃん、妖精達とガードが入っても全然余裕がある。
イスとテーブルは幾つか作ってあったので思い思いの席に座っていく。
料理を言われた1人とボルグさんが調理場に立った。
「雪妖精さん。シンクなんだろうけど…、排水溝がないのに水使って良いの?溢れちゃうよ?」
料理をする為に台所に立った人の第一声がそれだった。
私は慌てて向かうと、ボルグさんも確認して失敗したーみたいな額に手を当てるポーズをしている。
「そういえば忘れてました…。すみません、ちょっと急いで作るので適当な容器に溜めて使って貰えますか?」
「りょーかい。それにしても妖精さんはしっかりしてるように見えるけど、うっかりミスすることあるんだね」
クスッと笑いながらそんな事を言われた。
「わりと多いのでメンバーにはよく注意されます…」
素材のこととか色々ね…。
ボルグさんはサッと紙に排水について書いていく。
拠点中央の地下に大きな処理用のタンクを作り浄化の魔道具を設置するようだ。
「浄化した水はどうするんだ…?」
気になったのか1人が近くに来てボルグさんの書いたのを覗き込んでいた。
ボルグさんが考える素振りをしていると、その人は指でタンクから外の堀へなぞる。
んん、浄化した水を堀に流すって事かな?
「ここまでは来ないとは思うが…、念のためワーム対策に堀に水を溜めておいた方が良いと思う…」
私も考えてたけど方法が浮かばなかった。
しかし今提案された方法なら使えば使った分堀に水が入る。
でもお風呂とか使うようになると溢れるんじゃなかろうか…。
その事を一応聞いてみる。
「僕達の拠点じゃないからどうでも良いし…、そこまでは知らないな…」
そう言われてしまいがっくりと肩を落とす。
そんな私の袖が引っ張られた。
「ユキ様。溢れるようなら後でタンクを追加するとか…。ぁ、循環させても……」
「それもそうだね。循環は仕組みを調べてからかなぁ…」
スイセンに言われとりあえず保留にして後で改善しようと思ってると、テーブルの方から声がかかる。
「おい、飯はまだか!?」
「もう、そんなすぐには出来ませんよ」
私達が考えている間に料理担当の人はそう言いながらもテキパキと作っていく。
「そういえば水は魔法で何とかなるんじゃないんですか?」
「なるけど…、味に雑味と言うか独特の味みたいなのがあるるんだよね。気にしない人は良いんだけど、こだわる人には気になる程度にね。その点この魔道具は良いね。純水なのか雑味がなくスッキリしてるし」
「へー、そうなんですか」
「え?雪妖精さんが作ったんだよね?」
「そうですけど、そこまで気にしたことなかったので…」
「そうなんだ…?この魔道具って買うとやっぱり高いの?」
「そうですね…」
話ながら料理をしている所を眺める。
豚肉と野菜のスープを作り終えると下味を付けてあったお肉を取り出して焼いていく。
スープが早かったのは出汁を事前に大量に作ってアイテムボックスにストックしてあるのだとか。
お肉の量が多いように見えるのは蜂達の分もあるんだろう。
全部の素材を用意させるつもりはないので手持ちのお肉や野菜を渡しておいた。
ボルグさんは私に書き込んだメモを渡すと作業台の前で準備を始める。
魔道具のコンロは幾つかあって竈はない。
しかしボルグさんの要望でホームにもあるアレが作られているのだ!
はい、石窯ですね。
ホームには調理用のオーブンと陶芸用の窯が作られてるけど、ここにあるのはオーブンだね。
慣れてないのかボルグさんが伸ばしている生地は厚さはまちまちで歪に広がっている。
イーストを使わないピザ生地だったかな。
2人が料理するのを眺めながら、開いているメニューに視線を向ける。
拠点の機能から結界の設定をしようと開いていたメニューだ。
確認をすると、どれだけ私達のホームが規格外なのか改めて実感させられた。
結界珠は名前の通り結界を発生させるアイテムだ。
自然にある魔力であるマナを吸収して蓄えており、機能を使う時は蓄えられた魔力を消費する。
私達が街と呼ぶ場所にマナが多いかというと実際はそうでもないらしい。
それなのに多くの魔道具が利用されかなり広範囲の結界が展開されているのはきちんとした理由があった。
何でも魔力を生み出す装置があるのだそうだ。
大型の魔道具でもあるそれは稼働させると発電機で電気を発生させるように魔力を生み出すのだそうだ。
どういう理屈かは掲示板に考察が書かれていたのでチラッと見たけどさっぱりわからなかったのですぐ閉じた。
その生み出された魔力は領主であるクリストファー様が管理している結界珠に蓄積され街で使用されてるという。
余剰魔力が街にある他の結界珠に蓄積されてるんじゃないかとの予想だ。
私達のホームではサクヤがマナを生み出しそれを利用している。
ここはどうだろうか。
マナが全くないわけじゃない。
けど、やっぱり少ないのだ。
気になって管理権限で出来る事を調べてみるとあるモノに気づいた。
設置出来る植物などに一部マナを生み出す性質を持ったモノがあった。
荒地のマナが少ないのはマナを生み出す性質のモノが少ないのだろうか。
設置で消費する魔力量は多く、どれくらいの量生み出すのかもわからないので試しに使ってみるには不安がある。
さて、確認すると今結界珠の魔力使用率は43%…。
そのうち40%は結界で残りの3%を稼働させている魔道具で使ってるみたいだ。
現在魔力を使用している魔道具は主に灯りと水で、火は魔石も使っているので消費はそこまで多くはないはず。
現状の魔力使用量を見ると少し嫌な予感がするけど、それは今は考えない事にしよう。
ボルグさんがさっき書いてくれた図を参考にして結界を指定していく。
結界珠の機能の一つに魔力を使用して部屋などを作る事が出来るが今回もそれは利用しない。
試しに選択したら使用する魔力量が多くて、ここだとマイナスになってしまうからだ。
なので、ホームで部屋を作った時と同じように結界によるマーキングで下水道と浄化槽の位置を決めていく。
ホームなら魔力消費して作っても良いのかなって思ったけど、このやり方手間はかかるけど鉱石や魔水晶などの素材集めにもなるからなぁ。
そんな事を考えながら結界で区切った所をアイテムボックスにしまっていく。
石にしてある部分を収納してどかし土の部分を収納していくが、アイテム欄の数字が変化していないのに気づいた。
気になって確認すると土は個数ではなく1つの大きな塊として保存されているようで、アイテムの備考欄に大きさが書いてあった。
それが土を入れる度に大きくなっているのだ。
これって取り出した時に大変な事になるんじゃないかな?
そう思いはするモノの面倒なのでどんどんアイテムボックスに入れていく。
一定の大きさになったからか、次のアイテム枠に荒地の土が表示された。
ちなみにホームで保存した時は土を固めて入れていたから表示が違うみたい。
土の表示が全部で6つになる頃、調理場から浄化槽に繋がる下水道と浄化槽予定の空間は確保した。
浄化の魔道具も位置は仮だけど設置して稼働させてみる。
うわ、一気に消費魔力が10%ぐらい増えた。
指定した所に結界を貼っていた時は一時的に魔力消費が増えたけど消したら元に戻った。
うーん、懸念していた事が現実になりそうな気がするけど、気づかなかった事にしようと思う。
掘ってきた通路を戻ると料理もできたみたいでテーブルへ運んでいる所だった。
シンクで水浴びをして土埃を落としタオルで拭いてテーブルへ向かう。
妖精達にはクッキーとカットフルーツ、蜂達には味付けをした肉を焼いたモノが用意されていた。
ガードが他の蜂に配ってくれるようで大皿数枚に乗ったお肉を持って出ていった。
今休んでいる蜂へは起きてから渡してくれるそうだ。
妖精達は片付けが終わったのか集まっており、テーブルの1つで分け合って食べ始めている。
お客さんである5人と私達3人は2つのテーブルをくっつけて大皿に盛られた料理を囲む。
「「「「「「「いただきます」」」」」」」
挨拶をすると各々食べたい物を取り皿に取っていく。
私はスープだけ受け取って手持ちのパンを取り出し口にする。
かなりの量がテーブルの上に乗っていたけど、うちの2人とリーダーの方が凄い勢いで食べていく。
他の4人は味わって自分のペースで食べている。
「「「「ご馳走様でした」」」」「「ご馳走様です」」「ふー。食った、食った。ごちそーさん」
食事が終わって各々挨拶した所で5人に声をかける。
「ところで、ここの拠点を利用するのは構わないんですが…。今更だけど自己紹介しておきませんか?」
「んあ?そういや名乗ってなかったか。俺はキバだ。他の連中には戦闘狂なんて呼ばれてる。よろしくな」
リーダーの男性、キバさんは物騒な二つ名でした。
話聞いてた感じ戦闘と言うより殺し合いを楽しんでるみたいだったから失礼だけどもっと物騒でもいい気はする。
私ではちょっと思いつかないけどね。
ちなみに背が高く格好はトゲトゲが沢山付いた黒い全身鎧で、外にいる時は身の丈程の大剣を背負っていた。
「料理を担当してるカノンです。兄貴が満足するまでお世話になると思います」
そう言ってお辞儀をしたのは髪を後ろで一纏めにしている魔法使いっぽいローブ姿の細身の方。
話し方や仕草から多分女性じゃないかと思うんだけど…。
キバさんが他の人と同じように肩を組んだりしてるから違うのかなっと思ってしまう。
兄貴って呼んでるからもしかしたホントの兄妹なのかも?
実際のとこはわかんないね。
「オレっちは闇ナベっす。名前はナベとでも呼んで欲しいっす。斥候で情報収集がメインっす」
5人の中では1番小柄な男性でフード付きの膝下まで隠れる黒っぽいコートを着ている。
犬っぽい耳があるから獣人なんだと思う。
でも一番気になるのは何でそんな名前にしたのかだけど…。
聞く勇気は無いなぁ。
「俺は武器や防具の装備を作ってるコーテツだ。最近は街で鍛冶場の施設を使わせて貰えないから、作ってるのは布や革の装備が多いのが難点だな!」
ガッハッハっと笑いながらそう言った男性はぱっと見で種族はわからないが、ここにいる人の中で1番背が高くムキムキの筋肉でタンクトップにハーフパンツだ。
こんな格好で鍛冶をしたら火傷するんじゃないかと思う。
流石に着替えると思うけどね。
外にいた時は大きなリュックサックを背負って、色んな工具類が腰やリュックにぶら下がっていた。
今はアイテムボックスにしまっているのかそれらは見当たらない。
「僕は薬品類の製造をしている伊織だ…。調理場で調合をしても良いだろうか…?」
猫背でハッキリとした背丈はわからないけど長身だと思う。
黒髪で着ているのが和服だけど、何となくその和服は見覚えがある気がする。
もしかしたらスノウさんの作った服なのかも。
調合に関しては爆発とかするような危険なモノでなければ、と許可をしておいた。
私達の方も自己紹介を終えると、暗くなってきてるしそろそろ戻っておいた方が良い時間だ。
ボルグさんや一部の妖精達は残るとして。
「ミナちゃんはどうする?」
「ミナも今日はここにお泊まりしていい?」
「うん、いいよ。ボルグさん、ミナちゃんの事お願いしますね」
残るというミナちゃんの事をお願いすると、頷きサムズアップをしてくれる。
多分これで大丈夫だろう。
私はキバさん達に挨拶をして、残る妖精や蜂達にも声をかける。
一通り挨拶を済ませたら、スイセンとツクシを含む妖精達を連れて夜の森へ。
蜘蛛の巣対策に氷像を先行させて進んでいく。
道はマップを開けばわかるけど周りの妖精達が引っ張って教えてくれる。
運が良いのか襲われるような事はなくホームに辿り着くと妖精達は私に挨拶をして飛んでいった。
私はちょっと頼みたい事があったのでエミリーを探す。
探していた相手は帰ってきた事を知ったからかこちらへ飛んで来ていた。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
「ただいま。丁度探してたんだよ」
「なんなりとお申し付けください」
エミリーは私の用事があるとわかると、嬉しそうに微笑んでお辞儀をする。
頼みたかったのは調べておいて欲しい植物があるからだ。
結界珠を調べていて知ったマナを生み出す植物だ。
作っている拠点で栽培出来そうなのがホームにないか気になったんだよね。
理由も伝えてお願いしておく。
「明日にはお伝え出来ると思います」
「ほんと?お願いするね」
「お任せください」
エミリーは私にお辞儀をすると手の空いている妖精達の所へ向かったみたい。
私は洞に戻りサクヤに挨拶をすると寝床に横になりログアウトした。




