五十八話 兄 2
・ベスカ王子
キジカとは半血の兄妹という間柄である王子。
彼の持つスキル『聖戦士』は非常に優秀なものであり、戦闘面は勿論、自身に向けられたあらゆる障害をも弾き返す。
簡単なあらすじ『キジカとログマ、ベスカの正体を知る』
「……へっ、何言ってやがる。
死ぬのはテメーだ!!
ふざけた研究諸共終わらせてやるよ!!」
彼の言葉を借りるならば。
『ドス黒く』染まったその男、ベスカ。
キジカとログマがそれを確信する頃にはもう。
羅刹と成り果てた王子は二人へと切先を向け。
対する性悪はベスカに啖呵を切り、少し先の未来への覚悟を終えていた。
そして、それが意味するのは……
まもなく最後の戦いが幕を開けると言う事、ただ一つである。
……かと思いきや。
投げられた言葉にベスカが反応し。
彼はログマへと、〝ある話〟を始めた……
「ふざけた、研究?……ああ、お前も協力してくれたあの『転生者についての研究』の事か」
「……あ?何言ってんだ手前?
一体俺がいつそんな研究に協力したって」
「何を今更、〝常日頃から〟そうしていただろう?
「……!?
じゃ、じゃあ……俺がさせられていた……裏方の仕事ってのは……」
「何だ、漸く気が付いたのか。
お前が裏で動いてくれたからこそ、随分と楽に事が運んだと言うのに……そうだ、最後に礼を言っておかねばならんな。
感謝しているぞロク・ログマ。
あの時から、ずっと……父上も、この私自身もな」
「国王も、お前も…………!?
お前、まさか……クソッ!!
あの頃から国は腐ってたって言うのかよ……!!」
もしかすると、ベスカは。
勝利をより確実なものとすべく、まずは相手を混乱に陥れようとそうしたのかもしれない……とは言え、真実は彼の中にしか無いが。
ただどちらにせよ、それは成功してしまった。
先の話を聞かされたキジカもそうだが。
何より、ログマが平静を欠いてしまったのだ。
怒りの中にも苦悶のような表情を見せる、彼のその顔が一番の証拠である。
……が、無理もないだろう。
ログマは嫌悪するのは当然とも言える、双子の未来を、肉体を、精神を……全てを奪ったあの『転生者についての研究』。
それに自身が加担していたと言う事実に、たった今気付かされてしまったのだから……
そうして、ログマは徐々に勢いを無くし。
顔を青くしたかと思うと、次はキジカへと添えたはずの手を宙に漂わせ始める……それはまるで、光を失い混迷する夜盗虫のようであった。
……だが、今度はキジカがその手を掴んだ。
彼女はログマに手を差し伸べ、絶望から掬い上げ。光が無いのならば共に探そうと。
彼の手を取り、そして声を上げたのだ。
以前の彼を真似るかのように、ログマ以上の強い怒りをもって。
「大丈夫よログマ!アナタは悪くないわ!
悪いのは全部あの男よ……!!
もうあんな奴、お兄様とは呼ばない……本気でぶっ飛ばしてやるんだから!!
さあ、やりましょうログマ!!
さっさとアイツを倒して博士を助けに行くわよ!!」
「キジカ…………ああ、そうだな。
ここまでされちまったんだ。
復讐はきっちりとしてやらねえとな!!」
彼女の気持ちは、想いは。
しっかりとログマに伝わったようだ。
そうして今度こそ、最後の戦いが始まる……
先に仕掛けたのは二人だった。
ログマは掌に隠した毒魔法の因子を。
キジカは手の甲に描いた魔法陣を。
互いに互いの術を敵に悟られぬよう固く繋ぎ合わせ、覆っていた自身の手を離すと共に攻撃を繰り出したのだ。
そうしてログマは拳大の毒塊をベスカへと向けて放ち、キジカは王子の剣を奪い取るべくオブジェクト召喚を発動させる……
だがしかし、召喚は何故か不発に終わり。
性悪の毒魔法もベスカへと当たる直前、途端に消滅してしまった。
「何!?俺の魔法が……!?」
「ど、どうしてなの!?私はモノなら何だって召喚出来るはずなのに!?」
これには流石の二人も動揺を見せる。
すると、それを見たベスカがただ一人平然とした様子で剣を下ろし、自身を見廻すようにしながら口を開いた。
「聖戦士とは素晴らしいものだ。毒は愚か、こちらへと向けられた魔法さえも無効としてしまうのだからな。
やはり、この私こそが王となるに相応しい……お前達もそうは思わないか?」
どうやら、先程の事象はベスカの持つ性質のようなものが原因であったらしい。
彼の言うように、その『聖戦士』というベスカのスキルこそが彼女達の攻撃を弾き、掻き消してしまったのだ。
「いや……それならむしろ都合が良いぜ!!
テメーだけは真正面からボコボコにしてやりたいと、さっきからずっと思ってたんだからなぁ!!」
だが、ログマはまだ諦めていなかった。
彼は冷や汗を誤魔化すようにして口元だけを微笑みの形に歪めると、ベスカへと懐から取り出した短剣で切り掛かったのだ。
そうして始まった、ベスカとログマとの剣術勝負。
それは性悪が間合いでも、得物でも不利かとばかり思われたが……そうではなく。
むしろログマは相手との距離をじりじりと詰めて接近戦へと持ち込み。長剣の利を殺し。一方で自身は技術と機敏な動作、本領を発揮する短剣。
それら全てでベスカを押し、徐々に圧倒し。
そして最後には。
「ログマ!今よ!」
「流石だぜキジカ!!」
キジカが王子の頭上に岩を召喚した事によって生まれた一瞬の隙に乗じて、相手の首元に剣を突き付けてしまったのだ。
それはつまり、二人の勝利を意味する……ログマもまたその事を理解し、ベスカへとこう語り掛けた。
「おいおい、聖戦士様がこの程度かよ?
これなら最初から真剣勝負にしとけば良かったかもな」
性悪の挑発的な発言に対して、今度はベスカが返答する。
しかしその顔には何の変化も無ければ、脂汗一つ垂れる気配も無かった……異様にも。
「ああ、完敗だ。七割程の力は出していたつもりだったが、油断した。まさかここまでとは思わなかった。
実に素晴らしい……ロク・ログマよ。
また騎士として働く気はないか?今度はその実力に見合った席を用意すると約束しよう」
「あ?今更勧誘かよ?
……ま、それも良いかもしれねぇな。
だが悪いな王子様。
そうするにはまずアンタに席を空けてもらいたいんだ……
俺はそこに、アンタの妹を座らせるつもりなんだからよぉ!!」
だが、そのような誘惑などログマには効かず。
彼はベスカへと刃ではなく拳を向け、それを振り上げる。
「フッ、そうか。
やはり断られてしまったか……
どうやら『アレ』を用意していて正解だったようだな」
…………その時だった。
ベスカが呟いた直後、その背後より放たれた魔法。
それがログマを直撃し、彼はキジカのいた辺りにまで弾き飛ばされてしまったのだ。
「ログマ!!」
「クソッ……まだ仲間がいやがったのか!!」
「その通り、お前達を始末するには適任の者だ。
さあ、出て来い……………………」
そうして、現れたのは……
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