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219話 アリとの模擬戦

「「では、いきますよ!」」

「こい、レア!」


 私はユニークスキルによって強化されたスピードのまま、地面を蹴ることで分身と共に一気にアリさんへと肉薄し、そのまま〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉を混ぜつつ周囲を飛び交いながら両手の双銃から弾丸を乱射します。


 加速した動きに加え、周囲を飛び交う私と分身による攻撃なら少しはダメージを与えられるとは思いますけど、どうなるでしょうか?流石に倒すとまではいかないでしょうが、アリさんはどう動きますかね…?これでダメージを稼げれば文句はないですけど、そこまで簡単ではないでしょうし…


「はは、いいねぇ!なら、あたしも少しだけ本気で行かせてもらうよ!〈瞬間加速(アクセル・ゼロ)〉!」

「むむ、アリさんもユニークスキルを使いましたか…!」


 私の動きに対応するためか、そう口にしながらなんらかのスキル、おそらくはユニークスキルと思われる武技を使ったアリさんでしたが、それと同時に足に力が込められたのを確認した次の瞬間。


 私と分身による無数の弾丸の雨の中を掻い潜り、気がついたら本体である私のすぐ近くまで踏み込んできていました。明らかにスピードが速すぎて目で追いかけることが出来なかったですけど、私の予想ではその武技は短距離移動としてしか使えないみたいですね?


 まあそれでも短距離とはいえ、瞬時に間合いを詰められる武技は強力だとわかるので、ここからは気をつけて対処をしないとですね…!もしそのまま攻撃に移られてしまえば、一瞬でやられてしまう可能性もあらますしね!


「このままやらせてもらうぜ!〈加速する足(アクセル・フット)〉!」

「そう簡単にはいきません!今度はこれで対応させてもらいますよ!〈第零(ヌル)第七の時(ズィーベン)〉!」


 私はさらなる武技によって加速したアリさんに対応するべく、ついさっき消えてしまった分身の代わりとして、今度は無数の幻影を生み出す武技を自身へと使用しながら後方へと大きく跳んで距離を取ります。


 これはついてはまだアリさんには見せてなかったので少しくらいは惑わせるとは思いますけど、この武技は分身とは違って攻撃に移る方は出来ないですし、目眩しくらいにしかなりません。しかし、今はその一瞬が狙い目なので、それで惑わされてください!


「ちっ、面倒だね!」


 アリさんはそう口にしながら、両手に持つ短剣で次々と迫ってくる幻影たちを切り裂きながら駆け抜けていますが、幻影の数が多いのも相まってほんの一瞬ではありますが、隙が生まれます。もちろん、私がそれを見逃すはずがありません!


「隙ありです!〈第二の時(ツヴァイ)〉!」

「あ、やべ!」


 その一瞬の隙に、幻影に紛れる形で遅延効果を与える武技を放った私でしたが、それは気が逸れていたせいなのか躱されることもなくその身体に命中し、その効果を遺憾なく発揮します。


 よし、これで少しの間はアリさんの動きは落ちますね!しかし、このタイミングで〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉の効果時間が切れてしまったので、ここからは超スピードを活かすのはしばらくの間は出来なくなってしまいました。


 まあ〈第一の時(アイン)〉による加速は常に維持を出来ますし、〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉のリキャストタイムが戻るまではこちらを頼りにすることにしましょうか。別にこの武技でも動きを加速させることは出来ますしね!


 あ、それとあのスキルを使えばリキャストタイムを一気に消せますし、試しに使ってみますか!確認はしてなかったですけど、説明を見る限りここが使いどころなはずなので…!


「では、一気に攻めさせてもらいますよ!」

「やっぱり、それはかなり厄介だな!」


 そんなことを考えつつも、私は〈第一の時(アイン)〉によって加速した動きのまま、〈第二の時(ツヴァイ)〉で動きが鈍っているアリさんへと両手の銃を乱射しながら、周囲を高速で飛び交いつつ攻撃を加えていきます。


 しかしアリさんは、動きが鈍っているのにも関わらず両手の短剣によって飛んでくるほとんどの弾丸を切り捨てているので、やはり遅くしていてもスピードはかなりのもののみたいです。であれば、やはりあれを使うしかありませんね!そこから、一気に攻めることにしましょう!


「まだまだいきます!〈巻き戻る時(リワインド)〉!からの、〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉!」


 〈巻き戻る時(リワインド)〉とは、私が普段からつけている懐中時計に備わっている能力であり、全スキルのリキャストタイムをなくすというものです。


 これはEXスキルには効果がないと書いてはありましたけど、それでもユニークスキルにはしっかりと効果が発揮するので、先程リキャストタイムに入ってしまった〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉が再び使えたというわけなのですよ。


 加えて、さらにそこへ〈第六の時(ゼクス)〉によって加速していられる時間を伸ばし、続けて分身を生み出す〈第七の時(ズィーベン)〉も使用することで、私はこの辺りで決めに動きます!


「「ここで、終わらせてもらいますよ!」」

「なんの!そう簡単にはやらせないよ!〈流れに乗る脚術(ライド・ザ・ウェーブ)〉!」


 遅延効果はこのタイミングで切れているため、そう口にしながらアリさんは無数に飛んでくる弾丸をゆらりゆらりとした動きで掻い潜りながら一気に加速し、私目掛けて一瞬で間合いに踏み込んできたその勢いのまま、逆手に持った右手の短剣を私の首狙いで振るってきます。


 ここまではユニークスキルをあまり使わられてなかったので近接攻撃の間合いには入られなかったですけど、やはりアリさんが本気を出すと容易く踏み込まれてしまいますか…!しかし、今の私の動きは加速した状態なのです!なら、それに対応しながら反撃をさせてもらいますよ!


「はっ!」

「なんの!」


 私の首狙いで振るわれた短剣は頭を逸らすことで避け、続けて振るわれた左手の短剣による攻撃は左手に持つ短銃で逸らし、そこに放たれた右足によるしゃがみ蹴りは後ろに一歩下がることで回避します。


 そして私は、そんなアリさんの頭部に向けて右手の長銃を構えて弾丸を放とうとすると、その瞬間に飛び上がるかのように蹴り上げてきたアリさんの足による攻撃によって軌道を変えられることで、攻撃は空へとズラされてしまいます。


 しかし、その代わりとして即座に構えた左手の短銃による連続した攻撃は阻止することは出来なかったようで、私の放った攻撃は完全に回避することは出来ずにかすかにアリさんの頬を掠め、背後へと飛んでいきました。


 そして、そのタイミングで背後に回り込んだ分身に対しては、私の連続した放つ弾丸を捌きながらすぐさま分身の懐に踏み込んだと思ったら、一気に両手の短剣による攻撃を加えて倒されてしまいました。


 むう、私もかなりのスピードになっているはずなのですが、それでもまだ遅いのか、はたまた私には近接戦闘の才能がないのか、高速で近づかれてしまえばなかなか攻撃に移るのが難しいですね…!しかし、一瞬とはいえ分身に意識が向いたのです!ここは、攻めさせてもらいますよ!


「〈第二の時(ツヴァイ)〉!」

「甘いよ!それはもう見たぞ!」


 遅延効果を持つ武技をアリさんの背中側から放ちましたが、それは即座に振り向いたアリさんが身体を回転するかの如き動きで避け、そのまま勢いをつけた状態で私に向けて回し蹴りを放ってきました。


 私は咄嗟にそれを両手の双銃を交差させて防ぎましたが、それでも勢いは殺せずに後方へと弾かれてしまいます。ちっ、やはりアリさんはかなりの実力者なので、加速した状態のうちに決めたかったですけど、無理でしたね…!


 効果時間も切れてしまいましたし、この戦闘中ではリキャストタイムがあるせいでもう使えなさそうなので、スピードには気をつける必要がありますね…!なら、アリさんの動きに警戒を強めて攻撃に移りますか…!


 お互いに有効打を受けてはいませんが、アリさんはある程度の力を出しているとはいえまだ完全に本気には感じないので、油断は出来ません…!とりあえず、攻撃を防いだことで距離も取れましたし、この距離から攻撃をしていきましょう!


「はい、そこまで!」

「ん?」

「はあ?」


 そうしてアリさんと私はお互いにニヤリと笑みをこぼしながら行動に移ろうとしたその瞬間、いきなりソロさんが声をかけてきたのと同時に私たちの足元から生えてきた植物らしき蔦によって、動きを止められてしまいました。


「二人とも、模擬戦なんだからその辺でいいだろう?」

「なんだよー、今がいいところだったのに!」

「けど、これ以上となるとどっちかが大怪我を負う可能性が高いし、流石に止めさせてもらうよ?」


 確かに、このまま続けていればアリさんか私のどちらかはなんらかの怪我を負った可能性はありましたね。ですが、私はアリさんとは違って戦闘狂ではないとはいえ少しだけ消化不良なので、もうちょっとだけ模擬戦をしたかったです…!


 まあソロさんに止められてしまいましたし、今回はこの辺で止めることにしますか。別にアリさんと決着をつけないといけないわけでもないですからね。


「たくっ、これで終わりかー…もうちょいやっていたかったぜ!」

「なら、また私が成長出来た時にでもやりませんか?」


 模擬戦も途中で終わってしまいましたしね、とも続けて言うと、アリさんは目を輝かせながらそれに賛成を返してくれました。…やっぱり、アリさんって戦闘狂なのは間違ってはいなさそうですね?


 そう思ってしまうような反応ですけど、私自身もいい経験を得ることが出来たのでこれは時々やるのも悪くはないかもしれません。…もしかして、私も戦闘狂になっているのでしょうか?ま、まあ気にしないでおきますか。別にそうだとしても、悪いことではないですしね!


「んじゃ、この辺であたしは行くな!レアも、またやろうぜ!」

「はい、また会いましょう!」


 じゃあなー!と言ってスタコラサッサとこの図書館から去っていくアリさんでしたが、アリさんは毎度毎度忙しないですねぇ…


 ひとまず、アリさんから誘われた模擬戦も無事に終わりましたし、これで後の時間はゆっくり出来ますね。


 時刻に関してもまだ十時になる少し前ですし、お昼の予定まではまだちょっとだけ猶予があります。お昼の予定であるサーカス団を見にいく時間はお昼、具体的には十二時なため、今はログアウトをしてそれに備えることにしますか。


 ソロさんにも顔を見せましたし、アリさんとも模擬戦をしたのです。それなら、ここに来た目的は終わりましたしね。


「ソロさん、私はこの辺で元の世界に戻りますね」

「おや、そうですか?では、私はちょっと出かけてくるので、ここは自由に使ってもらったよいですからね」

「はい、ありがとうございます!」


 よーし、ソロさんにも一度戻ると伝えましたし、さっそくログアウトをしますか!クリアとセレネも、一度戻しておきますよ!またお昼から会いましょうね!




「…よし、ではまずは2人を呼んで……行きますか!」

「……!」

「キュゥ!」


 そうして現実世界に戻った私は、お昼ご飯などのやることをすべて済ませてから再びゲーム世界へとやってきました。


 時刻はすでに十一時半くらいなので、そろそろ向かわないといけませんね!まだ予定の時間ではないとはいえ、早めに行くに越したことはないので!もちろん、クリアとセレネも一緒ですよ!


 そんなことを考えつつも、私たちは三人で昨日も行ったサーカス団の天幕へと歩いて向かいます。昨日は途中から見物をしましたが、今回は最初から見れるうえにあの女性プレイヤーも参加すると言っていたのです。そのため、どうしてもワクワクしてしまいますよ…!


 サーカスのパフォーマンスを見たのは昨日が初めてであったのにも関わらずあれだけ楽しかったのですから、今回も同じく楽しめますよね…!なので、この気持ちが高まるのは仕方ないのですよ…!


「ふんふーん」

「……!」

「キュッ、キュッ!」


 私たちはご機嫌な様子を隠そうともせずに街中を歩いてサーカス団の天幕まで向かっていますが、私の肩と首元にいる二人も楽しげな様子なので、この子たちも楽しみなのでしょうね!クリアとセレネの気持ちも私に直に伝わってくるので、ますます楽しみになっちゃいます!


「それにしても、あの女性はどんな演目をするのでしょうか?」

「……?」

「キュッ?」


 昨日コッソリと見た時は手品のようなものをしてましたし、おそらくはそれ関係でしょうか?…まあ今から見に行くのですから、その時にわかりますか。間違いなく楽しいのに違いはないでしょうしね!

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