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195話 その後

「はい!ここの温泉はとてもいいものですね!」

「そう言ってもらえると、こっちも嬉しくなるよ」


 私の返事を聞いて女性はそう返してきましたが、やはりこの旅館の温泉は住人たちにも人気なのは間違いないみたいですね!


 私はオススメされたからここに来れましたし、暗殺者ギルドの男性には今度お礼をするのもいいかもしれませんね…!それがなければ見つけることはなかったでしょうし、本当にいい情報をもらえましたよ…!


「それじゃ、私はそろそろ上がるから、ゆっくりしているといいよ。まあ、私のものではないけどね」

「ふふ、わかりました。私ももう少し浸かってから出ることにします!」


 そう言って女性はすぐに湯船から上がっていってしまいましたが、私は今も口にした通りもう少しだけ浸かっていようと思います。


 どうせルルアさんのお屋敷に向かうまでの時間はまだあるんですし、この際全力で温泉を楽しませてもらいますよ!




「お嬢様、お上がりですか?」

「ええ、待たせたね」


 着替えを済ませて脱衣所から出た私を待っていたのは、私の家に仕えている家令であるスミスだ。今はとある場所に向かっている途中だったのだが、どうしても私がここに来たいと我儘にを言ってしまって来た、というわけなのだ。


 だからスミスには悪いことをしてしまった自覚はあるが、仕方ないじゃないか。急にあいつから呼び出されてゆったり出来る時間もなかったのだから!


「ではお嬢様、早速向かいましょうか」

「そうだね。温泉でゆっくり出来たし、さっさと行かないとね」


 スミスも私の行動についてはすでに諦めているようなので何も言ってこず、そう声に出してきた。よし、なら相手を待たせているわけだし、さっさと行かないとね。


 …それにしても、あの女の子はとても可愛かったなぁ。雪のように真っ白な髪に宝石のように輝く黄金と銀のオッドアイ。あれだけの容姿だ、まず間違いなく他の国の貴族だろうと思うが、また会えるだろうか?もし会えたのなら、是非とも可愛がりたいが……っと、それはいいとして、動かないと。まずは、要件を片付けなくてはね。




「…そろそろ上がりますか」


 そうして温泉でゆったりとくつろいでいた私でしたが、流石にそろそろ上がらないとのぼせてきているので、このタイミングで湯船から立ち上がって洗い場を超え、そのまま脱衣所まで向かいます。


 ふぅ、少しだけのぼせていますけど、この温泉はとても良いものでしたね…!今までに見てきた街では温泉などはなかったと思いますし、たまにここにきて入るのも気持ちよくていいかもしれませんね。


 なら、次は夜の時間に来て星空を眺めながら湯船に浸かるというのもしてみますか!想像するだけでワクワクがしてしまいますし、これは次に期待するとしましょう…!


「〈洗浄〉。…よし、出ますか」


 脱衣所に戻り次第【生活魔法】の〈洗浄〉を使ってさっぱりしたので、私はそのまま脱衣所から出て受付へと向かいます。


 ちなみに、脱衣所の入り口に近づいたタイミングで再び服装がバスタオルから元のワンピースに戻ったので、服装については問題ありませんよ。


「おや、お嬢さん、上がってきたのですね」

「はい!とてもいいものでした!」

「ふふ、そう言ってくれるとこちらも嬉しいです」


 お姉さんも先程出会った女性と同様にこの温泉が誇らしいようで、少しだけ照れ臭そうにしつつも嬉しそうにしています。


 これだけいいものなんですし、また来ようと思ってましたけど、その時はクオンや兄様たちを連れてくるのもよいかもしれませんね?温泉では別々になってしまいますし、一緒に入ることはありませんが。


 ま、まあ混浴が出来たとしてもすごく恥ずかしいのでしないですけどね!っと、それはさておきそろそろルルアさんのお屋敷へと向かうことにしますか。今の時刻はすでに十時になるところなので、いい頃合いでしょう。


「では、お姉さん。私はこの辺で行きますね!」

「わかりました。また来てくださいね?」

「はい!その時はまた!」


 そう言って私はお姉さんに手を振って旅館を出た後、ルルアさんのお屋敷に向かうべく歩き始めます。よーし、早速向かいますよ!ルルアさんが私を呼んだ理由は、多分エリナさんや邪命教のその後などの報告だとは思いますけど、少しだけ不安になってしまいますね…?別に悪いことをしたわけではないのですけど、そう思ってしまうのも無理はありませんよ…!


「…とりあえず、行けばわかりますよね」


 私は街中を歩きつつそう呟きます。今回呼ばれているのは私とアルマさんだけであり、クオンたちがいないのでちょっぴり寂しいですが、これが私の役割なんですし、しっかりと行かないとですね…!


 そんな思考をしつつも歩き続けていると、前にアルマさんと来た時と同じようにルルアさんのお屋敷前のまで到着しました。


「おや、貴方は確か、アルマ殿のお連れでしたっけ?」


 すると門番さんからそのように声をかけられたので、私はそれに言葉を返します。


「はい、レアと申します。ルルアさんに呼ばれているのですけど、通っても良いでしょうか?」

「問題ありませんよ。貴方が来たら通すように言われていますので」


 あ、そうなんですね?なら、遠慮なく通らせてもらいますか。私の他にはアルマさんも呼ばれていますし、先にそのことを伝えておいてくれたのはありがたいですね。それがなければそう簡単には通らなかった可能性もありますしね。


 それはさておき、早速お屋敷へと向かうましょうか。すでにルルアさんたちは待っている可能性もありますし、早く行くのは悪いことでもないですからね!


 そう考えつつもお屋敷の敷地を歩いていき、そのまま扉を開けてお屋敷に入ると、入った扉付近にはメイドさんらしき人が立っていました。


「お待ちしておりました。レア様、でしょうか?」

「はい、そうです」

「では、旦那様がお待ちですので、ご案内しますね」


 どうやら、すでにルルアさんは待っていたらしいですね?これは少しだけ申し訳ないことをしてしまいました。時間が早いと迷惑かと思いましたが、すでに待っているのならもっと早く来たほうがよかったようです。


 それに、ルルアさんの元へと案内してくれているメイドさんも私のことを待っていたのかもしれませんし、早めに来たほうが正解でしたか…!


「ここです」


 そこからも案内をされるがままに付いていっていた私でしたが、メイドさんは一つの部屋の前で止まって扉にノックをした後に私を連れて中に入っていきます。


 中に入るとわかりましたが、この部屋は前に来た時と同じらしくとても綺麗で落ち着いた雰囲気を感じ取れる部屋となっていました。


 そして、そんな部屋の奥の椅子にはルルアさんはもちろん、その正面にあるソファにはエリナさんの一人の女性がおり、対面に座るようにいるのはアルマさんであり、それぞれが座りながら話し合いをしているところのようでした。


 エリナさんとアルマさんはわかりますが、そちらの女性は誰でしょうか?なんだか見覚えがある人なのですけど…?っと、それはともかく遅れたことを謝らなくてはですね。


「すみません、お待たせしました」

「いや、大丈夫だ。時間も決めてなかったしな」

「レアさん、昨日ぶりですね」


 一応謝罪をした私でしたが、どうやらルルアさんたちは気にしてないようなので少しだけホッとしました…!


 それで、そちらの女性についても教えてもらってもよいですかね?エリナさんはともかく、もう片方の人はわからないのですけど…


「紹介が遅れたな。こいつは私とエリナの友人であるミアだ。一応、貴族の一人だ」

「一応ではなく、キチンとした貴族だけどね?レアちゃん、だっけ?私はミア、さっきも会ったけど、元気かい?」


 さっきも会った、ですか…?あ、もしかしてあの旅館の温泉で少しだけ会話をしたあの女性ですかね?なるほど、それで見覚えがあったのですか。スタイル抜群のエルフなんて、特徴的なので忘れることはないですし、言われてみればその人だと確信が持てます。


「あの時のお姉さんでしたか。お姉さんも、貴族だったのですね!」

「まあ、貴族にはなかなか見えないよねぇ?これでもこの国では侯爵なんだけどね」


 侯爵……つまり、上から二番目の位ですか。ミアさんからはそこまで高貴な雰囲気を感じませんけど、結構上の立場の人だったのですね?種族がエルフのようなのでそれだけ長く生きているからこそ、その位なのかもしれませんが……あまり歳をとっているようにも感じませんけど…?


「まあ私のことは今はいいさ。それよりも、レアちゃんを呼んだ理由でしょ?ルルア」

「それもそうだな。では、早速レアにも伝えておくとするか」

「なら、まずは私から喋らせてもらいますね」


 そう言って話し出そうとしたしたルルアさんを抑え、ソファに座っていたエリナさんが始めに語り始めます。


 あ、ちなみにその間でアルマさんに誘われたことで私もソファに座っているので、ゆっくりと聞く姿勢に移っていますよ。


「ひとまず、助けていただきありがとうございました。それで本題に入りますけど……あの組織"邪命教"が生まれた原因ですが、それは私がレアさんたちによって倒された悪魔に操られたのが原因です」


 ふむ、エリナさんから聞く前からそうだとは思っていましたが、合っていたみたいですね?あの悪魔は精神支配を得意とするとは聞いていたので、それによって悪事に手を染めてしまったと見てよさそうです。


「そしてそこからはあまり覚えていないのですけど、その後はレアさんたちも知っている通りの結果ですね」


 まあ、この辺りは操られていたエリナさんよりかは私たちのほうが知っている情報は多そうですし、特に疑問はありませんね。


「それでレアたちが解決した後のことなのだが、それは私たちに任されたように後始末は綺麗に終わったので、その報告に移るぞ」


 エリナさんからの情報が終わったタイミングで、今度はルルアさんからあの後のことを教えてくれるみたいなのでこちらもしっかりと聞きますか。


「悪魔は倒されたようだからこれには関わらないが、捕まえていた二人の幹部はそのまま死刑となった。そして組織の生き残りについてもすでにほとんどを捕まえているため、これによって邪命教は完全に潰せたと見ていいはずだ」


 おお、やはりルルアさんは暗殺組織を率いているだけはあり、すでにこの街の懸念材料はあらかた始末出来たみたいですね?


 それなら、ルルアさんも言っている通りこれでこの街の問題は解決したと見て良い感じですか…!いやぁ、たまたま私とクオンたちも協力することになりましたが、無事に解決出来てよかったです…!それに私たちだけでは後始末なども大変だったでしょうし、ルルアさんの協力もあって助かりましたね!


「…レアにも伝えるべきことはこのくらいだな」

「そういえば、操られていたとはいえエリナさんは大丈夫なのですか?」


 邪命教については無事に解決出来ましたが、今の問題はエリナさんについてです。


 操られていたとはいえ、エリナさんが悪事に手を染めてしまっていたのは事実ですし、これは他の貴族などから責められる気がしてしまいます。


 貴族なんですし、これだけの問題を起こして仕舞えば罪人として捕えられてしまいそうですけど……でも、ルルアさんとミアさん、尚且つエリナさんも特に拘束されたりもせずにここにいるので特に問題はないのかもしれませんね…?


「それに関しては、心配は無用だ。今回の件でしばらくの間は国の運営を手伝うことになったくらいで、そこまでのお咎めはないらしい」


 ふむふむ、それなら一安心ですね!エリナさん自身が悪さをしていたわけではなかったから、そこまで思い罰にはならなかったのでしょうね。


 なんにせよ、エリナさんの件も大丈夫ならこれでひと段落したわけですか。また悪事を働くものが出てくる可能性はありますが、しばらくはゆったりと出来るようなのでルルアさんたちも一息つけるようですね。


「これで、レアを呼んだ件は終わったが…」

「なら、もう少しだけおしゃべりをしない?レアちゃんの冒険談とか聞きたいよ!」

「よければ、私も聞きたいですね。私はこの国から出たことがないので、そういうお話には興味があります。アルマもどうですか?」

「私ですか?…そうですね、良ければご一緒したいですね」


 ルルアさんの発した言葉の後にミアさんとエリナさん、そしてアルマさんの女性陣がそう口にします。


 ルルアさんを除いた皆さんは私からの話を聞きたいようですけど、そこまで面白いことはないのですが……面白いかはわかりませんが、今まで見てきた景色やワールドモンスターについてでも語れば良さそうでしょうか?


「…なら、もう少しだけ談笑とするか。セヴァ、お茶を頼む」

「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」


 どうやらルルアさんも聞きの姿勢に移るようでそばにいた執事さんにお茶を頼んでいます、うーむ、ここまで期待されるとちょっぴり不安になりますが、私がこれまでに見てきたものなどはどれもが目新しいかもしれませんし、自信を持つとしましょうか…!


 んー…そうですね、まず初めは私の見てきたワールドモンスターについて語りますか!時間はまだ結構ありますし、お昼まではここにいるとしましょう…!

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