213話 確認
「…なるほど、そうなったのか」
「はい、依頼の目的であったデラブブ子爵は始末しましたけどね」
そうしてクリスさんと一緒に暗殺者ギルド内にある部屋でナンテさんを待っていた私たちでしたが、思ったよりも早くナンテさんが来てくれてこうして対面してくれたので、今は暗殺依頼の完了と暗殺対象の息子さんに関して伝えているところです。
流石のナンテさんも、これらを聞いて少しだけ考えているようなので、やはり連れてきてしまうのはダメでしたかね…?この人自身は悪事に手を染めてはいなかったですし、その人柄もある程度はすでに把握しています。そのため、出来ることなら罪人として裁かれては欲しくはないですが…
「レアは、優しいんだね」
「そ、そうですか?別に普通だと思いますけど…」
私はクリスさんが悪い人ではないと判断したので連れてきただけなので、別に優しい人ではないと思いますよ…?それに、あの状況を見れば同じ暗殺者ギルドのメンバーでもそうしたと思いますし。
なので、私は別に優しいのではなく、人として当然のことをしたまでです!…まあ褒められるのは嬉しいので、素直に受け取らせてもらいますが!
「とりあえず、事情はわかった。なら、後は私に任せておきな。きっと悪いようにしないからね」
「そうですか?それなら、お願いします」
よし、どうやらナンテさんも納得してくれたようでそう返してくれましたし、これならクリスさんについては問題なさそうですね!任せろとも言ってますし、信頼させてもらいますよ、ナンテさん!
この人は根っからの悪人ではないとはいえ、肉親である父親が悪さをしたのです。そのため、多少は罰を与えられはするでしょうけど、ナンテさんもいるのですから極刑とはいかないですよね?
「んじゃ、ちょうどいいから、ここでレアに依頼の報酬を渡させてもらうよ?」
「あ、わかりました!」
クリスさんのことに意識が向いていて、依頼の報酬については忘れていました…!流石に暗殺依頼をこなしたのにも関わらず何も報酬がないわけがありませんし、きちんと受け取っておかないとですね!
…すぐそばにいるクリスさんは微妙な表情をしてますけど、それは気にしないでおきます!私たちはこれでも暗殺者なんですし、これくらいは当たり前のことなので!
「よし、ではあたしはこの辺でこいつを連れていくぞ。レアも、また明後日にね」
「はい、また明後日に」
報酬であるお金を私へと渡した後、ナンテさんはそう言ってクリスさんを連れて部屋を出ていってしまったので、私もそれに続くように部屋を出てから暗殺者ギルドを去っていく二人を見送ります。ナンテさんならきっとなんとかしてくれるでしょうし、任せますからね!
…さて、これにてひと段落したとみて良さそうですし、時間もいい具合なので今日はこれでログアウトとしますか。あ、そういえば今も着ているメイド服やインベントリに仕舞っている仮面の性能は確認してませんでしたね。なら、これに関しては明日にでも確認することにしましょうか。
なんにせよ、さっさとログアウトをして就寝といかないとですね。夏休みはまだあるとはいえ、早寝早起きはしっかりとしておかないと学校が始まったら大変なことになりますからね!
「では、早速性能の確認といきますか!」
あの後からは特に何かが起きることもなく時間は進み、すでに日付は次の日である日曜日となっています。
そして、今は朝の諸々の支度を全て終わらせて早速ゲーム世界へとログインをしてきたわけであり、昨日の夜にやろうと考えていたメイド服と仮面の確認をしようと思っているところです。
メイド服に関してはすでに装備をしてはいるのですけど、まだ性能の確認はしていないためどんな装備なのかはわかっていないのですよね。それに加えて、ナンテさんから貰った仮面に対しても、きちんと確認しないといけません!
まあナンテさんが用意してくれたものであるので悪いものではないとわかりますが、性能の確認は必要なので確認は必須です。では、早速その性能を見せてもらいますよ!
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シャドウ・メイド ランク S レア度 固有品
DEF+15
MND+30
耐久度 破壊不可
・〈影芝居〉 最大一時間自身の影から分身を生み出すことが出来る。 リキャストタイム二十四時間
・メイドの嗜み メイドとしての動きを完璧に取れるようになる。
蟲惑の暗殺者が既存のメイド服を改造して生み出した特殊なメイド服。影を操り、影を支配する。
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ノー・フェイス ランク S レア度 固有品
DEF+10
MND+10
MP+30%
耐久度 破壊不可
・〈無貌の仮面〉 自身の姿形を自由自在に変化させることができ、その姿によって特殊な能力が発動する。 リキャストタイムなし
蟲惑の暗殺者が特殊な素材から作り上げて長年保管していた真っ白な仮面。そこには誰がいる?
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ふむふむ、またもやユニーク装備であり、さらにはそれぞれに特殊な能力が付いているみたいですね?
メイド服は、おそらく私のユニークスキルである分身を生み出す〈第七の時〉と似たようなもので、それの効果時間が倍以上に伸びている感じなのでしょう。仮面に関してはちょっとよくわかりませんけど、説明を見た限りは自身の姿形を自在に変化出来るとあるので、変装などにはもってこいの能力なのかもしれません。
とりあえず、これらは明日のダンスパーティの前には確認をしておいた方が良さそうなので、この後に試すとしましょうか。今の時刻はまだ八時くらいであるので、試す時間は大いにあります。ということで、早速確認をするために動きますか!
今私がいるのは、迷宮都市に存在する暗殺者ギルドの二階にある休憩室です。昨日はここでログアウトをしたので、未だに私は暗殺者ギルドにいるわけなのですよね。
まあそれはともかくとして、これらの確認は説明を見た感じでは部屋の中でも出来ますし、人の気配もないので早速ここで試させてもらいますよ!
「では手始めに、〈影芝居〉」
そうしてメイド服についているスキルをワクワクしつつ発動させてみると、次の瞬間には私の影から浮かび上がるかのように、私と全く同じ姿をした人影が現れました。
ふむ、スキルの説明通り、私の分身を生み出すことが出来るみたいですね?それに、私の持つユニークスキルである【時空の姫】とは違ってリキャストタイムが遥かに長いとはいえ、効果時間は一時間というこちらもかなりの長さなので、このスキルは護衛には使いやすいよさそうです。なんたって、文字通り人数がスキルによって増えますしね。
「これなら、明日にあるダンスパーティでも活かせるかもしれませんね?」
トラブルなどは起きてほしくはないですけど、もし何かがあったとしても本体の私と生み出した分身で別れて対処が出来るので、護衛をする身としてはかなりありがたいスキルなのはわかります。
よし、これでメイド服の確認についてはこれでオッケーですね。もう一つだけ付いている"メイドの嗜み"というスキルもありますが、そちらは今ここで確認出来るわけではないので、本番の時に試すしかなさそうです。説明からも、メイドとしての動きを完璧に取れるようになる、と書いてありましたし、おそらくは大丈夫……ですよね?
「…まあ、大丈夫でしょう。それよりも今は、仮面の性能の確認ですね」
そう呟きつつ、私はインベントリから取り出したノー・フェイスという名前の仮面をしっかりと確認をしますが、この仮面はどうやら目元に二つの穴がある以外は他に何もない、シンプルに真っ白な見た目をしているのがわかりました。
見た目は実にシンプルではありますが、付いているスキルは全くシンプルとは思えないため、キチンと確認しなくては把握することは出来ません。
説明には、自身の姿形を自由自在に変化させることができ、その姿によって特殊な能力が発動する、とありましたし、変装関係のスキルだとは予測出来ますが…
「まあ使えばわかりますよね。〈無貌の仮面〉」
そして装備メニューを開いて手早く仮面を付けた私は、早速とばかりにこの仮面についているスキルを発動させます。すると、いきなり私の視界がぐにゃりと歪んだと思ったら、すぐにそれは治って通常通りに戻りました。
「一体なにが…?」
おそらくは姿を変えることが出来たのでしょうけど、いきなりで驚きましたね…?なんにせよ、まずは身体の確認をしてみますか。多分、姿が変わっていると思えますしね。
「…種族が変わっているみたいですね?」
私は確認のために手鏡を取り出して自身の状態を確認すると、手鏡に写ったのはいつもと変わらない白髪に金と銀のオッドアイをした私でしたが、今私が呟いた通り、なんと私の目立つ部分であった狼の耳が消えていたのです。
そしてその狼の耳の代わりとして、何故か私の頭には狐の耳が現れており、それと同時に尻尾もいつもとは違う狐の尻尾になっていました。おそらく、私が変装ならばと狐人族を想像していたせいでこの姿になったのでしょうか?なら、他の種族に関しても試してみますか。
そう考えたら私は次から次へと〈無貌の仮面〉を使用してスキルの考察を進めていましたが、これから察するに、ノー・フェイスについている〈無貌の仮面〉というスキルは私の想像した姿に自在に変わることが出来る、という説明文に偽りはないようです。
「しかも、スキルを使用中は仮面を出すことも消すことも自由に出来るみたいですし、特殊な能力もある、と。これは、これから先も変装をする時には大活躍してくれそうですね!」
ナンテさんから頂いたものでもありますし、これはこれからも使わせてもらいますか!これについているスキルは暗殺者として動くのに大いに役立ちそうなので、普段使いの装備になりそうです…!
「ひとまず、確認はこれで完了ですね」
明日のダンスパーティ時に使うことになる装備の確認も済みましたし、これで今しなくてはいけないことは終わりましたが、この後はどうしましょうか?
うーん、急ぎの要件もないですし、ここはエリア攻略を目指してノルワルド黒森に向かうことにしますか。私はユニーククエストなどを主にしていたのでエリア攻略は疎かになっていましたし、何も予定がない今などがちょうどいいでしょう!
あ、それなら最近は一緒に行動をしてませんでしたし、ルミナリアとかも誘ってみましょうか!前に会ったのはかなり前なうえにフレンドでもあるので、たまには会いたくもあるので!ちょうどルミナリアもログインをしてますし、一度フレンドチャットを送ってみますか。
『…はいはーい、何かな、レア?』
「あ、ルミナリア、今大丈夫ですか?」
そうしてチャットを送り次第、すぐに反応が返ってきたルミナリアへとそう声をかけた私でしたが、どうやら今は迷宮都市で食事をしていたところらしく、問題ないと返してきてくれました。なら、タイミングもいいみたいですし、一緒にエリア攻略に行かないか誘ってみますか!
「ルミナリア、もしよければ一緒にエリア攻略に行きませんか?」
『お、いいよ!ちょうど時間も空いてるしね!集合場所は?』
「では、迷宮都市の広場で合流としましょうか」
『おっけー!んじゃ、先に行って待ってるね!』
ルミナリアはそう言ってチャットを切ったらしく、声が聞こえてくることはなくなりました。よし、ルミナリアはすでに迷宮都市にいるので先に行くのは無理でしょうけど、待たせないように急がないとですね!私がいる場所は暗殺者ギルドであるため、広場からは離れてますしね。
では、早速待ち合わせ場所へと向かいましょう!ルミナリアと会うのは久しぶりですし、今はどうなっていますか…




