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199話 誕生日パーティ

「…よし、これで準備は完了ですね!」


 そうしてあの後はやることを全て済ませてから悠斗との誕生日パーティに向けての用意を開始し、すでに今は次の日である金曜日……つまり、誕生日パーティの日付です。


 今の時刻は予定していた午後六時の少し前である五時半ですが、それまでの間で買い物をしてそれらを使った料理などの用意は全て完了しています。


 誕生日プレゼントはすでに送っているためそちらは用意していませんけど、その代わりとしてご馳走は私の手で用意しました!


 まず一つ目が、悠斗の好きなハンバーグで、二つ目がビーフシチュー、そして三つ目がちらし寿司であり、最後がデザートであるチョコレートケーキです!


 これらは全て私の手で作りましたが、悠斗の口に合うとよいのですけど。…ちなみに今回の誕生日パーティにはどうやら兄様は参加をしないらしく、二人きりで楽しむといい、と言って出かけてしまいました。参加すると思ってたので、少しだけ意外でしたね。まあ私たちを気にしてそう動いてくれた、ということでしょうけど。


 …ですが兄様、気を利かせて二人きりにしてくれるのは嬉しいのですけど、最後に言った言葉は忘れませんからね…!なんと兄様は、そのまま悠斗を襲ってしまえとも言ってたのです…!そ、そんな破廉恥なことするわけがないですよ…!?もう!兄様ときたらそんな言葉を残して行ってしまうなんて…!


 そのため少しだけぷりぷりしてしまいますが、悠斗が来るまでには落ち着かせておかないとですね。こ、このまま悠斗と対面してしまえば意識してしまいそうなので…!


「…っと、ついに来ましたか…!」


 そんなことを考えつつもリビングでドキドキしながら待っていた私でしたが、そのタイミングで聞こえた呼び鈴の音を聞いてすぐさま玄関まで向かって扉を開けると、そこにはいつも通りのラフな格好をしている悠斗が立っていました。


 悠斗は特に緊張をしていないようですけど、私は悠斗の顔を見て少しだけ頬を赤く染めてしまいます。に、兄様からの言葉が頭に残っていてちょっぴり緊張してしまいますよぉ…!


「待たせたな、美幸」

「い、いえ、このくらいは大丈夫ですよ!さあ、入ってください!」

「おう、お邪魔するな」


 緊張を見せないように意識しつつ悠斗を家の中へと招き入れた私は、そこからリビングまで悠斗を案内します。リビング内は悠斗の誕生日パーティということなので少しだけ飾り付けしており、悠斗は目ざとくそれを見つけて指摘してきます。


「お、なんだか雰囲気が出てるな?」

「ふふーん、飾り付けを頑張りましたからねっ!では、早速作った料理を持ってくるので座って待っていてください!」

「了解、待ってるな」


 リビング内を見てそのように褒めてくれたことに気分が良くなった私でしたが、それは一度置いといてキッチンまで向かい、この時のために作っておいた料理をリビングまで持ってきます。


 作った料理の種類は多いので一度で運び切ることが出来ないので、何回かに分けて運びました。悠斗も私が持ってきた料理の数々を見て目を輝かせているため、どうやら気に入ってくれているみたいですね?


 ハンバーグが好きなのは知ってたのでこちらは自信がありましたが、他の料理についてはちょっとだけ心配でしたけど、この様子を見るにどうやら心配は杞憂だったみたいです。これなら、全部美味しく食べてくれるでしょう…!…まあ量があるので、一度で全てを食べ切るのは難しいかもしれませんが。


「よし、これで作った料理は最後です!」

「これも美味そうだな」


 そして最後に持ってきたちらし寿司をリビングのテーブルへと持ってきて、料理を運ぶのは終わりました。まだチョコレートケーキは持ってきてませんけど、そちらは食後に食べることにするため後にしています。


 なので今ここにあるものは、ハンバーグとビーフシチュー、ちらし寿司の三種類です。悠斗もワクワクしながら今か今かと待ち望んでいるようですし、冷める前に早速食べるとしますか!


「では悠斗、お誕生日おめでとうございます!どうぞ、食べちゃってください!」

「おう、ありがとな!それじゃ、いただきます!」


 そう声に出した悠斗は、待ってましたとばとばかりに箸を手に取って食べ始めます。よし、悠斗も食べ始めましたし、この辺りで私も食べてるとしますか!


 味に関しては作っている途中でキチンと確認をしてましたが、どうでしょうかね…?流石に不味くはないでしょうけど、悠斗の口に合うかどうか…


「ん、美味いな!」

「ふふ、ありがとうございます!」


 そんな心配した様子だった私でしたが、悠斗は口の中に入れたハンバーグを飲み込んだ後、そのような感想を返してくれました。


 ふぅ、そう言ってくれるのなら安心しました…!悠斗の口にもしっかりと合っていたみたいですし、それはもう美味しそうにパクパクと食べ進めているので、それほど美味しかったのでしょうね。


 心配はどうしても尽きませんでしたけど、こんなにも美味しそうに食べてくれるのなら作った甲斐があるというものですよ!やはり、私は誰かに料理を作ったりするのは好きみたいですね…!


 そんなこんなで、私たちは料理を食べ進めながら他愛ない会話を続けます。


「最近はリアルであまり会ってなかったが、どうなんだ?」


 料理を食べながら悠斗から突如そのように聞かれましたが、特にこれといったものはないのですよね。強いて言えば、昨日の夜からは悠斗との誕生日パーティのために行動していた、くらいでしょうか。


 加えて、夏休みなので毎日ゲーム三昧の日々でもありましたね。まあとりあえず、素直にそれを答えることにしますか。


「特に変わったことはありませんでしたよ。そういう悠斗はどうなんですか?」

「俺か?俺も特に変わったことは……あ、美幸とのデートプランを考えてたりとかだな」


 で、デートプランを考えていた、ですか…!?悠斗は、またもや私とデートをするために考えてくれていたのですね…!ううむ、それなら私も少しは考えておかないといけませんね…!流石に毎回毎回悠斗に任せきりでは申し訳ないですし、少しは私の気持ちも伝えておかないと…!


 と、というか、そんな話題になってしまえば恥ずかしくなっちゃいますよ…!悠斗は私のことを好きでいてくれているみたいですけど、愛想をつかされないように気をつけないとです…!


「そ、それなら私も、で、デートの予定を考えておきますね!」

「はは、そこまで気にする必要はないぞ?俺は好きで考えているからな。それに、楽しんでくれている美幸を見るのが好きでもあるからな」


 むぅ、そんなかっこいいセリフを吐かないでくださいよぉ…!そこまで言われてしまえば恥ずかしすぎて顔が真っ赤になってしまいます…!し、しかも兄様からも応援されていますし、少しは恥ずかしくならないように頑張らないとですね…!


「…それで話は変わるが、美幸の今日の格好はデートの時に買った服なんだな」

「あ、き、気づいちゃいましたか?そうなんですよ。ど、どうですか?似合っています?」

「ああ、美幸にはピッタリだ」


 そんな取り止めのない会話をしている最中にふとそう声をかけられましたが、実は今の私の格好は悠斗の口にした通り、デート時に買った花柄ワンピースと悠斗からプレゼントされたネックレスを付けているのですよ!

 

 悠斗も料理を食べながらそう指摘してきましたし、やっぱり悠斗は気がきくといいますか、しっかりと私のことを見てくれているようですね…!今回は悠斗の誕生日パーティということなのでしっかりとオシャレをしましたし、気づいてもらえると嬉しく感じます…!


「それにしても、美幸の料理はかなり美味いな」

「そ、そこまで褒められると恥ずかしくなっちゃいますよ…!」

「はは、すまんな。だが、本当に美味しくてな」


 うぅ、それだけ美味しいからそう言ってくれているみたいですけど、流石にここまでベタ褒めされてしまえば恥ずかしくなるのも仕方ないですよぉ…!


 ですが、褒められるのは悪い気はしないので嬉しいですけどね!なので、褒めるなとは言いません…!


「あ、言い忘れていたのですけど、デザートにケーキも作っているのでこれらは全部食べきらなくてもいいですからね!」

「お、そうなのか?なら、このくらいで食べるのはやめておくか」


 悠斗はパクパクと食べ進めていたので、すでに用意した料理の半分近くを食べ終えているためこの辺で食べるのはやめるみたいです。まあ、デザートにケーキがあると伝えればそうなりますよね。作った量が量なので全部を食べ切れるとは思ってませんし、それも当然でしょう。


 ということで、残ったこの料理たちは一旦片付けておくとして、次はケーキを持ってきましょうか!作ったケーキは冷蔵庫で冷やしている最中だったので、いい具合に固まっているはずと思いますし、こちらも悠斗の口にあえばよいですね!


「…持ってきましたよ!」

「おお、これもまた美味そうだな」


 そう決めて残った料理は一度冷蔵庫に仕舞い、それと交換するように持ってきたチョコレートケーキを見て、悠斗はそのように声を漏らしています。


 今回作った誕生日ケーキはシンプルにチョコレートだけを使って作った物なので、果物などは特に入ってません。そのため純粋にチョコの甘さを堪能出来るものであり、悠斗からしても好きなケーキ……なはずです。


 ま、まあ悠斗なら残さずに食べてくれます、よね…?悠斗自身も美味しそうと呟いていますし、大丈夫だといいですね…!


「悠斗!ケーキ、持ってきましたよー!」

「待ってたぞ。美幸の料理はどれも美味いからな。ケーキも期待してしまう」

「そう言ってくれると作った甲斐がありますよ!さあ、どうぞ!」


 そんなことを考えつつもケーキをリビングのテーブルへと持っていき、そこから悠斗と一緒に持ってきたケーキを食べ始めます。


 うんうん、我ながら上手く作れたみたいですね!チョコレートの甘味がキチンと感じられますし、とても甘くて美味しいです!


「やっぱり、美幸の料理は美味いな。お店のものと比べても遜色ないくらいの美味さだ」

「そ、そんなにですか?」


 流石にお店のものと比べてしまえば劣ってしまいそうですけど、悠斗はわざわざ嘘をつくタイプではないので本心から言っているのだとはわかりますが……悠斗にしてみれば、それだけ美味しいということなのですね。


 それに褒められるのは嬉しいですし、その感想は素直に受け取ることにしますか。悠斗の口にも合っているみたいなので、自信を持って良さそうです。


「ご馳走様でした」

「お粗末様です!悠斗、悠斗はこの後はどうしますか?」


 そうしてデザートであるチョコレートケーキも悠斗がパクパクと食べ進めることで全て食べ終わり、一息ついたそのタイミングで私は悠斗に対してそう聞いてみます。


 すでに今の時刻は七時になっているため、日が落ちて結構外は暗くなってしまっているのですよね。なので、今から何かをするには時間が遅いのでどうするかを聞いてみましたが、どうでしょうかね?


 悠斗は私とは違って大人っぽい姿なので危険はないかもしれませんけど、今から帰らすのも少しだけ申し訳なく感じてしまうので…


「…そうだな、時間もいい具合だし、この辺で俺は帰るとするな」

「そうですか…」


 うーん、私的には泊まっていってほしいですけど、我儘は言えませんし見送ることにしますか。ゆ、悠斗とは恋人なのでいずれは一緒に過ごしたいとは思ったいますけど、それはまだ先になりそうです。…もう少し、この恥ずかしさを耐えられるように努力しないとですね。


「んじゃ、またな」

「はい、悠斗もまた会いましょう!」


 その言葉を最後に悠斗は帰っていきましたが、私はそれを玄関で見送った後にリビングに戻って片付けを開始します。まあ特に汚いわけではないので、ただテーブルを拭いたり物を戻したりするだけですけどね。


「それにしても、悠斗はデートプランを考えてくれていたのですね…」


 後片付けをしながら私はそのように呟きます。


 前にデートに行ったのはおよそ一週間くらい前でしたが、それでもすでに悠斗は次のデートの予定について考えているとは思わなかったです。しかもあの話ぶりからして色々と考えているとわかりますけど、一体どのくらい考えているのでしょうか…?


 悠斗は気にしなくてもいいと言ってましたけど、流石にデートについて全てお任せしてしまうの失礼ですし、私からも考えておかなくてはいけませんね。前のデートはショッピングモールでしましたし、次はそれとは違った場所がいいですよね。んー……とりあえず、これからの時間に考えおくことにして、今は頭の隅に置いときますか。


 今は先に片付けを済ませないといけませんからね!

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