五十話 協力者
簡単なあらすじ『キジカ、オブジェクト召喚を行う』
「さあ!『オブジェクト召喚』よ!!」
ログマに促され、キジカの行ったオブジェクト召喚は。
光り輝く魔法陣を契機として、〝ある物〟の位置を移し変える……
「うわ、眩し…!!」
それはあの時のような大岩でも無ければ。キジカの持つ品でも、ログマの持つ布製の袋でも、はたまた若葉の大剣でも無かった。
狙いは、双葉の持つ杖ただ一つだ。
そして……
「って、あれ?双葉、杖どうしたの?」
「…………え?」
それは成功したようだ。
キジカが召喚を行うと同時に発せられた眩い光。
それが彼女から双葉へと位置を移し。
直後、得物が包み込まれたかと思えば。
次の瞬間にはもう、彼女の手にあったはずの杖は忽然と姿を消していた。
だが、双子にとってそれは予想の遥か彼方。
その時の若葉も、双葉もまた。突然の出来事を理解しても尚停止したままであった。
思考は追い付けど、それ以外の全てが遅れてしまったのだ。
窮地を目の当たりにした事さえ無い、彼女達の辞書には。それを乗り越える方法など何処にも書き記されてはいなかったのだから。
しかし、そうしているうちにも時は進み。
「ふぅ……ひとまず成功ね。
あの子の持ってた杖は、その袋の中……
博士の家に召喚出来たと思うわ」
「流石だぜ、キジカ!!
しっかり役目を果たしてくれたな!!
後はあの杖が、アイツの込めた魔力と落下の衝撃で……」
突如、ログマの手にある布袋から爆鳴が響いたかと思うと。それはまるで、仕事を終えた大砲のように。
その中から雲煙を吐き出すのだった。
「予想通り、暴発したようね……ごめんなさい、博士」
その直後であった。
ログマにとって狙い通りの変化が起きたのは。
あれからただひたすらに、煙筒のようにもくもくと煙を吐き続ける布製の袋。
そこから雲煙に混じり、突然にも何かが飛び出して来たのだ。
それは小袋とはまた別の、それよりも二回り程大きな巾着のような物であった……いや。
正しいが、そうではなかった。
正確に言えば、それだけではなかったのだ。
地に落ちた途端に、巾着がもぞもぞと動き出し。
「…………」
その中から、岩で出来た人形のような人物……もとい、タイヨー博士が無言で這い出して来たのだから。
「ね、ねえ双葉……何、あれ……?」
「さ、さあ……?ロボット?」
それを見、困惑を増す双子。
すると、そんな彼女達を前にした博士は。
「……青臭い、頭陀袋」
仁王立ちしたまま、ぽつりとそう呟いた。
「え?」
「…………」
それを聞き、今度はキジカの頭にも疑問が浮かび、ログマは何故か俯き沈黙を決め込む。
だがそれでも博士は呟き続けた。心做しか次第に大きく、低くなりつつある、静かなる怒りを孕んだ……
加えて、恐らくは背後にいるログマへと向けられているのだろう声で。
「ドラゴンの鱗の残骸……サンドイッチの包み紙……ねえ、ログマ?
人にゴミばかり送り付けた挙句、今度はアタシの家を爆破するだなんてさ……覚悟は出来てるんだろうね?」
『小袋が作れるんだ。なら博士はもっとデカい、それこそ人が通れるようなモンだって簡単に作れるはずさ。
俺はそれに賭ける。
それを使って、博士をこっちに誘い出すんだ。
やり方はこうだ。
中に何かヤバいものを……例えばそうだな。
転生者の魔法をぶち込む、とかか?
とにかく、そういったモンを放り込んでやれば、アイツはさっき言ったようなやり方でこっちに逃げ出して来るだろう……って寸法よ。
で、お嬢ちゃんにはその『ぶち込む役』を任せたいんだ。
何、心配するな。そうすればきっと勝てる。そう、アイツさえいればな。だからしっかり頼むぜお嬢ちゃん?
ああそれと、お嬢ちゃんのスキルはなるべく使わないようにしておいてくれ。間違っても戦闘で使ったりはするな。
まあ、アイツら戦闘慣れしてないだろうから一、二回くらいなら大丈夫だろうが……それでも、お嬢ちゃんの特技のクセ何かがバレるのだけは絶対に避けたいんだ。
そしたらもう、俺達には後がないんだからな……
ん?博士は普通に、部屋の扉を開けて逃げるんじゃないのかって?
それも問題無いさ。こんな真夜中に爆発のあった建物から魔物みたいな奴が出て来たら、例えソイツが「やったのは自分じゃない!」って言い張っても信じる奴なんていないだろう?
な?だからそうなった場合、アイツの逃げ道は一つしかないんだよ。どうだ?俺の作戦は完璧だろう?
……え?
「博士に許可は取ったのか?」、「そんな事したら博士は怒るんじゃないか?」
…………おっと。
さあお嬢ちゃん、そろそろ行こうぜ。
作戦開始の時間だ!!』
……などと言うように。
少し前に下衆の話した目標。
『博士を誘き出す』は、予定通り恙がなく完了した。
だが、あくまでも完璧なのは博士がこちらへとやって来るまで、そこまでであり。
これより先は完全なる未知の領域だ……これからどうなるのかも分からなければ、敵である双子は当然ながらまだぴんぴんとしている。
……では、それでは。
ログマは一体、ここからどうしようと言うのだろうか?正直な所、博士がいたとてどうなるとも思えないのだが……
そして、そのように無知な自分が今出来るのはただ一つ。
ログマの言葉、博士の背中。それを省み、家を失った者を思い。胸中でぐるぐると考えを巡らせたキジカが下したのは。
まず真っ先に、全身全霊で被害者である博士に謝罪するという決断であった。
「は、博士!!本当に……本ッ当にごめんなさいぃ!!」
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