181話 雪原
『ルーブ高原のエリアボス〈コールドタイガー〉を討伐しました』
『ルーブ高原のボスを討伐した事により、次のエリアが開放されました』
そうしてあそこから皆の力を合わせて何とか誰一人として欠けることもなく倒すことができ、エリアボスの討伐が完了したと言うシステムメッセージが流れてきました。
ふぅ、無事に倒すことが出来たみたいでよかったです…!最後に使われたあの青白いオーラでしたが、それは私の持つ【嫉妬の大罪】のスキルである〈嫉妬の眼〉の効果が発揮されていたのか、私が視界に入れた途端に効果が消されたようで白虎も驚いていたのですよね。なので、意外とあっさり倒せたのでよかったです…!…まあそれでも実力が落ちているわけではないので、少しだけ苦戦しましたが。
…しかし、ここのエリアボスはなかなか手強かったですね…?今までに戦ってきたエリアボスと比べても明らかに強かったので、もし一人で相手をしていれば勝てなかった可能性もありそうです。
「無事にエリアボスも倒せたし、このまま先に行かないか?」
「だな、行くか!」
「次のエリアはどんな感じなんだろうね?」
「高原エリアの先ですし、予測がつきませんね」
おっと、クオンが次のエリアに向かうか聞いてきていたみたいです。皆さんも行く気満々ですが、もちろん私も同じ気持ちです!
わざわざエリアボスを倒したのに先に進まないなんてことをするはずがないですし、新しいエリアには興味が尽きないので当然向かいますよ!
「レアはどうだ?」
「もちろん、私も賛成です!」
「うし、じゃあこのまま行くとするか」
クオンは私にも聞いてきたのでそう返すと、皆の賛同を得ることが出来たからか早速ボスエリアの先へと歩いていきます。
っと、置いていかれないように着いていかないとでね。いつまでもここにいても仕方ないですし、さっさと向かいますか。
そう考えた私はクオンに続くようにボスエリアを後にします。
さて、この先のエリアはどんな感じになっているのでしょうか?高原から行くエリアなので予測は出来ませんけど、目新しいエリアだと嬉しいですね…!
「お、転移ポイントがあったぞ」
「あ、本当ですね。早速解放しますか」
それからも歩いていると、ボスエリアを抜けてすぐのところに転移ポイントがあったようで、たまたまクオンが発見して教えてくれました。なら、この先のエリアに行く前に解放をしておかないとですね!
「…よし、解放も済んだし、そろそろ行くか」
「ですね、行きましょう!」
解放も無事に済んだので、私たちはクオンの言葉に各々の返事をした後、転移ポイントである小さめの樹木があるところを超えてエリア内を進んでいきます。
「それにしても、クオンたちも前より強くなっているのですね!」
「まあ最後に会った時から結構な時間が経ってるし、このくらいはな」
「そうそう、そういうレアちゃんこそ強くなってるし、すごいな!」
その道中では、私がクオンたちに向けてそのように聞いてみると、クオンとヴァンさんがそのように返してきました。
確かに、クオンの口にした通りゲーム内で会うのは久しぶりですし、そんなものですか。
クオンはユニークスキルの使い方がうまくなっていますし、ヴァンさんにメアさん、ライトさんも成長しているとわかるので、私もうかうかしてられませんね…!
ユニークスキルや装備だけではなく、戦闘技術ももっと高めるためにきちんと鍛えていきましょう…!
「ん、何だか少し肌寒くなってきたな?」
「そうですか?」
そのような会話をしつつ高原を歩いていると、ふとクオンがそのように呟きました。
私はこの赤いケープをしているのでわかりませんでしたが、今も歩いているここは徐々に寒くなっているのですかね…?
「確かに寒くなってきたな?」
「わたしもそれに同感!今はまだ大丈夫だけど、ちょっと寒くなってきているよね?」
「僕もそう感じます」
クオン以外の皆さんもそう言って同意しているので、やはり寒くなってきているのですね。だとすると、この先に続いているエリアは寒冷地になっている、ということでしょうか?
だとすると、このまま進んでいってもよいのですかね?もしその予想が正しければ、クオンたちには寒さで辛くなりそうですが…
まあ考えても仕方ないですし、ひとまずは置いておくことにしますか。もし問題があれば、その時に考えるとしましょうかね。
そこからも歩き続けること数十分。高原のエリアから先に広がっているエリアの前辺りに着いたのですが、その風景にわずかに驚いてしまいます。
「…雪がちらほらと見えてきたな」
「ですね。見たところ、高原の先のエリアは雪原になっているのですか」
「なるほど、これが寒さの原因だったんだね!」
「流石に雪がある中でこの格好じゃちっとばかし寒いな…」
「これなら、寒いところようの装備が欲しくなりますね」
何故なら、私たちが今も口にしているように、高原エリアの先は雪原が広がっていたからです!道理でクオンたちが先程から寒くなってきていると言っていたわけですね。
なら、寒さを抑える装備がほしくなりますけど、今は持っていないので我慢するしかなさそうです。私は今も着けている赤いケープがあるので問題ないですが、クオンたちは寒そうにしているので早めにここを離れたほうがよいかもしれません。
幸いなことに、この雪原の遥か奥に街のようなものが見えているため、少しだけ急ぎつつあそこを目指すのがよさそうですね。
「では、急ぎで見えている街まで向かいませんか?」
「そうだな、とりあえずはあそこを目指すとするか」
「わかった!じゃあさっさと行こうね!」
「あ、メアさん、待ってくださいよ」
メアさんが我先にと私たちが今いるエリアである『リリア雪原』を駆け出していき、それを追いかけてライトさんも行ってしまいました。
全く、寒いとはいえここはモンスターの出てくるエリアなんですし、後衛である二人が先に行かないでくださいよ!
ほら、現にモンスターに襲われて……って、あのモンスター、おかしくないですか…!?何だか黒色の瘴気のようなものを纏っていますし、明らかに様子も変です…?っと、見てないで助けに行かないと…!
「ごめんね、レアちゃん…」
「すみません、レアさん…」
「いえ、特に強い敵でもなかったので大丈夫ですよ。次からは気をつけてくださいね?」
「うん、反省しているよ…」
「反省しています…」
その後はメアさんとライトさんを襲おうとしていた黒色に染まっていた狐型のモンスターを即座に手元へ取り出した長銃で撃ち抜いて倒した私でしたが、それに対してメアさんとライトさんは申し訳なさそうな様子で謝ってきました。
私には害となることがなかったのでそこまですまなそうにしなくてもいいですけど、次からは気をつけて下さいね!メアさんたちは後衛タイプなうえにパーティを組んで移動しているんですから、勝手な行動はとらないようにっ!
…まあ思ったよりも反省しているので再び同じ行動をとることはないでしょうが、逆にそこまですまなそうにしていてはこちらが申し訳なくなってしまいますよ…!
「レア、今のモンスターもルーブ高原で出会ったあの黒馬と同じモンスターなのだろうか?」
「そうですね。倒す前に鑑定した結果からは、同じような個体だとわかりましたよ」
しゅんと落ち込んでしまっているメアさんとライトさんに苦笑しつつ、街まで歩きながらクオンは私に対してそう聞いてきたので、私は鑑定結果からわかった情報を声に出して皆に共有します。
「…なるほど、何者かによって闇の力に染められたモンスター、か…」
「そのモンスターがこんなところにもいるということは、この辺でそれを行った者がいるのだろうか?」
「私もそう思います。多分、あそこに見えている街に行けばわかるとは思いますし、まずはあそこで調査をしませんか?」
どうしてそう思うのかというと、闇に染められたというモンスターがこんな街の近くにいるからです。
普通のモンスターなら特に気に留めることではないですけど、今さっき倒した狐に高原で戦った黒馬など、明らかに普通には見えないモンスターがこうして現れたのですから、間違いなく何か目的があってあの街付近で作られたモンスターだと思えるのですよね。
加えてそれを省みるに、それを行った人はどう考えても一人ではなく複数であり、組織だって動いているともわかります。
だって、普通の人がこれをしていれば確実にバレるに決まっていますし、組織として動いていなければここまで闇に染まったと思われるモンスターも多く見かけないはずなので。
「それには賛成だ。なら、少しだけ急いで街まで向かうことにするか」
「確かに、情報を集めるのも重要だしね!まあそれよりも早く暖かい格好をしたいけど!」
「あはは……それには同意します」
「まあ何にせよ、街まで向かうのには変わりないな!」
「ですね。では、ここからも気をつけつつ向かいましょうか」
そう決めた私たちは、歩き続けていたおかげで徐々に近づいてきていた街へと向かうべく、足を動かして向かうことにしました。
闇に染まったモンスター関係の調査はしたいですけど、ひとまずは街に向かわないとですね!早く行かないと、クオンたちが冷えてしまうので!
そこから私たちは時折襲ってくるモンスターを片っ端から倒しつつ見えていた街まで向かっていましたが、その道中でも雪原に入ったばかりの時に遭遇した狐と同様に、闇に染まったと思われるモンスターを複数体見つけて倒しました。
うーむ、やはりこの雪原を中心としてそれを行っていたと思われる人物たちがいるのでしょうか?明らかに闇に染まっているモンスターを多く見かけますし、先程の予想は間違ってはいなさそうです。
…なら、街中に入れたとしても一応警戒は強めていたほうが良いかもしれませんね。情報を探るときも聞く人には注意しておきましょうか。
「止まれ!」
そうして街の入り口にある門の前に着いた私たちでしたが、門を潜ろうとしたタイミングでそこにいた門番さんに止められたので、立ち止まります。
「お前たちは何者だ?」
「私たちは異邦人です。怪しい者ではないですよ?」
門番さんに何者かと聞かれたので、私が皆を代表としてそう返しました。
今までの街ではこのように止められて何者かと聞かれたことはなかったのですけど、何故かこの街では止められてしまいました。
おそらく、この街の住人の方たちは私たちのような余所者には警戒をしているのでしょう。加えて闇に染まったというモンスターもこの街付近で出てきていますし、それの警戒もですかね?
「異邦人か……なら、問題はないか?よし、通っていいぞ」
「わかりました、ありがとうございます」
私たちのことを伝えると、門番さんは少しだけ悩んだ様子ではありましたが無事に通してくれました。
ちょっとだけ緊張しましたが、別に悪いことはしていませんしキチンと通ることが出来ましたね!門番さんは自分の仕事として警戒をしていたのでしょうけど、やっぱり直接声をかけられると少しだけ不安になってしまいます…!
「…何とか街に入れたし、早速調査に向かうとするか?」
「そうですね、早めに探しておいたほうが良さそうですもんね」
「わたしもそれには賛成!」
「僕も異存はありません」
「俺も大丈夫だ!」
門を超えて街中へと入ってきた私たちでしたが、そのタイミングでクオンがそのように口にしたので、私たちは頷いてそう返しました。
全員が調査に向かうのには賛成のようですし、決まりですね!今の時刻はまだ四時くらいなので時間には余裕がありますし、この間にある程度は調べ上げておくのが良さそうです。
「よし、なら早速行動に移るとするか」
「じゃあわたしはライトと一緒にいくわね!」
「わかった、なら俺はヴァンとレアの三人で行こうかな?」
「あ、すみません。よければ私は一人で行動させてもらってもいいですか?」
メアさんとライトさんは一緒に行動し、クオンはヴァンさんと私の三人で行動しようかと聞いてきましたが、私はそれに待ったをかけました。
確かにクオンたちと一緒に行動はしたいですけど、ここは一人で探させてほしいのです。何故なら、私はクオンたちには隠しておきたいことがありますし、あそこに行くには一人でないといけないからです。
ですので、今回は一人で調査に動かせてほしいというなのですよ!
「そうか、なら俺はヴァンと二人で調査に行くことにするな」
「誘っていただいたのにすみません…」
本当に、わざわざ誘ってきたのに断るのは心苦しいですけど、私の隠していることはバレてはいけないので仕方ないのですが、申し訳なく感じてしまいます…!
ですが、あそこにいけばおそらくは闇に染まったモンスターなどの情報を集めることは出来そうだとは思うので、期待して待っていてください…!
「いや、このくらいは気にするな。さて、じゃあ早速調査に行くか」
そんなすまなそうにしている私に対してクオンはそう返してきましたが、断ったことには特に気にしていないみたいですね?なら、こちらとしても少しだけ安心しました…!
次があるとするなら、その時にはご一緒させてもらくことにしますか!
「わかりました!では一時間後にここの街の広場に集合にしませんか?」
「そうだな、一時間後にまた会おう」
「お互いにしっかりと調べてこようね!」
「皆さん、またお会いしましょう」
「お前たちも気をつけろよ!」
私の言葉をきっかけに、皆がそれぞれで街の中へと歩き出していったのを見送った後、私も早速行動に移ります。
さて、一人になれたことですし、さっさと目的の場所へ向かうとしましょうか!目指す場所は、暗殺者ギルドです!




