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205話 白

「貴様らはなかなかやるようだな。であれば、この力使わせてもらうぞ!」

「むっ、何かするつもりですか!」


 メイジーさんと共にグラッジさんからの攻撃を捌きつつ攻撃を加えていたのですが、グラッジさんはHPが八割近くまで減ったタイミングで一度漆黒色の大剣による薙ぎ払いを私たちへと放ってきたので、私とメイジーさんは咄嗟に後ろに跳ぶことでそれを回避します。


 …何かをするつもりのようですけど、距離を取られてしまったので妨害が出来ませんでしたね。しかし、一体何をする気なのでしょうか?この人は怨魂と言ってましたし、それに関した能力ですかね?


「我が力となれ!〈刻み込む復讐の怨霊カウント・アブソープション〉!」


 そうしてグラッジさんはスキルか何かを発動させたらしく、同時にその身体から黒色のオーラのようなものが溢れてきました。しかもオーラを纏っただけではなく、どうやら自身のステータスまで上がっているようでひしひしと私の感覚に先程よりも強くなった圧を感じます。


 これは、明らかに先程までとは比べ物にならなそうなほど強くなっていますね…?どう考えても今発動したスキルの効果でしょうけど、ここまで強くなってしまえば私たちだけで相手を出来るでしょうか…?


 …いえ、弱気にはならないんですよ、レア!ここで私たちが倒さなくては誰が倒すというんですか!私の背後には守るべき人たちが大勢いるのです!なら、怖気付かないで戦いますよ!


「メイジーさん、ここからは気をつけていきましょう!」

「ん!」

「さあ、この力で貴様らを屠ってくれる!」


 そのように声に出した私の言葉にメイジーさんが返事を返してくれたそのタイミングで、グラッジさんが力強く手に持つ漆黒色の大剣を虚空へと振るいます。するとそのタイミングで私の【第六感】スキルに反応があったので、私とメイジーさんは咄嗟に横に大きくズレると、ついさっきまでいた地面がまさに大剣で押し潰されたかのように破壊されました。


 …突然で驚きましたが、おそらくこの攻撃は一番初めに出会った時にも使っていた、離れた位置を切り裂く効果の武技か魔法なのでしょうね。【第六感】スキルに反応があり、尚且つ一度見ていたおかげで回避に成功しましたが、もしそれらがなければ今頃はぺちゃんこにされていたとわかります。


「ここからは本気ってことですね!」


 なるほど、つまりここからは先程までと違う、というわけですか。なら、ここからはもっと警戒を強めつつ攻撃を狙うのがよさそうですね。私とメイジーさんはスピードタイプなんですし、その攻撃にはそう易々と当たりませんよ!


「〈第一の時(アイン)〉!」


 私は切れていた〈第一の時(アイン)〉を再び自身へと与えた後、続けて〈剣気解放リリース・グラディウス〉も使用して剣を強化した後にグラッジさんへと手に持つ剣を構えながら肉薄していきます。さて、ここからはグラッジさんも本気のようですし、放たれる攻撃には気をつけないとですね…!


「喰らうがいい!〈復讐撃(ヴァンジャンス)〉!」


 そして私たちが踏み込んだのと同時に手に持つ大剣によって放たれた横薙ぎの攻撃は、加速した動きを活かして身体を背後へと限界まで逸らすことで避け、続けて振るってきた袈裟斬りもゆらりとした足捌きで半歩ズレることで回避します。


「隙が出来てますよ!〈第二の時(ツヴァイ)〉!」


 攻撃を放った瞬間に出来た僅かな隙を見つけ、私は回避した直後にそこへ遅延効果を与える効果を持つ武技を発動させながら首を狙って剣を振いますが、それは咄嗟に頭を逸らされることで微かに剣先が掠めるくらいで避けられてしまいました。


 しかし、剣には触れましたね?なら、効果はきちんと発揮しますよ!さあ、そのまま鈍くなった動きのままやられてください!


「メイジーさん!」

「ん、任せて!〈赤狼乱牙(レッド・ファング)〉!」


 私があげた声を聞き、即座にメイジーさんは武器である両手の爪を構えながら前に出て、そのまま両手を連続で振るってグラッジさんの全身の関節を切り裂きます。


 メイジーさんも私の動きを見て関節を狙うのが良いとわかったみたいで、いい具合にダメージを与えることが出来ているようです!グラッジさんがいくら私たちよりも強くなっているとしても、私たちの武器は個人の力だけでなく協力することです!このまま、首も狙わせてもらいますよ!


「ふん、このままやられるはずがなかろう!」

「…っ!〈第一の時(アイン)〉!」


 首を狙うべく動こうとした直後、一瞬で姿勢を戻したグラッジさんが持つ漆黒色の大剣が私のすぐ横から迫ってきたので、私は咄嗟に加速効果を付与してから地面へと伏せるかのように姿勢を低くすることでそれをなんとか回避します。


 やはり、個人の強さに関してはあちらの方が上のようですし、油断は一切出来ませんね…!それにグラッジさんからの攻撃は、その全てが当たれば即死級であるためどうしても気が抜けませんし、精神的な疲れが溜まってきそうです。


「まだまだゆくぞ!」


 そんな思考を巡らせている間にもグラッジさんからの大剣による攻撃が無数に飛んできており、私はそれを半歩ズレることで躱し、身体を逸らして避け、スキルによって強化されている武器で僅かに軌道をズラしたりするなどの動きで、なんとか被弾することなく捌くことが出来ています。


 しかも、その攻防の合間に遊撃として動いているメイジーさんの活躍もあってグラッジさんのHPは徐々に削ることは出来ていますけど、少しだけジリ貧ですね…?


「ふん、これでは効かぬようだな。ならば!」

「…っ!させませんよ!」

「ん、阻止する!」


 そんな攻防を続けていた私たちでしたが、グラッジさんもそれを見て決定打に欠けると思ったらしく、そう呟きながら何かをしようとしています。


 先程の強化だけでも大変だったのに、これ以上はもっとやばくなりそうですよね?なら、全力で妨害をして阻止させてもらいますよ!


「〈第三の時(ドライ)〉!」

「ん、〈赤狼爪(ヴォルフ・ネイル)〉!」


 グラッジさんの妨害に移るべく、私は〈第一の時(アイン)〉によって加速した状態のまま、〈第五の時(フュンフ)〉によって強化を施した〈第三の時(ドライ)〉による斬撃を。対してメイジーさんは武技による攻撃を、同時にグラッジさんの首に向けて放ちます。


 これで阻止できるといいですけど、流石に対応はされますよね?ですが、妨害にはなるはずです…!ここまでの攻撃なら、グラッジさん相手でも対応せざるを得ないはずですけど…


 そう考えつつ放った攻撃でしたが、それは即座に構えたグラッジの手に持つ漆黒色の大剣と左手の籠手部分で防がれてしまいました。


「なかなかやるようだな。だが、遅い!〈呪怨叛逆(カースド・カウンター)〉」

「…っ!?」

「くっ…!?」


 くっ、流石にそう簡単には首を取らせてもらえないうえに、阻止が出来なかったみたいですね…!それにスキルの発動をするために躱わすのではなく、私の攻撃は左手の籠手部分で防御をされたのですが、特に有効打にもなっていないみたいです。メイジーさんによる攻撃を防いだ大剣の方は言わずもがな、です。


 躱される可能性などは考えていましたが、まさか同時攻撃を防がれるとは思いませんでしたよ…!?しかもそのままスキルを発動されて大剣が迫ってきてますし、これはやばいです…!


 スキルを発動させたグラッジさんによって力強く振るわれた漆黒色の大剣は、攻撃を防がれたせいで一瞬だけ硬直していた私とメイジーさんへと迫ってきて、私たちは咄嗟に自身の武器で防ぎはしましたが、勢いは殺さずに弾き飛ばされてしまいました。


 武器で防ぐことがなんとか間に合ったので私はギリギリHPが一割くらいで生き残れていますが、私と同じように攻撃を喰らったメイジーさんはかなり危険な状態なのがわかります。武器である爪は今の一撃によって完全に破壊されており、メイジーさん本人も身体に受けた傷のせいで立ち上がるのが難しい様子なので。


 というか、最初に感じた通り、確実にグラッジさんの強さが上がってますね…!?どう考えてもグラッジさんの使ったスキルの影響でしょうけど、これはやばすぎます…!


「くっ、これはまずいですね…!」


 ここは私が動かなくてはいけないのですけど、私自身も多大なダメージを受けたせいで剣を杖代わりにしなくては立ち上がるのも辛いのです…!とりあえず〈第十の時(ツェーン)〉でダメージを巻き戻して、すぐに動かなくては…!


 …油断はしていませんでしたが、私はすでにワールドモンスターの一角を倒していたため、相手がそれよりも劣るユニークモンスターくらいならとつい気が緩んでしてしまっていたのでしょう。そのせいでメイジーさんにも被害が出てしまっていますし、油断はダメですね。


「やはりこの力は素晴らしいな!では、まずは貴様から始末させてもらうとしよう」


 グラッジさんはそのようなことを口にしつつ、まず初めにと立ち上がれていない様子のメイジーさんへと意識を向け、そのまま近づいていきます。


 そしてそのタイミングで、あの時の光景が私の頭の中に蘇ります。私のせいでクオンが傷ついてしまう、あの光景が。私の意味が。存在価値が。そして何よりも、醜い自分自身へと攻めるかのような考えが一瞬で私の思考を駆け巡ります。が、すでにそれは克服したのです!


 あの時のことを後悔している?もちろんしています。自分を責めてしまう?それも当然です。ーーですが、私のそばにはクオンや兄様、ゲームでのフレンドの皆さんなどのたくさんの人がいるのです。なら、答えは決まっていますよね?


「…今の私はもう、あの時の私ではありませんっ!」


 私はそう叫びながら、〈第十の時(ツェーン)〉でダメージを無くした後に全身に力を込めて立ち上がります。今動けるのは、私だけなのです。なので、こんなところでやられてたまるものですか!絶対に、メイジーさんもやらせはしません!


 そんなことを思いつつも、私は杖代わりにしていた黒十字剣クルスを構え、グラッジさんへと意識を向けた次の瞬間。私の立っている地点から周囲に侵食するかのように、白色の魔力が迸り一気に地面を書き換えていきます。


「これは…?」


 いきなり地面から白色の魔力が溢れたと思ったらどんどん地面を侵食していき、最終的に私の立っている地点を中心に直径30mの範囲内が白色の魔力によって雪原の如き白色の地面に書き換わりました。


 …これがなんなのかは詳しくわかりませんけど、なんとなくこれからは悪い感じはしませんし、とりあえず置いておきますか。それよりも今は、あの人の相手をしなくてはいけません。


 グラッジさんは倒れ込んでいるメイジーさんへと近づいていっている状態でしたが、流石にこの反応を見て驚いたようで足を止め、こちらに向けて警戒心を出しながら意識を向けてきています。


「貴様、何をした?」

「さあ、それは私にもわかりません。ですが、ここでやられはしませんよ!」


 そう声に出しながら、私は〈第一の時(アイン)〉を自身に付与しつつ駆け出します。が、その直後に驚いてしまいます。何故なら、先程とは比べ物にならないくらいのスピードが出て、そのまますぐにグラッジさんの近くまで踏み込めたからです。


 …原因はおそらく、この白色に変わった地面のせいでしょう。これの詳しい効果は判別出来ていませんが、これを見るに私に有利な物に違いはなさそうですね?なら、このままスピードを活かしつつ貴方を倒させてもらいますよ!


 明らかに先程までとは別次元とも呼べるほど異常なスピードですが、不思議と息をするかの如く自然と制御が出来ていますけど……本当に謎です。まあ正確な動きが出来るようですし、ひとまずは気にしないでおいて攻撃に移りましょうか!


「〈第二の時(ツヴァイ)〉!」

「ちっ!貴様、先程までよりも速いな…!」


 上がったスピードを活かして一瞬でグラッジさんの懐に潜り込んだ私は、そこから首狙いで下から掬い上げるように斬撃を放ちましたが、それは咄嗟に頭を逸らされることで僅かに剣先がかするくらいで避けられてしまいました。


 しかし、この攻撃の本来の役目は動きを鈍くする効果を与えるものです。そのため…


「やはり、貴様のそれは厄介だな!」


 掠めただけとはいえ、キチンと剣には当たっているのです。そのおかげで遅延効果は発揮され、少しの間はグラッジさんの動きが鈍くなります。そのうえこれまた白色の地面のおかげなのか、こちらも〈第一の時(アイン)〉と同様に遅延効果が強くなっているらしく、動きの速度がガクンと落ちています。


 この白色の地面も相まって、今が絶好のチャンスです!ここで首狙いで集中攻撃を加えても、おそらくは大剣や鎧によって防がれてしまうと思いますし、まずは関節から狙いますよ…!


「時を進ませはしません!〈第六の時(ゼクス)〉!」


 私は手始めに左手の手首を狙って〈第六の時(ゼクス)〉を使用し、それは今まで以上の加速状態と遅延効果によって避けられることも、ましてや防がれることもされずに見事切り落とすことに成功します。加えて、この武技による効果であるバフ・デバフの効果時間を三十秒伸ばすも発動することで、直前に与えた遅延効果はさらに引き延ばされました。


 この謎の効果によって私の動きが明らかに速くなってますし、グラッジさん自身もスキルによって強化されているとはいえ、強くなっている遅延効果もあれば回避する余裕はないみたいですね?左手首を切り飛ばせましたし、再生するだろうとは思いますけど、これで少しの間は攻撃を捌くのは厳しそうです。であれば、次は足を狙いますよ!

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