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モネ出立前

 モネの地下遺跡に突入するメンバーは、ディクトとティム、そしてロベルトとイリウに決まった。


 なぜイリウがいるかと言えば、自分からターロイの拠点に押しかけて志願してきたのだ。モネの地下に何があるのか自分の目で確かめたいらしい。

 ロベルトは純粋に戦力としての起用だ。


 今回は女の子二人は留守番にした。

 拠点を守る要のディクトを連れ出したため、その代行者にイアンをあて、スバルを戦力として残したのだ。万が一何かあっても、どうせ騎士団が入れ替わり立ち替わり常駐しているし、そこにユニの回復とブーストがあれば守りは十分だろう。




「わくわくしますね~! 遺跡の罠、まだちゃんと生きててくれるかなあ」


「いや、できれば死んでて欲しいんだけど。……ところでそれ、何を持ってきたんだ?」


 相変わらずテンション高めのティムに突っ込みつつ、彼の持つ布袋と妙な道具に目を向ける。金属の筒に握りとトリガーが付いているそれは、小型の大砲のようだった。


「罠撃ち出し用のランチャーだよ。この間ターロイが俺の部屋に来た時、鋳型で成形してたやつ。最近ずっとこれ作りにはまっててさあ。最新バージョンなんだ」


 どうやらあの部屋にある溶鉱炉はこのアイテムを作るために設置したもののようだ。……まあ、その理由が分かったところで彼が変人であることに変わりはないが。


「そんで、この袋には色々罠を詰めたカプセルが入ってるんだ。グレイさんが作ってくれた回復薬も入ってるから、安心して罠に掛かっていいよ!」


「罠に掛からないためにあんたを連れて行くんですけど……」


 本末転倒もいいとこだ。ちょっとうんざりするグレイの気持ちが分かるな。


「ところでこのカプセル、以前見た投擲用とまた違うみたいだが、指弾の弾と同じものか?」


「まあ、ベースは指弾用と一緒だね。投擲用は当てた時の衝撃だけを考えればいいけど、これと指弾用は撃ち出しの衝撃も加味して材質を変えてる。その上で中の物質の品質を保持したり、用途によって一部強度を変えたり、試行錯誤してできた自信作だよ」


「……そういや、カプセルと言えば、もしかしてこれもあんたが作ったもの?」


 ポーチから、グレイが溜め込んでいたターロイの血液の入ったカプセルを取り出す。

 それを見たティムは当然のように頷いた。


「グレイさんが作れと言ってきたやつだね。それも随分作ったよ。中身の成分変化が起きないように言われてさ、研究頑張ったんだ。ただ、これには前時代の技術が入ってるから、一般向けには売れないんだよね。だからターロイ、俺の罠開発のために、指弾の弾いっぱい買ってね!」


 うーん、天才とナントカは紙一重。

 その全てが罠への情熱から来ているのだから恐れ入る。


「相変わらず、すげえのかアホなのか分かんない奴だな、ティムは」


 イリウがこちらの会話を聞いて苦笑した。


「イリウもティムと知り合いなのか?」


「グレイ繋がりでしばらく融資をしてたからな。こいつ商才は全くないから俺が罠販売の仲介もしてたんだ。街村の猟師や農家に評判が良くて、すぐに返済終わったけど」


「イリウさんの仲介がなくなったら売れなくなっちゃったけどね」


「それは俺が関わらなくなった途端、お前が一般向けからどんどん趣味に走ったからだろ。毒霧とか吊り天井とか、農家は欲してないから」


「……うん、それは間違いなく欲してない」


「ええ~このロマンが分からないかなあ」


 ティムが心底不思議そうに首を傾げる。

 でも彼のロマンを分かる人間なんてそうそういないだろう。


 そうして他愛もない話をしていると、ターロイの元にディクトが寄ってきた。


「今回、戦闘になったら俺の指示采配でいいんだよな? だったら、そっちの二人のスペックと使える戦術知りたいんだけど」


 おっと、失念していた。


「ああ、そうか。じゃあ直接聞いてくれ。ティムの持ってる罠も種類によって使いようがあるだろうし。俺はイリウの戦術も詳しく知ってるわけじゃないしな」


「了解」


 ディクトはすぐにティムとイリウの方に行って話を始める。

 これはチーム全体を把握し、最適解を出すためには間違いなく必要な作業だ。十分に時間を取ろう。


 彼らの情報交換の完了を待って後ろに下がると、その様子を眺めていたロベルトと目が合った。

 いつも通りの無表情だが、なんとなく口端が上がっている気がする。


「何か、嬉しそうだな」


「ディクトの采配で戦うのは久しぶりだからな。お前はあいつの采配で戦ったことはないのか?」


「以前一緒に戦ったときは俺主体だったんだ。ディクトにそんな能力があるって知らなかったし、あの頃は他人に頼るのが嫌だったし」


 ディクトと共闘したのはハイザーと戦った時だが、結局自分だけで終わらせてしまった。助言を仰がなかったのは、今ほど心を許してなかったせいもある。


「だったらきっと、あいつのクレバーさに驚くぞ。ああやってみんなの能力をリサーチしながら、すでに頭の中では技や能力同士の組み合わせを何パターンも作っている。敵が分かっていれば、その段階でどの攻撃に対してどの反撃をするかまで決めているんだ」


「先にシミュレートしてるってことか。そこから状況に合わせて最適解を出すわけだな。戦況を先読みする力もあるのか」


 今回は敵がどんなものなのか分からないけれど、それでもディクトの能力は頼もしい。


「普段はちょっと抜けてる、人当たりのいいおっさんなのにな」


「そのギャップもすばらしい」


「……そうですか」


 そんな話をしているうちに、三人の話し合いは終わったようだ。みんながターロイの回りに集まってきた。


「待たせたな、ターロイ。これで戦闘の幅が広がった。いつでも出発できるぞ」


 すでにディクトの目つきがちょっと凜々しい。すでに気分の何割かが戦闘モードに入っているのかもしれない。


「よし。じゃあ、そろそろモネに飛ぶか」


 これで準備は万端だ。

 ターロイはひよたんを呼び寄せて肩に乗せると、転移方陣へと向かった。

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