七十四話 疑心暗鬼
簡単なあらすじ『ログマ、王都に戻る』
ラコールと言う店で男の酔客に絡まれたログマ。
だがその話に食い付き、耳を貸した彼は今……一体、どうしたと言うのだろう。
自らそうすると決めたにも関わらず、再びうんざりとした表情をし。しかもその上、それを隠す事も無く顔に貼り付けているのだった。
「それでな!俺のお袋がよぉ……!」
しかしログマの面、辟易した様子。その一切に男は未だ気が付かずにいるようで、彼は話を続ける。
「分かった分かった!!
アンタのお袋の話はもう沢山だ!!
ボソリ(ったく……〝あの話〟が聞けるかと思ったらコイツ、お袋の話しかしやがらねぇ……)
じゃ、俺はそろそろ帰るからよ。
その話は他の奴に聞いてもらうんだな……」
その時、限界となったのか突然にもログマが言い。
彼は今度こそ一息に果汁を飲み干すと、店を後にしようと小銭を数え始めた。
どうやら、例の顔は男の話が原因だったらしい。
ログマは彼が期待通りの話をしない事に腹を立て、そのような態度でいたと言う訳だ。
酔客に期待など、する方が間違っていると言うのに……
「えっ……」
すると途端に男は焦り始め、とある方向を見遣る。
そこには男と同じく、焦ったような様子の兵士が数名おり。
彼等は、何故だか一人が店の厨房へと走り。
もう一人が何故だか男へと首を左右に振り、手にした懐中時計を必死に指差して見せるのだった。
男へと向けて、まるで『もっと時間を稼げ』とでも言いたげに。
そんな兵士達がした何かしらの合図は無事男に伝わったようで、彼はログマを引き止めようと再び口を開く。
「ちょ、ちょっと待ちなよ兄ちゃん!!
ええと……こ、この店の『魔物肉のマリナード』は絶品なんだ!!シメに食べていかなくても良いのかよ!?一生後悔するぜ!?」
「いらんいらん、アンタの話でもう腹一杯だ。
おいマスター!金はここに置いとくからな!」
だが今度の話は、ログマの興味を惹くには少々魅力に欠けていたようだ。
彼は卓の上に小銭を置き、そのまま席を立とうとする……が。
「それじゃあご馳走さん……って、は!?
な、何すんだよアンタ!?どう言うつもりだ!?」
それはある者によって阻止されてしまう。
そして、そのある者とは……いつの間に、二人の背後へとやって来ていたのだろう。
何と、店主であった。
彼が立ちあがろうとしたログマの両肩を押さえ、半ば強引に彼を席へと戻してしまったのだ。
次に店主は、動揺のあまり声を上げたログマにこう言う。
「お客さん、勘定にはまだ早いぜ。
デザートの用意が出来るまでもう少し待ってな」
「俺はそんなもん頼んでないぞ!?」
だが、それでログマに平常心が戻るはずもないと言う事は、言うまでもないだろう。
「……これで良し!
ふぅ、何とか書き終わったわ!
後は、これを飲んで…………うっ!!
あ、相変わらずマズいわね……」
平常心を欠いたログマ、それはつまり非常。
彼は今……緊張の中にあるのだ。
「……とにかく、俺はそんなもん頼んでねえからな!?
金は果汁の分だけだ!!ほら、ここに置いてある分!!それ以上は出さねえぞ!!
だからマスター。これで俺はもう帰るからよ、アンタはさっさとその手を退けてくれねえかなぁ……!?」
本来、緊張は不安を呼ぶ。
しかし彼の場合は怒りを孕み、また別のあるものへと変わりつつあった。
「心配すんなお客さん、デザートは俺からのサービスだ!!」
「なあ兄ちゃん、マスターもこう言ってる事だしさ。もう少しだけ待っても罰は」
「だ、か、ら!!それでもいらねえもんはいらねえって言ってんだよ!!そこの酔っ払いにでもくれてやりな!!」
「まあまあお客さん……」
「まあまあ兄ちゃん……」
そして、怒りの許容量が限界となったログマの緊張は遂に爆発し。
「だーもう!!うるせえなさっきから!!
一体全体、アンタらは俺をどうしたいんだ!?
…………まさかお前ら。
誰かに頼まれて、俺をここに縛り付けておこうって魂胆じゃねえだろうな……!?」
憤怒と姿を変えたそれは不穏かつ物騒な気を放ち、周囲を、場を包み込んだ。ログマは背嚢の中から短剣を取り出す。
……人は、それを剣呑と呼ぶ。
だからこそ非常なのだ。
「えっ……い、いや!!そんな事は……!?」
「もしや、気付かれたか……!?」
そうして、傍から見れば。
『性の悪そうな男が酔客と店主にいつ切り掛かってもおかしくは無い』と、言うような状況がログマによって作り上げられた。
いや、むしろ今のこの状態はそうとしか捉える事が出来ないはずだ。
事実、幾人もの客が目立たぬようこそこそと席を立ち、その場から逃げ去るのが見えた……
「よし!今度こそ準備完了ね!
それじゃあ…………いくわよ!!」
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