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気を取り直して買って来た簡単な魔道具の作り方の本を取り出して見ているけど、どの魔道具にも魔石というモノが使用されている。
私はその魔石って名前のアイテムは見た事が無いし聞いた事がなかった。
「ルナー、魔石って何処で取れるの?」
「他ゲームだと敵からドロップするのもあるけど見た事無いなー。石だったら掘るんじゃないかな?」
頼りにしていたルナも知らない様だ。
こういう困ったときは…。
「教えてファエリ先生!」
「んんー?魔石なんているのー?」
「欲しいんです」
「アレじゃダメなの?」
そう言ってファエリが指さしたモノ。
それは天井にあった魔水晶だ。
「魔水晶って魔石なの?」
「魔石より純度の高いモノだから代わりにはなると思うよー」
なら問題ないのかな?
試しに使ってみたいけど天井にあるのを取って崩れてくると困るんだよね…。
とりあえず部屋は増やしたいしちょっと拡張がてら採掘してくるかな。
「ちょっと採掘も兼ねて広場の拡張してくるね」
「私も行くー」
「行ってらっしゃい」「行ってらっしゃいませ」「いてらー」
一応声をかけて移動するけどファエリの言葉遣いがルナに似てきてる気がするな。
ルナもついてきてくれるみたいで2人で部屋を出る。
広場と呼んでる大部屋に歩いて行く。
地上に繋がる通路が南側にあり使用してる小部屋が西側、東側は空き部屋になってるのが現状。
大部屋と小部屋は通路で繋がってるけどそこそこ通路が長い。
多分通路の左右に小部屋と同じ大きさぐらいの部屋は作れそう。
その内拡張しようかな。
あ、しまった。
スノウさんから離れる前にスキルの範囲広げておかないと!
そう思って氷雪妖精の《周囲の氷や雪が溶けなくなる》の効果範囲を現状で広げられる最大にする。
それと同時に氷像を作って浮かす。
こっちはスノウさん達がいた宿の冷蔵庫に置いてきたままだったので念のためだ。
範囲を最大にしたからだと思うけど目に見えてMPが消費される様になった。
と言っても自動MP回復で全快になるので問題は無さそう。
「お姉ちゃんどうしたの?何かあった?」
急に止まった私にルナが声をかけてきた。
やってた事を説明すると納得してくれたみたいだ。
一応PT欄にあるスノウさんのHPを見る。
変化は無さそうだけどちょっと気にしておいた方が良いかも。
そんな事を考えながらルナとどう拡張していくか相談しながら大部屋を歩く。
結界珠は転移装置を設置したときに噴水の上部に統合されているのでそこを目指す。
目に見える位置にあるけど私以外が触れないようになっているようでルナやシュティも触れなかった。
小部屋の改善をしているときに調べてわかった事は拠点の拡張には二つのやり方があるみたい。
結界珠に魔力を流し表示される項目から拡張していく方法と自分達で広げていく方法。
もちろん結界珠で部屋を作ったりする事はできるけど今回みたいに地下に部屋を作る場合そこにあるはずの土や素材は消滅してしまうらしい。
素材も欲しいので今回は自分で掘っていく事に。
とはいえ適当に掘るわけにもいかないのでそこは拠点の機能を利用します。
元々結界を発生させるのがメインなので利用出来る機能がいくつかあるのではと考察されてたみたい。
実際に利用出来ると判断されたのが結界によるマーキング機能と呼んでる方法。
それは拠点設定を3Dマップで表示してから細かく結界の有無を指定できたのを利用すると言う方法。
結界で決めた範囲の中では何をやっても結界の外に影響しなかったと言うのが実験の結果らしい。
逆も同じで結界の外から何をしても中に影響は無かったそうだ。
これを発見したのは海中拠点を作ったプレイヤーと海に面した崖に拠点を構えたプレイヤーみたい。
どちらも早い段階でβから引き継いだお金で拠点アイテムを購入して試しているとか。
他にも街に拠点を構えた人や浜辺にって人もいるとか。
それよりも今は拡張しないとね。
3Dマップで今ある通路と同じような通路を結界で指定っと。
念のために大部屋も結界で指定しておきました。
「とりあえず試してみようかな」
私が指定した方へ飛んでいくとルナものんびりと付いてくる。
今回は大部屋の北側の壁で使用している西の小部屋に近い所にしてみた。
結界は若干青く光っているのでわかりやすかったりする。
光るかどうかも設定出来る。
あまり広範囲だと結界珠に溜めてある魔力を多く使用するって言われてるけど補充しなくてもうちの結界珠は魔力がほぼ限界まで貯まってる。
間違いなく世界樹の影響だと思うから人には言えそうにない。
実際転移にも魔力が使用されているらしいけど減ってる様子がないんだよね。
「よし、やりますか」
「おー」
緩い感じでルナが反応してくれる。
一人じゃないのはちょっと嬉しいかな。
別行動中は黙々と一人でやってたけどやっぱり気が滅入っちゃうんだよね。
スキル
・氷雪妖精
・氷属性魔法
・幻魔法
・影魔法
・水属性魔法
・風属性魔法
・土属性魔法
・採掘
・木工
・石工
控え
・付与魔法
・料理
・伐採
・鑑定
・火属性魔法
・光属性魔法
・闇属性魔法
パッシブスキル
・自動MP回復
・詠唱短縮
・魔力操作
採掘と土属性魔法をセットしているのを確認して壁に向く。
拠点の改善中に気分転換も兼ねて色々やってたときに土生成から派生した砂化。
これは土を砂に変える事ができるのだ。
と言うわけで使ってみる。
範囲を指定して発動させると壁の硬かった土がサラサラの砂に変化していく。
大部屋の方に流れてくる中にカランとかコンという音と一緒に落ちているモノが結構ある。
「おー、お姉ちゃん凄いね!これなら採掘凄く楽そう!」
そう言ってはしゃいでるルナが落ちた塊を拾っている。
魔水晶と鉱石の様だ。
魔水晶は透明な水晶で形状は六角柱でいくつも重なったりしているモノも合った。
鉱石の方は赤茶っぽい石ころにしか見えない。
一応鑑定して確認した後だから鉄鉱石で間違いは無いみたいだけどね。
問題は砂なんだよね。
「塊になってるのが鉱石みたいだけど。この砂どうしよう…」
「今地面って結界で魔法とか通さないんだよね?」
ルナが確認してきた事が間違ってないので頷く。
「とりあえず水で濡らして固めてみるとか?モノだけとっておけば後で使えそうなら使えば良いと思う」
あ、それ良さそう。
「採用します」
とりあえず氷像を下ろし念力を解いて近くに立つ。
ルナにはまず鉱石類を拾って貰い、街で買って来た箒を渡して砂を手前にかきだして貰う。
それを私が水生成で濡らして念力で塊にしてどけていく。
砂がある程度どけれたら砂化を使ってまた土と鉱石や魔水晶を分離していく。
慣れてきたら範囲を広げて採掘しながら拡張していく。
戦闘ではないけどこうやって一緒に作業するのは楽しいと思えた。
ルナも同じ思いだったのか楽しそうに笑いながら作業をしている。
作業を始めてから1時間ぐらい経過した頃、結界で指定した範囲の採掘を終えた。
かき出し固めた砂はかなりの量になって途中から邪魔なのでアイテムボックスに入れている。
もしかしたら何かで使えるかもって言う考えもちょっとある。
目的の魔水晶はそこそこ量が取れて鉱石類はそれ以上に取れている。
結界珠で一度操作して掘った通路の結界を消す。
土属性魔法の石化で壁に床、天井を石にして補強する。
一段落付いたところで時間を確認するとゲーム外で10時を過ぎている。
「結構魔水晶取れてるし小部屋戻って作業する?」
ルナに聞かれてここでやっても良いかなー。
そう思ったけど今もちょっとずつ減ってるMPの事も考えて戻る事にする。
小部屋もいずれは扉をつけたいけど今は布で暖簾をつけて代用している。
ルナと一緒に暖簾をくぐり小部屋に入る。
「「ただいまー」」
「「あっ」」「お、おかえり~」
部屋に入るとそこにはパッと見て半分涙目でこちらを見るスノウさんとスノウさんの着物に手をかけて脱がそうとしているアエローちゃん?
ファエリは何かオロオロしてる?
「お姉ちゃんGMコール!」
「待ってー!」
ルナの言葉にアエローちゃんが反応する。
その間にスノウさんはアエローちゃんから離れて着崩れてるのを直している。
「アエロー言い残す言葉があるなら聞いてあげる」
「ルナ待って、話を聞いて!」
「問答無用ー!」
ルナが私があげた木刀を片手にアエローちゃんを追い回してる間にスノウさんの方に近づき話を聞く。
聞いてみると原因はファエリにあったのが判明した。
何でも初めはおとなしかったファエリだけど次第に暇になったみたいで構って欲しそうにしていた。
しかし二人は服を作るためサイズを測ったりどんな服が良いかを話し合うのに忙しく放っておいた。
するとファエリが悪戯をし始めて良くできた昆虫のオモチャをスノウさんに投げた。
ちなみにそのオモチャ遠隔で操作出来るという悪意たっぷりな物で着物の中に入ってしまったらしい。
動いて服に入った時点でスノウさんがパニックを起こしてそれを見たファエリは動かすのを中断。
落ち着かせてからアエローちゃんがオモチャを取るのに着物に手を入れて手間取りつつも取ったところで私達が戻ってきた様だ。
この場合悪いのはやっぱり。
「ファエリ?」
「スノウ、ごめんなさい」
スノウさんの反応を見たときにまずいと思っていた様で素直に謝っている。
多分だけどファエリはちょっとした悪戯のつもりでやったんだと思う。
まさかパニックを起こして大騒ぎになると思わなかったんじゃないかな。
と言うのもそのオモチャ見た事あるんだよね。
私達が初めてワジオジェ様に会いに行ったときに妖精達がしかけてきた悪戯にあったのだ。
あの時はシュティが手で掴んで作り物だと気づくとルナの服に入れたりして遊んでたっけ。
「ルナー、アエローちゃん無罪だった」
「む、そうなの?」
「はぁ…はぁ……。だから、話…聞いてって…言ったでしょ!」
「ごめんごめんー」
「はぁはぁ…、いいけどね……」
余裕がありそうなルナに対してアエローちゃんは息を荒くしている。
リアルだと部活を頑張ってるアエローちゃんの方が持久力はあると思ったんだけど。
どうやら種族的な問題もあるのかもしれない。
そういえば風のフェアリーは飛んでないとデメリットがあるらしいけど似たようなのがアエローちゃんにもあるのかもしれない。
近くに来たルナに事の経緯を説明すると納得したようで今度はちゃんとアエローちゃんに謝っている。
アエローちゃんとスノウさんはまた服をどうするか話を詰めていくみたい。
何となくアエローちゃんの服の好みってレディースパンクって言われてる恰好みたいだから作って貰えるならこだわりたいのだろうなぁって予想出来る。
スノウさんも楽しそうだから邪魔しないように私達はやる事やらないとね。
その前に変更してあった範囲を直してMPの消費量を減らしておく。
ちなみにファエリは私達の近くで正座してる。
ルナが悪い事して反省するときは正座だよ!と言って教えてた。
アエローちゃんに怒られてるときにしてたのを思いだしたのかちょっと辛そう。
それよりも私には何故かファエリの首には木の板に紐が付けられたモノが掛けられており、そこには[悪戯をして反省中]と書かれているのが気になっていた。
何でそんなモノがあるか聞いたらシュティに持たされたらしい。
とりあえずチラチラこっちを伺ってるし突っこんだら負けな気がするからスルーして深く考えない事にしたよ。
採掘してきた魔水晶を出して貰う。
石工のスキルをセットしてある状態なのに小さい欠片を手にとってみても反応がない。
生産スキルは加工の際にアシストがあるって書いてあったはずだけどと考えているとある事に気づく。
石工じゃなくて細工のスキルが必要なんじゃ?
物は試しに2ポイント消費して取得っと。
木工と入れ替えでセットしてから改めて私でも片手で持てる程度の欠片を取って見るとアシストが視界に表示された。
それに従って面取りをして形を整えていく。
ちなみに道具なんて持って無いので魔法で何とかしました。
と言っても氷で道具を作ったり面倒になって風属性の魔法で削ってみたりだね。
おかげで練習でいくつかダメにしちゃったよね。
素人だから上手くはできないけどスキルのアシストのおかげでちょっと歪になったけど何とか1個だけできた。
加工が下手だからか元の水晶よりレア度が下がっちゃったけど材料は用意出来たので簡単な魔道具の作り方の本を見る。
えーっと、魔具工というスキルのアーツを使って持たせたい効果の魔法を刻み込むんだそうだ。
本に書いてあるのはどれも魔法陣が描かれていたので買ってあった魔法陣の本を広げて探してみる。
どうやら初心者向けに水を出す魔法陣、光らせる魔法陣、火種を出す魔法陣が書かれているようだ。
生活で役に立つモノが魔道具として求められてきたからかなと予想する。
さて、ここで必要なのは魔具工のスキルは必須として魔法陣製作と言うスキルが習得の一覧に増えているのを見つけた。
多分魔法陣の本を読んだ事で魔法陣に関する知識が増えスキルが増えたんじゃないかな?
問題はこのスキルで現状何ができるかわからない。
とりあえず魔具工のスキルを5ポイントで取って水が出る魔法陣を刻んでみる事に。
「《刻印》」
スキルを覚えた際に使えるようになったアーツを使い加工した魔水晶の中に水を出す魔法陣を魔力で描いていく。
魔力操作の影響か正確に刻めてはいる気がするのだけどペースは遅い。
遅すぎると言っても良いんじゃないかと思う。
その上MPはがんがん消費され減っていく。
1㎝程の魔水晶に5㎜程の魔法陣を刻むのにMPを500消費してかなり時間が掛かった。
簡単な魔道具の作り方の本を確認のために見てみると普通は刻印するモノの表面にインクで魔法陣を描き数日掛けて刻んでいくそうだ。
なるほど、私のやり方がおかしかったんだね。
何はともあれ完成したモノを鑑定してみる。
・わき水の魔水晶
レアリティー:☆
貯蓄可能魔力:☆☆
消費魔力:☆☆
水量:☆
一応製作には成功したみたいだけど採掘した時点だとレアリティー:☆☆の魔水晶が元になってるのにこれはやっぱり劣化だよね…。
レアリティーと同じように性能は☆で表示されるようだ。
貯蓄可能魔力は10段階で消費魔力は5段階が最高みたいだ。
ちなみに貯蓄量は☆が多い方が良くて消費量は☆が少ないほど良いらしい。
今回できたのは簡単な水をだす魔道具だけど消費が☆☆は良い出来では無いみたい。
使おうと思って手に持つとMPを消費して貯蓄するか水を出すかの選択肢がでるようになった。
何度か使用してみたけど星の数が同じでも貯蓄可能魔力と消費魔力は違うようで貯蓄しても一度使っただけでは無くならなかった。
作った魔道具に問題は無さそうだ。
とりあえず触りたそうにしてるルナに渡しておいた。
本番に移りたいと思うけど別の問題があった。
魔法陣の本を見ていたんだけど目的の効果を持った魔法陣なんて無いのだ。
そうなると気になってくるのは魔法陣製作というスキル。
これは必要ポイントが10のため取るとボーナスポイントが殆どなくなっちゃう。
でも多分無いと作れないんだろうと思いスキルを取った。
使い方はー…。
あれ、スキルの控えにないんだけど…パッシブに入ってる?
試しに魔法陣を床に書こうと意識すると自分の持つスキルで魔法陣にできるスキルが頭に浮かぶ。
私が魔法陣を考えるのかと思ってたけど予想とは違う結果だ。
オリジナリティー溢れる物は作れないみたい。
使用されている文字は変更出来るみたいでゲーム独特の文字以外にも現実で使ってる文字も使用出来るみたい。
頭の中で選択したスキルをどちらの文字で書くか意識すると完成した魔法陣が浮かぶので後はそれを書けばいいようだ。
組み合わせを変えて思い浮かべてるだけなので実際に書いてはいない。
よし、ある程度理解はできたし色々と試してみようかな。
その前に準備準備~。
ルナに出して貰った魔水晶を同じぐらいの大きさでいくつも削り出していく。
削ろうと意識すると細工スキルがアシストしてくれたけど何が対象なのかよくわからないなぁ。
大きさは大体2㎝ほどに削り出して大雑把に風魔法で丸く形成していく。
それを氷で作ったヤスリのような物で仕上げていく。
完成系はまだ決めていないけど今は練習して慣れておいた方が良いかなって思った。
球状に加工した魔水晶を鑑定してみるとやっぱり出来が悪いのか劣化したのかレアリティー:☆になっていた。
細工の熟練度が上がればもっと上手く加工できるのかな?
とりあえず現状はこれで練習していこう。
私が《刻印》している間に暇だったのかルナが魔水晶を削り出して小さな塊にしてくれているみたい。
《刻印》も全部が全部上手くいくわけじゃなく時々魔法陣をはみ出したりずれたりして失敗している。
魔水晶の玉は魔動核のように爆発することはなく割れて使えなくなるだけですんだ。
失敗したときは魔動核のようなことになるかと思って内心慌ててしまった。
最初は時間が掛かっていたけど魔具工と魔法陣製作の熟練度が上がってきたからかちょっとずつMPの消費が減って作業時間も短くなっている気がする。
初心者向けの魔法陣をいくつか刻んでいって熟練度は50を超えた。
実際に刻印してみるとゲーム独特の文字は崩れたら失敗になるけど普段使ってる文字は崩れてもある程度は問題なく完成はした。
ただ効果とかは落ちてるみたいだったけどね。
練習はこれぐらいで良いかな?
今作ろうとしている魔道具はスノウさん用のモノだ。
いつも私が近くにいないとダメというのは不便だからね。
なので付けたい能力は氷雪妖精にある《周囲の氷や雪が溶けなくなる》だ。
これがあればスノウさんも自由に過ごせるようになるはず。
最初は魔動核で作ろうとしてたけど実際に取り出したら直径30センチぐらいあった。
それを常に持ち歩く事になると片手だと持ちにくいし重さもそれなりにある。
仮に持ったとしても両手が塞がったままでいるか背負うなどしなければいけなくなる。
スノウさんが戦闘を行うかわからないけどお店に行ったときに両手が使えないのは不便だろう。
それに以前に試したのは爆発したしね…。
と言うわけで素材は魔水晶で持ち歩きが容易なアクセサリーのようなモノにできればと思う。
魔動核はアイテムボックスから出してみるまであんなに大きいなんて思わなかったからね。
とりあえずどんなアクセサリーが良いか聞いていく。
と言っても私が加工できるかわからないので参考程度のつもりだ。
スノウさんは基本和服でプレイするつもりのようでそれに合うモノがいいと言われた。
ポピュラーなモノだとかんざしと帯留めかな?
私が加工する材料は魔水晶になるからそれで作れそうなモノを考えるととんぼ玉だろう。
とんぼ玉はかんざしや帯留めに付いてる穴が開いたガラスの玉の事だ。
これを魔水晶で作り雪や氷が溶けなくなる魔法陣を刻印する。
やる事が決まったので机の方に移動して魔水晶を削り出す。
さっきまでと同じように2㎝ほどに魔水晶を切り出して丸く形成していく。
加工するには小さく感じるかもしれないけど20㎝ぐらいしかない妖精からすればそうでもなかった。
普通の人だと10㎝以上のモノを加工してる感じになるのかな?
さっきやっていたときよりは上手くできている気がする。
それに棒が挿せるように穴を開けていくんだけどこれは思ったよりも難しかった。
試行錯誤してる間にいくつか失敗して割ってしまったけど何とか穴を開ける事ができた。
念のために予備をいくつか作っていく。
失敗の数を増やしながらも10個ほど作ったところで1個に遊びで模様を彫ってみる。
和の模様と言えば花柄かなって思ったけどイメージ的に雪の結晶の方が良い気がしたので掘ってみる。
完成したモノを光に当てて角度を変えてみてみる。
色とか付けれたら良さそうだなぁ。
とりあえず素材はこれでよさそう。
と言うわけでMPをどれだけ使うかわからないし準備をしないとね。
まず入れる大きさのお椀を取り出します。
そこへMPポーションをどばーっと入れます。
刻印する形成済み魔水晶を取り出し近くに動かないよう固定して置きます。
お椀に入ります。
準備完了!
「よーし、本番やるね」
「絵面が酷いね…。お姉ちゃんポーションは減ってきたら足した方が良い?」
「うん、お願い」
MPを回復した分ポーションが減っていくから補充はルナにお願いしておく。
絵面についてはスルーだよスルー!
モノが小さいから高さを合わせるための台にしまってあった薪を利用する。
台変わりの薪の上に柄を掘った魔水晶を置いてある。
使う魔法陣は《周囲の氷や雪が溶けなくなる》能力のモノ。
魔法陣の大きさは2㎝ほどの魔水晶なので1㎝もないぐらい。
「《刻印》」
作業を開始していくと初めてやったのと比べて早くなっている実感がある。
一番の違いはこうやって考える余裕ができた事じゃないかと思う。
練習して熟練度上がっているからそれが影響してるんだと思うけどね。
途中でルナがMPポーションを足してくれたけど思っていたよりも早く作業は完了した。
・氷雪維持の魔水晶
レアリティー:☆
貯蓄可能魔力:☆
消費魔力:☆☆
範囲:装備者
起動中は魔力を消費し続ける事で指定された範囲の雪や氷が溶けなくなる。
完成したのがこちら。
性能はやっぱり落ちてるんだろうけど目的通りの能力になってるかな?
見た感じ問題は無いと思う。
なので途中からこちらをじーっと見ていたスノウさんの方へ差し出す。
すると気づいたスノウさんが手を出してくれたので掌に載せる。
「それがあれば拠点の外も大丈夫だとは思います」
「ユキ様…、ありがとうございます!ちょっと素材の買い出しも兼ねて街へ行ってきますわ」
伝えると嬉しそうに渡した魔道具を持って綺麗な姿勢のままススッと移動してあっという間に部屋を出て行き見えなくなってしまった。
置いて行かれたアエローちゃんはちょっと苦笑気味。
「あー、お姉ちゃんそろそろご飯近いしいったん落ちる?」
「そうだね。思ったより時間掛かっちゃったからいったん落ちて休憩しようか」
ルナの確認に頷き答えアエローちゃんとファエリに伝える。
一応スノウさんにもPTチャットで伝えたけど嬉しくてはしゃいでいるのかはい!と返事があっただけだ。
私達はベッドに入ってログアウトした。




