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五十六話 旅の果てに

簡単なあらすじ『キジカとログマ、博士から説教を受ける』




若葉と双葉と言う名の、双子の転生者。

彼女達二人に勝利したあの日から数日が経った。


現在キジカとログマはとある崖、その最上にいた。


「とうとう、こんな所にまで来ちゃったのか……ねえ二人共、本当に行くのかい?今ならまだ引き返せるよ?」


それと博士もだ。


あの日家を失った彼女は漸く重い腰を上げ、二人と行動を共にする事を決めたのである。


と、言うか……そうするしかなかったのかもしれないが。とにかく、そうであるのだ。


「博士、ここまで来てそれは野暮ってもんだ。

アンタも腹括りな、俺達とっくに覚悟は出来てるんだぜ……な、お嬢ちゃん?」


しかし、ログマはそんな博士の言葉に反発しつつそう言い。


「勿論よ!!私は絶対に魔王を倒すと心に決めているんだから!!さあ行きましょう!!博士、ログマ!!


目指すはあのお城の天辺、玉座よ!!

そこに魔王は必ずいるわ!!」


こちらもまた反発し、だが一方で性悪に賛同して見せたキジカは彼と共に正面を見据える。


…………旅の果て。

目前に迫った、魔王がいるというその古城を。



「とか、意気込んで入ったは良いものの……」


そうして、遂に魔王城内部へと侵入した三人は。


魔物は愚か生物の気配すら何も無い、嫌に物静かな通路を歩き進めていた。


「こうも静まり返っていると、ちょっと拍子抜けしちゃうわね……」


その胸に仕舞い入れたはずの緊張が、早くも沈静それに触れ心配や不安と言ったものに変わりつつあるのか。眉根を寄せたキジカがそう呟く。


「それどころか、正面通路だって言うのに罠の気配なんかも一切感じないな……一体、敵の大将はどう言うつもりなんだ?」


「間違えて無関係な他所様の城に入ってしまった……とか、だったりして?」


だがそれはログマ、博士の二人も同様であった。


彼等もまた口々にそう言い、肩透かしを受けた相手である魔王を探し求めるかのようにして周囲をきょろきょろとしている。


「う〜ん、流石にそれは無いと思うけど……そ、そうよねログマ?」


「あ、ああ…………多分な」


また、だからこそ。


今回ばかりはあの性悪でさえも、キジカからの問いに対して曖昧な返答をする事しか出来なかった。


それもまた、張り詰めた緊張の糸が解けつつあるという事の証であろう……そう、三人の緊張それは今にも弛緩するその直前にあったのだ。


まだ、この時までは。



それから暫くした後、三人は正面通路を更に奥へと進んだその場所で足を止め、目を留めた。


いや、順序としては『目を留め』、次に『足を止めた』と言うのが正確だろう。


三人はそこにあったものに目を釘付けにされてしまったのだ。


この場所にあるはずがない、予想すら出来なかった。それ程奇妙なあるモノを見た事によって。


「……これって」


「……なあ博士、もしかしてアンタが魔王だったのか?」


キジカとログマはそう言い、今度は博士へと視線を向ける。それも、ややゆっくりとした速度で。


そしてその鈍重は、疑念を載せていた事によるものだ。


だが、無理もない……何故ならば。


「馬鹿言わないで。もしそうなら国家研究員になんかなってないよ。


まあでも、気持ちは分かるよ。

この城の中に、こんなにも大量の……


しかも、〝アタシとそっくりな……人形?〟があったとなれば、そりゃアタシが魔王と疑われても仕方ないよねぇ……」


そう、博士も言ったように。

そこにあった奇妙なモノの正体、それが。


大量の、また彼女と瓜二つの姿形をした。

つまりは、対転生者用生物と酷似した人形のようなものであったからだ……



とは言え、それは博士と違い命までは宿していないらしく。その全てが機能を停止したまま順序良く並び、佇んでいる。


だがしかし、むしろその様が殊更に古城を不気味に彩り、またそのような雰囲気を醸し出すせいで。


数分が経過しても尚、三人はその場を動く事が出来ずにいた。


……と、その時だった。


突然にもちりんと一つ、鈴のような音が周囲を木霊し。


「驚いたか?先輩…………いや、元研究室長。


アンタがいなくたって、対転生者用生物ソイツらくらい俺には簡単に作れるんだぜ!!」


直後、何者かの声が響いたのは。


そしてそれは、大量の人形達の中からではなく。


三人の背後より聞こえた……そこで皆が弾かれたように振り返ると、そこには。


「な……!?お、お前は確か主席研究員の、ギーラ!!」


「覚えててくれたんだな、先輩!!

そんなナリでも脳味噌ソッチの方は健在らしくて安心したぜ!!


だが、今はアロジェウスと名乗ってるんだ!!今度からはそう呼んでくれよな!!


研究室長兼、四剣最後の一人『死霊術師』アロジェウス様ってなぁ!!」


博士がギーラと呼んだ、黒色のローブに身を包む銀髪の青年……それと。


彼を守護するかの如くその前方に立つ。

黒ずんだ身体に、輝きの無い虚ろな目をした、赤髪の女騎士のような者が三人へと大槍の先端を向けているのだった。


そう、術師とその従者……いや、死霊と成り果てた彼女が。



「おい、お前も挨拶してやれ!!」


そこでまたアロジェウスが声を上げた次の瞬間、三人のうち一人へと狙いを定めた死霊の大槍は博士へと向けて素早く振るわれ。


それは切先すら外れたものの、彼女の身を強く打った。


「うっ……!!」


そうして槍の一撃を受けた博士は、遥か後方にあった壁に叩き付けられただけに止まらず。


それを突き破り、奥に姿を消した。


「さあ行くぞ!!俺達の獲物はアイツただ一人だ!!」


すぐさま鈴の音を鳴らしてその後を追う死霊と、その主と共に。


「「博士!!」」


突然の襲撃に戸惑うも、博士を助けるべく自らも駆け出すログマとキジカ。


だが、そんな二人を止めたのは。

誰もいなくなったはずの、背後から再び響いた何者かの声……


「全く、騒々しい奴だ。

久方振りの再会くらい、静かに出来ないものか……せめて、私達はそう有りたいものだな。


なあキジカよ、お前もそう思うだろう?」


そしてその者の登場に、今度はキジカが声を上げる事となる……何せ、そこにいたのが。


「お、お兄様!?」


金髪の美男、もとい。

彼女の兄、ベスカ王子であったからだ。

・アロジェウス

『死霊術師』の異名を持つ、四剣最後の一人となる男。

職業はネクロマンサーであり、またそれを応用し人格乗っ取り型転生者の召喚方法を編み出したのもこの男である。

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