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 私は建物の縁に座って下を眺める。

 下ではルナ達近接の4人が騎士の方達に混じって訓練をしている。

 午前中と違うのは複数対複数や一対複数の戦闘もしている事だろうか。

 騎士団の団長さんや近衛騎士の団長さんが一人で数人相手してるのは凄いと思う。

 けどさ。

 何でシュティも一人で複数相手してるのかな!?

 しかも不利なんじゃと思ってたのに優勢…。

 対人が得意て言うのは聞いて知ってたつもりだったけどホント凄かったんだなぁ…。

 そんな事を思いながら見ていると、ある事に気づいてしまった。

 下で4人は真面目に訓練してる。

 プリメラさん達遠距離訓練場に残ってる3人も同じだろう。

 ラギさんは光葉さんを見張りながらも頑張ってるはず。

 アエローちゃんは相談して何かを考えてたのはきっと新しい魔法とか戦術かもしれない。

 シキ姉さんとスノウさんだって自分の欲望のためにここに来ているから夢中になってると思う。

 今私はどうだろうか。


「や、やる事やったしちょっと休憩してるだけだよ。サボってるわけじゃないんだよ」


 ついそう口に出していた。

 人もいないし大丈夫。


「そうなのか?休憩所にもいなかったので探してみたら、騎士達が滅多に来ない屋上にいたのでサボっているのかと思ったのだが」


 後ろから私の言葉に返事をするように声が聞こえた。

 恐る恐る振り向くと、騎士と違い軍服と言うより礼服の様な恰好の身なりが良い男性がにいた。

 髪は金髪で瞳は綺麗な青と物語では王子様と言われてもおかしくないような。


「あぁ、いきなりで失礼した。私はクリストファー・ネレイアだ。ネルア島の領主をしている」


 ボーっと見ていた私は自己紹介をされて固まる。

 今聞いた名前は招待状にあった名前なのだ。


「わ、私は雪月風花というチームのマスターでユキと言います。失礼は承知で伺いたいのですが私は飛んでいた方が良いのでしょうか?」


 いきなりの遭遇で混乱していた私は地面に立って頭を下げそんな事を聞いていた。

 変な事聞いちゃったかもと思いヒヤヒヤしながら上を見上げると考え込んでいるようだった。


「畏まらなくて良い楽にしてくれ。私も妖精に会ったのは初めてで、そんな事は考えた事がなかったな。ふむ、話をするときは相手の目を見ると言うから相手の顔の位置に近い高さが良いのではないか?」


「は、はい。それでは失礼します」


 言われた通り顔ぐらいの高さまで浮かび上がる。

 緊張してぎこちなくなっているのは自覚しながらも何ともできそうにない。

 私を見ていた青の瞳が逸れる。


「すまないな。まさかそこまで緊張されるとは思ってなかったのだ。アベルのヤツは初めて会った時近衛の者達に威圧されながらも真っ直ぐ私を見て、仕えさせてくださいと頭を下げてきたのでな。他の聖騎士団の者達も緊張した様子もなく接してくれていたんだ。だから異人達は皆そうなのかと思ってしまってな…」


「い、いえ。私こそすみません」


「ふっ、ユキ嬢が謝る事ではないだろう。それよりも私が島を出ている間に色々と島のために動いてくれたそうだな」


 そう言って遠くを見ていたクリストファー様は私の方を向いた。

 そして。


「感謝する」


 私に向かって頭を下げた。


「そ、そんなの…。私が知ったのはホントに偶然で…。それよりも異人だけじゃなくて住人にも広めようとしてくれている人達の方がよっぽど貢献しているかと」


 手を振り焦ってそう言うと、顔を上げ表情を和らげて私を見ていた。


「だが切っ掛けをくれた事には変わりないさ。フリハウヤから聞いたかもしれないが、王国で物資を買い付けて戻ってくるはずだったのが上手くいかなくてな。頭を抱えて戻ってきたら、問題が解決したと報告を受けて耳を疑ったよ」


 クリストファー様はそう言いながら訓練場が見れる位置に移動する。

 訓練の様子を見てなのか嬉しそうに見えた。


「そういえば、招待状は迷惑ではなかったか?」


「えっと、それは…」


「あぁ、やはりそうか。先ほどの反応を見てしまったらな」


「すみません。私達異人が暮らしているところでは貴族階級が今はないのです」


「ほう?それは興味深いな。国はどのように運営されているのだ。帝国のように独裁国家なのだろうか?」


「私はあまり詳しく説明できるわけではありませんが…。間接民主主義と言われてます」


 私の話を聞きながら、もっと詳しく知りたそうにしているように思えた。


「ほう、細かく聞いてみたいな。詳しく知るものがいないかアベルに聞いてみるとしよう。やはり異人と話していると知らぬ事が多くて楽しいな」


 振り返っていたクリストファー様はネットにもたれながら私の方を楽しそうに見ていた。


「話を戻すがやはり参加は難しいだろうか?」


「えっと…。せっかく招待状を頂きましたし、参加させて頂こうと考えています」


「そうか、それは良かった。実を言うと妻がユキ嬢に会いたがっていてな」


「奥方様ですか?」


「あぁ、妻は長旅ができる状態じゃなかったから島に残っていたのだが…。貴女の話を時々聞いていたようでな。帰ってきてからは呼んで欲しい、会ってみたいとせがまれていたんだよ」


 何で私なのかわからないけど…。

 情報源はもしかしてネルア聖騎士団の方なのかな?

 それよりも…。


「長旅ができる状態じゃないというのは怪我や病気でしょうか?」


 私がそう真剣な表情で聞くと、顔を赤くし逸らす。


「いや、身籠もったのでな。もし何かあったらと思うと不安で…な」


 そう言われて一瞬何のことかと考えてしまう。

 けど、すぐに思い当たり安心した。


「そうだったのですね。おめでとうございます!」


「あぁ、ありがとう。それでどうだろうか、会ってはくれないだろうか?」


「良いのでしょうか…?」


「こちらが頼んでいるのだがな。今回の訓練の事は何か聞いているか?」


 そう言われて思ったのは、昼食時にアベルさんが言ってた事かな?


「ご機嫌取りですか…?」


「そうだな。騎士団とも縁があれば良い影響があるのではと思いがあった。だが実際はここなら視察という名目でユキ嬢に会う機会が作れると考えたからだな。騎士達には秘密だがね」


 そう最後に笑いながら言う。

 事前に会うって言うのは…。


「私がどんな人物か実際に会って確認しておきたかった?」


「あぁ、気を悪くしたならすまない。しかし…」


「奥方様に会わせる相手、身籠もってらっしゃるなら用心するのは当然かと」


「そう言ってくれると助かる。実際に会ってこうして話してみたが、ユキ嬢なら安心して会わせる事ができる」


「そういう事でしたら是非…」


「ありがとう」


 話してみてわかったのはクリストファー様は奥さん想いの良い旦那さんなのだろう。

 領地の事も考えていらっしゃるようだし悪い人にはとうてい思えなかった。


「そういえば雪月風花のホームの事だが、私の力が必要であれば言うといい」


「その時はお願いします。けど理由をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


 世界樹の事だろうというのがすぐに理解できた。

 なので気になっていた事を聞いておこうと思った。


「何のかな?」


「何故隠してくださるのでしょうか?」


 フリハウヤさんの意見は聞いていたけどクリストファー様からも聞いてみたいと思ったのだ。


「ふむ、聞いていると思うが私はこの島をバカンスに来る場所にしたいと考えている。異人達のおかげで開拓は進んでいるがまだまだ危険も多い。それに異人達の話を聞いて、休めるだけでなく楽しめるようにもしたいと思った。それなのに戦場になどしたくないだろう?」


 真剣な表情でそう言ってきた。

 本気でリゾート地の様にしたいんだと感じた。


「答えてくださりありがとうございました」


「あぁ。さて私はそろそろ戻らねばな。視察と言いながらここでサボっているのがバレたら騎士団長が何を言ってくるか…」


 面白そうにそう笑いながら言うと私の方を見てくる。

 私もサボりと怒られるのはイヤだ。


「わ、私も戻ります」


「そうか。では戻るまでは話し相手をして貰おうか」


 そう言われてコクコクと頷きついて行く。

 私から見た騎士達や施設について意見が欲しいと言われて答えながら移動していく。

 一通り施設をまた見て回り最後は研究室まで送って頂いて別れた。

 緊張はしていたが説明してくださる時や私の話を聞いているときは真剣な表情をしていらした。

 なのでは私も気を引き締めていたので、研究所に入ると力が抜けてフラフラと移動する。

 戻ってきた私の様子を見て心配してくれた魔術師達が、何があったか聞いてきたので答えると納得された。

 それからはまた話を聞いたり聞かれたりして過ごした。

 訓練終了の時間になって私達は合流するとお世話になった方達に挨拶をして兵営を後にした。

 それぞれ何かしらの収穫があったようで楽しそうに話をしている。

 私はそれを後ろから眺めていた。


「お姉ちゃんどうかしたの?」


 そんな様子を心配したのかルナが隣を歩いて聞いてくる。


「ううん。訓練に行って良かったなって思って」


「何かあったんだ?」


「うん、クリストファー様に会ったよ。想像と違って凄く良い人だったから安心しちゃった」


 -えっ?-

 -はっ?-


 私がそう言った瞬間、楽しそうに話していた皆が一斉に振り向いた。


「お姉ちゃん待って。それってパーティーに招待してくれた公爵様だよね!?」


「流石妖精さんですね」


「なぁ、公爵って確か王族の可能性があるだろ?大丈夫なんだよな?」


「ユキちゃんイケメンだった?背丈は?性格は?はっ、写真は!?」


「ユキさん何か言われた事とかないか?」


 尊敬の眼差しを向けてくるスノウさん、何かを考えてるリグさん、光葉さんと闇菜さんは驚いてた。

 アエローちゃんはいつものごとく面白そうにこちらを見ていた。

 ボルグさんは…うん、普段通りの様だ。

 急に立ち止まってしまった私達は周りの迷惑になっている。


「気になる話は後にして、夕食はどこかのお店に寄っていかない?」


 手を叩いて注意を引いたシキ姉さんがそんな事を言う。


「ならあそこで良いんじゃないかな」


「泊まるわけでもないのに良いの?」


「多分大丈夫だよ」


 ルナが言うあそこは私達が泊まってた宿の事だろう。

 今でも時々顔を出しているもんね。

 アエローちゃんは気になったことを聞いているが歓迎されると思う。


「あぁ、あそこなら飯もうめぇし酒もあるな」


「そうね。それに女将さんも良い人だものね」


「俺はちょっと肉を取りに行ってくる」


「お肉は私が取りに行きますよ。ファエリを誘ってくるついでですが」


「そうか、頼む」


 ラギさんとプリメラさんも良さそうだ。

 ガイさんはおかずを増やすためにお肉を取りに行こうとするが、ホームに用事のあるシュティが代わりにお肉を取りに行くみたい。

 行った事ないメンバーは良くわかって無さそうなので。


「私達が以前お世話になってた宿でご飯を頂こうと思ってるけど良いかな?」


 そう聞くと頷いてくれたのでお店に向かう。

 お店に着くと女将さんが私達を見て予想通り歓迎してくれた。

 宿のお客さんも丁度食事時だったけど、気の良い人達で私達に席を譲ってくれた。

 お礼にお酒とおかずを奢ると喜ばれた。

 私達が席に着いた時に丁度シュティが到着した。


「お待たせしました」「へい、お待ちー」


「ファエリ、それは使いどころが違うよ」


「そうなの?」


「うん。それはね……」


 シュティは席に着くとメニューを開いた。

 ルナはファエリに説明してるけど、何であんな事教えてるんだろうか…。


「はい、お水だよ。頼む物は決まってるかい?」


 ルナとシュティ、ガイさん達が次々と注文していく。

 他のメンバーも気になるのを注文したみたい。


「後これをお願いします」


 シュティはそう言って豚鶏牛のお肉を取り出した。

 それを受け取った女将さんは嬉しそうに笑う。

 どれもそこそこの量があるからだろう。


「調理はお任せで良いのかい?」


「はい、他のお客様の分もお願いします」


「あいよ。アンタ達、雪月風花の連中の奢りでおかずが増えるよ。感謝して待ってな」


 シュティの言葉に頷いて他の客に聞かせるためか振り向き大声でそう言った。

 その後食材を持って厨房の方へ引っ込んでいった。

 一方で女将さんの言葉を聞いて、他のお客さんは大声でお礼を言ったりしつつ盛り上がっていた。

 幾つかのおつまみと飲み物が運ばれてくる。


「今日は騎士団の訓練に参加、お疲れ様でした。乾杯!」


「「「「「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」」」」」


 次々と運ばれてくる料理を食べながら、皆それぞれ今日あった事を話していくかと思ったら私の方を見ていた。

 領主であるクリストファー様と会った事が気になっているみたいだ。

 元々話すつもりだったので話していく。

 話を聞いて皆それぞれ思うところがあったようで、考えたり安堵したりしている。

 そこへ渡したお肉をつかった料理が運ばれてくる。

 すると今までの空気から一転、動いた後だしお腹が減ってたんだろう。

 我先にと料理に手を伸ばす。

 ガイさん達やルナ達前衛組ががっつく中、リグさんは他のメンバーに取り分けて渡していた。

 真っ先に渡したのは当然スノウさんだったけどね。

 私はお肉を避けてこっそりシキ姉さんの所へ行く。

 目的を察したシキ姉さんは一杯だけお酒を分けてくれた。

 飲んだ事なかったから気になってたんだよね。

 それからは成人組は飲んで歌ってとどんちゃん騒ぎ。

 他のお客さんも一緒になって騒いでた。

 騒いでない学生組やお客さんは情報交換をしているようだった。

 私はその様子をシキ姉さんやスノウさんと話しながら見ていた。

 2時間ほど経って食事は済み、騒いでたのも落ち着くと私達は帰る事に。

 女将さんに言われた金額より迷惑料として多めに渡してホームに戻って解散するのだった。

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