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 元の道に戻ると前回は右に曲がった分かれ道に着いた。

 今回は北西の昆虫エリアが目的なので左へ。

 昆虫エリアを歩き始めてしばらくすると甘い香りが感じられた。


『凄く甘い匂いがするね』


『え、匂わないけどシュティは?』


『わかりません』


 二人とも戸惑った様に否定してくる。

 てことは感じられるのは私が妖精だから?

 でもそんなスキル持ってなかったんだけどなぁ。

 そんな事思いながら怪しいスキルを開いてみる。


 氷雪妖精

 ・飛行移動

 ・念力

 ・氷属性魔法を初めから使用できセットスキルから外すことができない。

 ・氷属性魔法を使う時の消費MPが減少し効果が上昇する。

 ・周囲の氷や雪が溶けなくなる。(範囲は変更可能)

 ・暑い場所では5秒間で2%HPが減っていく。

 ・火属性魔法の消費MPが増加し効果が減少し、使うとダメージを受ける。

 ・装備や手持ちの重量が5になった時点で飛べなくなる。

 ・肉類を食べると一定時間飛行移動が無効になる。

 ・効果は状況により変化する。


 newの文字は無い。

 と言うことは増えていない。

 体質かな?

 うーん。

 原因がわからなくて考えていると。


『とりあえず行ってみようよ』


『そうですね、気になりますし』


 二人に言われて匂いの強い方へ飛んでいく。

 すると木にオレンジ色の果物がいくつもなっていた。

 私がそれに近づくと二人も寄ってくる。


『匂いはモモに似てるのかな?』


『1つ食べてみますか』


 近づいて匂いを嗅いでいるルナにシュティが提案する。

 そういえば毒とかあったら困るよね。


『毒とかは?』


『鑑定した感じ害があるモノは無いから大丈夫!』


 そっか鑑定なんてスキルがあったね。

 私も取った方が良いのかな…。


『お姉ちゃんも持っておいて損はないと思うよ』


『ドロップは個別でありますから確認の事を考えると取った方が良いかと』


 そうだよね。

 必要な時だけセットすれば問題ないはずだもんね。

 でも今は採取だけしておいて後でスキル取って纏めて鑑定すれば良いかな。

 と言うことで私は念力で浮かしている氷柱を受け皿代わりに果物を落として貰いアイテムボックスにしまっていく。

 二人は試しに食べることにしたみたい。


『モモかと思ったけどちょっと味は違う様な…。匂いの割りには甘くない…かな…?』


『でもちょっとベタ付きますね』


 そんな事を言いながら二人は1個の果物を分けて食べたみたい。

 評価は悪くなさそう。

 私には大きいから食べるにしても今は遠慮したいかな。


『お姉ちゃん氷で小さな桶作って―』


 ルナに頼まれたので作ってあげる。

 シュティがそれに魔法で水を入れて手を洗っていた。

 なるほど、その為に氷の桶か。

 何故かルナはその氷をシュティに頼み、水で洗って果実を入れた。


『どうするの?』


『いや、水入れて貰って冷やして食べてみようかと』


『ゆっくりできる時にしなよ』


 食い気が強いルナに呆れてそう言う。

 シュティの方を伺うと遠くを見ている様だ。

 私もそちらに目を向ける。

 大きな蜂がいた。

 50センチはあるだろうか。


『うわぁ、珍しいのがいるね』


『アレがこのエリアで希にでるスピアハニービーです』


 二人は戦いたそうにしてる。

 でも何となく戦わない方が良い気がするんだよね。


『ねぇ、蜂は襲ってくるの?』


 ウサギやイノシシは襲ってきた。

 だから気になって聞いてみた。


『ううん。ここのエリアはみんな襲ってこないノンアクティブだよ』


『倒さないんですか?』


『何となくやめておいた方が良い気がするんだよ』


『匂いといい種族的な何かがあるのかもしれませんね』


『ぁ、見て見て。果物を採って食べてる』


『蜜蜂なのに果物も食べるんですね』


 スピアハニービーは囓って何かを確認したのかそれ以上は食べずに実を捨ててしまう。

 しかし別の実を1つ採ると重いのだろうフラフラとしながら飛び始めた。


『口にしたのは食べれるかの確認でしょうか』


『なら持って移動してるのは巣に運ぶんだよね』


 二人はさっきよりも目を輝かせている様に見える。

 私も気になるから頷いて後を追うことにした。


『やっぱり女王蜂がいるんだよね!』


『キングビーなんてのもいるのでしょうか?』


『蜂蜜分けて貰えないかな』


『欲しいね!』『欲しいですね』


 意見があった私達は笑い合う。

 移動してはいるがスピアハニービーはそこまで速く無いので周囲の花や果物を取りながらついて行っている。

 試食は続けていて私も浮かせている氷に少量置いて貰って食べてる。

 もちろんクエストのため多めに採ってアイテムボックスにしまっている。

 二人が先に採って鑑定してから食べているので問題ないと思う。

 一応果物の採取以外にも花の採取もあるのでそれも行っている。

 そっちは結構適当だけど。

 花より団子ですね。


『ぁー、消えた』


『エリア跨いだみたいですね』


 急にスピアハニービーが消えてしまった。

 どういう事だろうと思って二人を見る。


『私達はエリア跨ぐ時にボスと戦わないといけないんだよね』


『エリアボスですね』


『追いかけるにはボスを倒さないとダメって事?』


 私の確認に二人が頷く。

 北東で戦ったメープルベアみたいなボスがいるって事だよね。


『問題はどんなのがいるかわからないことですね』


『蜂ではなさそうだよね』


 ここで止まっている時間が長くなればなるほど見失ってしまう。

 追いたいので悩んでる時間は無さそう。


『行こう。相手が飛んでなければ空中から威力が大きい魔法を撃つ様にするよ』


『なら私は囮をやった方が良いかな?』


『いえ、囮は私がやるのでルナは隙を見て攻撃をお願いします。妖精さんは熊の時にやった動き遅くする魔法を最初にお願いします』


『りょーかい』『わかった』


 やることが決まったので進んでいく。

 少し進むと背後から赤い光が周囲を包んでいく。

 奥の森から木が揺れカサカサと音がする。

 大量な何かを叩き付けるような音をたてながら近づいてくるモノがあった。

 そして現れたのは大型のムカデだ。

 アーマードセンチピード。

 その名前が示す通り装甲のような甲殻を持っているんだろう。


『うおー、気持ち悪い!』


『それに大きすぎますね』


 シュティのいう通りそれは大型と言うには大きすぎた。

 相手の頭は1メートル30センチほどの高さにあってシュティ胸のより少し高いぐらいにある。

 全長は7メートルはあるだろうか。

 私は攻撃が届かないであろう位置まで飛び上がる。

 そして詠唱を開始する。

 その間にアーマードセンチピードはガチガチと顎を鳴らして威嚇すると見た目に反し素早い動きで二人に近づきその鋭い顎で噛みつこうとする。

 ルナは横に避けて距離を取る様に移動しシュティは迫ってくる顎を剣で逸らそうとする。

 しかし逸らし切れずに体勢を崩すも転がって距離を取り体勢を立て直す。

 すぐに走って近寄り切りつける。

 大きな頭に振り下ろされた剣は高い音をたて弾かれる。

 そこへ離れていたルナは魔法を唱えていた様で火の魔法を放つ。

 直撃はしたがHPはあまり減っていない様だ。

 シュティは正面に立たないように位置を変えつつ脚の関節を狙って剣を振る。

 相手も簡単には切らせてくれないようで脚を動かし位置を変えながらも脚で潰そうとしている。

 巨体を支えているだけあってそれなりに太く甲殻もあるからそれなりの重量があるように思える。

 当たったら危険そうだと思った。

 激しい攻防を見ているとようやく私も詠唱が終わった。


「《ブリザード》!」


 上空から放った私の魔法はアーマードセンチピードに纏わり付く。

 そのおかげか素早かった動きがかなり緩慢になった。

 メープルベアに対してもだったけど寒いのにあまり慣れてないから効果があるのかもしれない。

 そこへ二人が左右から剣による攻撃をしかけていく。


『シュティ、私上行くね』


 ルナはそう言うとアーマードセンチピードの足を蹴り体節に登ると関節部に両手の剣を突き刺す。

 魔法による防御の低下もあったのだろうが関節部が弱点でもあった様で激しく暴れだす。

 シュティは足の節を剣で切り動きを止めようとしている。

 ルナは突き刺した剣で切ろうとするも暴れているため甲殻に挟まれ思う様に剣を動かせていないよう。

 すぐに剣を動かすのを諦めて魔法を使って頭部を狙い攻撃していた。

 ブリザードの効果は二人にもある様に見えるが実際には無い様で動きは衰えていない。

 私も魔法を撃とうとは思っているが暴れているから味方に当たったらと思ってしまい撃てずにいた。

 剣にしがみつくようにしているルナに当たる可能性があると思うとやっぱり怖い。


『妖精さん縫い付けれませんか?』


『やってみます』


 シュティに言われて覚悟を決める。

 縫い付けるとなるとランスみたいに刺突系統が良いよね。

 上空から放つなら風で速度を上げるより土を混ぜて頑強にするイメージで。


[氷属性魔法][土属性][槍][氷][攻撃]→[保存][使用]


 いつもの様に保存して使用する。

 長い詠唱時間でまだ詠唱時間短縮スキルの恩恵はわからない。

 それでも変わっているんだと思う。

 私の詠唱中にも相手は暴れ位置を変え体勢も変える。

 ルナは剣にしがみつき魔法を唱えているが相手が激しく動くためなかなか当てれずにいた。

 シュティは足を減らす事で動きを抑えようと攻撃をしている。

 見ている私からすれば関節を切って脚を落としていくシュティが凄いとしか思えない。


「行きます。《アイシクルランス》!」


 頭に近い所を狙ったそれは暴れているアーマードセンチピードの尾脚と呼ばれる最後の節に刺さった。

 氷柱が地面にまで刺さり動きが制限される。

 狙いは外れたが効果は十分だった。

 シュティが次々と足を落とし氷柱に行動を制限された結果ルナの魔法が直撃し頭部を焼く。


『あー、無理に頭狙わなくてもいっか』


 頭に当たった火の魔法はそこまで大きなダメージが無いようだったのを確認するとルナはそう言って剣を片方抜き鞘に収める。

 そして関節に掌を向けると火の魔法を放った。

 流石に関節から装甲の中へ魔法を撃たれるのは効くようで悲鳴を上げ暴れる。

 そこへいくつも石柱が立っていき動ける範囲が少なくなっていく。

 シュティが魔法で隆起させたみたいだ。

 私もそれを真似て氷柱を立てていく。

 これにより殆どの動きを制限されたアーマードセンチピードは抵抗する手段を失っていった。

 それでもHPは多く時間は掛かったが倒すことができた。


 《エリアボス「アーマードセンチピード」を討伐しました》

 《初回討伐報酬→ボーナスポイント:5》


『流石にてこずりましたね』


『虫って何でこんな気持ち悪い上に生命力が強いんだろうね』


 二人ともげんなりしている様だ。

 結構な時間が経ってしまっているからもう追いつけないかもしれない。

 そうは思うけど一応ね。


『もう見失ってると思うけど探しに行こう?』


『うん』『そうですね』


 森の奥に進んでいく。

 しばらく歩くと道が途切れて少し開いた場所がある。


『あそこの開いた場所までがセーフティーみたいですね』


『休める場所って事だね』


 周りを見渡すと来た道以外に道は無くて開いた場所で途切れており森の中を進むことになるみたいだ。

 昆虫エリアって事は小さい虫もいるかもしれない。

 前のエリアの敵は襲ってこなかったけどここからはわからない。


『どうしましょうか』


 シュティナさんがこちらを見て聞いてくる。

 ルナもこっちを見ていた。

 二人ともどの方向に進むか決めかねているみたい。

 私の方見られても困るけど。


『左の方からわずかにさっきの果物の匂いがする』


 それを聞いて二人もちょっと表情が和らぐ。


『じゃ、追いかけますかー』


 ルナの言葉に頷き合って私を先頭に匂いの方へ向かっていく。

 二つ目のエリアに生息しているのは最初に見つけたのがポイズンスパイダー。

 戦闘は避けたけど名前からして毒があるのだろう。

 40センチぐらいで色が茶色の個体や緑色の個体がいて木や草葉と同化して見つけにくい。

 厄介なのはその糸も透明で光が当たるとわかるのだが自然の光は殆ど入ってこない。

 次に見つけたのはスラッシュマンティス。

 人間より大きなカマキリで索敵範囲はかなり広いみたい。

 遠くから見ただけで敵と認識されたみたいで飛んで襲ってきたのだ。

 しかも敵としては初となる?スキルを使ってきた。

 ルナとシュティが使っていた敵の名前にも付いてるスラッシュだ。

 モーションは双剣を使うルナと同じだったそうだ。

 二人が言うには動きが決まってるから逆に対処しやすかったらしい。

 可哀想になってくるね。

 急な襲撃に対処しながらも何とか進んでいくと木々の隙間から花畑が見えてきた。


『止まって!』


 そう言うと2人は歩みを止め身を隠しながら花畑の方を伺う。

 私も隠れながらそちらを見る。

 花畑の中心には巨大な木が立っていた。

 そして木の横に根元から円柱状のモノが全長は枝で見えないが上に伸びていた。


『何あの大きさ…』


『間違いなく巣ですよね…』


『上見て!』


 2人が巣の大きさに呆然としている。

 でもそれよりも出てきた存在が異様だった。

 遠目で細かいところはわからないが120センチぐらいの人に蜂の羽と腰のあたりに腹部が付いている。

 それが中を浮いているのだ。

 かなり距離があるにもかかわらずここまで羽音が聞こえていた。


『あれ、女王蜂だよね…?』


『プリンセスハニービーとなってるのでちょっと違いますがあってるかと…』


 プリンセスハニービーの周りには働き蜂に当たるだろうスピアハニービーが多く飛んでいた。

 それよりも気になるのは視線だった。

 下りてきたプリンセスハニービーはずっとこちらを見ている様に思える。


『何かさ…。ずっとこっち睨んでない…?』


『私もそんな気がしてました』


『睨んでるというより伺ってるんじゃないかな?』


 2人がこっちを見る。


『そう思うだけで根拠はないよ。けど、この件はどこかで聞いてみてからの方が良いと思う』


 そう続けると2人は頷いてくれた。

 私達はゆっくりと後退していく。

 するとプリンセスハニービーは振り返り巣の上の方へ戻っていった。

 それと同時にスピアハニービーは散っていった。


『助かった…?』


『一定の範囲に入ったから反応したのかもしれませんね』


 多分シュティの言う通りなんだと思う。

 それも巣の上の方から止まっているこちらを認識していたプリンセスハニービーの索敵能力の高さがわかる。

 プリンセスハニービーが下りてからスピアハニービーが集まってきて周りを守る様にしていた。

 スピアハニービーに集まるよう指示をしたんじゃないかと思う。


『気を取り直して植物エリアに移動しよー?』


『そうですね。植物の1から2のボスはトレントでしょうから昆虫2と植物2の間のボスを確認して植物エリアを通って帰りましょう』


 昆虫エリアでの採取は十分だと判断して敵をなるべく避けて移動を優先することにした。

 それでもスラッシュマンティスに襲われ戦闘になったりした。

 リンクと言われる戦闘中に近くのモンスターが襲ってくることがなかったのは運が良かったのかな。

 ポイズンスパイダーの近くで一度戦闘になったけど襲ってくることはなかった。

 多分だけど罠に掛かった相手しか狙わないのかも。


『ようやく着いたー』


『この先がボスですね。方角的に植物エリア2への道で間違いないかと』


 蜂の巣からここまで殆ど走りっぱなしだった。

 私は飛んでるから疲れてないけど2人は大丈夫なのかな。


『ちょっと休憩してからにする?』


 そう聞くと2人が頷いたので近くの茂みに移動すると2人は座り込む。

 やっぱり疲れてたみたい。

 氷で器を作ってみる。

 そこにシュティが魔法で水を出し入れる。

 ルナがその中に果物を入れた。

 3人が同じ事を考えたみたいで顔を見合って笑いあった。


『ぁ、お姉ちゃん飲み物にも氷入れてー』


『すみませんが私にもお願いします』


 2人は街から持ってきていた飲み物を取り出し氷を欲しいと言われたので作って入れる。

 思った以上に暑いところなので氷が作れるのは便利すぎる。

 ルナが切り分けてくれた果物をつまみながらそんな事を考える。


『休憩を終えたらボスですがどんなのがでるんでしょうね』


『虫と木が混ざった奴とか?』


『植物が寄生した虫ですかね』


『うーん、行ってみないとわかんないねー』


 ボスの予想したりしながら休憩した。

 休憩に取り出した果物と飲物を摂り終えるとボスに挑むために移動する。

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