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220話 手品

「…よし、時間までに着きましたね!」

「……!」

「キュゥ!」


 そうして鼻歌を歌いながら街中を歩いていき、もう少しで十二時となる頃合いに私たちは目的地であったサーカス団の天幕へと到着しました。


 昨日もそうでしたが、やはり天幕の中や外にはたくさんの人が集まっており、それだけ人気だというのがひしひしと伝わってきます。それに今思いましたけど、もしかしたらこの世界では娯楽などが少ないせいで、こうしたサーカス団などは人気なのかもしれませんね?…単にパフォーマンスなどが見てて楽しいから、というだけかもしれませんけど。


「それはともかくとして、早速中に入りますか!」

「……!」

「キュゥ!」


 こんなところで突っ立ってても意味がないですし、邪魔でもあるので早めに天幕の中に向かわないといけないので、私はクリアとセレネを連れて目の前にある入り口を潜って中へと入ります。


 中にはもう少しでサーカスが始まるからなのか、天幕の中には結構な人が集まっているようで、なんだか昨日よりも人が多いように感じます。


 あの時も結構な人がいましたが、それと比べれば集まっている人は多いように感じるので、おそらくは昨日のうちに見た人たちが今日もサーカスがあると伝え回った、とかでしょうか?そうだとすると、これだけの人数がいるのに納得は出来ますし、この予想は的外れではなさそうですね。


 まあなんにせよ、今から始まるのですから楽しみにしながら待つとしますか!昨日も見ましたが、何度見ても飽きることはないとも思うので、ワクワクが止まりませんよ…!


「…お、始まるみたいですね!」

「……!」

「キュッ!」


 そしてクリアとセレネを優しくなでなでしながら観客席に座って待っていると、ステージの上に昨日も見た道化師の男性が上がってきたので、どうやら始まるみたいです…!


 クリアとセレネも待ってましたとばかりに声に出したり身体を震わせているので、その反応に私はクスッとしつつも、視線はステージの上へと向け続けます。


 さて、今日はどんな演目なのですかね…?昨日と全て同じの可能性もなくはないですけど、流石にそれはないとは思えます。なんたって、昨日も同じ場所でパフォーマンスをしていたのですから、それだと飽きられてしまいますからね!そのため、少しだけ新鮮な気持ちが溢れてしまいますが、これは仕方ありませんよ!


「レディース・エンド・ジェントル・メン!只今より我らが演目を、その目で見て、感じて、楽しんでいってください!」


 そのような思考を巡らせていると、ステージの上に立っている道化師の男性の始まりの言葉を皮切りに、私たちがいる観客席から声援が飛び、ついに始まるのが伝わってきました。周りにいる皆さんも楽しげな様子ですし、私たちもそれに釣られて声に出してしまいましたが、ちょっぴり恥ずかしくなってしまいました…!ま、まあ私なんかを気にする人はいないでしょうけど気分の問題がですね…!


 …それはいいとして、今はサーカスに集中しないとですね。今から演目が始まるのですから、見落とさないようにしっかりと見物をしなくては…!




 そこからのパフォーマンスはやはり昨日と同じものではなかったようで、多種多様な新鮮味のある演目を見て楽しんでいましたが、観客席にいる人たちのボルテージがマックスまで上がってきた頃合いに、ついに昨日も会った女性プレイヤーのマジシャンがステージ上に上がってきました。


 というか、あの人はこのパフォーマンスに初めて参加する人にも関わらずこんな会場のテンションがマックスな時に出てくるなんて、ちょっとだけかわいそうに感じてしまいますね?


 しかし、ステージ上に立っているあの人からは特に緊張した様子も見受けられませんし、現実世界でもマジシャンとして活躍しているだけはあるのかもしれません。それなら、貴方の腕前はしっかりと見させてもらいますよ…!


 そんな期待を高まらせながら私はその人のことを見つめますが、ステージに立った女性は一旦お辞儀をしたと思ったら、次の瞬間にはどこからともなく取り出したシルクハットからたくさんの鳩を出現させ、そのまま鳩たちが観客席の頭上へと飛ばします。


 そしてちょうど私たちの頭上に来たタイミングで鳩が破裂したと思ったその直後、先程まで鳩のいた場所から私たちに降り注ぐかのようにキラキラと輝く花吹雪が出てきました。


 この花吹雪は触れるとすぐに消えてしまったので、おそらくは幻術か何かなのでしょうね。それにしても、この景色はとても綺麗なのでつい引き込まれてしまいます…!周りにいる観客の皆さんも私と同じ気持ちらしく、楽しげな様子で声を漏らしているのが耳に届きます。加えてクリアとセレネも私のそばでうっとりとした様子で見ているので、気に入ったのだとわかります!


 そんな景色に興奮していた私たちでしたが、その雰囲気に乗るかの如くステージ上に立っている女性は続けて無数のカードを空中へとばら撒くと、そのまま空中に舞っていたカードたちから色とりどりの魔法が飛び出してきて、そのまま空中に絵を描くかのように魔法で彩られました。


 これは幻術には見えませんけど、なんらかの種や仕組みなどがあるのでしょうか?だとしても、このパフォーマンスはとても綺麗で見応えがあるのでかなり見ていて楽しいですね!クリアたちもここまで綺麗な魔法を見て興奮してますし、やはり連れてきて正解でした!


 そうした感想を抱きながらも、私たちは次から次へと披露される女性のパフォーマンスを鑑賞し続け、そろそろ終わりとなる頃合いで、最後のパフォーマンスなのか女性が再びシルクハットから一匹の黄金色をした鳩を生み出しました。


 これで終わりだとは思いますけど、最後のパフォーマンスはどんなものなのでしょうかね?最後まで!期待しちゃいますよ…!


 そしてその黄金色の鳩を空中へと飛ばし、ちょうどこのサーカス団の天幕の天井付近へと鳩が到着したその瞬間、再び鳩が破裂することでこの天幕内いっぱいを埋め尽くすかのようにキラキラと輝く雪のようなものが降り注ぎました。


 おお、これはとても綺麗で目が奪われてしまいますよ!あの女性、会場のテンションがマックスな時に出てくるのを私は心配してしまいましたが、どうやら杞憂だったようですね。ここまでのパフォーマンスが出来るのなら、あれだけの自信があったのにも納得ではあります。


 というか、あの人は現実世界でもマジシャンとして活躍しているとは言ってましたけど、今回のパフォーマンスでは現実のような手品は行わなかったですね?まあここはゲーム世界であり現実とは違うのですから、そのようなパフォーマンスになったのでしょう。別につまらないわけでもないですし、むしろすごく楽しかったくらいです。そのため、特に気にすることでもないですね?


「おっと、これで終わりなのですね」

「……!」

「キュゥ!」


 先程のパフォーマンスを披露した女性の演目で今回のサーカスは終わりのようで、気がついたらステージ上にはサーカス団のメンバーとあの手品師の女性が立って終わりを告げていました。周りの皆さんも帰るために動いてますし、私たちもそうしますか。あ、その前にあの人に会いに行きますか!きちんと見たことを伝えなくてならないですからね!




「そうか、楽しんでくれたかい」

「はい!それはもう楽しかったですよ!」


 そうして天幕から一度外に出て、私はサーカス団のメンバーがいるであろう裏へと向かい、そこにいたエルフの女性プレイヤーであるルーンさんとそのような会話をしています。…ちなみに、名前は今このタイミングで聞きました。昨日は聞いてなかったので。


「レアさんみたいな可愛い子からそんなに言われれば、嬉しくなるね」

「私が可愛いかはさておき、ルーンさんのパフォーマンスは最高でしたけど、もしかしてルーンさんは何か特殊なスキルでも持っているのですか?あ、別に言いたくなければ構いませんけど…」


 私は思わずそう声に出してしまいましたが、すぐにそのように付け加えます。誰だって隠したいこともありますし、ルーンさんが良ければ聞いてみたいですけど、どうでしょうか…?


 …私がこのような疑問を抱いてしまうのは、先程ルーンさんが行ったパフォーマンスを見たからなのです。どう考えてもあのパフォーマンスはただの手品には見えなかったですし、なんらかの特殊なスキルだと私は思います。


 私の予想では、多分ユニークスキルだと推測は出来るのですけど……さて、教えてくれますかね…?


「別に構わないよ。私が使ったのは【希代の道化師クラウン・ザ・トリックスター】というユニークスキルで、文字通り手品関係の能力なのさ」


 私はちょっとだけ不安になっていましたが、ルーンさんは特に隠すことでもないかのようにサラッとそれに関して教えてくれました。


 ふむふむ、やはり私の予想通りユニークスキルだったみたいですね?名前からもわかる通り、手品に関したスキルとルーンさんも言ってますし、それを使って先程のパフォーマンスをしたのだとわかります。


 うーん、やっぱりユニークスキルには本当に種類があるのですねぇ…?私は時の力を、兄様は純粋な刀系の能力であり、クオンは星を宿した剣技でしたし、それぞれの人によって獲得するスキルは無限大みたいです!そういえば、このゲームではプレイスタイルはまさに自分だけ、とありましたし、それに嘘偽りはなかったみたいです。


「あ、そうだ!もしよかったら、私とフレンドになってくれないかい?」

「もちろん構いませんよ!ルーンさんから言われなくても、私からもお願いしようと思っていたので!」


 まあ最初にそのお誘いをしてきたのはルーンさんですけど、わざわざ断る理由もないので当然フレンドにはならせてもらいますよ!こうしてフレンドが増えるのは久しぶりではありますが、仲の良い人が増えるのは嬉しくなっちゃいます!


 …今思い出しましたけど、そういえばアオイさんとはしばらく会ってなかったですね。なら、今度こちらから誘ってみるとしますか。まあなんにせよ、今は新しくフレンドになれたルーンさんについてです。この女性は主に手品師として行動をしているようなので、もしかしたらまたどこかで活躍しているところを見かけるかもしれませんし、その時はまた見させてもらいましょう!


「よし、じゃあ私はこの辺で行くから、また会おうね?レアさん?」

「はい!また会いましょう!」

「……!」

「キュッ!」


 私たちはお互いにそう別れを告げた後、ルーンさんはそのまま歩いて行ってしまいました。うーむ、この後の時間はどうしましょうか?時刻はまだ十二時半近くなため夜までは大いに時間がありますが……そうですね、ではそれまでの時間はスキルのレベル上げとエリアの散策も兼ねてエルフェリンデに向かいますか!


 私はあのエリアはまだ上層までしか行ってないですし、その後もモンスターとは本格的には戦ってなかったので、この空いている時間がベストなはずです…!では、目的地も決めたのですから、早速向かいますか!もちろん、クリアとセレネの二人も一緒に、です!

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