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202話 防衛戦

「…そろそろ来る気がする」


 あの後も街中を歩き続け、そこから街の東に出た私たちはそのまま防衛戦のために街のすぐ近くで待機していたのですけど、そのタイミングで突如メイジーさんが立ち上がったと思ったら、いきなりそのように口にしました。


 今の時刻はすでに九時を超えており、外の天気は気持ちいいくらいに晴れ渡っているのですけど、魔物の気配や姿は一切確認して出来ません。なのに、何故来るとわかったのですかね?あ、もしかして、メイジーさんは何か特殊なスキルを持っており、それで感じ取ったとかでしょうか。野生の勘、的な?


 …それなら納得は出来ますし、そうかもしれませんね。なんにせよ、メイジーさんは警戒を強めだしたので私たちも準備をしないとです。


 周りの人たちは武器の手入れをしたり何かを食べていたりと自由行動中ですし、まずはその人たちにも警戒をするように伝えますか。


「あの、そろそろ来るかもしれない、とメイジーさんが言ってました」

「そうか、情報感謝する。では、そろそろ準備させるとしようか」


 そしてリーダーである男性の元へと向かってそのことを伝えた私は、そこから再びメイジーさんのところへと戻って自分の準備も開始します。まあ準備をするといっても、武器を取り出して支度を整えるくらいなのですぐに終わりますが。


 とりあえず私はこれでいいとして、メイジーさんはある一定の方角を睨むように視線を送っているので、おそらくはあちらから出てくるのだとわかります。


 ベールによって感覚が強化されているとはいえ、流石に距離があるので私にはわかりませんけど、メイジーさんは信用出来るのでしっかりと警戒をしておかなくてはいけませんね。


「マリアナさんたちも、大丈夫ですか?」

「はっ、任せておきな!海の上でなくとも、あたしの腕は落ちやしないさ!」


 私の言葉を聞いたマリアナさんたちは、それぞれが笑いながらそう言葉を返してくれたので、用意もいいみたいです。マリアナさんはもちろんとして、そのお仲間さんたちも腕前は確かなようですし、期待させてもらいますよ…!


 私たちの周りにも意識を向けて確認してみると、プレイヤーと住人の皆さんは共に緊張しているようですが、しっかりと戦う意思は見せているのであちらも問題はなさそうですね。


 よーし、この街は必ず私たちが守ってみせますよ!前線にいるのは私たちだけではないですけど、重要なポジションなのでここを突破されないように気をつけておかなくては…!それに、メイジーさんが言っていたユニークモンスターという個体らしいデュラハン。こちらの強さもかなりのものと聞きましたし、最後まで油断は禁物です…!


「ん、来た!」


 そうして私たちが警戒をし出してから数分が経ったと思った直後、突如メイジーさんがそのように声を上げました。


 そしてそれと同時にこの街を目指すかのように、大量のアンデッド型のモンスターの群れが街から離れた位置にある森の中からこちらへと迫って来たようで、メイジーさんの声と共に確認が出来ました。


 どうやら、ついに来たみたいですね…!私が感じ取った感覚からは最初に迫ってきているのは雑魚であるゾンビやスケルトン、ゴーストくらいのようですし、このくらいなら苦戦することはまずないでしょう。


 ということなので、手始めに遠距離攻撃を出来る人たちで先制攻撃といきましょうか!私も【暗黒魔法】によって遠くから攻撃は出来ますし、早速攻撃に移りましょう!


「〈ダークアロー〉!」


 私による闇魔法を筆頭に、次々と魔法や矢などの遠隔攻撃がアンデッドの群れへと飛んでいき、それらが先頭にいたアンデッドたちに命中することで結構な数を倒すことに成功します。


 が、それでもモンスターは大量にいるため、ある程度を倒せたとしてもまだまだ奥からは這い出てきているので、これだけで済むはずがありません。


「ううむ、数が多くて面倒ですね…?」


 やはり、先に聞いていた情報通り数が多いみたいですね。今も遠隔攻撃を続けて迫ってくるアンデッドたちをどんどん倒しているのですけど、それでも数が減ったようには感じれません。


 ですが、今のところは上位種は出てきていませんし、出てくるまでにある程度は片付けておきますか。上位種が出てきてしまえば今のように容易に蹴散らすことは出来なさそうですしね。


 ということなので、アンデッドの群れとの距離が近くなるまでは魔法で攻撃を続けることにしましょうか。わざわざ自分から近づいて剣で戦うのも面倒ですしね。


「…そろそろ、ですね」


 それから少しの間は近づいてくるアンデッドたちへと闇魔法による攻撃を放ち続けていましたが、そう呟いた通りそろそろ剣を使ったほうが良さそうなくらいの距離までモンスターの群れが近づいてきました。


 ここまでである程度の数は倒しているのですが、それでも数が減ったようには見えないので少しだけ不安になってしまいますけど……とりあえず、片っ端から倒すしかないですね。今のところはまだ苦戦しそうな敵はいませんし、まずは数を減らすことに意識を向けますか。


 流石に上位種となれば雑魚よりもちょっぴり劣勢を強いられるかもしれませんし、出てくるまでに雑魚の数は減らしておかないと後々が大変なはずですしね。そのため、それはこの前線にいて近接戦闘を出来る人が担当としましょうか…!


「いくよ、皆っ!」

「分かりました!」

「はいっ!」

「ん!」


 マリアナさんの一声に私たちは各々の言葉を返し、そこからそれぞれの武器を構えて私たちへと迫ってくるアンデッドに向けて駆け出します。


 さて、この剣の錆にしてくれますよ…!数はとても多いですけど、強さはそこまでではないようなのでバッタバッタと倒して見せます…!私の得意武器は銃ですけど、剣の腕前も今までの特訓の成果で強くなってるはずです。そのため、油断はしませんがやられることはない、と思います…!


 まあそういうわけで、まずはいつも愛用しているユニークスキルの〈第一の時(アイン)〉で動きを加速させ、その状態で倒しまくるとしましょうか。この武技はとても頼りになりますし、主力として活用させてもらいますよ! 


「…次は、〈剣気解放リリース・グラディウス〉!」


 そしてユニークスキルによって動きを加速させた後は、続けて一分間自身の振るう攻撃が広範囲化して攻撃力を強化する効果を持つ〈剣気解放リリース・グラディウス〉も同時に使用します。


 このスキルを使えば、通常攻撃であるただの一撃でもアンデッドたちを纏めて倒すことが出来るため、今回のような状況にはピッタリなのですよ。そして攻撃力も同時に強化されますし、無数の雑魚戦では大活躍なはずです。


「ふっ!」


 二つのスキルによって強化された今の状態を活かし、私は襲ってくるゾンビやスケルトン、ゴーストといったアンデッドモンスターたちを次々と倒していきます。


 やはり、相手をしているのは雑魚敵なので特に苦戦はしませんね。そのうえ動きも遅いため、そんな鈍い攻撃を当てられるはずもないですし、高いはずの耐久も首を刎ね飛ばされることによって一撃で倒されており、そちらも問題になっていません。


 まあスケルトンやゴーストはゾンビと比べれば早い方ですけど、それでも動きが加速している私からすればあくびが出てしまうほどなので、やはり攻撃を当てられることはありません。


 加えてスケルトンもゾンビと同様に首を刎ねることで容易に倒せ、ゴーストに関しても武器である黒十字剣クルスについているスキル、魔法剣の効果である"自身の攻撃が全てINT依存になる"のおかげでやはり容易く倒せています。


 そのため、襲ってくるアンデッドモンスターたちは次から次へと倒せているので、この調子なら簡単に片付けることが出来そうですね?


 まあ上位種が未だに出てきていないのがあるからかもしれませんし、油断は最後まで出来ないので気を引き締めてはいますけどね。


「…っ!」


 そんなことを考えつつも片っ端からアンデッドモンスターたちを倒し続け、周囲のモンスターたちが全てポリゴンとなって一区切りついたそのタイミングで、突如私目掛けて直径50cmはありそうなほど大きい火の玉が飛んできました。


 なので、私は加速した動きを活かしてそれを避け、すぐさま火球が飛んできた方向へと意識を向けます。すると、そこには黒いローブを纏い、同じく黒色をした骨の体をしているスケルトン、おそらくはスケルトンの上位種らしきリッチとそれを守るかのようなグールとレイスがそれぞれ一体ずつその場に立っていました。


「あれが、上位種……ですよね?」


 ふむ、ついに上位種が現れたみたいですね。私のところにはリッチがいるみたいですけど、チラリと周りにも意識を向けてみると、前線にいる人たちのところにもゾンビの上位種らしきグールにゴーストの上位種であるレイス、私と同じリッチなどが複数対確認出来ました。


 確か、これらの上位種も少ないですけど何体かはいるとのことでしたし、ここからが防衛戦の要なのでしょうね。…というか、周りにいる人たちには多くても二体なのに、何故私のところには三体もいるのですかね…?それだけ私を警戒している、ということでしょうか…?私、特に何かをしたわけではないのですけど…


「ガァア!」

「キイィ!」

「カラカラ!」

「おっと、いきなりですか…!」


 そう思考しつつも警戒をしていると、私と対面している三体のリッチ、グール、レイスがいきなりのばかりにリッチの側から飛び出してこちらへと襲いかかってきました。


 すでに周りにいる雑魚アンデッドが片付いているとはいえ、流石に三体を同時に相手をするのは苦戦しそうですね‥!だとしても、ここで私がやられるわけにはいきませんし、ここからも気を引き締めて戦いましょうか…!


「〈第一の時(アイン)〉!」


 私は手始めに動きを加速させる武技を自身へと付与した後、迫ってくる二体のグールとレイスへと意識を向け、加速した状態を活かすようにこちらからも地面を強く蹴ることで駆け出します。


「ガァ!」

「キィイ!」

「甘いですっ!」


 そしてお互いの攻撃の間合いに入ったタイミングで最初に動いたのは、グールです。


 グールがその強靭な腕を掲げたと思ったその直後、次の瞬間にはその腕を振り下ろしてきました。が、その動きは予想出来ていたので、それはギリギリまで引き付けてからゆらりとした足捌きで横にズレることで避けます。


 そしてそのまま反撃として手に持つ黒十字剣クルスをグールの首元へと振るったのですが、私のその攻撃はレイスによる闇魔法らしき黒い球が飛んできたために一旦攻撃を中断し、後方に跳ぶことで当たることは出来ませんでした。


 しかも、そこに後方にいたリッチから風の刃まで飛んできたため、私は加速した状態のまま左右にステップを踏むことでそれらも回避します。


「敵の方が数が多くて厄介ですね…!」


 むう、単体相手ならそこまで苦戦するほどではなさそうですけど、明らかに協力するかのような戦いのため少しだけ手こずってしまいます。前衛のグール、遊撃のレイス、そして後衛のリッチとポジションもしっかりしているので、流石に私一人ではそう簡単には倒せそうにありません。


 しかし、私以外にも前線にいる人たちもリッチなどと戦っているため、協力を頼むことは出来ませんし、ここは私一人でどうにかするしか道はなさそうですね。…なら、やはりユニークスキルを主軸として戦うしかなさそうです。


 私の今の姿では、分かりやすいユニークスキルを使うと正体がバレてしまう気がするので、そこだけは注意しないとですね。そのため、分身や幻影を生み出す武技は使用しない方がよいでしょう。


 それらは私の主力の一つなので、それを使わないとなれば苦戦をするのは間違いないと判断出来ますが、仕方ないですね。それでも、負けないようには全力を尽くしますが!

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