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207話 最期

「ぐっ!?結界、だと!?」


 メイジーさんが投げた何かからいきなり魔力が迸ったと思ったその直後、逃げようとしていたグラッジさんの目の前で私たちを包み込むかのように巨大な結界らしきものが現れました。


 どう考えてもメイジーさんの投げた何かによって生まれたのでしょうけど、一体何を投げたのですかね?おそらくは結界を作り出すアイテムだとは推測出来ますが……そんなものをメイジーさんが持っていたとは思いませんでした。


 とりあえず、そのアイテムについて聞いてみますか。別に聞かなくても支障はなさそうですけど、とても興味が惹かれるので仕方ないのですよ!


「メイジーさん、何を投げたのですか?」

「ん、それは『結界玉』という物。使用すると一時間のみ、魔物を封じ込める強力な結界を生み出せるアイテム」


 駆け出すのを止めた私のそばにいつのまにかいたメイジーさんにそう問いかけてみると、そのように返してくれました。


 ふむふむ、結界玉、ですか。その名前通り、私の予測していた結界を生み出すことが出来るアイテムで間違いはなかったみたいですね?それに魔物を封じ込める結界ということですし、ここを襲ってくる前にグリム幻想国で戦った時に逃げられた経験から、そのようなアイテムを用意していた、ということでしょうか。


 その時には逃げられたとも聞いていましたし、ここで確実に倒すべくメイジーさんが持っていたのですね。しかし、今回は本当に助かりましたね!


 私ではグラッジさんが逃げるのを阻止するのは難しかったでしょうし、メイジーさんがそれの対策をしてくれたので一安心です…!


「ちっ!これでは逃げられぬか…!ならば、貴様らを倒して逃げさせてもらうとしよう!貴様らも、我が力となれ!」

「なっ!?」

「何故…!?」


 そうしてゴーストへと変わったグラッジさんは手始めに、私たちへと攻撃をするよりも先に結界内で離れた位置でマリアナさんたちと戦っていた二人の配下を無理やり自身の身体へと引き寄せ、そのまま吸収してしまいました。


 …あの二人はグラッジさんの配下のようでしたけど、まさか協力して戦うのではなく吸収するとは思いませんでした。やはりこの人はモンスターであるため、そういった気持ちは皆無なのでしょう。であれば、逃げることもメイジーさんが阻止してくれましたし、ここはしっかりと倒すために動かないとですね…!


「…メイジーさん、具合は大丈夫なのですか?」

「ん、平気。武器もこの通り」


 メイジーさんはいつのまにかポーションで傷を治していたらしく、加えて予備らしき爪型の武器を構えているので、どうやら問題はなさそうとわかります。


 それなら、ここからは再びメイジーさんも一緒に行動を出来そうですね?相手は鎧姿ではなくゴーストタイプではありますが、協力して戦えばなんとかなる……はずです。


「プレミア!いきなり敵がそっちに引っ張られたけど、何があったんだい!?」

「うわ、後ろから見えてたけど、こうしてみるとやばいね…」

「あ、マリアナさん、それに皆さんも。実は…」


 そして相手がいきなりいなくなったせいで驚きながらこちらに近づいてきて、そのように声をかけてきたマリアナさんたちに対して、私はことの顛末を簡潔に伝えます。


 とりあえず、鎧姿は最初に見てたとは思いますが、その後のことはわからないはずですし、しっかりと伝えないとですね。


「…なるほど、最初にいたあの騎士らしきモンスターがこうなったと」

「しかも、ゴーストに変化、ですか…」


 簡潔に情報の伝達を終えた後、マリアナさんたちは苦々しい表情を浮かべながらそう呟いています。まあ、それを聞けばそんな反応にはなりますよね。明らかに騎士の姿からはかけ離れていますし。


 なんにせよ、メイジーさんによる結界のおかげで逃げられる心配もないですし、ここで倒すためにマリアナさんたちの力も貸してもらいましょうか!私とメイジーさんの二人だけではキツそうですしね…!


「くくくっ、これだけの力があれば、蹴散らすのは容易かろう!さあ、そのまま朽ち果てるがいい!」


 そう言葉を交わしている間にグラッジさんの方も吸収が終わったらしく、続けて言葉を発したその直後。二回りくらい大きくなった全身から、私たち目掛けて闇魔法らしき黒色の槍を無数に飛ばしてきました。


 明らかに身体は大きくなってますけど、それは逆に言えば的が大きくなったということです。なら、ここからは雑魚敵もいませんし、集まっている皆で倒させてもらいますよ!


「いきますよ、皆さん!」

「ん、任せて!」

「あたしたちも、力を貸すぞ!」


 私の掛け声と共に、マリアナさんたち以外にもいつのまにか近くに集まっていた住人やプレイヤーの方たちも各々の返事をしてくれたので、私たちは早速グラッジさんを倒すために動き出します。


 とりあえず、私たちよりも弱い周りの人たちでは攻撃を放たれては対応出来るかはわからないですし、グラッジさんの注意は私が引き受けないとですね。


 幸いにも私が扱うこの剣、黒十字剣クルスには放つ攻撃が全てINT依存になる効果がありますし、ゴースト系のモンスターでもキチンと攻撃は通ります。なら、それを活かすに決まってます!


「では、〈第一の時(アイン)〉!」


 そう考えた私は加速効果を自身に対して付与した後、そのまま一気にグラッジさんへと駆け出していきます。ここは私が注意(ヘイト)を惹きつける必要があるので、まずはその身体に攻撃をさせてもらいますよ!


「はっ!」

「ん!〈赤狼爪(ヴォルフ・ネイル)〉!」

「あたしも!〈舞い上がる波槍(ハイドロ・ウェーブ)〉!」

「ちっ!やはり貴様らは一番の障害だな!」


 加速した動きでグラッジさんに近づいた私を筆頭に、続けてメイジーさんとマリアナさん、他に住人やプレイヤーの方たちの攻撃も放たれ、グラッジさんのHPはいい感じで削れています。


 鎧姿ではなくゴーストタイプだからなのか、意外と攻撃が通っているみたいですね?それに身体が大きくなっていることで攻撃も加えやすいですし、これなら皆の力を合わせれば案外いけるかもしれません…!


 だとしても、油断はしませんがね!鎧姿とは違ったスキルなどもある可能性はあるため、警戒は常にしておきますよ!


「ふん!我が力で朽ち果てるがいい!〈呪怨連弾(カースド・マシンガン)〉!」


 そこからもグラッジさんへと攻撃を加えていた私たちでしたが、やはりあの姿でも使えるスキルがあったようで、全身から呪いの塊のような黒色の弾幕を無数に放ってきました。


「皆さん!弾幕が来ます!気をつけてください!」

「ん、わかった!」


 私はそれを確認した直後、警戒を強めるように声に出します。明らかにあれに当たってしまえば危ない物だとはわかりますし、当然躱させてもらいますよ!


 それに私の発言からもわかる通り、私だけではなく周りに集まっている全員に向かっても放たれているので、そちらが心配になりますけど、少しは信用しないとですね。なので、私は私で対応することにします!


「〈剣気解放リリース・グラディウス〉…!これで…!」


 そう決めた私は即座に剣を強化するスキルを発動させ、そのままゆらゆらとした不規則な動きによって紙一重で避けつつ、当たりそうなものに関しては剣を連続で振るって飛んでくる弾を全て切り捨てていきます。


 スキルによって攻撃範囲が強化されているおかげで以外と簡単に対処が出来てますね?なら、これの効果時間がある間に攻撃にも移りましょうか!全体攻撃のように弾幕を張っているので、至近距離まで近づけば弾幕も怖くないですしね!


 あ、それと相手はゴーストタイプのモンスターなんですし、あのスキルを試すついでに攻撃をしてみますか。おそらくは結構な効き目になるはずとは思うので、この機会を逃しません!


「いきますよ!〈第十五の時(フュンフツェーン)〉!」


 私は〈第一の時(アイン)〉で加速した状態のままグラッジさんの懐まで潜り込み、そこから対象のMPを奪うという効果を持つ武技を放ちます。このスキルはMPを奪う効果ですけど、ゴーストタイプのモンスターにならその身にもダメージを与えられると思った使用しましたが、どうでしょうか…!


「ぐぁ…!何をした…!?」

「ふふん、やはり効果覿面のようですね!立て続けに攻めさせてもらいますよ!」


 普通に攻撃をするよりも、MP吸収効果を持つ武技を使えばダメージは大きくなるようで、グラッジさんは切り裂かれた場所から赤いポリゴンを撒き散らしながらHPが削れています。


 よし、やはりこの武技なら普通よりも効きやすいみたいですね!であれば、ここからは私の持つ【暗黒魔法】による攻撃も混ぜつつ、この武技も合間に挟みながら攻撃をしていきますか!ゴーストタイプのモンスターなので、魔法による攻撃も効果がありますしね!


「皆!プレミアに続くよ!〈流水刺突(コリエンテ・ランス)〉!」

「ん、畳み掛ける!〈赤狼襲(レッド・ハウンド)〉!」

「シスター様に任せきりにはせぬぞ!〈フルスラッシュ〉!」


 そして私の攻撃によってグラッジさんの意識がそれたタイミングで、マリアナさんやメイジーさんを皮切りに次々と攻撃を放っており、それらは見事にグラッジさんの身体に命中してさらにHPを削ることが出来ています。


 よしよし、いい感じにHPを削ることが出来ていますし、この調子で攻撃を続けていきますか!


「くっ!我は、ここでやられるわけには…!」

「何が目的なのかはわかりませんが、貴方はここで倒させてもらいますよ!〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉!」


 そこからも皆で攻撃を加えていくことでグラッジさんのHPが残りわずかとなった時。最後の抵抗として全身から再び黒色の弾を私たちへと無数に放ってきつつ、さらには雨のように黒色の剣が降り注いできました。


 が、そのくらいなら問題はありません!私のスピードは、とても速いのです!それなら、雨の如く降り注いできていてもなんとか対処は出来ます!これが最後の抵抗のようですし、今ここで、確実に仕留めさせてもらいますよ!


 そう思考を巡らせながら、私は〈第一の時(アイン)〉と同時に〈第零(ヌル)第十一の時(エルフ)〉も使用することで最大限スピードを上げ、降り注いでくる剣を足場にするかのように飛び交いつつ、合間に〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉も使いながら一気にグラッジさんの頭上へと跳び上がります。


「このまま、仕留めさせてもらいます!」

「くっ、そう簡単にやられさはせぬぞ!」


 頭上から迫ってくる私を見たグラッジさんは、そう口にしながら私に向けて無数の黒色の槍を飛ばしてきます。が、もちろんそんなぬるい攻撃に当たるはずがなく、空中で身体を捻りながら〈飛翔する翼(スカイ・ステップ)〉も混ぜて回避していくことで、ドンドンお互いの距離が近づいていきます。


 私に対して一番警戒をしているのでしょうけど、ここにいるのが私だけではないことをお忘れではないですか?空中にいるのは当然私だけですが、他にも戦っている人はいるのです。なら、隙だらけですよ!


「ん、チャンス!〈赤狼乱牙(レッド・ファング)〉!」

「ナイス動きさ、プレミア!〈流れる急流(トレンティス)〉!」

「ぐぁ…!?」


 私に意識が向きすぎていたことによって生まれた隙に、メイジーさんとマリアナさん、そして皆さんによる攻撃が再びその身体に命中し、一気にHPを削り取っています。しかし、まだ少しだけHPは残っています。けど、それで十分な働きです!最後の一撃は、私にお任せください!


「悔い改めてやられてください!〈剣気解放リリース・グラディウス〉!そして〈第三の時(ドライ)〉!」


 スキルによって強化された黒十字剣クルスを両手で構えながら、私は攻撃系の武器を使用しつつグラッジさんの頭上から一気に振り下ろします!


「ぐぁ…!」


 その攻撃はメイジーさんたちの攻撃を受けた直後だったせいで躱すことが出来なかったようで、しっかりとその身体に剣が通り、そのまま一刀両断することで残っていたHPが全て尽きることで倒すことに成功しました。


 よし、これでHPも削り切ることが出来ましたし、今度こそ倒すことが出来たはずです…!しかし、この姿に変わった時と同様にまだ形態変化を残している可能性もありますし、最後まで油断はしませんよ!

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