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180話 白虎

「ヒヒーン…」


 あの後は闇に沈んで転移のようなものをしたり、瘴気による状態異常を撒き散らしたりなどの行動を取っていましたが、特に問題もなくHPを削り続け、最終的にレアモンスターらしき黒馬はHPが尽きたことによってポリゴンへと変わっていきました。


 ふぅ、今回は一人ではなくクオンたちもいたから楽に倒せましたが、一人ではちょっとだけ面倒だったかもしれませんね?


 あの黒馬は結構な速さを持っていたうえ、闇に隠れる能力もあったので、攻撃を当てるのは難しかったかもしれませんしね。


「…よし、倒し終わったな」

「だね。んー、少しだけ疲れたねー!」


 クオンの言葉にメアさんがそう声に出していますが、その気持ちはわかります…!


 私は今までにもこうした特殊なモンスターとは戦ってきていたので慣れていますが、メアさんたちにとってはそうそう出くわすものではないはずなので、そう思うのも無理はないでしょう。


「とりあえず、このまま高原のボスまで向かわないか?」

「俺は構わないが、皆はどうだ?」


 ヴァンさんの言葉を聞いたクオンはそう言って皆さんに聞いているので、私たちはそれに返事をします。


「わたしは大丈夫!」

「僕もです」

「私も問題ありません」

「よし、じゃあこのまま攻略続行ということで、行くか」


 そう決めたらしいクオンはそう言って歩き出したので、私たちもそれに遅れないようにしっかりと集まりつつ着いていきます。


 ここの高原のモンスター相手なら苦戦はしないですし、エリアボスまでの道中は問題ないでしょう。ですが、先程も遭遇した"カオスホース"、これはちょっとだけ気がかりではあります。


 "何者かによって闇の力に染められた"と鑑定の結果には書いてありましたし、おそらくは何者かがモンスターに対して何かをしているのだとはわかりますが……今の状況では判断材料が少なすぎてわかりませんね。


 なら、これは頭の片隅に置いといて、今は攻略に意識を向けますか。このエリアで闇に染まったというモンスターを見かけたのですし、攻略をしていけばもしかしたら何かがわかるかもしれませんしね。


 そうして黒馬と遭遇したところから進むこと数時間で、やっとエリアボスのいるであろう場所の目の前まで着きました。


「…よし、準備はいいか?」

「大丈夫です!」

「わたしも問題はないよ!」

「俺もいけるぜ!」

「僕も大丈夫です」

「んじゃ、行くぞ!」


 クオンのあげた声にそれぞれが返事をして、準備がいいのがわかったクオンは私たちを引き連れてボスのエリアまで足を踏み入れていきます。


 さて、どんなモンスターがボスなのでしょうかね?出来るなら歯応えがある相手だと嬉しいのですが……ここまでの道中ではあまり昂るような敵もいなかったので、強い相手が欲しいです…!


「…!くるぞ!」


 そんな思考をしつつ歩いていた私でしたが、クオンの警戒を即す声を聞いて手元に取り出していた双銃を即座に構えます。


 そしてそれと同時に現れたこの高原エリアのボスはなんと、白い毛並みをして鋭い黄金の瞳に敵意を剥き出してこちらを見つめてきている、私よりも二回りくらい大きめの白い虎のモンスターでした。


 ➖➖➖➖➖

 コールドタイガー ランク E

 涼しい気候の場所に生息している白色の虎。

 氷魔法を操り、その素早い身のこなしで敵対者を狩る。

 状態:正常

 ➖➖➖➖➖


 鑑定結果を見るに、このエリアボスの虎は氷魔法を操るみたいですね。しかも素早い身のこなしとも書いてあるので、私と似ているスピードタイプだとわかります。


 まあ何にせよ、エリアボスのヘイトを集めるタンクの代わりはクオンとヴァンさんにお願いすることになりますし、強敵だとは思うので気をつけましょうか…!


「じゃあ、行くぞ!」

「はい!」

「ガァ!」


 クオンは手元に取り出していた黒色をした片手剣を、ヴァンさんは籠手のような格闘武器を構え、白虎に向かって走り出します。


 よし、では私たちも行動に移るとしますか!私は近接でも遠隔でもどちらでも大丈夫ですけど、弓を使うメアさんと魔法使いのライトさんは後衛タイプなので気をつけないとですね。


 なら、私は中距離からちまちまと攻撃を加えてメアさんたちにヘイトが向かないように動きましょうか。


「ふっ!」

「おらぁ!」

「ガァアッ!」


 おっと、この間ですでに攻防を繰り広げていましたね。少しだけ出遅れてしまいましたが、ここからは私も加わらせてもらいますよっ!


「〈第二の時(ツヴァイ)〉!」


 私はクオンとヴァンさん、白虎の行っていた攻防の隙をつくように動きを遅くさせる武技を放ちましたが、それは軽い動きで回避されてしまいます。


 むう、躱されてしまいましたね。やはり鑑定結果にも書いてあったように、動きが素早いみたいです。


 隙をついて放ったと思いましたが、この白虎は目の前にいるクオンたち以外にも警戒は解いていないらしく、そう簡単に当てれるなよ、とでも言うようにこちらをチラリと見てきてます。


 …なら、遅延効果持ちの武技は一応撃ち続けることにして、私も攻撃に移るとしますか!


「〈第七の時(ズィーベン)〉、そして〈第一の時(アイン)〉!」


 私はひとまず分身を生み出す武技を自身に撃ち込んでもう一人の私を生み出した後、続けて加速効果を持つ武技も自身に向けて撃ち込むことで動きを加速させます。


 そして、その状態で前衛をしているクオンとヴァンさんに紛れるかのような形で私も接近し、両手の双銃を構えて銃弾を乱射します。


「グルゥ!」


 それらの攻撃は、白虎がいくら素早いといっても数が数なので全てを捌くことは出来ていないようで、私と分身による弾丸、クオンによる剣撃、ヴァンさんによる打撃など、そして後方にいるメアさんとライトさんの攻撃などで少しずつではありますが、徐々にHPを削れていってます。


 ですが、それでも相手はエリアボスです。白虎はそれらの攻撃でHPの三分の一ほどが削られていってますが、今まで戦ってきたエリアボスとは違って冷静なようで、一度雄叫びをあげて私たちを弾き飛ばすと、次の瞬間には氷魔法なのか、全身に氷製の鎧のようなものを身に纏います。


 おそらく、これがこの白虎の扱う氷魔法の一つなのでしょうね。戦闘開始時には氷魔法は使ってませんでしたが、ここからはそれらも使う本気状態だとわかります。


 であれば、先程までよりも警戒を強めつつ戦うのがよさそうですね。


「ここからは本気みたいだな」

「ですね。前衛は任せますよ?」

「ああ、任された!いくぞ、ヴァン!」

「おう!」


 氷の鎧らしきものを纏った白虎に対して、二人は恐れも感じていないようで、最初の時の再現かのようにある白虎に向けて駆け出していった二人を見て、私も直ちに行動に移ります。


 氷の鎧を全身に纏っているとはいえ、関節などは動かすのに支障が出るからか纏われていないのですし、そこ狙いで攻撃をしていきますか。


「まずは〈第一の時(アイン)〉」


 ひとまず加速効果を自身に付与をしたタイミングでちょうどクオンたちが戦い出したので、私はそこに加わるような形で近づき、中距離から銃弾を乱射していきます。


「ガァ!」


 が、白虎は私たちの行動をすでに把握しているらしく、私たちの動きを読むかのように周囲に生み出した無数の氷柱を飛ばしてきました。


 クオンたちや私だけではなく、後方にいるメアさんとライトさんの方まで飛んでいってますが、そちらは距離があるおかげなのか被害はなさそうです。私自身も、加速している状態でそれに当たるはずがないので、問題はありません。


「ちっ!面倒だな!」

「ぐっ、捌ききれんぞ…!?」


 しかし、私たちとは違って前衛をしていたクオンとヴァンさんは別です。クオンは大半を手に持つ片手剣で防げたみたいではありますが、ヴァンさんは捌き切ることが出来なかったようでHPが半分以上削られてしまっています。


「今回復します!〈メガヒール〉!」

「その手を止めるのよ!〈パワーショット〉!」


 やはり、本来はタンクの役割ではないからか防御力に欠けてしまっているようですね?


 しかも、即座にライトさんからの回復魔法が飛んできていますが、白虎は魔法による攻撃だけではなくその隙を見て鋭い爪による攻撃も放ってきているため、なかなか厳しそうに感じます。


 そしてそれを見たメアさんがヴァンさんに向けて攻撃していた白虎の手を止めようと武技を放ちましたが、それは氷の鎧を纏っている片腕で防がれてダメージにはなりませんでした。


 まあそのおかげで攻撃の手を緩ませることが出来たので、ナイスではありますがね!


「クオン、ヴァンさん、大丈夫ですか!?」

「問題ない!そのままサポートを頼む!」

「俺も回復してくれたから大丈夫だ!」


 私は白虎を狙って両手の双銃で弾丸を乱射し、気を惹きつけながら二人に向かってそう声をかけましたが、二人はすでに回復したからか問題ないと返してきました。


 では、このまま前衛を頼むことにしますか!私は再び魔法による攻撃をしてこないように妨害しつつ、援護に回るとしましょうか!


「ならよかったです!魔法には私が対応しますが、気をつけてくださいね!」

「ああ、任せろ!」


 白虎は再びクオンたちに対して攻撃を放ち出しましたが、すでに体勢は万全になっているので問題はなさそうですね。


 私はクオンたちのサポートに回りますし、ここからは魔法は使わせませんよ!クオンたちも、気張ってください!


「ガアァ!」

「なんの!〈風の吹剣(ウィンド・ソード)〉!」

「俺も行くぜ!〈アクセルスマッシュ〉!」


 白虎が雄叫びを上げながらクオンたちに向けた攻撃を放ちましたが、クオンとヴァンさんはそれぞれが武技を放つことでそれに対応していってます。


 しかも隙を見て攻撃を加えてHPを削っているので、やはり不意打ち気味の魔法による攻撃がなければそこまで問題はないようです。


「グルゥ、ガァ!」


 そしてそのタイミングで再び白虎が氷魔法を使ったのか、白虎の周囲に無数の氷柱が出現しました。


 また魔法攻撃をするつもりですね…!ですが、それはさせません!全力で妨害させてもらいます…!


「〈第七の時(ズィーベン)〉!さあ、始めますよ!」


 私は分身を生み出した後、すぐさま分身と共に周囲に出現して氷柱に向けて弾丸を乱射し、飛ばされる前にあらかたを破壊することが出来たので妨害には成功しました。


「グルゥ!」


 白虎も私のことを憎々しげに見つめてきているので、妨害をされて怒っているのでしょうね。ですが、こちらに意識を向けていてもいいのですか?


「ナイスだ、レア!〈炎の豪剣(フレア・ソード)〉!」

「まだまだ!〈ブレイクスマッシュ〉!」

「いくよ!〈バーストアロー〉!」

「僕もいきます!〈アクアランス〉!」

「ガゥ!?」


 おそらくは一瞬の隙だったのかもしれませんが、ここにいる人たちはそれを見逃すほど優しくも、弱くもありません。


 隙を見せてしまった白虎は私以外の全員から全力の攻撃を加えられ、ド派手な赤いポリゴンを撒き散らして残っていたHPが一気に減りました。


 よし、これでかなりのHPを削れましたね…!見た感じ、残っているHPも残りわずかですし、このまま攻めて倒しちゃいましょう!


「グルゥ、ガアァ!」


 しかし、最後の力と言わんばかりに白虎が雄叫びを上げたタイミング身体に纏っていた氷の鎧が消え、次の瞬間には青白いオーラのようなものを纏い始めました。


 この状況的に、おそらくこれが最後の力なのですよね?なら、しっかりとトドメを刺すまでは気をつけて戦いましょうか!HPも残りわずかですし、あと少しです!


「…ラストスパートのようですし、頑張りましょう!」

「ああ、行くぞ!」


 白虎の雄叫びで距離を取られたしまったクオンとヴァンさんは、そんな言葉をあげながら地面を力強く蹴り、一気に白虎に向けて迫っていきます。


 では、私もサポートをしつつ前衛であるクオンたちと共に攻撃に加わりますか!あとちょっとで倒せそうですが、油断はしませんよ!

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