215話 白梟
「では、いきますよ!ルミナリア!」
「任せて!」
「ホウッ!」
私はルミナリアへと声をかけ次第、同時に〈第一の時〉を使用することで加速させた動きのまま、木々を飛び交いながら白梟へと両手の双銃を構えて弾丸を乱射します。
そこに私の肩と首元にいるクリアとセレネによる魔法などの攻撃も加わるのですが、それらは白梟の出した氷の壁のようなもので防がれてしまいました。
「やはり、そう簡単にはいきませんか…!」
やはりレアモンスターというだけはあって、そう簡単に倒すことは出来ないみたいですね!しかも氷魔法だけしか扱えないとはいえ、普通の梟よりも魔法の力は上がっているようで、反撃として放たれた無数の氷の刃は私が回避したことで当たった木々を容易く切り裂いており、当たれば致命傷となるのは間違いなさそうです。
レアモンスターなだけはあってなかなかの強さみたいですけど、ここにいて相手をしているのは私だけではありませんよ?
「〈トリガーハッピー〉!よし、私もいくよ!」
「コンッ!」
ルミナリアは私も持っている十秒間弾丸の消費をなくす武技を発動させ、白梟へと両手に持つ二丁の拳銃を構えて私と同様に弾丸を連続して放っています。加えてタマモちゃんによる火の玉もそこに放たれており、白梟はそちらにも対応するべく空中を飛びながら私たちとルミナリアたちへと氷魔法によって対処しています。
が、やはり数は力のようで、完全には躱しきることは出来ておらず、徐々に身体に傷が付いていっているのが確認出来ました。
よし、これなら倒すことは出来そうですね…!しかし、最後まで油断はしません!何故ならレアモンスターなんですし、これだけで終わるはずがないですからね!しかも、徐々に傷を与えられているとはいえまだHPもたくさん残っているので、まだまだ戦闘は長引くとも思います…!
「ホウッ!」
そんな思考をしつつも白梟へと皆で協力して攻撃を放っていましたが、白梟が空を飛ぶことで攻撃を避けつつそのような声を出したと思ったその瞬間、いきなり私たち目掛けて無数の氷の矢を連続して飛ばしてきました。
先程までも氷魔法による攻撃はしてきてましたけど、これは流石に量がやばいですね…!?明らかに物量が違いますよ…!?なら、ここは回避に専念しなくてはいけませんね…!クリアとセレネに傷を与えるわけにはいきませんし…!
「くっ、魔法の量がキッツイね…!」
「ですが、その分防御は疎かになっているみたいですよ!」
私は飛んでくる無数の氷による攻撃をゆらゆらとした不規則な動きで避けながら、そう声に出します。
そう、私の声に出した通り、白梟は攻撃に専念しているからなのか防御への意識は薄れているらしく、先程よりかはしっかりと攻撃を当てることが出来ているのですよね。
攻撃の隙間を縫うかのようにこちらからの攻撃を放っていますけど、魔法による攻撃で相殺されたり避けられたりで全部が全部当てれているわけではないですが。それでも、いい具合にダメージを与えることは出来ています。
なので、HPを減らすことは一応出来ているので、これなら倒すまではいけるでしょうか?まあまだHPは七割近く残っていますし、時間はかかるかもしれませんがね。っと、それはいいとして、ここからはもっとユニークスキルを使用して攻撃に移るとしますか。まずは、アレですね。
「惑わさせてもらいますよ!〈第零・第七の時〉!」
私は無数に飛んでくる氷魔法による攻撃に対応するべく、無数の幻影を生み出す武技を使用します。
ルミナリアも両手の拳銃でなんとか対応をしていましたけど、それでもキツそうに見えたのでこの武技を使用したのです。それに、私自身もちょっとだけ魔法による攻撃が鬱陶しくも感じましたし、タイミング的にはベストなはずです…!
「さあ、いきますよ!ルミナリアも、ここは任せてください!」
「オッケー!んじゃ、よろしく!」
「ホウッ…!」
私はルミナリアへとそう声をかけた後、生み出した無数の幻影によって白梟による攻撃を惑わしながら、〈第一の時〉による加速効果を活かしてクリアとセレネを連れながら、両手の銃を乱射しつつ地面を強く蹴ることで一気に白梟へと接近していきます。白梟は魔法型のモンスターのようですし、近距離とはいかなくても中距離まで踏み込めたのなら、戦いやすいでしょう!
そのため、私が注意を惹きつけながら白梟に近づいて攻撃を放ち、その隙にルミナリアによる攻撃を放つのを頼むことにします。ルミナリアも私と同様に銃が武器なので、距離がある程度離れていても攻撃には移れますしね!
では、いきますよ!まずはその機動力をなくすため、翼を狙わせてもらいますっ!
「まずは、〈第三の時〉!」
「……!」
「キュッ!」
私は無数の幻影に紛れる形で銃弾を乱射しつつ、加速した状態のまま空中にいる白梟の横に回り込み、手始めにそこから攻撃系の武技と共に通常の弾丸を連続して放ちます。加えて、クリアとセレネも魔法攻撃を放っていますが、どうなるかの予測はある程度ついています。
「ホウッ!」
それらは私の読み通り、白梟の生み出した氷の盾によって全て防がれてしまいました。が、それは予測済みでしたので、慌てはしません!それに魔法の意識がこちらへと向いたのなら、あちらへの攻撃の手は緩みますよね?なら、ルミナリア!今がチャンスですよ!
「隙あり!〈ハイショット〉!」
「コンッ!」
「ホウッ!?」
その一瞬の隙にルミナリアとタマモちゃんが放った翼狙いの攻撃は、意識がこちらに向いていたせいで完全に躱しきることは出来なかったらしく、咄嗟に回避のために動いた白梟の翼を掠めてダメージを与えることに成功します。
ですが、翼をきちんと撃ち抜くことは出来なかったようで、少しだけ機動力を落としたくらいの結果になってしまったのには少しだけ残念でしたね。まあ白梟の動きには支障が出ているようなので、それはまだ幸いでしたけど。
それはともかくとして、今はルミナリアからの攻撃を咄嗟に回避した動きのせいで体勢を崩しているみたいなので、さらに攻め込むチャンスです!機動力は落ちているみたいですが、それでもまだ完全とはいえませんし、ここはあの武技を使わせてもらいましょう…!
「逃しませんよ!〈第二の時〉!」
私は木々を飛び交いながら、その隙を見て動きを遅くさせる武技を白梟へと放ちましたが、それは特に躱されることもなくしっかりと当たることに成功し、その効果が発揮されます。
よし、やはりこの武技はなかなか強力なので、ここぞという時にはとてもありがたいですね…!しかも状態異常などとは違って耐性などもないですし、どんな相手でも効果が発揮することで動きを遅くさせられるため、改めてこのユニークスキルを獲得出来てよかったと感じます…!
それはさておき、遅延効果が効果を発揮しているうちに決めにかかりましょうか!レアモンスターとはいえ、動きが鈍くなっているのなら完全には対処が出来ないですよね!
「まず、〈第七の時〉!」
そう決めた私は、まず初めにいつのまにか消えていた幻影の代わりとして自身の分身を生み出した後、続けて〈第六の時〉を白梟へと放ち、遅延効果の時間引き伸ばします。
ここで決める気ではありますが、それを確実にするためにこの武技も使ったのです。遅延効果は本来なら十秒しかないので、これを使わなければ短時間で決めないといけませんからね!では遅延効果も無事に伸ばすことが出来ましたし、早速決めに動きますか!
「ルミナリア!畳み掛けますよ!」
「オッケー!私も全力でいくよ!」
「コンッ!」
「……!」
「キュゥ!」
私たちのテイムモンスターであるクリアとセレネ、そしてタマモちゃんの三人も賛成するかのように声に出していますし、気合いは十分みたいですね!なら、ここで倒すために全力でいきますよ!
「〈第零・第十一の時〉…!」
私は〈第一の時〉と同時に〈第零・第十一の時〉も発動させ、それによって生まれた超スピードを存分に活かすかのように足元の樹木を蹴り、そのまま両手に持つ銃から弾丸を放ちながら白梟へと一気に接近します。
加速効果は最大限まで発揮されていますし、これで決めさせてもらいますよ…!私による加速効果は五秒間しかないため、ここで決めれなければ逃げられる可能性もあるので絶対に逃しません…!
「絶対に決めるよ!〈ツインシュート〉!」
「……!」
「キュッ!」
「コンッ」
「ホウッ!」
そんな私を筆頭に、ルミナリアたちによる攻撃も遅延効果が今もなお発揮している白梟へと放たれますが、それに対して白梟はやはりレアモンスターというだけはあり、私たち目掛けて無数の氷柱や氷の刃を放ったり空を飛んで避けたりなどで対応をしてきます。
遅延効果が発揮しているとはいえ、それは単に動きを遅くさせる効果です。そのため、魔法には効果が乗らないので、その対応は間違ってはいません。
しかし、ここにいるのは皆がスピードタイプの人たちなのです!それにその魔法は一度見ているのですから、先程のようにはいきませんよ!
私は次から次に飛んでくる魔法の雨をフェイントを混ぜた動きで躱し続け、反撃として弾丸をお返ししますが、身体に僅かに当たるくらいで有効打には欠けているのがわかります。…なら、ここは一気に攻めるしかありませんね。このままでは遅延効果も切れてしまいますし、そうしましょう…!
「ここで行かせてもらいます!〈舞い散る華〉!」
そう瞬時に判断した私は、地面を強く蹴ることで飛び上がってから〈飛翔する翼〉を使用して空中を蹴り、次の瞬間には〈舞い散る華〉も同時に使用することで花吹雪となりながら魔法の雨の中を突き進み、身体が戻った時にはすでに目の前に白梟が驚いた様子でこちらを見つめていたところでした。
ふふーん、流石に魔法による弾幕の中を突き進んで来るとは思ってなかったようですね?まあ当然ですか。そんなことをすれば、普通に考えてタダでは済まないとは思えますもんね。私だって、あのスキルがなければこんなことはしなかったですし。
なんにせよ、今私の目の前には隙だらけの白梟がいるのです!もちろん、ここで倒させてもらいますよ!
「終わりです!〈第三の時〉!」
「ホ、ホーー」
白梟は咄嗟に私へと魔法を放とうとしましたが、僅かに間に合わずに私の放った武技をその頭部に受け、弱点を撃ち抜かれたことで残っていたHPが一気に削れ、そのままポリゴンとなりながら地面へと落ちていきました。
「ナイスだよ、レア!」
「コンッ!」
私が行った動きを見ていたルミナリアとそのテイムモンスターであるタマモちゃんは、私に向けてそのように声をかけてきました。
「ありがとうございます。これで、倒せたみたいですね?」
「だね!しっかりとドロップアイテムもインベントリに入っているし、これで完了みたい!」
ふむ、ドロップアイテムがあるのなら、キチンと倒せたと見て間違いないみたいです。それにしても、今回はルミナリアと一緒に戦いましたが、やはり私はレアモンスターやユニーククエストといった特殊なものが起こる確率は高いのかもしれませんね…?
ルミナリアもここに来る前に、私と一緒ならきっと何かがある気もする、と言っていましたが、それは見事に予測通りだったようです。まあ悪いことではないので別にいいですか。
「よし、それじゃあレアモンスターも無事に倒し終わったし、先に進まない?」
「それもそうですね。すでに時刻は十時半を超えていますし、急いだ方が良いでしょうか?」
「あ、もうそんな時間?なら、いい時間だから先にこの森の中にあるセーフティーゾーンでお昼の休憩をしてから、ボスエリアに行かない?」
むむ、この森にもセーフティーゾーンがあるのですね?それにルミナリアはそこでお昼休憩をしてからボスエリアに向かわないかとも言ってますけど、確かにその方が良いかもしれませんね。もう少しでお昼の時間にもなりますし、レアモンスターとの戦闘で結構な時間も経過しているので、そうしますか。
先にボスエリアにいった場合だとお昼の時間が大幅に遅れてしまいますし、それによって兄様がお腹を空かせてしまうので私もルミナリアの案には賛成です!なら、それをしっかりと伝えましょうか!
「では、そうしましょうか。セーフティーゾーンの場所は知っているのですか?」
「もちろん!んじゃ、行こっか!」
「わかりました、お願いします!」
ルミナリアはセーフティーゾーンの場所を知っているみたいですし、案内は任せますよ!とりあえず、まずはそこでお昼の休憩をしてからボスエリアに、ですね!




