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173話 悪魔再び

「んー……よし、起きますか」


 あの後は寝る時間まで錬金をしていき、様々なポーションや換金出来そうな剥製、魔法薬にゴーレムなど色々なものを作っていきました。


 私的にはポーションやゴーレム以外には使う機会がなさそうではありますが、持っていて不便なこともないのでこのままインベントリに仕舞っておくことにします。


 そうして生産をした日から日にちは経ち、今は次の日である火曜日です。今日は昨日に受けたユニーククエストをクリアするためにあの森へと向かいますし、気合いを入れるためしっかりと朝ごはんも食べちゃいましょう!


 私はいつものストレッチを済ませ、服も着替えた後にリビングに降り、これまたいつも通りに朝ご飯を食べ進めていきます。今日は贅沢にイチゴジャムをたっぷり塗って食べているので、濃厚な甘さが脳を刺激してきて幸せになっちゃいますっ!


「ふぁ…おはよう、美幸」

「兄様!おはようございます!」


 ニコニコとした笑みを浮かべながらジャムを塗ったパンを食べていると、少しだけ眠そうな表情をしながらではありますが、兄様もリビングに降りてきました。


 昨日の夜ご飯の時、兄様はアルシェル荒野の攻略を順調に進めていると言ってましたし、それが長引いて眠そうなのだとは思います。全く、私のようにしっかりと朝も起きれるようにした方がよいですよ!


「美幸、風邪はもう大丈夫なのか?」

「ふふん、もう大丈夫です!心配ご無用ですよ!」


 昨日の朝はまだ風邪っぽかったですけど、一晩経ってすでに体調は完璧なまでに戻っています!なので、もう心配されるほどではないので安心してください!


「元気そうならよかった。じゃあ俺は朝ごはんでも食べてるな」

「わかりました!では、私はやることをしてから部屋に戻ってますね」

「ああ、また体調を崩さないように気をつけるんだぞ」


 うっ、それは確かに気をつけないとですね…!回復したとはいえまだ病み上がりですし、ゲームをするとしても暖かくしておかないといけませんね。


 また何度も風邪を引いてしまえばご迷惑をかけてしまうことになるので、しっかりと体調には気をつけておきましょうか!


 私はまず洗顔、歯磨き、スキンケアを済ませに洗面所へと向かい、それらを終わらせた後に洗濯物も畳んで片付け次第、部屋に戻ってヘッドギアを頭に着けて早速ゲーム世界へとログインしていきます。よし、今日はユニーククエストのクリアが目標ですし、張り切っていきましょう!




「ここは……迷宮都市ですね」


 その後のやることも全て終わらせてからログインすると、ログイン場所は昨日ログアウトをした場所である迷宮都市の広場でした。


 今の時刻は八時くらいなので時間も余裕がありますし、早速ユニーククエストの対象である悪魔討伐に動きますか!


 記憶を見たとはいえ目的の悪魔がどこにいるかもわかりませんが、実は王様から通行書と一緒に潜んでいるであろう場所が記された地図ももらっていたので、多分見つけるのには苦労はしないはずです。現にマップにもその場所が記されていますしね。


「では、行きましょう!」


 そう決めた私はすぐさま今いる広場から街の東にあるノルワルド黒森へと向かうべく、足を動かします。あ、ついでにクリアとセレナも呼んでおきますか。一人では寂しいですし、二人の力は強力なのでこれからの戦闘の助けにはなりそうなので!


 森に向かう道中で二人を呼び出し、いつもの定位置に固定した後も歩き続けていると、いつのまにかノルワルド黒森の目の前まで到着していました。


 今の時刻は太陽も出ていて明るいとはいえ、この森の中は結構暗めなので一応気をつけておいた方がよいですね。まあ今更雑魚的に苦戦するような私ではありませんが、一応は、ですが。




「…森の中は前とあまり変わった様子はないですね?」

「……?」

「キュゥ?」


 あれから森の中を警戒をしつつ歩いていた私たちでしたが、その道中で出てくるモンスターは前と大差がなく、出会うそばから倒しつつ歩いていけてます。


 うーん、前にアンデッドと化していたアルベルトさんと出会ったのも結構奥の方でしたし、入り口からある程度進んでセーフティーゾーンを超えていますが、今のところはとくに変わったこともありませんね。


 マップを見るに、目的地はもう少し歩いた先にあるみたいなのでそこがメインとなるでしょうね。なら、警戒は緩めないでさっさと向かいますか。


「…ここ、ですよね?」


 そして出てくるモンスターを倒しつつ移動していると、ついに目的地である場所まで到着しました。が、そこに存在する物を見て、私は少しだけ怪訝に思ってしまいます。


 何故なら、そこにあったのは地下へと続いていると思しき大きめの穴だったのです。穴の直径はおよそ十五メートルくらいでしょうか?見たところその穴の中には階段のようなものが続いているとようで、降りることが出来るみたいですね。


「……?」

「キュッ?」


 そばにいる二人もそれを見て不思議に感じているようで、首を傾げているのがわかります。…とりあえず、見ているだけではわかりませんし、この穴に潜ってみますか。


 どうせこの穴は悪魔が作ったものでしょうし、この穴の奥には悪魔がいると思いますしね。


 そう考えた私は、特に気負いもせずにその穴の中にある階段を伝って降りていきます。この階段は壁をぐるっと回るように続いているため下を見れるのですが、結構深くまで続いているようでここからでは底は見えません。


「…暗いですけど、このくらいなら問題ないですね」

「……!」

「キュゥ!」


 加えて穴の中は光源となるものもないので普通なら視界が悪くて仕方なさそうですけど、私には【夜目】スキルがあるのでそこまで困ってはいません。


 この穴はただ暗いだけで特にモンスターが出てくることもないため、階段を降りているだけであまり変わり映えがないのが少しだけ不満ではあります。


 まあこの足場が不安定な場所で戦えば結構面倒くさいかもしれませんし、これでよかったのかもしれませんけど。


「…底が見えてきましたね」


 それから特に何かが起きることもなく階段を降りていき、途中から見えていた底までやっと辿り着きました。底は見たところただただ暗めである空間となっており、特に何かが起きることもなさそうです。


 うーん、底にも特に何も……いえ、何やら棺のようなものがありますね。あれはなんでしょうか…?ここは悪魔関係の場所だとは思いますし、何か特殊そうな物とは感じますけど…


「とりあえず、あれの確認を…」


 明らかにこの場では怪しげな物なため確認に移ろうとした瞬間、突如視界の先にあった棺が勝手に開き、中から黒色をした瘴気が溢れるのと同時に人影が棺の中から現れました。


 その人影は闇を凝縮したかのような漆黒色の髪に血のように赤い瞳をした男性……おそらくは、というかまず間違いなく悪魔ですよね?前に見た悪魔とそう違いはありませんし、この予想は間違ってはいないはずです。


「…急に目覚めたと思ったら、人でしたか」


 その悪魔はそう言葉を漏らしつつ棺を超えて地面へと足をつけ、こちらへとその赤い瞳を向けてきます。


 急に目覚めたと言ってますし、多分寝ていたのでしょうか?


 それに棺から出てきたことによってしっかりと姿を確認出来るようになったのでわかりましたが、体の胸元には深めの切り傷のようなものがあるため、それを回復するべく眠っていた、ということでしょうか。


「ちっ、まだ傷は癒えていませんか。…まあいいです、そこの少女を喰らえば、傷は治るでしょうしねぇ」


 そんな言葉を呟きつつこちらへと視線を向けてくる悪魔に、私は思わず嫌そうな表情をしてしまいます。


 …悪魔は皆、こんな感じなのでしょうか…?なんというか人の嫌がることを好んでするというか、自分が全てというか…


 なら、やはり悪魔を倒すのに躊躇う必要は皆無ですね。今ここで逃してしまえばまたどこかで悪さをするでしょうし、しっかりと倒すとしましょう!


「では、私の糧になれることを光栄に思って死になさい!」

「…!〈第一の時(アイン)〉!」


 そう言って両手に黒い爪を生やして私目掛けて踏み込んでくる悪魔を見て、私はそれに対応するべく両手に双銃を取り出し、続けて動きを加速させる武技を自身に撃ち込みます。


「はぁ!」

「ふっ!」


 そして間合いに入るのと同時に振るってきた悪魔による爪の攻撃を右手の長銃で逸らし、反撃として左手の短銃で弾丸を放ちますが、それはもう片方の爪によって弾かれることで有効打にはなりません。


 そこからも次々と悪魔から飛んでくる攻撃を防ぎ、逸らし、時折躱しつつ反撃の銃弾を返しますが、それらのすべてが弾かれることでどうしても決定打に欠けてしまっています。


 やはり、かなりの実力のようなのでそう簡単にはダメージを与えることも出来ませんか…!それなら、さらに頑張るまでです…!


「〈第七の時(ズィーベン)〉!」

「おや、分身ですか?」


 私は一度後方に跳ぶことで距離を取り、その跳んでいる最中に自身に分身を生み出す武技を使用することでもう一人の私をすぐそばに出現させ、その分身と共に悪魔に向けてフェイントを混ぜつつ弾丸を乱射します。


 しかもそこでクリアとセレネによる魔法攻撃も加わるのですが、それでも悪魔は特に傷を負うこともなくその場で両手の爪を連続で振るい、それらは全て消し去られてしまっています。


 うーむ、傷が完全には癒えていないようですけど、前に戦ったことのある悪魔よりかは強く感じますね。まだ全力を出しているわけではなさそうですが、それでもその強さはしっかりと伝わってきますし。


「ふむ、なかなかやりますね?」

「それでも傷を与えることも出来てませんがね」

「それは当然ですよ。なんせ私は上位悪魔(グレーター・デーモン)ですからねぇ?」


 階級は前と同じみたいですが、ここまで実力の差があるのは何故でしょうか?前に倒した悪魔も今目の前にいる悪魔と同様に見えるのに関わらず、ここまで違うとするならやはり油断は出来ませんね。


 それに悪魔なら精神攻撃も得意そうですし、それも気をつけておきますか。


「では、今度は私からいきますよぉ?」

「クリア、セレネ、いきますよ!」

「……!」

「キュッ!」


 その言葉を合図に悪魔は両手に生やした黒い爪に瘴気を纏わせ、そのまま私へと肉薄してきます。


 なので私はそれに対して〈第零(ヌル)第七の時(ズィーベン)〉を使うことで無数の幻影をこの空間内に生み出し、続けて〈第一の時(アイン)〉も付与することで動きを加速させ悪魔の攻撃に対抗します。


「〈第二の時(ツヴァイ)〉!」

「ふっ、無駄ですよ!」


 そして無数の幻影と弾幕の中に紛れるように放った武技もその爪で弾かれましたが、これはただの攻撃ではなくデバフ効果持ちです。そのため…


「む、動きが…?」


 爪で切り裂いたおかげでその効果は見事に発揮され、悪魔の動きを一時的にではありますが鈍くすることに成功します。


 よし、上手く効果を発揮出来ましたね!なら、ここで畳み掛けますよ!


「〈第六の時(ゼクス)〉!」

「ちっ!面倒ですね!」


 続けて放った武技も鈍くなった動きでは回避することが出来ずにきちんと命中し、その効果が発揮されることで動きの鈍さの効果時間をさらに引き伸ばすことが出来ました。


 これで残りの効果時間はおよそ四十秒ですし、この絶好のチャンスは見逃しません!倒すまではいかなくても、ここで大きなダメージを稼ぐために二人にも協力してもらいますよ!


「〈第三の時(ドライ)〉!」

「……!」

「キュッ!」


 幻影に紛れる形で私たちはそれぞれの攻撃を悪魔に向けて放つと、それらは幻影に注意がいっていた悪魔にしっかりと命中し、少なくないダメージを与えることが出来ました。


 よし、やはりこの武技はなかなか強力ですね!この調子でドンドン攻めていきましょう!


「面倒ですね…!なら…!」

「キュッ!」


 そうして悪魔を三人で攻めていると、そのような声と共に悪魔が何やら魔力を練り出したのが私の感覚に反応します。


 そのうえセレネの【因果律予測】による警戒の声を聞いたので、私は二人を肩と首元に乗せたまま大きく後方へと跳んで距離を取ります。


 するとその直後、悪魔の周囲一体に瘴気が溢れるのと同時にその瘴気が一気に膨張することで大爆発を起こしました!


「あ、危なかったですね…!セレネ、ありがとうございます!」

「キュゥ!」


 今の魔法らしき攻撃はセレネのおかげでなんとか回避出来ましたが、セレネがいなければ当たっていたかもしれません。


 私はスピードタイプなのでもしかしたら直撃は回避出来たかもしれませんけど、それでもダメージを受けることに違いはなさそうなので助かりました!


「ちっ、当たりませんでしたか」


 この攻撃の間に与えていた遅延効果も終わってしまったようで、こちらを忌々しげに睨みつけてきている悪魔はすでに万全の様子です。


 むぅ、遅延効果もすでに切れてしまっていますし、また与えたくても同じ手はそう簡単には効きませんよね。


 なら、ここからは全力で行くとしましょうか…!加速効果を付与する〈第一の時(アイン)〉は常にキープさせておくとして、隙を見つけたら遅延効果の〈第二の時(ツヴァイ)〉を撃ちたいですが……それは出来ればでいいですね。


 ひとまず、加速効果を活かして翻弄しつつ戦うとしましょう!

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