表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/103

48

 ログアウトするといつもより圧迫感を感じる。

 それもそのはずで、いくら大きいベッドとはいえ3人で寝てれば狭くもなる。

 私が機器を外していると2人もログアウトしてきた。

 2人に挟まれて動きづらい中、穂風ちゃんの様子見ようと探す。

 先に戻ってきていたみたいで布団をたたんでいるところだった。

 私に気づくと車椅子をベッドの近くに運んでくれた。

 布団を敷くのにどかしていたミニテーブルを戻してから穂風ちゃんは床に座った。

 那月と蓮花ちゃんも機器を外し終えたところだったみたい。

 蓮花ちゃんは起き上がるとベッドの端に座った。

 私は那月に手伝って貰って車椅子に移ろうと思っていた。

 だから私もベッドの端に座ったんだけど那月は私の腿に頭を乗せてきた。


「那月?」


「だめ?」


 そう言われるとダメとは言い辛くて那月の頭を撫でて髪をといてあげる。

 すると気持ちよさそうに目を細めている。

 私がそんな事をしていると蓮花ちゃんに声をかけられた。


「雪菜さん」


「なに?」


 私は蓮花ちゃんの方を見るけど視線は合わなかった。

 蓮花ちゃんの視線を追うと那月の方を見ていた。


「私にも後で膝枕をしてください」


「え?」


「だ、ダメ!お姉ちゃんの膝枕は私だけの何だから!」


 そう言ってルナは起き上がり私と蓮花ちゃんの間に座って手を広げた。


「良いじゃないですか。ベッドのスペースと違って減るモノじゃないですし」


「へ、減るよ!私がお姉ちゃんにくっついてる時間が減るんだよ!」


「ルナは我が儘すぎます」


 そんな2人のやり取りを見て穂風ちゃんは大笑いしていた。

 何というかこんなに穂風ちゃんが声を上げて笑ってるところを、現実では見た事無かったから新鮮だ。

 ゲームでは良く笑ってるのを見るんだけどね。

 とりあえず話題を変えた方が良いかな。


「そういえば自己紹介途中だったよね。改めまして、星野雪菜です。事故の後遺症で車椅子生活ですけどよろしくお願いします」


 そう言うと蓮花ちゃんは驚いた様子はなかった。

 車椅子の見て察していたか、母さんから聞いていたのかな。

 それでも表情を曇らせた。


「次は私かな。お姉ちゃんの婚約者で那月です。高2です」


「那月何言ってるの…」


「お母さんから許可貰ってるから公認だもん」


 そう言って抱きついてくる。

 つい頭を撫でてしまうけど母さんも何言ってるんだろうか…。

 また面白がって言ったんじゃないかと思うんだけど…。

 ちょっとシュティが羨ましそうにこちらを見てる。

 目をそらして穂風ちゃんの方を見ると肩をプルプルと震わせていた。

 笑い堪えてるんだね…。


「笑いすぎてお腹が痛い…。はぁ、私はなっちゃんの同級生で穂風です。陸上部に所属してるので走るのが得意です」


 落ち着いてきたのか穂風ちゃんは自己紹介をした。

 それを聞いて蓮花ちゃんは気になった事があったようだ。


「ゲームでは走らないんですか?」


「あくまでゲームは息抜きだしね。それにゲームってちょっと感覚が違うし変な癖がついても困るからね」


「なるほど。私も剣を振る感覚が違って慣れるまで時間が掛かりました」


 なんか共感してるけどかなり内容に差がある気がするなぁ。

 穂風ちゃんは返事に困ったみたいで苦笑いをしていた。


「最後は私ですね。両親が雪菜さんのお母様と知り合いだったのが切っ掛けでお世話になります。一条蓮花、高校一年生です。よろしくお願いします」


「「え、えぇぇぇぇぇぇ!?」」


 那月と穂風ちゃんはかなり驚いたようで大きな声を出す。

 私も蓮花ちゃんはしっかりしてるし同い年ぐらいかと思っていたから驚いた。


「年下!?てっきり年上だと思ってた…」


「那月と違ってしっかりしてるし私も年上だと…」


「それは私を馬鹿にしてるのかな!?」


 2人が大きな声を出したからか、開いてた扉からひょっこりと女性が顔を出す。

 その女性は蓮花ちゃんの荷物を運んできたメイド姿の女性だった。


「やめられたのですね。お食事までまだ時間がありますのでゆっくりしていてください」


「待って。自己紹介してから行ってください」


 蓮花ちゃんがそう言うと女性は立ち止まってこっちを向いた。


「はい、お嬢様。私は蓮花お嬢様付きのメイドで楓と申します」


 そう言って深く礼をした。

 釣られて私も頭を下げた。


「それでは私はお手伝いに戻りますので失礼します」


 そう言って楓さんは礼をして部屋を出て母さんの所に戻ったみたいだ。

 私達はそれから雑談をしながら過ごした。

 途中で私の世話をどっちがするか那月と蓮花ちゃんが揉めてた気がするけど聞こえない振りをした。

 メールの確認があるからね…。

 穂風ちゃんは笑いすぎて苦しそうだったけどね。

 そんな話をしていたけど内容はやっぱりゲームの内容が多かった。

 夜のログインで行く遺跡に期待がある。

 穂風ちゃんはインはするけど遺跡には多分行かないそうだ。

 天井があるところだと飛ぶには向いてないから制限があって厳しいそうだ。

 とはいえ現状の情報だけだと敵が出るという話はなかったし危険は無いのかなって思う。


「お嬢様、皆様そろそろお食事になさいますか?」


 楓さんが食事の確認にきて時間を見ると18時を過ぎていた。

 なので私達は頷いてリビングに移動する。

 リビングに移動するとテーブルには今日もホットプレートが用意されていた。


「今日は焼き肉よ。雪菜は久しぶりでしょ?」


 母さんに言われて頷く。

 退院してから殆ど家から出なくなったから焼き肉を食べに行く事はなくなった。

 食事のために出掛ける事がなかったというのが正しいんだけどね。

 テーブルにはサラダと中華スープにナムルにキムチもあった。

 普段は家で焼き肉なんてやったことがなかったから嬉しい。


「蓮花ちゃんが来るって聞いて急いで良いお肉買ってきたわ」


「そんな…、気にしなくて良かったのですが」


 元々簡単に済ませるつもりだったのを急に変えたのかなと思う。

 私達は席に着くけど母さんと楓さんは席に着かなかった。


「私達は後でゆっくり食べるから、アンタ達は先に食べちゃいなさい」


 そう言われて私達は食事を始める。


「「「「いただきます」」」」


 那月が早速肉を焼き始める。

 私はのんびりサラダから食べ始める。

 ホットプレートはお肉が所狭しと並び焼かれている。


「あー、私が育てていたお肉!」


「取ったもん勝ちだってー」


 那月と穂風ちゃんは奪い合うようにお肉を取っている。

 蓮花ちゃんは焼いているのを二人に取られないよう見張っているようだ。


「雪菜さんどうぞ」


「ありがとう」


 時々焼けたお肉を取ってくれるので私はそれで十分かなーと思ってしまう。

 もちろん私も焼けてそうなのを取って食べるけどね。

 母さんの方を見ると楓さんと話しているけど目はこちらを見て楽しそうにしている。

 お肉は牛のカルビやロースにタン、ホルモンもあった。

 豚トロや鶏モモもあって久しぶりの焼き肉に嬉しくなる。

 でもアレだよね。

 お酒が飲みたくなる。

 母さんの方を見て缶を開ける動作をする。

 それを見て理解してくれたようだけど、笑顔でバッテンが返ってきた。

 予想はしてたからがっかりはしないけどね。

 結構速いペースでお肉を食べていた2人も落ち着いてきてるし私も食べたいお肉を焼いていく。

 2人はご飯のお代わりもしてたしお腹一杯になったのか箸を置いている。

 私と蓮花ちゃんも満足して箸を置き挨拶をした。


「「「「ごちそうさまでした」」」」


「片付けはやっておくから良いわよ」


 母さんに言われたので夜のログインまでにやっておく事は。


「ならお風呂かな」


 私がそう言うと真っ先に那月が反応した。


「お姉ちゃんいつも通り手伝うね」


「いえ、いつもゲームではお世話になっているので、私が雪菜さんに恩返しで手伝います」


 那月に対抗するように蓮花ちゃんが手伝うと名乗りを上げる。

 それを見ている母さんと穂風ちゃんは楽しそうにニヤニヤしている。

 2人とも那月の反応見て楽しむのやめてあげて、と思うけど口には出さない。

 多分、母さんは私の反応も見てる気がするし。


「では間を取ってわたくしがお手伝いしますね」


 楓さんはそう言うと私を横抱きにしてお風呂場へ向かっていく。


「「あー!」」


 那月と蓮花ちゃんが声を上げるが気にしてないようで足早に運ばれてしまった。

 洗面所に入るとリビングの方から、母さんと穂風ちゃんの笑い声が聞こえてきた。

 那月が何か言っているようだけど扉を閉めているからか良く聞こえない。

 楓さんはパパッと私の服を脱がしてお風呂に入る。

 バスチェアに座らせるとお風呂を出て行った。

 私が身体を洗おうとしていると服を脱いだ楓さんが入ってきた。


「すみません。急だったので雪菜様の着替えを取ってきました」


「それは助かるんですけど…、何故脱いでらっしゃるのでしょうか?」


「もちろんお風呂のお手伝いをさせて頂くためです」


 そう笑顔で言うと私が持っていたボディタオルを取り、綺麗に洗われた。

 足の指から髪の先まできっちり洗われました。

 それからお風呂に入れてもらった。

 私が恨めしく見るが気にしないようで楓さんは自分の身体を洗っていく。


「気持ちよくなかったですか?」


「いえ…、気持ちよかったです…」


「それは良かったです」


 質問に返事をすると微笑まれる。

 洗い終えた楓さんもお湯に浸かり暖まったところでお風呂から上がる。

 身体を拭いて貰ってお風呂上がりにスキンケアをしてくれた。

 やり方が上手いのか気持ちよかったけど、うちにはないものも使ってた様な気がする。

 説明してくれたけど恥ずかしいのもあって全然頭に入ってこなかった。

 普段那月に手伝って貰うより良かったと思えるのはやっぱり慣れてるからなのか。

 手伝って貰うと言うより完全に任せて着替えも済ませる。

 でも今日初めて会った相手だし恥ずかしいという気持ちが強いよね。

 テキパキとこなした楓さんはまた横抱きにして運んでくれる。

 車椅子ではなく部屋のベッドに運ばれて寝かされる。

 私が出たので2人も順番にお風呂に入るようだった。

 穂風ちゃんは私がお風呂に入ってる間に帰ったそうだ。

 楓さんは車椅子も部屋に運んでくれた。


「お風呂ありがとうございました」


「いえ、メイドですので」


 そう言って微笑まれる。

 私じゃなくて蓮花ちゃんのですよね、と言いたかったがお風呂での事を思い出し恥ずかしくてベッドにうつ伏せになる。

 楓さんが部屋を出て行くのを見てから私はいそいそと機器を取り出す。

 那月と蓮花ちゃんには申し訳ないけど先にログインすると言うメールをして、現実から逃げ出すようにゲームを立ち上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ