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調べたい

 グレイが、狂戦病を使えるスキルにすると言い放った。

 そして、それにひよたんが関係するらしい。


「一応確認ですが、あのひよたんと契約したのはあなたですよね?」


「そうだけど……。あれってさ、獣人がメインで使う魔道具だよな。何で俺がひよたんの主だって分かんの?」


「ひよたんはある能力の持ち主にしか使役できないからです」


 そういえば、スバルもそんなことを言っていた。

 アカツキも使役するひよたんがいることを考えると、何か彼と共通の能力があるのだろうけれど。


「……何の能力?」


 全然思いつかない。

 素直にグレイに訊ねると、彼は少し考え込んで、それから首を振った。


「その話をするとちょっと長くなりそうです。それよりも、ひよたんを有効に使えるようになるのが先でしょう。……あなた、ずっとひよたんをユニに持たせているようですが、思念を送ることはできますか?」


「やったことないけど、呼び寄せることはできると思う。なんとなく繋がってる感はあるんだ。ただ結構気ままで、何もないときは好き勝手動いてる。ユニには自分からついていってるみたいだ」


「ひよたんに何か指示は出してます?」


「指示、ってほどじゃないけど……。ユニやスバルに何かあったら守るんだぞ、とは言ってある」


「……平和な状態ではその程度か……」


 グレイは独りごちて、あごをさすった。


「ターロイは、ひよたんの戦闘形態を見たことは?」


「俺のひよたんのは見たことないな。アカツキのひよたんのは見たけど」


「……アカツキのひよたん? ちょっと待って下さい、そんなものをどこで?」


 あっ。不用意なことを言ってしまったかもしれない。

 あそこはミシガルの極秘の祠。グレイの今後の行動次第では、後でウェルラントにこっぴどく怒られそうだ。


 どうしようかと口を閉ざしていると、彼は勝手に推理を始めた。


「私にすぐに答えられないということは、誰かに意図的に隠されている場所か……。そして私が知らない場所ということは、相応の情報制限ができる権力と財力がある人間による隠蔽……。なるほど、あの男か。ミシガルに前時代の遺跡を隠していたのですね」


 それだけでほぼバレた。


「アカツキのひよたんの戦闘形態を見たからには、戦うことになったのでしょう? もしかして、苦戦してカムイの助力を仰いだから直接会うことになったのでは? そうでなければ、あの変態クソ野郎がカムイを他人に会わせるはずがない」


「……ハイ、お話しします」


 もはや隠しても無駄だ。ターロイは仕方なく、事の顛末をグレイに説明した。




「ほう、あのスバルという娘、獣人だったのですね。これは興味深い。ユニと合わせて、どうにか血を採れないものか……」


「目を輝かせるな。とりあえずさ、その祠にはまだアカツキが眠ってるんだよ。そのひよたんも部屋に戻っちゃったんだ」


「アカツキのひよたんは、戦闘形態は黒かったんですよね?」


「色? ああ、黒だった」


 他の色もあったかもしれないが、暗がりで戦っていたため黒にしか見えなかった。


「色が何?」


「ひよたんは色によって性格や属性が違うんです。あなたのひよたんは何色なのか、楽しみですね。……これは、詳しく調べてみたい」


「ひよたんは今見たところでただの黄色いふわふわのかたまりだぞ」


「本体を調べるのは後でいいです。それよりも、あの男が持って帰ったという古文書が調べたい。獣人に関する文献もあったのなら、なおさらです。きっとひよたんに関する情報もあるはず……そうだ、薬を作りを名目にミシガルに赴いて、書庫に忍び込もう」


 何か良からぬ事を考えている。


「ちょっと、行くならちゃんとウェルラントに断ってからにしてくれよ。バラしただけでも叱られそうなのに」


「頼んだって無駄でしょう。あの男心狭いから」


 それはきっとグレイに対してだけだと思う。

 俺が頼んだときは、少し待たされたけど普通に書庫に入れてくれたし。


「それよりさ、俺の魔道具再生の能力が戻ったんだからそっちを気にしてくれよ。この後がまた行き詰まってるんだ」


「次の封印先ですか? 難しいですね。アカツキの隠し部屋の鍵も探さないといけないんでしょうし。……祠に、何か次のヒントみたいなのは無かったんですか?」


「次のヒントか……。あの戦いの後はみんなぐったりで、ちゃんと周り見てこなかったからなあ……。そうだな、今度ミシガルに見に行ってみるか」


 結局、自分もミシガルに行くことになりそうだ。

 仕方がないので行ったついでに、グレイが忍び込む前に書庫に入る許可をもらっておこう。







「……そんなわけで、祠と書庫に入る許可が欲しいんだけど」


 後日、ターロイはウェルラントに許可を取りに来ていた。拠点には研究施設的なものがないので、グレイはミシガルに泊まり込みで薬を作ることになっている。

 それに先だって、今のうちに手を打っておく算段だ。


「お前が同行する場合に限り、グレイを入れても構わない。あの男は性格は最悪だが、優秀なのは間違いないからな。何か収穫があったら教えてくれ。あとは、私とあいつが鉢合わせしないようにしてくれればいい」


 ウェルラントはグレイにバラしたことを咎め立てすることもなく、条件付きだがすんなりと許可をくれた。

 うん、やっぱりこの人は心狭くない。


「……ただし、カムイとの接触は一切禁止だ。特にグレイが探し回るだろうから、絶対阻止しろ。祠と書庫以外に行こうとしたらしょっぴくからな」


 いや、心狭い……か?

 まあいい。とりあえずグレイに伝えて、まずは祠を調べに行こう。

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