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177話 呪い人の集落へ

「よし、ステータスの確認も済みましたし、そろそろ街に戻ってログアウトをしますか」


 今から現実世界に戻って夜ご飯の支度を開始すればちょうどいい時間になると思うので、さっさと街に戻ってログアウトをしないとですね。


 では、急ぎましょうか!まだ時刻は七時にはなっていないとはいえ、兄様がいつリビングに向かうかわかりませんしね!




 そうして街に戻り次第ログアウトをして現実世界に戻ってきた私は、いつものストレッチを手早く済ませた後に自分の部屋から出てリビングに向かいます。


 リビングには誰もいないみたいですし、兄様はまだ降りてはきていないみたいですね。なら、先に夜ご飯の支度を始めておきますか。


 おそらくは作っている最中に降りてくるでしょうし、そこまでを待つこともないでしょう。


「ふんふーん」


 私は鼻歌を歌いつつ、今日の夜ご飯である麻婆豆腐を作っています。


 今日はそこまで暑くはないですし、温かい料理であ麻婆豆腐でもいいですよね。兄様がいちいち文句を言ってくることはないですけど、少しだけ心配になってしまいますが……もう作っている最中ですし、気にしなくてもいいですね。


 それよりかは、ゲームのことについてですね。今日はメイジーさんを港町に案内するために呪い人の集落探しは途中で切り上げましたが、明日にでもまた探しにいきましょうか。


 セーフティーゾーンを超えても未だに見つけることが出来てなかったですし、おそらくはもっと奥か、はたまた見つけづらいところに隠されているのかのどちらかでしょうし、明日の内に見つけられるとよいですね。


 それに、メイジーさんのユニークエストもですね。クエスト名からしてなんらかの備えのために港町のおばあちゃんに会いに行ったみたいですし、そちらに関しても何かが起きる可能性もあるので一応気にかけておいた方が良いかもしれません。


「…美味そうな匂いだな」

「あ、兄様!」


 そんなことを考えつつも料理を作っていると、いつのまにかリビングへと兄様が降りてきていたようで、そのように声をかけてきました。


 兄様も降りてきましたし、もうすぐで出来上がるので少しだけ待っていてもらいますか。今日の麻婆豆腐は塩をベースにした味付けなのでいつも通り違いますが、気に入ってくれると嬉しいですけど、どうでしょうか…?


「出来ましたよ、兄様!」

「お、もうか。じゃあ食べるか」

「はい!いただきます!」


 麻婆豆腐も出来上がったのでテーブルへと持っていき、二人で揃って夜ご飯を食べ始めます。


 うん、塩をベースにした味付けですが、さっぱりとした味わいでなかなか美味しいですね!普通のよりは味は薄めですけど、これはこれで美味しいので上手く作れました…!


「やっぱり、美幸の料理はどれも美味いな」

「ふふ、ありがとうございます!」


 兄様にも褒められましたし、すごくいい気分です!料理はその道の職人と比べるともちろん上手いわけではありませんが、それでもこうして褒められれば嬉しくなるのは当然ですしね!


「そういや美幸、美幸は今日何していたんだ?」


 何をしていた、ですか。それはゲーム内のことでしょうけど、私がしてたのは悪さをしていた悪魔を倒して報酬をもらい、ついでに赤ずきんらしい住人のユニーククエストをしていたくらいですね。


 それらを簡潔にまとめた兄様へと話しましたが、兄様は夜ご飯を食べつつも、色々とやってたんだな、っと返してきました。


「そういう兄様は?」

「ん、俺はアルシェル荒野のエリアボスを倒して次のエリアに行ったくらいだな」


 なんと、兄様はすでにあそこのエリアの攻略を終わらせていたみたいです…!


 それに続けて教えてくれた内容からして、そこから次のエリアは『アルシェル火岩地帯』らしく、アルシェル荒野よりも厳しい荒地のようになっているうえに暑さに関しても高くなっていて、ちょっとだけ面倒だと兄様は言ってました。


 うーむ、そうだとすると私はあまり行きたいとは思えませんね…?まあいずれは行くことになりそうですし、覚悟は決めておきますか。


 あ、そうそう、兄様はアルシェル荒野のエリアボスも教えてくれましたが、そこのボスはフレイムウィングという炎を纏った大きめの鳥らしく、近接メインの兄様たちでは少しだけ苦戦したらしいです。


 まあ魔法が使える仲間もいたようなので、苦戦はしても負けることはなく勝てたみたいですが。


「兄様も、結構な冒険をしているのですね!」

「だが、美幸ほどではないがな。ユニーククエストに加えて王様と対面なんて、普通に考えたら簡単に出来ることではないしな」


 あはは……確かにそうですよね。おそらく私の場合は、クロノスさんの力の一端らしき懐中時計があるせいでここまで特殊なクエストなどに遭遇出来るのでしょう。


 それなら、トップのプレイヤーとはいえ兄様たちがそうホイホイとユニーク関係に遭遇しないのもわかりますしね。


「「ご馳走様でした!」」


 それからもゲーム内でしてきたことをお互いに報告していると、いつのまにか夜ご飯を食べ終わっていました。


「じゃあ俺はまたゲームでもしているな」

「わかりました。私は先にお風呂などを済ませてきますね」


 そんな言葉を交わした後、兄様は手早く食器を洗ってから部屋に戻っていくので、私も一旦部屋に戻って着替えを取ってきてからお風呂へと向かいます。


 まだ夏休みは続いているんですし、やることを済ませた後は勉強でもするとしましょうか。寝るまでの時間なので長くはないですが、コツコツとやっておくのは大事ですしね。




「んー…っと、起きますか」


 そうして時間は過ぎ、次の日である水曜日です。今の時刻は六時半と時計には映っているので、さっそく朝の支度を開始しましょう。


 まず初めに、私はいつも通りストレッチで身体をほぐした後、パジャマから服に着替えてからリビングに降り、朝ごはんであるパンを食べ始めます。


 今日の気分はマーガリンだったので、食パンをトースターで焼いてからマーガリンを塗った後に黙々と食べています。


 うん、シンプルですが実に美味しいですね。朝ごはんは一日の活力となるのでしっかり食べないといけませんし、美味しく食べれる身としてはとても幸せです!


「ご馳走様でした!」


 黙々も食べていたおかげですぐに食べ終わりましたが、その間にも兄様は降りてこなかったので、また長くゲームをしていたのでしょうね。


 全く、兄様は本当にゲームが好きですね!あれだけゲームをしているにも関わらず成績もいいですし、少しだけ嫉妬しちゃいますよ!


「さて、兄様はまだみたいですし、私は先に部屋でゲームをさせてもらうとしますか」


 今の時刻はまだ七時くらいなので時間には余裕がありますし、今度こそブローズ密林にあるという呪い人の集落を探すとしましょう!


 あ、そういえばメイジーさんから受け取った赤色のケープの確認もまだでしたね!ならログインしたら先にそれの確認をして、その後に向かうことにしますか。




「…よし、ではそこら辺に座って赤いケープの確認を済ませましょう」


 ゲーム世界へとログインしてきた私は、手始めに今いる広場の周りにあるベンチに座りながらインベントリを操作し、メイジーさんからもらった装備の確認を始めます。


 ➖➖➖➖➖

 血染めの獣 ランク S レア度 固有品(ユニーク)

 DEF+20

 MND+30

 INT+20

 耐久度 破壊不可


 ・赤き獣 敵を倒すごとに自身の全ステータスを一時的に上げる。

 ・虐殺の鼓動 敵を倒すごとに自身のHPとMPを回復する。


 グリム幻想国に仕える童話騎士、血染めのメイジーから渡された赤色をしたフード付きケープ。敵を喰らい、己が力と変える。

 ➖➖➖➖➖


 性能を確認してみると、やはりこの装備もユニーク装備だったらしくなかなかの性能みたいです。それに付いている能力は基本的に敵を倒した時に発動するもののようですし、雑魚敵が多い場面とかでは役立ちそうとは感じますね。


 それと何やら気になることも書かれているのですけど…… グリム幻想国に童話騎士、そして血染めのメイジーと、実に興味が惹かれる文章がありました。


 グリム幻想国は私が行ったことのない国なのでしょうけど、そこには童話騎士という存在がいるのですね!そしてその一人がメイジーさんと。少しだけ興味が湧きますが、すぐにわかるものでもないですしこれは置いておくことにします。


 ひとまず、確認はこのくらいですね。今はシスター服なのでこのケープは一旦インベントリに仕舞っておくことにして、まずは目標である呪い人の集落を探しにいきましょう!




「うーん、やはりどこにあるのでしょうかね…」


 早速ブローズ密林に向かった私でしたが、とりあえずは前に見つけたセーフティーゾーンを目指して歩いていますが、その道中ではやはり呪い人の集落を見つけるには至りません。


 ここまで探しているのに見つからないということは、おそらく普通では見つからないように隠されているのでしょう。


「…なら、まずはそれらしきものを探してみますか」


 出てくるモンスターも特に苦戦する個体はいませんし、見落としがないようにしっかりと探してみれば、見つけることは出来る……といいですね。


 私が今装備しているこのベールには感覚を強化する効果がありますし、もう少し集中して探してみましょうか。


「…あ、見つける前にセーフティーゾーンに着いちゃいました」


 そして感覚を研ぎ澄ませながら歩くこと数十分。いつのまにか前に見つけてセーフティーゾーンまで着いたのですが、その道中では依然として集落を見つけることは出来てません。


 この結果から考えるにもっと奥に集落があるのだと思いますし、もう少しだけ散策を続けてみないとですね。


「…む、何やら魔力の流れを感じました…?」


 出てくるモンスターを片っ端から倒しつつ、セーフティーゾーンも超えて歩き続けていた私でしたが、ふと私の感覚に微小ではありますが怪しげな反応を感じ取りました。


 この反応は魔力の流れですし、何かがあるのでしょうか…?今も着けているベールのおかげで感覚が強化されていて見つけられましたが、普通では発見も出来なかったと思いますね…?


 そんなことを考えつつも私は反応があった方へと足を進めて反応があった場所の目の前まできましたが、辿り着いた場所は目の前には白色の霧が立ち込めていました。


 多分、これは呪い人の集落を隠すためのものでしょうが……普通に入ってもよいのですかね?…まあ悩んでいても仕方ないですし、勇気を持って入ってみましょうか…!別に死にはしないでしょうしね!


「よし、行きますか…!」


 私は勇気を持って立ち込めている白色の霧の中へと足を踏み入れていきますが、霧の中は私の持つ感知系のスキルを全て無効化するようで、この先に何があるのかなどが一切判断が出来ません。


 ううむ、この霧は何で出来ているのでしょうか?外から見た時にわかった魔力の流れがあるとはいえ、感知系のスキルを無効化するなんてかなりやりにくいのですが…


 そのような不安な思考が私の頭の中を巡りますが、その気持ちを飲み込みつつ足を動かし続けているとやっと白い霧の中から出れたらしく、私の感知系のスキルにも無数の反応が現れます。


 視界が一時的にないのではっきりとは分かりませんが、ようやく呪い人の集落に辿り着いたようですね!人らしき反応も無数にありますし、無事に発見出来たみたいです!


 それにしても、先程の白い霧がこの集落を隠していたようですし、魔力の流れを感じ取ることが出来なければ見つけることは難しかったかもしれませんね。


 なるほど、道理であの女性が"シスター様なら見つけられる"と言っていたわけです。


「‥おや?貴方はもしかして、ルーが言っていたシスター様ですか?」


 私が集落に向けて歩いていると、ふと私を見かけたらしき呪い人の男性がそう声をかけてきました。


「ルー、ですか?」

「あれ、知りませんか?私たち呪い人の集落を纏めている長なのですが…」


 あ、もしかして私が直接会ったあの女性のことですかね?名前は聞いてませんでしたが、おそらくそうでしょう。


 あの女性も自分のことを"部族の長"といってましたし、この呪い人のまとめ役の長なら、私のことを伝えていてもおかしくないですしね。


「…多分、それであっているとは思います」

「そうですか。なら、早速長に伝えてきますので、少しだけ待っていてください」


 そう言って私と話していた呪い人らしき男性は踵を返して集落の奥へと向かっていったので、私は一度入り口付近で待つことにします。


 待っている間は少しだけ暇なので集落内を観察しているのですが、小さめの部族の集落にも関わらず結構な人がいるらしく、今も私を興味深そうに見つめてきています。


 この集落に子供はいないみたいですけど、やはり皆さん特徴的な真っ黒な髪と目をしているので、世喰の呪いがその身を侵しているのだろうとは判断出来ます。


 私と前に対面したあの女性、ルーさんは先祖が世喰からの呪いを受けたと言っていたので、何があってそんなことになったのかはちょっと気になってしまいますね。


「お待たせしました!長の元に案内しますね!」

「お願いします」


 それからも待っていること数分で、先程の男性がこちらに戻ってきてそのように言葉をかけてきました。


 案内をしてくれるなら、お願いしちゃいましょうか。この集落はそこまで広いわけではないみたいですけど、建物が複数あってどこにいるかとかはわからないですしね。


「長、シスター様を連れてきました!」

「わかった、通していいぞ」


 そして案内されるがままに歩いていき、集落の奥にあった小さめの家の前まで着くと男性が扉をノックして声をあげます。


 するとすぐに返事がきて、男性は扉を開けて中へと即してきました。どうやら、この男性は中までいかないみたいなので、ここからは私一人で行かないといけないようです。


 まあ特に心配することもないですし、さっさと中に入っちゃいますか。

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