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81話 海へ

「たくさんのお肉が集まりましたし、これはもう作るしかありませんね!」

「……!」


 私が突然立ち上がったせいで膝からコロコロと転がり落ちたクリアがちょっとー!とでもいうように抗議をしてきますが、そんなクリアに私はドヤ顔をしながらこう答えます。


「ふっふっふ、クリア、今から美味しいお肉の料理を作るんですよ!」

「……?」


 クリアは下から私の表情を見て不思議そうにスライムボディを傾げますが、私は一度クリアから視線を外してインベントリから調理セットを取り出して使用すると、私のすぐ目の前に前にも見たキッチンが現れました。


 いつ見てもこのキッチンはショボいですが、別に料理を専門でするわけでもないですし、ちゃんと使えるのでそこまで気にすることでもないですね。


「そうですね、牛肉ですから……牛カツでも作りますか!」


 小麦粉とパン粉は前に買っておいてありますし、卵も鶏を狩った時にたくさん手に入れています。


 油についても前に小麦粉とパン粉の時に少しだけ買ってはいたので、材料については問題ありません。


 まあそこまでたくさんはないので多くは作れませんが、別に私とクリアしか食べませんしいいですね。


「現実では常温にするため少しだけ待つ必要がありますが、どうやらインベントリに入っていた状態でもよさそうですね。ならまずは、お肉に塩胡椒を振って、馴染ませて…」


 そうして工程をテキパキと済ませ、準備は完了です。


「そして薄力粉、溶き卵、パン粉をつけたお肉を温めておいた油の中へ、ドーン!」


 お肉が一気に油の中を泳いでいき、辺りには揚げ物のいい匂いが漂います。


「うーん、いい匂いですね!」

「……!」


 クリアも揚げ物の匂いを感じたのか、私の足元付近でピョコピョコ跳ねてとても興奮しています。ですが、まだですよ!


 全体的に揚がったので一旦皿に上げ、一度休ませます。そして数分休ませた後に、先程よりも高い温度に調整した油の中へと再びお肉をドーンといれます。


 今度は最初よりもすぐに揚げるのをやめて、キッチンの台の上に置いてから食べやすい大きさに切り分け、これで料理は完成です!


「よし、クリア!出来ましたよ!」

「……!……!」


 クリアは私の言葉に待ってましたとばかりにピョコピョコ跳ねてこちらへと近づいてきたので、私はそれにクスッとしつつも牛カツを乗せたお皿をクリアのそばの地面へ置いて、どうぞと渡します。


 クリアはそれはもう美味しそうに牛カツを食べていくので、私はそれを微笑ましく眺めつつも、クリアと同じように皿に移した牛カツを食べていきます。


「うんうん、我ながら結構上手く出来ているとは思いますね!」


 揚げ具合がレアくらいなおかげで断面は綺麗な赤色をしており見た目もよく、味についてもこれぞ肉!と言ったしっかりとした味も感じれてかなり美味しいです!


 これはなかなかいい出来ですね!クリアの方も見てみると、美味しいのかドンドンと食べ進め、すぐにお皿が空になっていました。


「ふふ、クリア、美味しかったですか?」

「……!」


 美味しかったー!というかのようにいつもよりも力強くピョコピョコと跳ねて美味しいという気持ちを伝えてくるので、私もそれに思わず頬が緩んでしまいます。


「それならよかったです!っと、メッセージがきましたね?」


 そんなクリアを見つつ、お互いに食べ終わったお皿を片付けようとしたタイミングで何やらメッセージが届きました。


 送り主はどうやらレーナさんのようで、水着が出来たからいつでも受け取りに来てもいいからね〜、とのことでした。


「…なら、タイミングもいいですし、早速受け取りに行きましょうか。クリア、おいで」

「……!」


 私はそう言って立ち上がって出していたアイテムたちをすべて片づけた後、クリアを肩に呼んで近くにあった転移ポイントから初期の街へと転移を行います。


「…では、行きますか」


 転移はすぐに完了し、初期の街に戻ってきました。なので、私は肩にいるクリアと共にレーナさんのお店へと向かいます。


 この街は相変わらず人が多いですし、プレイヤーによる視線もたくさん浴びるのがちょっとだけ大変ですけど、活気が感じ取れるのは少しだけ楽しくも感じますね。


 道中ではそこら中のプレイヤーたちから視線が集まっていますが、それは気にしないようにドンドン歩き続けていると、すぐにレーナさんのお店へ到着しました。


「レアちゃん!待ってたわよ〜!」

「お待たせしました、レーナさん」


 そして扉を開けてお店の中に入り次第、カウンターにいるレーナさんからそう声をかけられたので、私は前と同じようにカウンターにいるレーナさんの元へ向かいます。


「もう出来たのですか?」

「ええ、そうよ〜。特注の水着とはいえ他にもあったやつを調整しただけだし、すぐに出来るからね〜」


 じゃあこっちに置いてあるから着いてきて〜、っと言われたのでレーナさんに案内されるままに着いていくと、そこには前にワンピースを作ってもらった時と同じように白い布をかけられた私と同じくらいの大きさのマネキンらしきものが置いてありました。


「ふふん、これがレアちゃんの水着よ〜!」


 そう言ってレーナさんがマネキンにかかっていた白い布をガバッと取ると、内側には見せてくれたのと同じような見た目の水着が着せられていました。


 メインの色は私の好きな黒色をしており、見た目は今着ているゴスロリドレスのようにトップとボトムにフリルがついているビキニになっていて、とてもキュートな出来に仕上がっています。


 ➖➖➖➖➖

 ゴシックビキニ ランク C レア度 良品(アンコモン)

 DEF+15

 MND+15

 耐久度 100%


 ・水泳強化 自身の泳ぐ速度を上げる。

 

 水に強い素材で作られたゴシック風の水着。フリルがついて可愛く仕上がっている。

 ➖➖➖➖➖


 鑑定結果でもそう出ましたし、とても良い水着なのがわかりますね!


「凄く可愛くていいですね!」

「でしょ〜?やっぱりレアちゃんにはこの水着が似合うと思ったのよ〜!ぜひ着ているところも見せてくれないかしら〜?」

「恥ずかしいですけど……レーナさんならいいですよ。では今試着しますね」

「ええ、あっちにフィッティングルームがあるから、そこで着るといいわよ〜」


 私は一度クリアをおろしてからレーナさんの示した方向にあるフィッティングルームに移動して、中に入り次第先程の水着を試着してみます。うん、驚くほどピッタリですし、なかなか着心地も良いのでとてもいい水着ですね!


「レーナさん、どうですか?」


 試着を済ませた私はそう言ってフィッティングルームの扉を開け、レーナさんに水着姿を見せます。


「あら〜、やっぱり思った通り凄く似合ってるいるわね〜!」

「……!」


 レーナさんはそのような声を上げて賞賛をしてくれます。横にいるクリアもレーナさんと同意なのか、プルプルと震えて感情を伝えてきてくれています。


 自分では似合ってるかはわからないですが、そうやって褒められると嬉しく感じちゃいますね!


「それと、これが上に羽織れるものよ〜」


 レーナさんは私をしっかりと確認した後、インベントリから何やら取り出して私に手渡してきました。


 それは黒色をしたラッシュガードの見た目をしており、装備欄も胴の装備ではなくアクセサリーになっているようで、水着の上からも着られるみたいです。


 それにこのラッシュガードはおそらく布などではない素材で作られているようにも感じますね。多分、なんらかのモンスターの皮でしょうか?


 まあそれはいいとして、これも試着してみますか。


 水着の上からこれを着てみた感じ、このラッシュガードは私からすると少し大きめのサイズのようで、少しだけ袖が余ってますしダボっともしています。いわゆる萌え袖という状態ですね。


 まあこれで戦ったりするわけではないですし、特に問題もなく可愛いので私は気に入りましたね!


「レーナさん、水着やこの上着も作ってくれてありがとうございました!」

「いいのよ〜、今は特に注文もなかったし、こんな可愛い子の水着を作れるなんて役得だからね〜」


 レーナさんは軽く笑いながらそう返事をしてくれました。忙しくはないなら、それは良かったですかね…?


 あ、それとレーナさんに渡そうと思ってたものがありました!お店から出る前に先に渡してしまいましょう!


「レーナさん、こんな素材を手に入れてきたのでいりますか?」


 その言葉と共に私が見せたのは、先程の高原で手に入れたたくさんの羊毛です。


「あら、レアちゃんも高原まで行ってきたの〜?」

「はい、ついさっきまで行ってきてたのですよ!それで、どうですか?」

「そうね〜、この羊毛は今流行っている装備よりも強いものが出来るし、是非買い取らせてもらうわね〜」

「なら、結構あるので今渡しますね」


 そして取引メニューでレーナさんに取ってきた羊毛を全て引き渡し、ついでに水着たちの代金も一緒に払いました。


 ちなみに羊毛を売った代金分は引いてくれたので、水着の代金は全然高くなくてお財布にもありがたかったです。


「では、これでやることは済みましたし、注文の品も受け取ったので、さっそく海に潜ってこようと思います!」


 私は水着から再びゴスロリドレスに着替えた後、レーナさんに向けてそう声をあげます。


「わかったわ〜、また羊毛みたいに何か見つけたら持ってきてくれると嬉しいわ〜!」

「わかりました、その時はまた寄らせてもらいますね!」


 では!と言って私はレーナさんに別れを告げた後にクリアを肩に乗せ、颯爽とお店から出ていきます。


 今の時刻はまだ四時くらいなので、夜ご飯まではまだ全然ありますね。夜ご飯の支度は六時半くらいにログアウトしてからやれば良さそうだと思いますし、それまでは行こうと思ったいた海にでも行きましょうか。


「ふんふふーん」

「……!」


 私は肩にいるクリアと共にレーナさんのお店から街の広場にある転移ポイントまで向かいます。


 その道中ではやはり他のプレイヤーたちからの視線が集まってしまいますが、なんだかもう慣れた自分もいてそこまで気にしないでいけるようになってきました。


「…まあそんなことは無視していいですね」

「……?」

「なんでもありませんよ、クリア。よし、では港町へ…!」


 不思議そうにしているクリアになんでもないと答えてからも歩き続けていると、いつのまにか広場に着いていたので、私は集まる視線は無視して転移を行って港町へと向かいます。


 転移が完了後の港町には来た時はあまり意識してなかったですが、他のプレイヤーもまあまあいるみたいで広場にも複数のプレイヤーらしき人たちがいました。


「…クリア、行きますよ」

「……!」


 私は視界に映っているプレイヤーたちを尻目にクリアへそう声をかけ、初めて港町に来た時同様に海岸付近まで移動します。


 そして海岸に着き次第、レーナさんに作ってもらったばっかりである水着へと装備を変え、そのまま海へと潜っていきます。


 ちなみにクリアも私の肩に捕まっているので、海の中でも一緒ですよ。


 クリアと一緒に海に入ってみた感じ、港から見た通りこの世界の海はとても綺麗で、海岸から少しだけ泳いでみるだけでもすぐに無数の魚の群れが泳いでいるのが確認出来ました。


 しかもそんな透き通るかのような海に、銀色や黒色をした魚の群れが合わさることでなんだか神秘的に感じますね!


 それに泳いでいる私の肩に捕まっているクリアも、その景色にうっとりとしているようで、いつもよりも震えていないのがわかります。


「(っと、景色に夢中になってないでもっと泳いでみますか)」


 私はそう心の中で呟きつつ、海の中をさらに泳いでいきます。まあ途中で海面に出て息継ぎなどはしていますし、沖に出ると危ないとは聞いていたので海岸から近めのところでですけどね。


 そうしてそこからも海の中を泳いで散策をしていると、途中で【水泳】スキルを獲得したので、獲得前よりも泳ぐスピードが格段に上がったおかげで何体かの魚を道具もなしに手だけで確保することが出来ました。


 それと海底に貝などもあったので、それらもしっかりと回収をしました。


 貝はハマグリやホタテにサザエなど、現実のように別れた生息地ではないようで色々とあったので、これらは今度クリアと一緒に焼いて食べるとしましょう!うーん、今からもう待ち遠しいです!


 醤油とかはまだ見かけていないので、それらも出来れば欲しいですね。というか、原材料である大豆とかがあれば自分の手でも作ることは出来そうでしょうか?こちらについても今度探してみることにしますか。


「(そろそろいい時間ですし、この辺で海の散策は終わりにしましょうか…?)」


 そんなことを考えつつ、海の中でも使えた腰元の懐中時計を手に取って時刻を確認してみると、すでに五時近くになっていました。


 意外と海の中を散策するのは楽しかったせいで結構な時間潜り続けていましたし、このくらいが頃合いですね。


「(では、戻りますか)」


 私は少しだけ離れていた海の中から、海岸に戻るために泳いでいきます。


 少しだけ海岸から離れてしまっていましたが、ここら辺でもまだ街中の範囲のようで特にモンスターが襲ってくることもなく無事に海岸付近まで戻ってこれました。


「ぷはっ」

「うぉ!?」


 そうして海の中から一気に頭を出し、海岸に上がろうとしたタイミングで何やら驚いたような男性の声が耳に聞こえました。


 なのでそちらに視線を向けると、そこには大きめの釣り竿を構えて釣りをしていたらしき、身長170cm前半くらいで青髪青目の男性プレイヤーがこちらを見つめていました。


「あ、すみません、驚かせてしまいましたか?」

「い、いや、大丈夫だ。それよりもあんた、ここで泳いでいたのか?」


 海岸に歩いて上がりながらその男性プレイヤーへ申し訳なさそうな表情で声をかけると、男性は特に気にしてはいないようで、そんなことも聞いてきたので特に隠すことでもないですし、私は素直に答えます。


「はい、海の中は結構綺麗でしたし、たくさんの魚の群れもいるので楽しいのですよ」


 それに魚も捕まえられましたし、色々な貝もあったのでなかなかいい収穫になりましたしね、とも続けると、その男性プレイヤーは私の言葉に興味深そうな表情をしていました。


「そうなのか、俺は泳ぎはせずに釣りだけをしていたから知らなかったな」

「海の中を泳ぐのも楽しいですし、オススメですよ!…では、私は行きますね」

「ああ、引き止めて済まなかったな」

「いえいえ、大丈夫ですよ。では!」


 男性プレイヤーとの会話中にも私は生活魔法の〈洗浄〉で軽く水気を飛ばしてすぐにゴスロリドレスに着替え、そのような声と共に肩にいるクリアを連れて港町の中を歩いていきます。


「とりあえず、時間は微妙ですし一度ログアウトして、また夜にでも来るとしますか」


 私は港町の広場付近まで歩き、そこでクリアを一回送還してから私自身もメニューを開き、一旦ログアウトをします。




 現実世界に戻ってきた私は、何かをする前にいつもよりもしっかりとしたストレッチを済ませます。


「…よし、六時半くらいまでは夏休みの宿題でも軽くしてますか」


 ストレッチを終わらせた後は、勉強道具を出して夏休みの宿題を進めていきます。宿題は結構な量があるので、夏休みの期間中のこうした微妙な時間に徐々に進めておくと良さそうですね。

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