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201話 ポジション

「ん、きた」


 あれから冒険者ギルド内にある椅子にメイジーさんと一緒に座りながら始まるのを待っていた私たちでしたが、ふとあげたメイジーさんの声を聞き、私は意識を切り替えます。


 メイジーさんが視線で示す先には一人の男性が階段から降りてきているところだったので、多分あの人が今回の防衛戦の指揮官のような人なのでしょう。メイジーさんはこことは違う国である童話騎士という立場の人ですけど、どうやらリーダーのポジションにはいかないようですね?現に私の隣でのほほんとしてますし。


「集まったのはこれだけか」


 そんな思考を巡らせている間にその男性は冒険者ギルド内に集まっている人たちを見渡し、そう呟きます。私的には結構な人数がいると思いましたけど、あの人からしてみれば少ないように感じたみたいで、ほんのわずかに落胆のような感情が感じ取れました。


 うーん、ここにいる人たちはおよそ五十名くらいなので、確かに少ないのかもしれませんね。この冒険者ギルド内で見れば多く感じますが、防衛戦という街を守るための戦いだと人が少ないのは手数が足りなさそうですね?守るべきものも多いですし、これだけの人数だと心配そうになる男性の気持ちもわからなくはないです。


「まあいい。ひとまずは集まっていただき感謝する」


 私がそう考えている間にも、男性は周囲の人たちを確認した後にそのように口にしてから話を続けます。


「今回、この街を襲ってくるモンスターはアンデッドの群れらしく、その数も無数らしい」

「そのアンデッドの種類と数は?」


 男性の発した言葉に対して、先程私とメイジーさんと会話をしていたあの傭兵のような男性がそんな質問を投げかけると、それにリーダーである男性はそちらに視線を向けた後に言葉を続けます。


「ゾンビ、スケルトン、ゴーストが無数に。上位種のグール、リッチ、レイスも前の個体よりかは少ないが、こちらも多数確認出来ている。そして、それらの上位種もわずかにいるらしい。さらには、そのアンデッドたちを率いていると思われるデュラハンの存在も確認が出来ている」


 その男性によるモンスターたちの詳しい情報を聞き、周りでそれを聞きながら待機している人たちはザワザワと動揺をしているのが私の感覚に伝わってきます。


 まあ、確かに驚きはしますよね。なんせ雑魚といっても過言ではないゾンビたちはともかく、その上位種らしきグールなども多数いるみたいであり、さらにはそれを率いていると思われるデュラハンというモンスターもいるらしいのですから。


 私からすれば、雑魚とはいえ数が多いと範囲攻撃の手段が乏しいのでちょっとだけ面倒ですし、そんなモンスターたちが無数にいるとも言っているのです。そのため、物怖じするわけではありませんけど、これはキツそうです…!


 というか、メイジーさんはどうなのでしょうか?前に一度見た時は爪を武器にして戦っていましたし、私と同じで範囲攻撃には乏しそうですけど…


「なるほど、情報は理解した。なら、数は必要みたいだな」

「そうだ。だが、集まっている人数は少ないようだから、人選をどうするかを決めなくてはいけない」


 おっと、そのような思考をしている間に話が進んでいましたね。リーダーである男性はそう述べていますし、間違いなく防衛戦での人の配置には気をつけておかないと危険ですよね。


 もし適当に配置してしまえば、そこが突破されてしまった場合はそのまま街を蹂躙されてしまうので、ここは慎重に決めないといけませんね!それにここに集まっている人たちは防衛戦をするにはどうしても人数が少ないので、さらに意識して決めておかなくては…!


「なら、あたしたちが前線をするのはどうだい?」


 そうして人の配置を決めるために男性が頭を捻って考えているところに、ふと女性の声がかけられました。


 私は視線を、というか意識をそちらに向けてみると、そこにはまさに女海賊と呼べそうな見た目をした犬人族の女性とその仲間らしき人たちが立っており、声の主である女性からはなんとなく自信満々な感情が伝わってきます。


 見たところこの人たちはプレイヤーのようですし、死んでも生き返ることが出来るから前衛をする、と言っているのでしょうね。


 プレイヤーはこの世界の住人とは違って完全な死とは無縁ですし、今回の防衛戦のような人手が足りない場面ではかなりの力になりそうですね。なんせ死んでも生き返って何度でも戦えるのですから。


 まあ死んでしまうと一時間全ステータスが半減になるデスペナルティはありますが、住人の命と比べれば安いものでしょう。


「ふむ、それは何故だ?」

「あたしたちは異邦人だ。だから、死んでも生き返るのさ」

「なるほど、異邦人か。噂では聞いていたが、こうして見るのは初めてだ。であれば、頼ませてもらってもよいか?流石に人が足りなくてな」

「構わないさ。じゃ、あたしたちは前線で食い止めることに死力を尽くすことにするぞ」


 どうやらリーダーである男性も私と同じ意見のようで、前線は頼むことにしたみたいです。異邦人……要するにプレイヤーのほとんどはこうした場面では全力を尽くしてくれますし、住人の人たちからすればとても頼もしいのでしょう。


 が、男性はそのプレイヤーたちに頼むだけでは人手が足りないようで、他にも前線を担当してくれる人が欲しいみたいですし、私もそこに入らせてもらうことにしましょうか。


 メイジーさんと私は近接タイプですし、私たちの実力的にもそのポジションがあっていそうですしね。


「メイジーさん、私たちも前線に行きませんか?」

「ん、賛成。じゃあ、早速伝える」


 私の言葉にメイジーさんも賛成らしく、そう言葉を返してきた後に早速男性に向けて私たちも前線に行くと伝えます。


「私たちも前線を担当する」

「私たち……つまり、メイジー様とそこのシスター様が、ですか?」

「ん、そう」


 メイジーさんのあげた声を聞き、周りにいた人たちから無数の視線がこちらに飛んでくるため、ちょっぴり居心地が悪くなってしまいますが、仕方ありませんよね。


 メイジーさんはともかく、私なんてまさに子供といった見た目ですし、侮られたり心配されたりするのは当然です。だとしても、落ち着かない雰囲気なのでその視線はやめてほしいです…!


「シスター様はその、大丈夫なのですか?」

「ん、私よりも強いから大丈夫」

「そ、そこまでではないですよ…?」


 さっきも言いましたけど、私はメイジーさんよりも強くはないとは思いますし、そこまで過大評価をされるほどではないはずです…!


 ま、まあそれだけ実力を認めてくれているのでしょうけど、それでもこうして絶賛されてしまえば少しだけ緊張してしまいます…!ですが、今から街を守るために戦うんですし、その緊張は取っておかないとですね…!


「…メイジー様が言うのなら、大丈夫なのでしょうね。では、二人にもお願いします」

「ん、任せて」

「私も出来る限りは頑張ります…!」


 よし、ひとまずメイジーさんのおかげで私も参加出来るようですし、この後の防衛戦は頑張るとしますか…!前線には、私とメイジーさんの他に先程の女海賊らしきプレイヤーの人たちもいるので、その人たちとも協力して守り切らないとですね。


 そんな感じで私とメイジーさんの担当はサクッと決まり、そこからは男性によって防衛戦に参加する人たちのポジション決めに移り出したので、私たちは一旦男性の元から離れて先程の女海賊である人たちの元へと向かいます。


 この人たちとは協力して戦うことになりますし、少しくらいは会話などをして作戦を考えた方がいいですからね。なので、私とメイジーさんの二人は早速その人たちの元へと向かったというわけです。


「あんたたちは確か、あたしたちと同じポジションの人だったね?」

「ん、私はメイジー。よろしく」

「私はプレミアです。よろしくお願いします、お姉さん」

「ご丁寧にどうも。あたしはマリアナ、まあ異邦人さね」


 そうして女海賊であるマリアナさんからの自己紹介の後、他にもいたマリアナさんの仲間であるプレイヤーの人たちとも互いに自己紹介を済ませて私たちは、そこからこの防衛戦での作戦を決めるために話し合います。


「まず作戦を決めるに当たってあたしのスキルを簡潔に説明すると、水と槍を扱う感じさ」


 ふむふむ、マリアナさんは水と槍を得意としているようですけど、なんとなく海賊みたいな見た目には結構似合っている感じがしますね?それと、そんなスキル構成なら前衛としては頼りになりそうです…!


 加えて、マリアナさんの仲間である人たちからも聞いた限りではスキル構成がいい具合にバラけているようなので、今回の防衛戦でのポジションもバランスが良さそうに感じれます。あと、聞くだけではなく私たちのことも伝えないとですね。


「私は爪を扱う。だから前衛は任せて」

「私は剣を使います。それと闇魔法を少々」

「ふむ、それなら前衛はあたしとシア、そしてメイジーとプレミアが良さそうだね」


 お互いの得意としているものの情報を交換したからか、以外と早く立ち位置は決まりましたね。ちなみに、シアさんとはマリアナさんの仲間である猫獣人の人であり、得意としているのは二本の短剣で斥候ポジションの人です。なので、その人も私たちと一緒に前衛をするみたいです。


「…ということで、ポジションはこれで決まりだ。早速街の外に移動して待機するぞ」

「…どうやら、あちらも決まったみたいだね」

「ん、私たちも行こう」

「ですね。行きますか」


 私たちの前線での立ち位置が決まったタイミングで、あちらも決まり終えたようでリーダーである男性がそう声をあげていました。


 そろそろ街の外に出て準備に移るみたいなので、私たちも行かないとですね。メイジーさんは言葉を発したと思ったらすぐに行ってしまったので、私とマリアナさんたちは置いてかれないように慌ててその後ろに走っていきます。


 …やっぱり、メイジーさんはすっごくマイペースな性格ですね。周りを気にしないというか、我が道をいくというか……別に悪いことをしている訳ではないですけど、もう少し周りを意識してほしいです…!っと、それはさておき、置いてかれないように後ろに付いていかないと…!




「…ふと思ったのですけど、メイジーさんはすでに戦っているのですよね?なら、敵についてもっと詳しく知ってたりするのですか?」


 メイジーさんに付いていくように歩いている最中、私はふと頭の中に沸いた疑問をぶつけてみると、メイジーさんは特に隠すことでもないようで、歩きながらそれについて教えてくれました。


「ん、私が直接戦ったわけではないけど、ある程度の情報はある」

「ん?メイジーは今から相手するやつの情報について知っているのかい?」


 そういえば、マリアナさんは私と違ってメイジーさんについては特に知っていませんでしたね。私からも教えてませんでしたし、その疑問は最もです。


 私の場合は前に赤色のケープを鑑定で見た情報に加えて、マリアナさんと会話をする前に直接聞いていたので知っていますけど、そうでない人にとってこれは驚くに決まってますよね。


「そう。で、情報だけど……ボスであるデュラハンはユニークモンスターの一体らしく、普通の個体とは強さが別次元、らしい」

「らしい、って……結局どのくらいの強さなんだい?」

「わからない。ただ、それの相手をしたサンドリアからは、なかなかの強さだったと聞いている」


 ふむ、サンドリアという人が誰かはわかりませんけど、おそらくはメイジーさんの友人ですよね?なら、同じ童話騎士なのかもしれませんし、そうだとしたらそれだけの強さを兼ね備えているモンスターということなのかもしれませんね。


 しかも、ただのモンスターではなくユニークでもあるらしいですし、これは結構骨が折れそうですね…!


 マリアナさんたちはプレイヤーなので死んだとしても大丈夫ですけど、メイジーさんはNPCであるので死なせるわけにはいかないですし、私もこの姿ではNPCと見られているので死ぬわけにはいきません。


 そのため、今から相手をするモンスターたちに油断はしないようにしなくては…!実力があったとしても、やられる時は簡単にやられてしまいますしね。

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