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171話 王様

「お嬢様、面会の許可が出ました。今ならちょうどいいそうです」

「あら、そう?ならレアちゃん、さっそく行きましょうか」

「わかりました!」


 そこからは他愛無い会話をしながら待っていると、いつのまにかイザベラさんが送った使者が帰ってきたようで、王様との面会の許可が降りたようです。


 では、早速行くとしますか!このことは直接アルベルトさんを倒してしまった私が伝えたほうが良いですし、責められる可能性もあるとは思うので少しだけ覚悟を決めないとですね…!


「レアちゃん、ここの国の王は気安い感じだけど、馴れ馴れしくはしないようにね?まあ大丈夫だとは思うけど、一応言っておくわ」

「はい!」


 王様と会うべくお屋敷から迷宮都市にあるお城へと向かって歩いていた私に向けて、イザベラさんはそのように言ってきました。


 イザベラさんは気安い感じの王様と言っていますが、どんなに気安くても馴れ馴れしくはしないから大丈夫です!今から会うのは王様なんですし、目上の方なので念のため気をつけておきましょう…!


「…よし、着いたわね」

「おっきいですね…!」

「……!」

「キュゥ!」


 そうして迷宮都市を歩き続けていると、ついに目的地であるお城の前まで着きました。このお城はやはり国の象徴だからなのかかなりの大きさを誇っており、見た目も美しくて少しだけ委縮してしまいます…!


 私の首元と肩にいるクリアとセレネは私と違ってそこまで威圧されていないようで、今もすごーい!とでも言いたげにお城を眺めています。うーむ、緊張はほぐしておかないとですね…


「じゃあ行くわよ、レアちゃん」

「あ、そうですね!」


 イザベラさんは早速とばかりにお城の前にいる門番に言伝を伝えた後にお城の中へと向かうので、私もそれに遅れないように後ろを着いていきます。


 お城の中は外から見た時と同様にかなりの広さがあり、敷かれている赤いカーペットや光を放っている照明、そして埃一つ落ちていない壁や床など、実に上品で落ち着いた雰囲気を感じさせてきます。


 やはり、この国で一番上の立場に立つ者が住んでいる場所なんですし、こんなに綺麗なのは当然なのでしょうね。


 そんなお城の内装を私とクリア、セレネの三人はキョロキョロと見渡しながらイザベラさんへと着いていっていたのですが、イザベラさんは一つの部屋へと入っていきます。


 なので私もクリアとセレネを連れながらそれに続いて入ると、そこは廊下と同様にとても綺麗で上品な雰囲気を醸し出している応接室みたいな場所となっていました。


 おそらく、ここで王様と面会するのでしょうね。ちょっとだけ緊張をしてしまいますが、頑張って伝えるとしましょうか…!


「さて、レアちゃん。王との面会の場は用意したから、後は自分で伝えるのよ」

「わかりました…!」


 ふぅ、緊張してしまっていますが、それのせいで失敗はしないよう気をつけないとですね…!わざわざこの場を用意してくれたんです。イザベラさんや今から会う王様へ迷惑をかけないよう、しっかりと気を張りましょう!


「失礼する」


 そう意気込んでいた私でしたが、この部屋の扉をノックする音と共に扉が開き、一人の男性が入ってきました。


 その男性は身長170cm後半くらいで灰色の髪をした髪と瞳をしており、アルベルトさんの記憶を見た時の国王様とは違う人のように感じます。そこまで歳もとっていないようにも感じるので。


 まあ私が読み取った記憶は何十年も前のことのようですし、あの王様の子供か孫、といったところなのでしょうか。


「イザベラ、そちらの少女は?」

「紹介しますね、こちらはレア。王へ早急に伝えるべきことが出来たので、こうして面会の場を設けさせてもらいました」

「ふむ、それはこの少女が関係している、と?」

「はい」


 イザベラさんの言葉を聞いて王様はこちらへと視線を向けてくるので、私は最初に渡すようにアルベルトさんに託された物をインベントリから取り出し、そのまま目の前にあるテーブルの上へと置きます。


「これは、この国の銀竜騎士団の団長さんから王様へと託された物です」

「これは…!」


 私の出した黒く汚れている十字架のペンダントを見て、王様は思わずと言った様子でそう声を漏らしています。


 反応からするにこれを知っているようではありますが、これは何か特別な物なのでしょうか?私はアルベルトさんから託されただけなので詳しくは知りませんけど、この反応を見ればそう思ってしまいます。


「これは、どこで?」

「ノルワルド黒森です。そこでアンデッドになっていた銀竜騎士団の団長さんから、渡してほしいと頼まれたのです」

「なんと…」


 流石の王様もそれを聞いて驚いたおり、そのペンダントを見つめつつ何やら考え事をしています。一体、このペンダントは何なのでしょうか?


「このペンダントは、我が父が銀竜騎士団の団長に渡した物であり、この世に一つしか存在しない物なのだ。そして、私が幼い頃に見たのと全く一緒であるのでな」


 なんと…!道理でここまで驚いているのですね…!なら、記憶を見た通りアルベルトさんはこの国の王様と親しかったのでしょう。それに我が父とも言ってますし、想像通り王様の息子だったみたいです。

 

 しかし、想いに耽っているところ申し訳ないですけど、伝えるべきことはこれだけではないので、悪魔とその騎士団長から託された願いについても伝えておきます。


 それと私がその騎士団長を倒してしまったことも、ですね。




「…なるほど。ひとまず、感謝を伝えておこう。よくぞ無事に眠らせてくれたな」


 そうして伝えるべきことを済ませ、それらを全て聞いた王様は苦虫を噛み潰したような顔を浮かべつつ、私に対してそう感謝を述べてきました。…責められるかもと思ってましたが、そんなことはなかったですね。


 それはともかく、王様もこれを聞いてかなりの危機感を覚えているみたいですし、やはり手早くそれを片付けたほうが良さそうですね。だって、悪魔は未だに生き残っている可能性が高いですし。


 私が出会ったのはアンデッドと化していたアルベルトさんだけでしたが、私が見た記憶では悪魔が現れていたので、間違いなくあの森にいるとは確信が持てます。


「しかし、あの人はアンデッドになってもこの国を思ってくれていたのだな…」

「だからこそ、こうして願いを託してきたのでしょうね」


 王様は思わずといった様子でそのように言葉を呟いていますが、横で聞いていたイザベラさんもお屋敷でも聞いていた通りのことに改めてそう感想を述べています。


 あの人は悪魔にやられてしまったのでしょうけど、それでもその願いは宿したままでした。そしてそんな中私と出会い、こうしてその願いを託してきたのですし、騎士としての忠義は素晴らしいものだったのでしょう。


「であれば、その悪魔を討伐はしたいが…」

「私たちの国にはすでに新しい騎士団はいますけど、あの銀竜騎士団が全滅した相手なんですし、そう簡単にはいけませんよね」

「そうだな。さて、どうしたものか…」


 王様とイザベラさんは揃ってそう口にしていますが、ここは私に任せてもらうように言ってみますか。


 私自身も悪魔には敵意しか湧きませんし、直接アルベルトさんから願いを託されたのです。それにアルベルトさんをこの手で倒したのも私なので、ここは私の出番です!


 加えて私は異邦人でもあるので死ぬことはありませんし、この場面には特に合うはずですしね!


「なら、私に任せてください!」

「確かに、レアちゃんの腕前は十分だとは思うけど……大丈夫なのかしら?」

「私も、少女一人に任せるわけにはいかないので、それは容認出来ないな」


 むむ、そう言われてしまいましたがこのことを知っている人は少ないですし、ここは私が動くのが一番だとは思うので、少しだけ反論させてもらいましょう…!


「ですが、実力もあり自由に動けるのは私しかいませんし、適任だとは思いますよ?」

「そう言われてもな…」


 私の言葉を聞いても王様は納得出来ないようで、微妙な表情を浮かべつつそう言葉を返してきます。


 うーむ、王様は私だけに頼むのは了承してくれないため、どうしても頷いてくれません。私以外にこれを解決出来る人はいなさそうですし、別にこの国に不利益があるわけでもないのに頷いてくれないのは、おそらく私のことを心配してくれているからでしょう。


 それに、数十年前に目的である悪魔に全滅させられたという銀竜騎士団のこともありますし、それを知っているからこそ、一人で出来るはずがないとも思われている気がしますね…?


「陛下、多分レアちゃんなら問題ないとは思います」

「ふむ……イザベラがそこまで言うものなのか?」


 私がどうしたものかと悩んでいたタイミングで、イザベラさんがそのように声をあげました。王様もそれを聞いて少しだけ意外そうにしていますけど、もしかしてイザベラさんは人の実力が見てわかるのでしょうか?


「はい。なんせ暗殺者ギルドの副マスターであるナンテの弟子でもあり、この目で見たところかなりの強さが感じ取れるのです」

「…イザベラがそこまで言うものなのか。…なら、これを頼むのは良いのだろうか?強いとはいえ、まだ幼なげな少女だぞ?」


 イザベラさんの言葉を聞いても王様はまだ渋っていましたが、自信満々な様子であるイザベラさんを見て考えを改めるかの如く顎に手を当てて考えています。


 しかし、イザベラさんの前で戦ったことはなかったはずなのに、よくもまあそんなに自信を持っていえるのですね?いえ、私が弱いわけでもないので問題ないですが、それでも少しだけ疑問が生じます。


 目で見たところ、とも言っていたので、それに関したユニークスキルでも持っているのかもしれませんね。


「レアちゃんなら、問題はないと思います」

「そうか……なら、すまないが頼ませてもらうとしよう」


 イザベラさんの助言のおかげで、ついに私が倒しに行くのに頷いてくれました!確かにこんな小さな女の子に頼むのを心配になるのはわかりますが、私はこう見えても実力はあると思いますし、任せてくださいっ!


「だが!先にその腕前を見せてもらってからだ。もし、その腕前が足りないと思った場合は、これを頼むのはなしにさせてもらうぞ」


 ですが、そう簡単に頷いてはくれないようでした。


 まあ実力を確かめると言ってますし、そこで私の力を証明して見せれば今度こそ悪魔討伐に向かうのを承認してくれるでしょう。なら、王様に認めてもらえるように全力を出すことにしましょうか!


「わかりました!認めてもらえるように全力を見せます!」

「うむ。では、それを見るために訓練場へと向かうぞ」


 そう言って王様は善は急げとばかりに今いる応接室から出て、訓練場とやらに向かって歩いていきます。


 相手がどんな人だとしても私の力をしっかりと披露すればいいみたいですし、緊張はしますけど気を張りすぎずに頑張るとしましょうか!


 私の首元と肩にはクリアとセレネもいるので、下手なところは見せれませんしね!


「レアちゃん、多分相手は騎士団のメンバーになると思うけど、自信は大丈夫かしら?」


 そんな思考をしつつも先頭を歩いて行く王様に着いていっていた私たちでしたが、その道中でふとイザベラさんからそのように声をかけられたので、私は少しだけ顎に指を当てて考えた後、答えます。


「多分、大丈夫だとは思います。その人たちって、銀竜騎士団の団長さんほどの強さはないのですよね?」

「私はこの目でその団長さんを見たことはないけど、おそらくはそこまで強くはないと思うわ」

「なら、問題ないですね。私、この子たちもいたとはいえ一人で団長さんを倒してますしね」


 まああの時のアルベルトさんは操られていた可能性もあるため全力ではなかったのかもしれませんが、それでも生身の騎士団メンバーが相手なら問題ないとは思います。


 別に舐めているというわけでもなく、実際にそうだと感じるので客観的な感想としては、ですけどね。


「そう。なら、言わなくてもいいかもしれないけど、油断はしないようにするのよ?」

「はい!」


 よーし、これから相手をするのはイザベラさんの言っていた通り騎士団の人だとは私も思いますが、私の全力をぶつけさせてもらいましょう!


 アルベルトさんに直接頼まれた願いも叶えるため、私の力を認めさせる必要がありますし、油断はしませんっ!

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