四十八話 逆襲 2
簡単なあらすじ『ログマとキジカ、転生者に仕掛ける』
追い詰めたはずの獲物が、何を思ったのか突然背中を見せたかと思えば。
獲物の仕掛けた罠に嵌り、兵士達と分断される事となってしまった若葉と双葉。
だがしかし、それでも若葉は笑っていた。
彼等の策中にあると知りながらも、全て見通しつつも。
そう、敢えてそこに踏み込んだ彼女にとっては。
自身へと真っ向勝負を仕掛けようと言う……いや。
その胸に居座る退屈を、締め出してくれるやもしれぬ存在の出現が堪らなく喜ばしいものであったのだから。
一方で、双葉の方はと言うと。
そんな若葉を横目に、溜め息を一つ吐き出すのであった。
それから少しして、若葉が口を開いた。
「凄いね……お兄さん、それと王女様も。二人共なかなかやるじゃん」
その言葉は今目の前にいる、キジカとログマの二人へと向けられたものだ。
すると、それを聞きログマはこう答えた。縋るキジカを自身の背後に回しながら。
「それは牢馬車を抜け出して来た事に対してか?それとも、指揮官殿の塒をちょっとばかり開放的にしてやった事に対してか?
それとも……」
そこでログマの頬を冷や汗が一つ流れ落ちた。
とは言え、以前にも見た嫌な笑みを彼は浮かべたままだ。
あの時、この男からは用心棒のような印象を受けたが……最低でもそれに見合う程の度胸はあると言う事か。
そう思い、若葉はまるでログマと競うかのようにしてより一層、口元を綻ばせる。
そうして彼女は顔に貼り付けた歪んだ笑みをそのままに、同類の返答を遮り言った。
「橋を壊して兵士とお前達を分断した事か?……って、言いたかったの?
アハハ、全部だよ。
見直したよ、王女様とその用心棒さん。
これならきっと、もっともっと私を楽しませてくれるよね?」
発言の最中にも若葉は体勢を変え、呼吸を整え、戦闘へと向けた準備を始める……が、そこで双葉までもが沈黙を破り、会話に割り込んで来た。
ただし彼女の言葉は、若葉へと発せられたものではあったが。
「若葉、あんまり調子に乗ってると本当にやられちゃうかもよ?」
「それならそれで良いんだよ!楽しければね!
何たって、私にとって戦闘はこの世界唯一の娯楽なんだから!」
そして、会話は二人のものへと姿を変えたかと思えば。
「…………はぁ」
突如として幕を引き。
双葉の吐いた二度目の嘆息を皮切りに双子は構えた。
若葉は身の丈もある程の大剣を。
双葉は朱色に輝く鉱石を先端に備えた杖を。
そう……二人へと彼女達は。引かれたはずの垂れ絹を次は切り落として見せたのだった。
「来るぜ、お嬢ちゃん……覚悟は良いか?」
「え、ええ!!そんなのとっくに出来てるわよ……!!」
「良し、そんじゃあ始めようか。
今回は復讐じゃなく、姉妹を奪われた一人の男による仇討ち……その代行をな!!」
そうして、戦いが始まる……
遂に始まった、二人にとっての死闘は。双子にとっての遊戯は。
戦局の流れが酷く早いものであった。それはもう、幕切れと同じ程に。
何故ならば、すぐに若葉が仕掛けようとログマに飛び掛かって行ったからだ。
無策のまま、思慮の一つも無しに。
そうしたとて全てを跳ね除ける力を自身は持っていると言う、ただ慢心だけを信じて。
だがしかし、彼女の興奮から来る行動が軽挙妄動なのは周知の事実であろうが。それだけでなく独りよがりでもあった。
そのような行為は当然、災厄を招き寄せる……
「さあ、喰ら…………うわっ!?」
そう来るのは予想済みだったからこそ出来たのだろう。ログマの毒魔法が若葉の足元を溶かし。
「ちょっと若葉!そんなに近付かれたら私の魔法が……ったく、これじゃあ攻撃出来ないじゃん」
遠距離から魔法を放つはずだった双葉が、片割れの所業によってそれを中断させられてしまったのが何よりの証である。
そうして双葉は静観を余儀なくされ、若葉は後退り。
戦いは膠着へと向かう……かと思えば。
そこで毒魔法の生成を始めたログマを……つまり、今はまだ反撃出来ぬと見た若葉は再び、相手目掛けて走り出す。
一方で、彼女のその姿を見た双葉は。
相も変わらず早計ではあるが、今回の判断は誤っていない。どの道、助言した所で耳を貸さぬだろう。
そう考えたのか静止を続けるつもりらしく、駆け出す若葉とは裏腹に彼女は三度目の溜め息をゆっくりとその場で吐き出すのだった。
「ログマ!危ない!」
すると、今度はそれを見たキジカが若葉を止めるためログマの前へと躍り出る。
魔法陣の描かれた両掌を、前方へ突き出すようにして……どうやら彼女はオブジェクト召喚をするつもりのようだ。
しかし、ログマは素早くその手を引き、彼女を後方に押し戻すと言った。
「ダメだキジカ!!お前の出番はまだだって言ったろ!!今は下がってな!!」
「で、でもログマ……!!」
「安心しな。若葉がまた突っ込んで来るのは想定内だからよ」
だが、ログマがそう言い終えるが早いか。
空を断ち……いや、訂正しよう。
空を〝も〟断ち切る一つの風があった。
「……!?嘘、嘘でしょログマ!?
ねえ、嘘よね!?嘘って言ってよ!!」
その直後、キジカは愕然とした表情を浮かべて叫んだ。
とは言え、それもそのはず。
「そ、そんな……ログマ……アナタ、想定内だって……」
先程振るわれた大剣、若葉の一撃によって。
ログマの身体が二つに分かれたのだから。
そうして彼女の悲痛な喚きは送るべき相手には最早届かず、ただただ闇へと溶けてゆくばかりだった……
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