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いつも誤字報告ありがとうございます。
ログアウトした私達は昼食を取り終え今は休憩していた。
私は今、那月にちょっと相談していた。
ゲームのことだとやっぱり私より詳しいからね。
「えっと、普通に包丁とか使って料理する方法…?朝やってたのじゃダメなの?」
「念力でやろうと思うと大雑把にしかできなかったんだよね」
「うーん。そんな事言われてもなぁ。今の姿のまま調理とかできる身体が欲しいって事だよね?」
「そうだね」
私達がそんな反応をすると洗い物をしていた母さんが反応する。
「お人形でも作るの?」
「人形ってウッドドールみたいな感じかな?」
人形と言われて向こうで見たことがあるのを例にあげる。
「それなら作れそうだけどモノとか持てないんじゃないかなぁ」
「それもそうだね」
那月に言われて確かにと思って頷く。
「物を持つなら複雑になるけど指の関節も作れば良いじゃない」
母さんにそう簡単に言われた。
洗い物が終わったのか母さんが濡れた手をタオルで拭いている。
「ちょっと待ってなさい」
そう言って部屋に戻った母さんは戻ってきたときにある物を手に持っていた。
「はい。丁寧に扱いなさいよ」
そう言って差し出されたのは人形だった。
「この人形お姉ちゃんに似てるね」
「カスタマイズドールよ。似てるのはもちろん雪菜がモデルだもの。もちろん那月のもあるわよ」
「ふーん、これ貰って良い?」
「絶対ダメ」
「えー」
2人がそんな会話をしているのを聞き流して渡されたドールを見てみる。
関節がきちんとあるけど構造はいまいちわからない。
しばらく唸ってると母さんが球体関節人形の作り方が載っている本を持ってきてくれた。
「お母さんはこれ何に使ってるの?」
「もちろん服とか小物を試作で作ってどんな感じになるか見てみるのよ。これなら材料もそんなに要らないしね」
「なるほどねー」
「そういえば…」
母さんは何かを思い出したようでまた部屋に戻り持ってきた物を渡してくる。
受け取ったこれは…。
「あ、それお父さんが好きだったロボットのプラモデル?」
那月の言う通りで私も付き合わされて何度か一緒にアニメで見た記憶がある。
よく見るとプラモデルは関節がドールより単純な気がする。
けど動きだけなら十分そうな感じだ。
何というか球体関節よりもプラモデルの方が簡単な構造に思える。
人に近く見えるのは球体関節だと思うけどね。
関節を動かしたりしてプラモデルを触っていると。
「あ、雪菜それは持ち主もいないから壊しても大丈夫よ」
母さんの無情な発言が飛んできた。
綺麗に塗装とかしてあって捨てるのは躊躇われたそうだ。
見ているとゲームで作れるか試してみたくなってくる。
いつかの那月じゃないけどそわそわしてしまう。
「お姉ちゃん先にログインしてたら?」
「う~ん、そうしてようかな?」
そう言い終わるのとほぼ同じぐらいにインターホンが鳴る。
那月が待ちわびていたようで急いで玄関の方へ向かっていった。
「何で貴方が来たのか知らないけどお姉ちゃんは渡さないんだから!」
「ははは、今日は僕はお使いできただけだからね。彼女を誘うのは今度ゆっくりさせて貰うよ」
廊下とリビングを隔てる扉は開きっぱなしになっていて玄関で交わされている会話が聞こえてきていた。
那月が話してる相手の声は私も覚えがある相手で…。
「お邪魔するよ」
そう言ってリビングに来た相手は…。
「社長…、こんにち」「頼んでたのはそれ?お幾らだったのかしら」
私が挨拶しようとしたところで母さんが割り込んで話をする。
ひやっとするけど社長は気にした様子はなかった。
一応挨拶をしようとした私に手を上げて答えてくれた。
「えぇ、流石に大変でしたよ。あ、これ領収書です」
そう言って領収書を母さんに渡す。
それを見た母さんは鞄から封筒を取り出して社長に渡す。
「おつりは要らないわ」
「一応確認しますね。………あの、少し足りないのですが」
「あら、そうだったかしら…」
母さんは封筒の中身を確認するとやっぱり足りなかったようで。
「えーっと、これで足りるわね」
そう言って封筒にお札を足してそれを渡した。
確かにと言って受け取った社長はそれを鞄にしまい、持ってきた紙袋を母さんに渡した。
社長は用は済んだとばかりに出口へ向かって歩いて行く。
「今日の所はこれで引き上げよう。しかし紅炎の魔剣よ、次会うときは彼女をデートに誘う!覚えておきたまえ」
「ちょっと待って、何でその二つ名知ってるの!?というかその呼び方するなぁぁぁぁぁ」
「ふはははっ」
笑いながらバタンと音をたてて扉が閉じられた。
那月はβ時代の二つ名が相変わらず好きじゃないみたいだ。
それよりも私の中で社長は真面目でできる人というイメージだったけど、うちに来てわずかなやり取りで愉快な人になりかけていた。
と言うか社長もゲームやってるみたいだしいずれ向こうで会ったりするかな?
そんな事を考えていると。
「それよりも私もゲームが気になるから何すれば良いか教えてくれないかしら?紅炎の魔剣さん」
「お母さんもその呼び方しないでぇぇぇぇ」
相変わらず母さんは娘をからかって楽しんでるようだ。
私の二つ名として定着してるのは 雪妖精さん だから言われて恥ずかしいってことはないから少しホッとした。
那月のためにも早いうちに二つ名を変えてあげた方が良い気がする。
今は火属性あまり使ってないもんね。
そんな事を考えていると那月は今まで使ってた機器を持ってきて操作していた。
「何してるの?」
「今は私の情報で登録されてるから変更してるとこー」
「すぐ終わるのかしら?」
「もうちょい。……終わりっと、はいこれ」
そう言われて母さんは端末を受け取るとき気をつけていく。
那月も新しい機器を取り出して嬉しそうにつけていた。
母さんの方は初期設定からのようだった。
那月は少しすると起き上がって機器を外し始めた。
「あれ、那月はもう終わったの?」
「うん、私の個人情報で登録されてるアカウントでログインすれば完了だから早いんだよ」
「新しい機器だと何か変わるの?」
「できることがちょっと増えてるみたいだね。音楽データとか向こうに持っていって聞けるみたい。大事なのは撮った写真とかより鮮明になるって事だよ!」
「…そうなんだ」
那月の反応を見ると楽しそうだけど、機器の性能差が戦闘とかで出るわけじゃないみたい?
社長が来て忘れてたけど試したいことがあったのを思いだした。
なので早くログインしたいと思ってしまう。
「終わったわ。結構色々設定することあるのね」
そう行って機器を外していく母さん。
「ゲームはやらないの?」
「今はインストール中ね。夕食の買い出しにも行きたいからやるのは夜かしら」
そう言って母さんは起き上がると車椅子を押して移動させられる。
「アンタ達はそれまで遊んでなさい。雪菜はずっとやりたそうにしてるしね」
そう言われてそんなにわかりやすいくらい態度に出てたのかとちょっと恥ずかしくなる。
那月も新しい機器を持って嬉しそうに笑いながら付いてきていた。
ベッドに移動すると母さんは。
「じゃあ、買い物行ってくるから」
「はーい」「母さん、気をつけて」
部屋を出て準備をすると家を出て行った。
私達はログインするために機器を付けていく。
「私ちょっと追加されてるの確認してからログインするよ」
「わかった、じゃあ先にログインしてるね」
那月に返事をしてから私はゲームを立ち上げた。
ログインすると私は外へ出る。
大樹の根元にいくとそこで私と同じくらいの氷の人形を作ってみる。
まずは関節がない人形を動かせるかどうか試してみようと思った。
うーん。
やっぱりダメそうだ。
次は関節をプラモデルみたいにして…。
思ったよりも細かく作るの難しいね。
えーっと、ここはこれで動くかな?
とりあえず肩から先を作ってみた。
それを念力で操ってみる。
関節っぽくできたのは肘関節だけだけど動かそうとしてみる。
ぎこちなくではあるけど何とか動いた。
とはいえ人の可動範囲を考えると全然動かせてない。
球体関節人形の部品は再現するにはちょっと細かくてすぐには無理そう。
とりあえずプラモデルを参考にした関節で人型にしてみたけど何度か動かしてるうちに関節部分が緩くなってしまった。
動かす度に氷が擦れてダメになったみたいだった。
何度も試したけど思ったようにはいかずに失敗に終わった。
関節の問題もだけどバランスが悪いのか立たなかったのも課題かな。
よくよく考えると人形はなくても困らない気がするんだよね。
料理だってやれないわけじゃないし。
そうなると急ぐ必要もないし今後の研究テーマにしようっと。
気づいたら日が落ち始めていたのでホームの中に戻る。
ルナはログインしてるみたいだけど来なかったから別のことをしてるんだと思ってメールで先に落ちることを伝えてログアウトすることにした。




