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 街に着くとシュティの肩に座らせて貰う。

 氷像も一緒に転移してくれるから急いで作り直さなくて良いのは助かっている。

 シュティは目的地が決まっているのですぐに移動を開始する。

 やっぱり転移装置を使えるプレイヤーがまだいない様でイヤでも目立ってしまうからね。

 スイスイと行き交う人混みの中を歩いて進んでいく。

 途中で十字路になっている道を曲がるとさっきまでの大通りよりは少し狭い通りに入っていく。

 辿り着いた店は小さいながらも可愛らしい貝を使った装飾や花を模して作られた装飾が飾られている。

 出ていた看板を見ると魚料理に力を入れてるみたいだけど宿泊料金も書いてあるので宿なのだろう。

 扉を開けるとカランカランとベルが鳴って私達の来訪を知らせる。

 中に入って見渡すと落ち着いた感じのフロントロビーだ。

 所々玄関にあった様な可愛らしい装飾が目に付くが落ち着いた雰囲気を壊すモノではなく良いアクセントになっている気がする。

 休憩や待ち合わせに使われているであろうロビーはテーブルが二つあった。

 どちらのテーブルも席に着いている人はいない。

 待ち合わせの相手はまだ来てないのかな?

 シュティはフロントへ行き用件を伝えると対応してくれた女性は「お待ちください」と言って奥に入っていった。

 殆ど待つ事無くに戻ってきて案内をしてくれた。


「先に申しておきます。お客様がお会いに来た方は現在地下の冷蔵庫におられます」


「伺っております。種族的な理由だと聞いているので理解しております」


 緊張した様子の女性に言われてシュティが頷き応える。

 シュティの返事で安心したのか表情を緩め案内をしてくれた。

 地下に続く階段は灯りも明るめで手すりもあって安全を考慮されているのがわかる。

 一番下まで行くと扉が一つだけあり鍵などは見当たらない。

 扉を開けて中に入ると奥に氷が積まれ食料が中に入れてあるだろう雪の山が合った。

 その手前にテーブルがあり二脚置いてあるイスにはそれぞれ男女が座っていた。


「それではごゆっくり」


 そう言って案内をしてくれた女性は頭を下げて戻っていった。

 一時的に仕事を別の方に変わって貰っているからだろうか。

 冷蔵庫と言っていたが思ったよりもひんやりしている。

 ゲームでは暑さには弱いが寒いのは思った以上に心地よく感じる。

 リアルじゃ寒い方が苦手だけどね。

 シュティを見れば吐いた息は白くなっている。

 会う予定だったのはどっちだろうかと思ってみてみるとすぐにわかった。

 女性の方は普通に飲み物を口にしていたが男性の方は歯をカチカチと鳴らし震えていた。

 何となくだけど若干顔色が悪い気がする。

 女性が私達に少し頭を下げて男性に向かう。


「お兄様、お客様が来たようですわ。わたくしは大丈夫ですので一旦外で暖まってきてください」


 女性の方がそう言うがお兄様と呼ばれた男性は首をゆっくりと横に振りギギギと錆びた機械が動く様にこちらを向く。

 シュティは素早く二人へPTを送る。

 PTに入った事を確認したシュティはその男性の首根っこを掴む。


「すみません、少しお借りします」


 そう言うと男性を引き摺って地下を出て行った。

 多分だけど放っておくと状態異常からスリップダメージに変わって死ぬ可能性が高いからだろう。

 このゲームは状態異常が長く続くとモノによってはダメージに変わるモノがある。

 そのうちの一つが凍傷である。

 冷蔵庫と言っているがさっきシュティが見たであろう温度計は0℃を下回った温度を示していた。

 凍傷は現実だと0℃を少々下回る程度の温度でも長時間さらされると生じるらしい。

 なので念のために避難も兼ねて連れ出したんだと思う。

 とはいえこのゲームで普通なら凍傷はまずならない状態異常だと思うんだけどね。


「えっと、初めまして雪妖精のユキです」


「初めまして。雪女で名前はスノウにしましたの」


 真っ白な肌に薄い水色の長髪、瞳は赤で服は白い和服。

 物語で出てくる様な雪女だ。


「この恰好はお兄様が買って来て下さった布を使って自分で作ってみたのです。似合いますか?」


 そう言ってスノウさんは立ち上がってゆっくりとその場で回った。

 その振る舞いは普段から和服を着慣れているのではと思うくらいに自然に見えた。


「とても似合ってると思います」


 私がそう言うとはにかみながらこちらを見る。


『妖精さん、とりあえず自己紹介をお願いしても良いでしょうか?』


 シュティからPTチャットで言われた。

 先ほど引っ張られた男性がいるからだろう。


『えっと、初めまして。雪妖精のユキです』


『俺の名前はリグ。βプレイヤーだから人間だ』


『雪女のスノウですわ。よろしくお願いしますね』


『シュティナです。私もβプレイヤーなので人間です。普段は契約してる妖精のファエリが一緒です』


『シュティの契約妖精でファエリでーす。よろしく~』


『お姉ちゃんの妹でルナです。よろしく』


『ルナそれじゃ誰の妹かわからないわよ…。ルナはユキさんの妹で私はアエローです。鳥獣人ですがよろしく』


 忘れてたけどPTはルナ達がいたから今はフルPTになっている。


『私とアエローは狩りしてるから会話には参加しないけど気にしないでね~』


『ルナ、私が抜けてるよ~』


『ごめんごめん、ファエリも一緒だね』


 ルナが言ったことにファエリが突っ込みを入れるとPTチャットは静かになった。


「賑やかな妹さんなのですね」


「はい、いつも助けて貰ってます」


 私が応えるとスノウさんは微笑ましそうにこちらを見ていた。

 さてそろそろ話を進めていった方が良いだろう。

 と思ったら丁度シュティが口を開いた。


『今回は妖精さんの拠点を一緒に利用するのを希望していると言う事でしたが間違いなかったでしょうか?』


『その通りだ。現状スノウは種族的なデメリットでスリップダメージを受けるからまともに活動出来ない。雪妖精さんの拠点ならデメリットを気にしなくて良いんじゃないかと思ってな』


 なるほど。

 デメリットでスリップダメージは私と同じだから辛さは何となくわかるつもりだ。

 私の場合シュティがいなかったらどうして良いかわからずに続けていたかもわからない。


『デメリットの事で一つ聞いても良いでしょうか?』


『はい、何でしょうか?』


『具体的に言うと暑さでダメージを受けるんですか?』


『いえ、わたくしのデメリットは一定以上の熱で身体が溶けてしまう事によるダメージですわ』


 熱で身体が溶ける…。

 だから氷属性の魔法で周りを冷やすのではなく冷蔵庫の中にいたのかな。

 今まで飲食はどうしていたんだろう。

 キョロキョロと動く私の視線に気づいたのかスノウさんが答えをくれる。


『食べ物は凍らせたり冷たいモノで、飲み物は冷たいモノだけで過ごしていますの』


『熱い食べ物なんかは熱で身体を溶かしちまうからな』


 ある意味私より大変だったんじゃないかな。

 私は暑さで溶けるって事無いもんね。

 あ、でもそれってもしかして…。

 うーん。


「ユキ様どうかされましたか?」


 私が考え事をしているとスノウさんはそれを不思議に思った様だ。


「ちょっと思いついた事はあるんですけど…」


 思いついた事はあるけどできるかどうかもわからない。

 それに思いつきで試すとなると人体実験みたいで抵抗がある。

 リグさんとシュティがこれからどうするかPTチャットで話を続けている。

 現状の拠点の状況を伝えてリグさんの希望を聞いてどうするか考えてるみたい。

 スノウさんは夜でも蒸しっとする日は出られないし人が多くて熱気があるだけでもキツいらしい。

 多分だけど水がかかっても溶ける可能性があるんじゃないかな?

 やっぱり私より状況は酷そうだ。


「何かあるのでしたら試して頂けませんか?」


「でも…」


「キャラクターを作り直せば良いのかもしれません。ですがわたくしは変えたくないのです。お願いします」


 そう言って私に向かって頭を下げるスノウさん。

 私も作り直しは考えなかったな…。

 ラギさんに言われたときだってやめようと思ったけど作り直そうとは思わなかった。

 やっぱり雪妖精という種族が、この姿が気に入っていたのもあると思う。

 そんな私が断れるはずはなかった。


「わかりました」


 引き受けた以上やれる事はやらないとね。

 正直言ってできるかどうか自信は無い。

 でも出来る方に賭けよう。


「スノウさん、それじゃあ………」


 …

 ……

 ………


 ロビーにあるテーブルを挟んで男女が座っている。

 シュティとリグさんだ。

 PTチャットで行われてる話し合いは中々決まらずに平行線になっていた。

 それもそのはず、現状の拠点だと移ってもあまり変化がないと思われるからだ。

 氷室のような施設は作れるだろうけどそれだけなのだ。

 私はスノウさんに説明してすぐに地下室からロビーに戻ってきた。

 それに最初に気づいたのはリグさんだった。

 席を立ち声を荒げた。


「スノウ!下にいないとダメだろうが!」


「お兄様、移動するならずっと地下にはいられませんわ」


「そうだが!」


 そう私はスノウさんの肩に座って一緒にここまで来た。

 スノウさんはゆっくりと歩いてシュティの隣に座った。

 肩の上から机に下りる。

 スノウさんを見ると少し緊張している様子でこちらを見ていた。

 私はアイテムボックスから以前熟練度上げで使ってた木製のお椀を取り出す。

 そこに魔法でお湯を少し入れる。


「シュティ熱いかな?」


 そう聞くとシュティはお湯に指を入れて確認してくれる。


「これぐらいなら私は熱いとは思いませんけど…」


 なら大丈夫かな。

 私はスノウさんを見上げる。

 ずっと私を見ていた様で視線に気づくと頷いた。

 恐る恐るとお椀の中へ指を入れるため手を近づける。


「何やってるんだ!」


 リグさんが腕を掴み止めるがすぐに手を離す。

 腕を掴んでいても体温で溶けてしまうのかもしれない。

 それなのにお湯に指でも入れれば溶けてスリップダメージが発生するのは確実だ。

 一番近くで見ていたリグさんだから止めたのだろう。


「お前達も何を考えている!こんな事させるならこれ以上は付き合いきれない、スノウ行くぞ!」


 そう言って席を立つとスノウさんの袖を取り連れて行こうとする。

 ぁー、スノウさんの着物の袖が長いのって直接触れなくても手を引くのに便利そう。

 私は暢気にそんな事を思ってしまった。


「行くのならお兄様だけでどうぞ」


 スノウさんがそう言って手を振り解くとリグさんは目を見開き棒立ちになる。

 そして指をお湯の中に入れた。

 リグさんは驚き固まっているのか反応は無い。

 私はただただ上手くいってくれる事を祈るだけ。

 緊張した時間が続くが指を入れてから俯いたスノウさんに反応は無い。

 しばらくしてからようやく口を開く。


「ユキ様、温かかったです。温かかったんです」


 そう言ってお椀から指を出したスノウさんの目からポロポロと涙がこぼれ落ちる。

 ゲームを始めてからずっとデメリットに苦しめられてキツかったんだと思う。

 私はシュティのおかげですぐ対処出来たけどスノウさんにとっては長い時間だったはず。

 PTメンバーを見てもスノウさんのHPは減っていないし大丈夫だったみたい。

 シュティは予想出来ていたのかこちらを見て頷く。

 その時ようやく安心出来た気がして私も笑顔になる。


「ユキ様、これからお世話になっても良いでしょうか?」


 そう指で涙を拭いながら笑顔で言うスノウさんに頷く。


「もちろん。よろしくお願いします」


 ぺこりと頭を下げるとスノウさんもぺこりと頭を下げ。


「こちらこそよろしくお願いしますわ」


 私を見て微笑みながらそう言った。

 自信は無かったけど大丈夫じゃないかというのはロビーに戻ってから思っていた。

 何故なら私は氷像を地下に置いてきていた。

 これはスノウさんに触れたときこのゲームでは慣れているひんやりとした冷気を感じたからだ。

 話を聞いた限り雪女という種族は身体が雪でできているらしい。

 今回お湯に指を入れてもデメリットが発生せず無事だったのは雪で出来ているから氷雪妖精の能力《周囲の氷や雪が溶けなくなる》の影響を受けたんだと思う。

 とりあえず今思い浮かぶ対策はあるけど拠点に帰ってからかな。

 できるかわからないしね。

 お椀をアイテムボックスに入れてスノウさんの肩に飛んでいき座る。

 シュティがサッと何か操作する。

 PTメンバーからリグさんの名前が消えた。


「まだいたのですか?」


 シュティは目を細めて立ち尽くしているリグさんの方を見て言う。

 それで立ち直ったのかリグさんは少し慌てている様だ。


「スノウが世話になるなら俺も一緒に…」


「お兄様、わたくしはもう大丈夫ですわ。今までご迷惑おかけしました」


 あれ?

 リグさんはスノウさんが私達と一緒に行くなら付いて来る感じだったのにスノウさんが断っちゃった。

 スノウさんの言葉がダメージ大きかったみたいで呆然と立ち尽くしてたけど大丈夫かな?

 あれよという間にリグさんを残し私達は商店街へ移動していた。

 スノウさんの使う家具を買うためだ。

 一応それ以外にも生産で使う道具や材料なんかも見て回る。

 せっかくなのでスノウさんにみんなの服を頼んでみたら喜んで引き受けてくれた。

 スノウさんはPTのメンバーの好きな色を聞き生地をいくつか購入していた。

 ちなみに私は白や薄い青、ルナは黄色、シュティは青や紫、アエローちゃんは緑系だった。

 生産設備を揃えられれば一番だとは思うけどそう言うのって専用の部屋とかあった方が良い気がする。

 頑張って部屋を増やさないとね。

 私もリベンジのために調理場欲しいし。

 拠点に戻ってルナ達と合流したら改めてスノウさんを紹介する。

 これから一緒に遊ぶ仲間になるからね。

 ある程度離れても問題は無いはずだけど念のためスノウさんの肩に座ってるとルナの視線が痛い。

 ちゃんと経緯は説明してわかっては貰えたと思うんだけど…。

 困ってルナを見ていると。


「お姉ちゃんが他の人とくっついてるの、理由を聞いて頭で理解できていても心は納得できないの!」


 そう力強く言われた。

 くっついてるというか座ってるんだけどそれもスキルの効果がどれだけ離れたら効果がなくなるかわかってないからだ。

 スキルの効果欄で設定できるみたいだけど現状は距離を選択していないからすれば大丈夫なんだと思うけどね。

 ルナの言葉を聞いてアエローちゃんはお腹を抱えて爆笑していた。

 放って置くとまた現実でべったりになりそうだ。

 私の心の平穏の為にも対策は早めにした方がよさそう。


「今からユキさんは生産でルナは見学。シュティとスノウさんはどうする?」


 私があるモノのために本を読み始めるとアエローちゃんが二人の予定を確認する。


「私は用事があるのでそろそろ落ちます。お疲れ様です」


「「お疲れ様です」」「おつー」「「お疲れ様ー」」


 シュティがベッドに横になってログアウトする。

 気づけばこの小部屋、ベッドが3つ並んでいる。

 ルナ、シュティ、スノウさんのだ。

 ダイニングテーブルに椅子が4脚、私とファエリの寝床を置いてあるサイドテーブルが2つあるだけだ。

 部屋は広いから余裕はあるけど寂しい感じはする。

 残念ながら地下なので窓は無いのでカーテンも無い。

 ちょっとずつでも見栄えも良くしていきたいね。


「わたくしも生産をしようと思うのですが…」


 スノウさんはアエローちゃんにそう返事をしながらもしげしげと恰好を見ている様子。


「そうなんだ…?」


 アエローちゃんは戸惑いながらも返事を返している。


「もしよろしければアエローさんの服から作りましょうか」


「え、ほんと!?お願いしますー」


 スノウさんの提案にすぐに飛びつくアエローちゃん。

 一応恰好は初期のではないけど装備ではないから防御が上がってないそうできちんとした装備が欲しかったらしい。

 スノウさんの作る物は布製だから金属や革の装備に比べると防御は低くなるけど他のステータスが上がっている物もあるという。

 二人はスノウさんが買って来た作業台を壁際にだしてそこでどんな服にするのか話し合っている様だ。

 さて、私の方はと言うと…。

 サッと目を通すように読んでいるけど何の進展もしておりませんよ。

 流石に10分20分で魔道具は作れたりしませんよ。

 考えていた対策として魔道具を作れるか試そうとしていたんだ。

 とりあえず使う予定の素材を確認しよう。


 ・魔動核

 レアリティー:☆3

 特殊スキル:能力複製

 ウッドゥンビートルゴーレムに使用されていた核。

 今は機能を停止しており動き出す事はない。

 用途が非常に多く高値で取引されている。

 どうやって作られているかは不明。


 ・能力複製

 持ち主が取得しているスキルの能力を1つだけ複製する事が出来る。

 複製した効果の使用には魔力を消費する。


 能力複製の効果を選択してみる。

 私のセットしているスキルから目的の能力を選択すると消費するMP量が表示された。

 物は試しにと出していた本を一応しまっておき魔動核を取り出し向き合う。

 とりあえず言われた通り消費MPを設定して魔力を流し始める。


「ユキ様ストップ、ストップー!」


 ファエリが急にそんな事を言うから混乱してしまった。

 魔力を流すのを止めないといけなかったところで流す量を増やしてしまった。

 その結果魔動核が光り始める。


「みんな伏せて!」


 ルナが注意を促したとき私の目の前は光で真っ白になっていて…。

 凄まじい音と衝撃を発生させ爆発した。

 気づくと私はホームの転移装置である噴水の前にいた。

 復活位置を街からこっちに変更できるのを知って変えておいて良かったよ…。

 見つけたのはルナだったんだけどね。

 ロストしたアイテムは…っと。

 ん~。

 アイテムボックスの空きになってるところから推測するとシュティが菜園を作ってるの時にアイテムボックスに邪魔な土や草を何かに使えるかもと入れていたんだけど複数種類に分けられた土の一つかな。

 多分質か成分が違ったからじゃないかってシュティと話してたんだけどね。

 とりあえず部屋に戻ろう。

 暖簾をくぐって中に入ると見事に粉々になったダイニングテーブルの姿が。


「お姉ちゃんお帰りー」


 アエローちゃんとスノウさんは木くずが飛び散って散らかっているのを片付けていた。

 ルナは大丈夫そうだけど…。

 ファエリは?

 キョロキョロと見渡すとベッドに横になっているシュティの周りの木くず等を片付けていた。


「みんなごめん、加工失敗しちゃった。まさか爆発するなんてね」


「それよりもお姉ちゃんは大丈夫だった?」


「うん、前に回収した土がなくなってたぐらいかな」


 それを聞いて安心したのかホッとしている。

 一応デスペナルティーでステータスが下がってるけどね。

 ルナがこんなに心配するようになったのってやっぱり事故のことも関係あるのかな。

 もしそうならちょっと申し訳ないな。


「とりあえず魔動核はまだ手を出せるレベルじゃなかったみたいです」


「そうみたいだね」


 私の言葉に苦笑しながらルナはアイテムボックスから机を出した。

 あれ、予備なんて買ってあったんだ…?

 イスもボロボロになったのを片付けて新しいのを出していく。


「どうしたの?」


「ぁ、うん。予備買ってあったのかなって」


「シュティに何かあった時用にって持たされてたの。まさかこんなに早く使うことになると思わなかったよ」


 そう言って苦笑するルナ。

 シュティに感謝しておかないとね…。


「うぅ、それにしても…、数十万が一瞬でパーだよ……」


「お姉ちゃん魔動核ならまた取れば良いじゃない?私も手伝うし。ね?」


 まさか失敗で爆発までするなんて…。

 素材はルナの言う通りまた集めれば良いのかな。

 逆に失敗するとどうなるか知れただけでも収穫と考えよう。


「そうだね…。その時はよろしくね?」


「任せて!」


 うーん、何で爆発したかさっぱりわからない。

 私を止めようとしたファエリなら何かわかるかな。

 期待を込めてみると視線に気づいて止めた理由を教えてくれた。


「ユキ様が魔力を流してたの見たら無理矢理魔力を詰め込んでたから止めたんだけど…」


 それを私が流し続けた結果爆発したって事かな?

 ファエリに確認するとこくりと頷かれた。

 うん、いきなりぶっつけ本番は無謀だったようだ。

 何かしらやり方があるのか必要な物があったのかも。

 と言うわけで何か練習で作って魔道具作れるようになってからいつかリベンジしたいと思います。

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