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四十話 齎す者達

簡単なあらすじ『ログマとキジカ、打倒転生者へと向けた作戦会議を始める』




いつしか数名の兵士達が、二人のいる牢馬車の前に寄り集まって来ていた。


キジカとログマが襲撃に向けた計画立てをしていると気付かれてしまったのだろうか。それとも、ただ単に見張る事で襲撃それを未然に防ごうとしているだけなのだろうか。


それを知る術は無いが、とにかく。

あまり、良いものをもたらす兆候でない事だけは確かだろう。


二人は口を固く閉ざし、彼等を見つめ返した。


すると、一人の兵士が二人の前にまでやって来てこう言う。


「アンタ達、こんな所に閉じ込めるような事になっちまってすまないな。


腹は減ってないかい?

詫びにもなりゃあしないだろうが、良かったらこれ食べてくれよ。


近くの農場で採れたオクトって言う木の実らしい。

見た目はアレだが結構美味いぜ?」


「「…………え?」」


そうして、目前にオクトの実なるものを差し出された二人は顔を見合わせると。


そのまま暫くの間、まるで石像か何かのようにして不動となってしまった。


当然、それは果実の所為では無い。


兵士の齎したものが凶兆でもなければ吉兆でも無く、ただただ奇妙なものであったからだ。


そう、それはまるで。

今彼が手に持つ、変梃ヘンテコな木の実のように……



だが、そこで緊張が解れたのか。

それとも、気が抜けてしまったのか。


それは分からないが……こんな時だと言うにも関わらず、ログマをじっと見つめていたキジカは。


そのためか段々と自身の頬が赤く染まろうとしている事を悟り、またそれによって正気を取り戻したようだ。


その証拠に、彼女はすぐさまログマの耳元へと顔を近付け、小声でこう囁く。


「ねえアレ、お詫びだって言ってるわよ。

でも私達をこんな所に閉じ込めておいて、そんなのって……おかしな話だと思わない?」


すると、それを聞いたログマも我に返ったらしく。

彼もまたキジカに顔を寄せ、ひそひそと話し出した。


「ああ……そもそも、〝俺達〟恨まれるような事しかしてこなかったからな……謝罪なんてされるわけがねえ。


とにかく、あれは受け取らない方が良いと思うぜ」


しかし、段々と雲行きが怪しくなり。


「そうよね……って。


それはアナタだけでしょ!何さりげなく私まで〝そっち側〟にしようとしてるのよ!」


とうとう、小声のままとはいえ諍いが始まってしまう……かと思いきや。


「いやいや、俺達今までずっと一緒にいただろ?

そんなもん、何も知らない奴らからすれば『両方意地の悪い二人組』にしか見えなかっただろうぜ?


むしろ、アンタが主犯だと思った奴もいたんじゃねえかな」


「そ、そんなわけ!

ないじゃ…………ない……わよ、ね?」


それもすぐに、キジカが哀愁漂わせる顔をして終了。と言う形で幕を閉じるのであった。


……と、その直後。


そんなキジカとログマの様子を暫く静観していた兵士の男が。


二人の会話が終わったのを見計らっての事なのだろう。何処か困惑したような表情でまた口を開いた。


「ど、どうしたんだ?

何だか、揉めてるみたいだったが……?


……ああ、もしかして、毒でも入ってるんじゃないかって疑ってるのかい?


それなら大丈夫さ、毒なんて入ってないよ。


俺らは皆、アンタ達に感謝してるんだからな。

そんな事をするような奴は一人もいないさ」


「「え?」」


そして、それを聞いた二人は。


「……感謝、してるの?」


「俺達に?」


謝罪だけでなく、感謝までされていると知り。

今度こそ理解が追い付かなくなってしまったのだろう。


再び顔を見合わせ、石化したのは言うまでもない。



二人が天荒竜メデューサの眼から解き放たれたのは、たっぷりと数分の時間を用い兵士が理由を話してくれたその後、漸くであった。


今からそれを簡単にだが説明していくとしよう。


単刀直入に言えば、そこにいる兵士達がキジカ、ログマの二人に謝意を抱くその訳とは……


イフリャの一件が要因となっていたようだ。


何でも彼等は元々、イフリャの率いる部隊に所属し彼女の支持の下、様々な職務を履行していたそう……なのだが。


イフリャは敵としてもそうであるが。

どうやら上官としてもまさに難敵であったらしく。


前にも言ったが、無い実力を高価な武具で誤魔化し。

とは言え本人は自覚しておらず、それを自身の真価だと豪語し。そのように振る舞い。


それだけならばまだ良かったのだが。

部下には高圧的な態度すら取っていたのだと言う……


しかし、そんなイフリャの。


〝重大な使命〟を阻止し、失墜させ。


また、察するにそれが原因なのであろう。


彼女が姿を消した……いや。

彼女それを消し去った、三人の者達がいた。


そして、その者達とは。


指名手配されているという男と。

妻か妾か、とにかく何故だかそれに寄り添う女。

最後の一人は何と……白い髪をした童。


とにかく、そのような三人組だったのだと言う。


当然、軽率とは思いながらも。

兵士達はそれを喜び、中には上官の失踪を知り祝杯をあげる者すらいたそうだ。


また、そんな彼等はこうも思っていたらしい。


『我々を解放してくれたその三人には、それがどんな者達であろうとも。出会えたその時は必ずや手を差し伸べてやろう』と。


……そう。

彼等はそれを実行しただけに過ぎなかったのだ。


自分達に告げられた次の任務。

それはとある者達の殲滅、最低でも身柄の確保。


そして、目標は二名の男女だと言う……おや?


一人足らぬが、もしやそれは……

いや、きっとそうだ。手配書と良く似ている。


……ああ、間違いない。


それならば、世間一般からすると悪人なのだろうが、しかし。


それは、善人の一面も持ち合わせているはずだ。

少なくとも、我等から見れば……


そう、思案した上で。



……とにかく。

つまりは、そういう事なのである。



「いやぁ……まさかそんな風に思われてるとはな。

やっぱ良い事はしておくもんだぜ」


「いや、してないわよ?してないからね?


と言うか、どの口が言ってるのよ……人に嫌がらせばっかりするクセに」

『オクトの実』

まるで『茹でたタコ』のような形をした木の実。その見た目や食虫植物という事もあってかこれを何の手も加えずに食べる者は少ないようだが、それでも味はなかなか悪くないらしい。

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