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169話 騎士

「リビングアーマー型のモンスター…!それに、とある騎士の無念、ですか…」


 道理でモンスターのようにいきなり攻撃をしてきたわけですね。加えて状態には不浄とも載っているので、これがモンスターとなった原因でもあるかもしれませんね?


 見た目はまごうことなき騎士の姿ではありますが、鑑定結果からもわかる通りモンスターであり、何らかの願いを叶えるために動いているのだとわかります。


 しかし、私にはその願いが何なのかはわかりませんし、モンスターとなってしまっているので倒すしかないのでしょうか…?…いや、私には撃った対象に込められた過去の記憶や体験を知る武技である〈第四の時(フィーア)〉がありましたね。なら、それを使ってその願いとやらを確認してみるのがいいですね。


「…では、隙を見つけてそれを撃ち込むのを目指しますか。クリアとセレネも、協力をお願いします…!」

「……!」

「キュッ!」


 二人にも私の手助けをお願いすると、もちろん!とでもいうように反応を返してくれたので、私はモンスターらしき騎士様…… アルベルトさんへと意識を向けて集中します。


「……」


 私の正面に立っているアルベルトさんは無言のまま手に持つ片手剣をこちらへと向けつつ殺気を飛ばしてきているため、少しだけその気配に押されてしまいますが、それが却って私の集中力を高めてくれます。


 この人は私が何度か戦ったワールドモンスターほどではないとは思いますが、人間としてみればかなりの実力があると感じますし、今も一切の隙を見せてくれません。


 願いを知るために私のユニークスキルを使って過去を見る必要がありますが、そう簡単に出来なさそうですね…!なら、一旦弱らせる必要がありそうです。


「……!」

「っ!〈第一の時(アイン)〉!」


 そんな互いに警戒をしていた状況に痺れを切らしたのか、アルベルトさんは片手剣を構えて一気にこちらへと踏み込んできました。


 その速さはなかなかのものではありますが、それでも邪神と戦った英雄などと呼ばれるほどの強さではないためか、私のユニークスキルで加速させた動きに迫るほどではないようです。


 なら、一度その足を撃ち抜かせてもらいますよ!


「〈第三の時(ドライ)〉!」

「……!」

「キュゥ!」


 私の弾丸、クリアとセレネによる魔法の攻撃が立て続けにアルベルトさんへと放たれましたが、それらは全て手に持っていた漆黒の片手剣で切り払われることで相殺され、そのまま魔力を纏うことで先程までよりも加速した鋭い剣撃が私目掛けて飛んできます。


 しかし、不意打ちならまだしも正面からの攻撃くらいなら、当然避けることが出来ますよ!


「からの、〈第二の時(ツヴァイ)〉!」


 鉄塊ですら一撃で断ち切れそうなその剣閃を、私はギリギリまで引きつけてから横に半歩ズレることで避け、反撃として動きを遅くさせる武技をしっかりとアルベルトさんへと撃ち込みます。


 よし、これで動きが鈍くなりましたね!今のうちに動きを止めるべく行動に移りましょう…!


「〈第十一の時(エルフ)〉!」


 撃った対象の足を五秒間縫い止める効果の武技を、動きの鈍って回避に移れないアルベルトさんに向けて放ちましたが、それはキチンと当たることが出来てその効果が発揮されます。


 そのうえ私のそばにいたクリアとセレネによる土と氷による拘束をしてくれたため、さらに時間は稼げそうです。


 これで動くことは出来ないですよね?なら、ここであれを使わせてもらいますよ!


「二人ともありがとうございます!では、〈第四の時(フィーア)〉!」


 それらによって出来た隙に記憶を読み取る武技をアルベルトさんへと撃ち込み、私は即座にアルベルトさんの記憶を読み取っていきます。




「アルベルトよ、お主の銀竜騎士団へと頼むことになってすまないな」

「我らが王よ、そのようにおっしゃらずとも、我が騎士団には何の迷惑もございません」


 私、シルベリック・アルベルトは我が国の頂点に立つ立場である迷宮都市の国王、ラビリアス・ゾナ・ラベラ様からの命を受けてここ、迷宮都市に存在する城の中にある玉座の間まで来ている。


 我らが王は壮年と言っても過言ではない口元に生えている髭が特徴の男性であり、この国の未来を背負って生きてきたために戦闘力に関しては並程度ではあるが、政治的にはかなりのものとはわかる。


 もちろん、貴族とはいえ騎士団を率いているだけの私では足元に及ばないだろう。


 まあそれに関しては今は良いとして、問題はそんな我らが王から頼まれた命についてだ。


 それは、この迷宮都市の東にあるというノルワルド黒森の奥に潜んでいる邪悪なる者の討伐であり、それを私が率いる銀竜騎士団へと頼まれることになったのだ。


「反応からして、かなりの強敵なはずだ。必ず、生きて帰ってくるのだ。これは命令であるぞ?」

「承知いたしました。必ず達成して帰ってくると約束致します」


 命も受けたので、これはしっかりと生きて帰らなくてはいけないな。ただ、相手は強大なはずなので部下たちも出来ることなら死なせたくはないが、多少は犠牲が出てしまうかもしれん。


 だとしても、私が王の命を断るはずがありませんがね。しっかりとその命を達成して見せてみせましょう!




「団長、大丈夫ですか?」

「….すまない、少しだけ考え事をしていた。それで、何か用か?」


 国王からの命を受けて私は銀竜騎士団を率いてノルワルド黒森の目の前まで来たのだが、そこで最後の休憩を部下たちに取らせているタイミングで自身はこれからの作戦を練っていると、ふと連れてきた部下の一人の騎士団に入ったばかりであるまだ少年とも呼べるであろうアルトから心配そうに声をかけられた。


 …少し、考え方に夢中になっていたみたいだな。アルトが近づいてきているのに気づかなかったとは、私もまだまだのようだ。


「はい。騎士団のメンバーから、これを届けるようにお願いされて来たのです」


 そう言いながら私へと差し出してきたのは、どうやら肉が挟まれているサンドイッチの物のようだ。…そういえば、私はこれからの作戦を練っていたため食事をしていなかったな。


 他のメンバーから渡すように言われたということだし、少しだけ心配させてしまっていたらしい。なら、これはしっかりと受け取らせてもらおうか。


「すまない、アルト。これはありがたくもらうな」

「はいっ!それで、団長は何を考えていたのですか?」


 感謝の言葉を返しつつサンドイッチを受け取った私だったが、おずおずといった様子でアルトからそのように聞かれたため、別に隠すことでもないので正直に口にする。


 それに騎士団全員に伝える作戦でもあるので、隠したところでこの後すぐに皆に伝わるだろうしな。


「これからの作戦についてだ。狙いの邪悪なる者はかなりの強敵らしいのでな」

「そうだったんですね。では、もう少しで行くのですか?」

「ああ、そろそろいい具合だろうしな」


 しっかりと長めの休憩も取らせたし、アルトに言った通りそろそろ命を果たしにいくとしようか。


 さて、邪悪なる者はどのような力を持っているのだろうか。出来るのなら犠牲は出したくはないが、全員が生きて帰るのは厳しいかもしれんな。


 王からは生きて帰るようにお願いはされているし、私も犠牲を出したいと思ってはいないので誰一人として欠けることがないように目的を果たすとしよう。




「貴様…!」

「くくく、お前がリーダーだなぁ?」


 あの後は早速邪悪なる者の討伐を目指してノルワルド黒森を進んでいた私たちだったが、順調に奥へと進んだタイミングで突如私たちの前に現れた黒髪赤目の男、おそらくは悪魔と推測出来る者の手によって私の部下たちは一瞬にしてやられてしまった。


 私自身は何とか周囲にいた部下たちを数人守りつつ攻撃を防げたが、他のメンバーはすべてが地に伏せてしまっている。


 まだ息はあるようだが、すぐに手当てに移らなくては死んでしまうのはあ間違いない。しかし、それに移ることは出来ないだろう。何故ならこの悪魔はかなりの実力を持っているようで、そんな隙がないからだ。


 ならば、少しでも王へと情報を伝えるためにこの騎士団の中で一番の若手であるアルトとその護衛として生き残りの数人に、このことを王へ伝えるようにお願いするか。


「…お前たち、お前たちは今すぐに逃げるのだ」

「そんな!そんなことは出来ません!」

「いいか、これは私たちで何とか出来るものではないのだ。今すぐに国王の元へと向かい!このことを伝えてほしい」


 私が悪魔から目を離さずにアルトたちへそのように声をかけるが、やはり私一人を置いていくのは心苦しいようで逃げるのを躊躇ってしまいっているようだ。


 騎士団のメンバーでもあるので敵から逃げるということは許されないと感じているのだろう。それも当然だが、今ここで全滅してしまえば情報すらなくなるのだ。なら、ここはどんなに汚くても生きるのが先決だ。


「これは命令だ!お前たち、行くのだ!」

「……わかりました。必ず生きて帰ってきてください!」


 私の覚悟が伝わったのか、生き残っていたメンバーがアルトを連れてこの場から去っていくのを感じつつ、私は正面にいる悪魔へと意識を向ける。


「おやおや、貴方だけは残るのですねぇ?」

「ふん、貴様の相手は私一人だけで良いからな」

「くくく、威勢がいいですねぇ?なら、お望み通り殺してあげますよ!」


 そう言って手に生やした黒色の爪を構えながらこちらへと向かってくる悪魔を見て、私自身も即座に己の武器である片手剣を構え、そのまま悪魔へと踏み込んでいく。


 貴様は、かならずここで倒させてもらう!




「…っ!」


 その記憶を最後に、私の視点は元の世界へと戻ってきました。


 今回は戻ってくるのが早かったようで、未だにアルベルトさんは拘束から抜け出せていないらしく、今も足を取られていてこちらには攻撃を出来ないみたいでした。


「…今の記憶からするに、この人は迷宮都市の騎士団長だったのですね」


 しかも、何やら王様からの頼み事を受けてこの森へと来たみたいではありますが、こうしてアンデッド系のモンスターになっているということはその頼み事は失敗したのでしょう。


 そのうえ相手は悪魔だったみたいですし、そのせいでこのような姿に変化しているのだとはわかりますね。なら、私にはこの状態を治すことも出来ないのでしっかりと弔いつつ倒しちゃいましょうか。こんな姿にされるなんて、どう考えても可哀想ですしね。


「クリア、セレネ、この人を倒しちゃいましょう」

「……!」

「キュッ!」


 私はそばにいる二人にそう声をかけた後、正面にいるアルベルトさんに手に持つ双銃の銃口を構え、そのまま相手が動かないことをいいことに連続で武技を叩き込み、クリアとセレネによる攻撃も加わることでアルベルトさんのHPを削り取ります。


「…お、おお…」

「…!」


 そしてHPを削りきって倒したと思ったら、何故かポリゴンとならずに突如声をあげました。


 …もしかして、倒されたことによって精神……もしくは魂とでも言うのでしょうか?それが蘇って言葉を発せられるようになったのですかね?モンスター化の原因は悪魔が関係してそうですし、これはあながち間違いではないとも思いますし…


「お嬢、さんよ、ありが、とう」

「いえ、このくらいは大丈夫ですよ」


 倒してくれたことに感謝でもしているのか、そのような言葉をかけてきたので私は武器を下ろしてそう返します。


 やはり、悪魔に操られでもしていたみたいですね。だから、こうして感謝の言葉をかけてくれるのでしょう。


「お嬢さんよ、これを、頼む…」


 そう言いながら私へと差し出してきたのは、何やら汚れか何かなのか黒色に染まっている十字架のペンダントでした。


 これは一体何なのでしょうか…?私に差し出してきたうえにこれを頼むとも言っているので、どこかへと届けてほしいということですかね‥?


「これは…?」

「我が王へと、届けてもらいたい。そして、このことを伝えて、ほしいのだ」


 思わず聞き返した私の言葉に、アルベルトさんはそのように言葉を続けてくれました。


 なるほど、王様へと渡してほしいということに、悪魔についてですか。私は王様との関係があるわけではないですけど、あの国の貴族である人と関わりがありますし、届けて伝えるのは問題ないでしょう。


 なら、これはしっかりと引き受けるとしますか!おそらく、まだこの森にいると思しき悪魔については不安が残りますが、ひとまずこれを届けてからでも大丈夫ですよね。


『ユニーククエスト【過ぎ去りし闇の記憶】が発生しました』


 ペンダントを受け取るのと同時にそのようなシステムメッセージも聞こえてきましたし、これはクエストとしてやる必要があるみたいです。


 それにしても、ユニーククエストですか……ユニーク系のクエストは全体的に報酬がとても豪華なのでなかなか嬉しいですし、アルベルトさんからの願いも託されたのでこれはキチンとクリアしないとですね!


 記憶を読み取って把握した悪魔のことは一旦置いておくとして、今は先に王様へとこれを届けるのが最優先として動きますか。

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