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 今日で母さんと那月の連休が終わる。

 私はまだしばらく予定は無さそう。

 仕事始まってすぐにどうなるかは決まらないと思うしね。

 一応社長に聞いた話だと続けて欲しいと言ってくれてる人達がいるそうだけど、残るにしても部署の異動は確実との事だ。

 問題は通勤だけど、これは目処も立ってない。

 会社の答えを聞いてどうするか決めないとね。

 退職も考えてはいるんだよね。

 母さんとも話したけど今のままだと私が不自由だからと引っ越しも考えてくれてるみたい。

 せめてエレベーターがあればちょっとは違ったんだろうけどね。


 さて、今は一人でお茶をしている。

 と言っても作り置きしてるお茶だけどね。

 メールが来るまではのんびりの予定だ。

 母さんはスノウさんと作業があると言って朝食が終わったらすぐにログインしていた。

 那月は…。


「ネルア島が私を呼んでるんだよ!」


「はいはい。なっちゃんを呼んでるのは部活の仲間だよ」


「私がいなくたって大丈夫なはずだよ!?」


「大丈夫じゃないよ。むしろゲームばっかりしてたなっちゃんのために部長が計画たててくれたんだから」


「お姉ちゃん助けて!」


「二人とも気をつけてねー」


「はーい。なっちゃん借りていきますね」「お姉ちゃん!?行きたくないー」


 私はそんなやり取りを迎えに来てくれた穂風ちゃんとして、引き摺られて行く那月を見送った。

 何の用かはわからないけど、出て行ったのは朝の7時過ぎだからお店もほとんど開いてないよね。

 今出てって何するんだろう。

 部活の仲間って言ってたし練習かな?

 その時はまだゲームをやってなかった母さんが那月を呆れた様子で見てたかな。

 そんな事があったけど今は9時前になっている。

 テレビを眺めながらお茶を飲んでるだけど最近はいつも誰かいてくれたから一人でこうしてるのは久しぶりだ。

 ぼーっとしていると携帯が鳴る。

 確認すると待ってたメールが来た。

 私はゲームにログインするために片付けて部屋に戻る。

 部屋に戻るとベッドに移動して機器を付けてゲームを立ち上げた。



 ログインして目を開く。

 相変わらずだけど氷で囲った中に寝床を作って寝ている。

 寝ている私を覗き込んでいたであろうシュティと目が合った。


「妖精さんおはようございます」


「おはよう。何で見てるの?」


「もちろん可愛かったので」


 そう言うとシュティは立ち上がり離れてくれる。

 今に始まった事ではないので何も言わず、氷像を浮かせて飛び上がる。

 シュティにログアウトの状態を映像で撮ってもらって見たけどスノードームのような演出や他のパターンも綺麗だった。

 流石に以前のルナみたいなのはどうかと思うけどね。

 最近はちょっと考えがあって、氷像は両手に槍を持った蜂を作っている。

 武器を持ってるイメージはメギーアー女王様だけど、見た目はスピアハニービーだ。

 流石に人型の氷像を浮かせておくのは抵抗があるんだよね。

 この前魔術師さん達に協力して貰って調べたけど氷像の温度を下げてくれる範囲はそこまで広くなかった。

 私より小さい氷像でカバーできる範囲が広ければ流石にびっくりだけどね。

 とはいえ30㎝ぐらいなら離れてても大丈夫なようだったので十分と言っていいはず。

 氷像を増やすと範囲が狭くなったので効果が落ちるようだった。


「さて、社交儀礼は私もそこまで詳しいわけではありませんけど…」


「礼儀作法は私より詳しいと思うの」


「確かに習ってはいましたけど…、うろ覚えですし私もそこまで完璧ではありませんよ?」


 再度確認してくるシュティにそれでもとお願いをする。

 知り合いで一番知ってそうだったのがシュティぐらいしか浮かばなかったからね。

 付け焼き刃になる気はするけど…、それでもちょっとは良くしておきたいと思ったのだ。

 お願いをすると溜息をついて了承してくれた。

 動画撮っても良いよって言うとハッとした表情で任せてくださいと言われた。

 とりあえず丁度昼食時なのもあり食事をするために広間に移動する。

 私の食事はこの前みたいに妖精達が用意してくれるようだ。

 シュティが買ってあった料理を並べていく。


「アイテムボックスって便利ですよね。温かいまま保存できてますし」


「だね-。あ、飲み物に氷いる?」


「お願いします。現実にあれば…、と時々思います」


 コップに水袋に入れてあった果実水を入れたのを見て、確認をしてから氷を入れる。


「そうだね。便利だけどあったらあったで大変だと思うよ」


「そうでしょうか?」


「うん、誰が何を持ってるかわからなくなるからね。持ち物検査とかできなくなりそうだもん。泥棒とかも簡単にできちゃうね」


「確かにそうですね…。危険物を所持していてもわからなくなるのは防犯上よろしくないですね」


「要は使い方次第なんだろうけどね」


 そんな話をしていると妖精が食事を運んできてくれた。

 妖精が食べやすいように作ってあるため、普段と同じように食べれるのはやっぱり嬉しい。

 作ってるのも妖精達だから食べたら飛べなくなる食材は理解してるみたい。

 なのでお肉は使われてないけどお魚は使われている。

 ダメな線引きがよくわからないけど今は美味しければ良いかなと思う。

 ちなみに卵は大丈夫だった。

 ホントによくわかんない。

 食事を済ませると休憩も兼ねて話をする。


「そういえば妖精さんはパーティー中も飛んでて大丈夫なんですか?」


「クリストファー様に会った時に相手の顔ぐらいの高さでって言ってたから大丈夫だと思うよ」


「なら安心ですね。恰好はどうするんですか?」


「それはお年玉で買ったのを着るから大丈夫!」


「あぁ、言ってたのですね。今から見るのが楽しみです」


 それからしばらく話をした後で私はシュティに教えて貰い始める。

 想像してたよりも厳しくて心が挫けそうになった。

 その度に叱咤激励され私は練習していった。

 ちなみにテーブルマナーはどうするか聞かれたけど今回はなしにして貰った。

 後で思ったんだけど途中から先生と呼ばされてたのに意味はあったのだろうか…。

 いや、確かに教えて貰ってるから先生であってるのかもしれない。

 けど年下なのだ。

 普段の言動からそうは見えないけど、知ってる私からするとちょっと恥ずかしくなってくるね。

 夕方近くまで練習をしてようやく及第点が貰えた。

 とはいえゲーム内で明日にもう一度確認してくれるそうだ。

 パーティーもゲーム内の日付で明日なので、ちょっと早めにログインして行く前に確認して貰おうと思ってる。


「中々様になっておったな」


 拍手しながら近付いてきた人物に視線を向ける。

 メギーアー女王様だ。


「珍しいですね。こんな時間に」


 メニューで時間を見ると今はもう夕方だ。

 普段女王様は日の出ているうちにしか来た事がなかったはず。


「うむ、ユキのおかげで道ができたからか異人が沢山来ておってな。8時から17時までは相手をしてやったわ」


 時間を見ると17時半を過ぎていた。


「時間を決めたんですね」


「妾達にも生活があるからな、昼休憩も挟んでおるから朝と昼4時間ずつ相手をしてやる事にしたのじゃ」


「夜はやらないのですか?」


「今は未定じゃな。正直ひっきりなしで面倒でな。ただ時間を決めたら、きっちり守っておるのは助かっておる」


 情報を見て物珍しさに人が押し寄せてるんだと思う。

 それでも時間を決めたら守るというのは国民性なのかな。

 とはいえ女王様が直接相手をする事ってほとんどないはずだけど…。

 そう思って聞いてみると。


「初めて来たヤツらはまず妾と戦わせろと言ってくるんじゃ。相手にならんと言うと癇癪を起こすのもいたのでな…」


 あぁ…。

 そう言う人は確かにいそうだなと思う。

 女王様の態度も偉そう…、実際偉いんだけども言い方もあってムキになる人は出そうだ。


「そういう人はどうしたんです?」


「ちょっと挑発してスレイブワスプと戦わせたら負けておったな」


 私が聞くと女王様は悪そうな顔をして答えてくれた。


「最近はガードとやってばかりでしたが、スレイブワスプも強いですからね」


「一対一ならお主と大剣使いの男が良い勝負だろうな」


「そうですね」


 大剣使いの男って言うとガイさんかな。

 一対一だとやっぱり近接じゃないと厳しいのかな。

 ぁ、シュティやガイさんと同じぐらいだと遠距離組だとやられちゃうか。

 私ならどうだろうか。

 そういえば…。


「ルナはどうなんですか?」


「弱くはないのだが…、一人になると何故か力が発揮できておらぬようじゃな」


「そうですね。それ以外でも大事なところで時々ちょっとしたミスをしてる気はします。緊張に弱いのかもしれません」


 そう言われて考えて浮かんだのは女王様との訓練の時かな。

 それを聞くと。


「あぁ…、あれは酷かったの」


「普段はあそこまで酷いのはないですね」


 あれはやっぱり酷かったんだね。


「ただユキよ」


「何ですか?」


「お主が応援したときは普段以上に力が発揮できておった気はするな」


 それって初めて女王様のところに行ったときの事かな…。

 ルナの調子が私次第で変わるとか?

 うーん、もしそうならお守りとか上げたら変わったりして?

 アクセサリーとかの方が良いかな?


「そういえばお主等は何故礼儀作法の練習などしておったんじゃ?」


「明日領主様からパーティーに誘われてるんですよ」


「ほう?」


 何故か女王様が楽しそうにしている。


「連れて行きませんよ?」


「む、何故じゃ?」


「絶対問題起こりそうじゃないですか…」


「それはそうじゃな」


「それに領主様の奥方様にお目にかかる予定なのですが妊婦さんらしいので」


「なるほどのう。妾を見て怖がらせてはまずいか」


 私の言い分に納得したのか肩をすくめて同意した。


「逆にメギーアー女王様は珍しい時間にどうしたんですか?」


「うむ、この前言っておった服がどうもできたそうでな」


「ずいぶん早かったですね。じゃあ2人を呼んできますよ」


 私がそういった所で丁度後ろから声がかかる。


「すみません、遅くなりましたわ」


「その代わり良いモノになったとは思うわ。最終調整をするから女王様はこちらへ」


「わかった」


 シキ姉さんは女王様を案内してまた奥の部屋へ。

 残ったスノウさんはふらつきながらイスに座った。


「大丈夫?」


「はい。ちょっと夢中になりすぎてしまって、ずっとゲームをしていたので…」


「スノウさん後はシキさんに任せて休んでください。ステータス異常でてますよね?」


 シュティがそう言うとスノウさんは素直にコクンと頷いた。

 スノウさんは眠そうに目を擦りながら欠伸をして、立ち上がると部屋のある方へ歩いて行った。

 私はステータス異常が何のことかわからなくてシュティの方を見る。


「このゲームのステータス異常は毒等のゲームで定番の意外にも沢山あるんです。その中でもリアルなのが睡眠不足や疲労などのステータス異常があるんです」


「それが付くとどうなるの?」


「睡眠不足なら頭がボーッとするだけじゃなくて眩暈や吐き気なども感じる場合がありますね。酷くなると戦闘中でも意識が途切れたりするので危険ですね」


「それは…、確かに危ないね」


「疲労の場合は動きに影響が出ますね。製作とかだと品質が落ちる原因にもなるみたいです。酷くなると回復量が落ちるそうです。ポーションとかのアイテムだけじゃなくて魔法の回復量も落ちるみたいです」


「疲労は魔法で治せないの?」


「睡眠不足も疲労も魔法では治らないみたいですね。なのである程度は良いですが無理しないで寝ておく方が良いです」


「そうなんだね。休憩をしっかり取って遊べって事なのかもね」


「かもしれませんね」


 話をしているとシキ姉さんと一緒に着飾ったメギーアー女王様が戻ってきた。


「どうじゃ?」


 女王様が着てきたドレスは黒地に黄色い花のモチーフがあしらわれている。

 オフショルダーで背中が出るデザインなのは羽の事があるからだと思う。

 背中の部分は編み上げになっているみたいで、中腕を通している袖はレースになって少し肌が透けて見えている。

 スカートは私と同じフィッシュテールになってるけど腹部分にそって膨らんでいる感じ。

 黒髪の所に黄色いフラワーコサージュを付けている。


「すっごく綺麗です!」「似合ってます」


「当然じゃな」


「難点としては1人じゃやっぱり着れるデザインじゃない事かしらね」


「それは仕方あるまい。じゃが妾は満足しておる」


「そう言って貰えると嬉しいしスノウちゃんも喜ぶと思うわ。あら、そういえばスノウちゃんは?」


 シキ姉さんは探すようにキョロキョロと周りを見る。


「すみません。かなり無理してるようだったので、戻って寝るように言いました」


「そうなのね。遅くまでやってて朝も早くに再開したみたいで、あまり寝てないみたいだったから仕方ないわね」


「無理をさせたか。それは申し訳なかったな」


「私達は楽しかったので大丈夫ですよ。それより外で撮らせて貰って良いですか?」


「うむ、構わん。スノウにも見せるのであろう?」


「えぇ、ユキにシュティナちゃん外に行ってくるわね」


 二人は私達に声をかけてから、話しながら外に向かって歩いて行く。

 シキ姉さんの手にはコートのような物があったけどあれも女王様用なんだろう。

 シュティも気づいてたみたいで話題にしてきた。


「手に持っているコートも良さそうでしたね」


「表と裏で色が違ったね。表が暗めの黄色で裏地が黒かな?」


「袖口と首の所のファーが温かそうな感じでした」


「コート自体が温かいこの島でいるのかわからないけどね」


「薄手に見えましたが、確かにファーはなくても良かったかもですね」


「でもファーがあるとエレガントなイメージはあるかな。それよりもフードがあるように見えたんだけど見間違いかな」


「どうなんでしょう。後でシキさんに聞いてみては?」


「そうだね。そうしてみるよ」


 のんびりシュティと2人で話ながら過ごした。

 シュティが帰ってからゆっくり話す機会はなかったからか話が弾んだ。

 知り合いがログインしたそうで用事があるそうでシュティは街へ向かった。

 私はサロユさんに借りた本を読みながら過ごし、戻ってきたシキ姉さんと一緒にログアウトした。

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