165話 デート2
「では、次は下着を見に行ってもいいですか?」
その後は色々な服を悠斗と共に見ていき、洋服屋さんで私が最初に見つけた花柄ワンピースと、悠斗から勧められたショート丈Tシャツの二つを無事に購入した私は次の目的を決めてそう聞いてみると、悠斗も構わないと言ってくれました。
なら、このお店の中にも下着コーナーはありますし、そこに向かいましょう!
男性である悠斗には流石に居心地が悪すぎるみたいなので、下着コーナーの近くで待っているみたいですが。別に私の恋人なんですし大丈夫だとは思いますけど、その気持ちはちょっとだけなら理解出来る気がするので何も言いませんけどね。
そうして悠斗を待機させておきながら下着コーナーへと向かった私ですが、そこで商品を手に取って選んでいきます。
「うーん、最近は下着もキツくなってきてますし、まずはサイズを計ってもらいますか」
そう決めた私はまず店員さんを呼んでサイズを測ってもらうと、予想通りサイズが一つ大きくなっていたみたいでした。なので、それを参考にしつつ下着を選んでいきましょうか。
「お待たせしました!」
「お、もういいのか?」
「はい!無事に購入してきましたよ!」
あれからは少しだけ時間をかけつつも下着を数着購入してきた私は、そのような声と共に悠斗の元へと戻ってきました。
サイズに関しては胸だけが大きくなっていたので、それに合わせて買ってきたのですよね。もう大きくなることもないかと思ってましたが、意外にも成長してくれていたみたいです。
…まあ、身長だけは一切伸びてないのは少しだけ不満ですが。
「よし、次はどうする?」
「なら、今度は雑貨屋さんに行きませんか?」
前々から雑貨屋さんに行きたいと思っていましたし、このタイミングで寄りに行きたいと悠斗へと言ってみると、悠斗も特に不満はないようで了承を返してくれました。
よし、では早速そこに向かっていいものを探すとしますか!
…何故私が前々から雑貨屋さんに行きたかったかというと、もう少しで悠斗の誕生日が近いからなのですよ!そのため、誕生日プレゼントとして何か贈るべくそこに寄ることにしたのです。
悠斗自身は特に何も言ってきてませんが、誕生日くらいは私からもお祝いさせて欲しいですしね。
「じゃあ行くか」
「はい!」
悠斗の言葉にそう返事を返した私は、またもや悠斗と手を繋いでショッピングモール内にある雑貨屋さんを目指して歩いていきます。
それにしても、やはり夏休みだからなのか学生らしき人たちを何人か見かけますし、私たちのようにデートをしている人たちも意外といるみたいですね。
悠斗は気づいていないかもしれませんが、周りの人たちからは微笑ましそうな表情を向けられるので、少しだけ恥ずかしくなってしまいます…!
「どうした、美幸?顔が赤いぞ?」
「な、なんでもありませんよ!」
「そうか?ならいいが」
こ、ここまで露骨に顔を赤くしてしまえば、流石にバレますよね…!
悠斗に対しても男性から嫉妬の視線が集まっているみたいですけど、それに気づいてはいないのですかね?
…いや、ショッピングモール内は涼しいはずなのに何やら冷や汗みたいなのをかいていますし、悠斗も気づいてはいるはずですね。なら、さっさとお店へと向かうことにしますか。
「ゆ、悠斗、少しだけ急ぎましょうか」
「そ、そうだな。さっさと行くか」
そこから私たちは互いに歩くスピードを上げ、周りの視線から逃げるようにちょうど近くまで来ていた雑貨屋さんの中へと入っていきます。
ふぅ、中に入れば視線はなくなりましたし、ここなら落ち着けそうですね!
やっぱり、この目立つ白髪は隠した方が良かったでしょうか?でも、私は別に有名人というわけではないので隠すのには慣れていませんし、気にしすぎて変になるよりは今のままでいいですね。
「ちょうど雑貨屋に着いたし、ここは少しだけ別行動にしないか?」
「いいですよ。では、私もちょっと商品を見てきますね!」
悠斗から一旦別行動をしないかと言われたので、私自身も悠斗の誕生日プレゼントをこっそり買っておきたかったため、それに了承を返します。
それを聞いた悠斗は早速とばかりに商品を品定めしていっているので、私も誕生日プレゼントにふさわしいものを探すのを開始しますか!
「どれがいいでしょうか…」
私は悠斗から離れて置かれている商品を見ていきますが、やはり悩んでしまいます。
あまり高い物では悠斗も遠慮してしまうと思うので、手頃な物が良さげですけど…
「…あ、これ、いいですね」
そうして色々と見て回っていた私が見つけたのは、シンプルな黒色をした革製の財布です。
これなら値段も高くないですし、よく使う機会もあると思うので悠斗に上げるのにはピッタリな気がしますね!…よし、誕生日プレゼントはこれに決めますか!
「美幸、美幸は何か買いたいものはあったのか?」
「あ、悠斗!はい、すでに買ってきたところです!」
商品である財布をレジに持っていって会計を済ませた私は、そのまま悠斗を探していると、悠斗もすでに買い物は済ませたようで何やら小さめの袋を手にしてこちらへと歩いてきたところでした。
悠斗も何か買っているみたいですが、何を買ったのでしょうかね?少しだけ気になりますが、別に聞かなくても良いですね。
「じゃあこれで買い物は済んだし、次はどうする?」
「そうですね……なら、今度はカフェに寄りませんか?」
ついでにそこでお茶でもどうかと悠斗を誘ってみると、悠斗も賛成なのか頷きを返してきました。
ご飯を食べるわけではないので、ちょっとしたお茶くらいなら時間にも余裕があるのでいいですしね!それにデートなんですし、こうしてカフェで一緒にお茶をするのも悪くはないでしょう!
「んじゃ、行くか」
「はい!」
次に行く場所を決めた私たちは、再び手を繋いでから早速ショッピングモール内にあるカフェへと向かうべく足を動かしていきます。
さて、今からカフェに行きますが、誕生日プレゼントはどのタイミングで渡しましょうか…?いきなり渡すというのはちょっとだけ折が悪いですし、タイミングを見計らって渡すのがよいですよね…?
「…お、美幸、先にあそこに寄らないか?」
そのような思考をしていた私に対してふと悠斗がそんな言葉をかけてきたので、悠斗が示す先へと視線を向けると、そこは無数のゲームらしきものが置かれている、いわゆるゲームコーナーと呼ばれる場所でした。
なるほど、ゲームコーナーですか。確かに悠斗はこうしたゲームも好きですし、気になるのも当然ですね。なら、急ぎでもないのでちょっと寄ることにしますか!
ちなみに、現代のゲームといえばVRものが主流となっていますが、このようなレトロゲームは今も根強い人気があるためこうしたゲームコーナーも無くなっていないのですよ!なので、意外にも私たちのような学生とかがやっていることも多いとか。
「いいですよ!私も気になるので!」
「よし、なら行くか!」
悠斗はほんのりと楽しげな様子を表しつつもそんなゲームコーナーへと歩いていくので、手を繋いでいる私も一緒になってゲームコーナーへと向かいます。
私はゲームコーナーたら何度か見たことはありますが、このような場所でゲームはしたことがないので悠斗に釣られるように私もワクワクしてしまいます!
「俺はゲームをするが、美幸はどうする?」
「初めは見学させてもらってもいいですか?」
「構わないぞ。なら、下手なところは見せられないな」
笑いながらそう言う悠斗は、手始めにこのゲームコーナー内で一番人気らしき対戦型格闘ゲームを開始するので、私はそれを後ろから見ていることにします。
そのゲームの名前はロードファイターというらしく、無数にいるキャラの一体を選んで一対一の対戦をするもののようで、悠斗は手早くキャラを選んで対戦を始めていきます。
後ろから見ている私からすると、やはり慣れているからか動きに無駄が一切なくて対戦相手を軽い調子でダメージを与えていってます。
「…よし、勝ちだな」
「悠斗、おめでとうございます!」
そして結果は当然のように悠斗の勝ちとなり、ゲーム画面には悠斗の選んだキャラの勝利ポーズが映っています。
うーむ、見ているだけでも結構難しそうに感じますし、私には出来なさそうですね…?私の場合はVRゲームは得意ですけど、こうしてゲームは下手なのでやめておきましょうか…
「美幸もやってみるか?」
「いえ、私は見るだけにしておきます。どうせボコボコにされるだけですしね!」
まあプレイしたことが少ないのでお試しとしてやるのも悪くはないかもしれませんけど、私的には見るだけで満足してしまうのでプレイすることはありませんね。
それよりも、私の場合は格ゲーなどと同様にゲームコーナーにあるクレーンゲームの方が興味が湧いてきますし、そちらをメインでしようかと思ってます!
「なら、次はクレーンゲームをするか」
「はい!さて、何か取れるといいのですけど…!」
ゲームセンターなどに寄ることは少ないうえにクレーンゲームをすることは多くないので、上手く出来るかはわかりませんが……とりあえず、ぬいぐるみなどは取りたいですね!
私も女の子なんですし、格ゲーなどよりはそちらの方が興味があるので!
「あ、あれ可愛いですね!悠斗、あれをやってきます!」
「ん、わかった」
ゲームコーナー内を歩いていた私たちでしたが、その中で一つだけ気になるものを見つけたので、悠斗の手を引きつつそちらへと向かいます。
私が見つけたそれは、私たちも現在やっている『Memorial Story Online』通称MSOに出てくるモンスターである兎のぬいぐるみだったのです!
あちらの世界でマジマジと見たことはありませんでしたが、このぬいぐるみはデフォルメされている姿のようなので、とても私の感性にビビっときたのですよ!
これは、確実に取りたいですね…!よし、取れるよう頑張ってみますか!
「むぅ…」
「はは、そう落ち込むなよ、美幸。結局ゲットは出来ただろう?」
私は兎のぬいぐるみをギュッと抱きしめつつ不満そうな表情を浮かべていると、悠斗から苦笑されながらもそう声をかけられました。
悠斗の言っている通り、確かにぬいぐるみは手に入れることは出来ました。…ですが、それは私の力ではないのです!実は、このぬいぐるみは悠斗が取ってくれたため、少しだけ落ち込んでしまっています…
確かにゲットは出来たので嬉しいですけど、出来ることなら自分の力で取りたかったです…!…まあ代わりに取ってくれた悠斗には感謝の気持ちを伝えはしますが。
「…とりあえず、取ってくれてありがとうございます」
「このくらいなら全然構わないぞ。それに、美幸が喜んでくれれば俺も嬉しいしな」
そ、そんなことを言われてしまえば少しだけ恥ずかしくなってしまいますよ…!それに私が喜ぶのが嬉しいなんて、よくもまあそんなキザなセリフを言えますね…!?
…悠斗の場合は本心で言っているとわかるのでそこまでカッコつけているわけではないとは思いますが、それでも顔を赤くしちゃいますよ…!
「よし、じゃあ続けて色々と取っていくか!」
「はい!今度こそ、私の力でも取ってみせますよー!」
ふふん、悠斗に頼り切らずに私自身の力だけでも取れるよう、頑張りましょう!
「…やっぱり悠斗は上手いですね」
「そうか?これくらいなら出来る人も多いと思うが…」
そうしてゲームコーナーでクレーンゲームを筆頭に様々なゲームをして存分に楽しんだ私たちは、ゲームコーナーに寄る前に決めていた通りカフェへと向かい、今はそこでお茶をしているところです。
それにしても、クレーンゲームはなかなか難しかったですね…
私はなんとか兎とは別のぬいぐるみを二個取れたくらいでしたが、悠斗は他にも色々と取ることが出来ており、買い物袋とは別に景品を入れた大きめの袋を持っています。
やはり悠斗はこうしたゲームには慣れているのか、とても上手だったので嫉妬しちゃいます…!私なんて少ししか取れなかったのですよ?なら、仕方ないですよね…!
「美幸は単に慣れていないだけのようだから、何回かやれば上手くなれると思うぞ」
「そうだといいのですけどね…」
私は注文していたミルクティーを飲みつつ、悠斗の言葉に反応を返します。
悠斗の言葉も納得は出来ますし、慣れたら上手くなるだろうというのはわかります。ですが、私の専門はVRゲームなのであまり寄る機会はなさそうなため、上手くなれるのはいつになることやら…
「それと話は変わるんだが、美幸」
「ん、なんですか?」
コーヒーを飲みながら私へと問いかけてきた悠斗に対して、私は視線を返しつつ言葉の先を待ちます。
「今の具合は大丈夫か?」
具合……単に体調を心配しているわけではないですよね?ということは、おそらく前に克服した過去が再びぶり返したりしないかを心配しているのでしょうか?それなら、もう大丈夫ですよ!なんたって、私のそばには悠斗がいますしね!
「大丈夫ですよ!悠斗もいてくれますし、もうあの過去は乗り越えましたからね!」
「そうか。それならよかった」
悠斗は心配そうにしていましたが、すでにあの過去とは訣別を出来ているのでぶり返すことはないはずです。なので、そこまで心配はしなくてもへっちゃらですよ!
「…よし、そろそろ時間もいい具合だし、この辺で帰るとしないか?」
「あ、もうそんな時間でしたが!」
そこからもカフェでゆったりとしながら他愛無い会話を続けていた私たちでしたが、ふとあげた悠斗の言葉を聞いてスマホで時刻を確認すると、すでに五時を超えているところでした。
いつのまにかこんなに時間経っていたのですね…!夏なので暗くなるのはまだでしょうけど、確かにいい時間なので帰ることにしますか!
悠斗とのデートはやはり楽しいからか時間の進みが早く感じてしまいますね……もっと一緒に居たいですけど、そろそろ帰らないと遅くなってしまいますし、仕方ありません。
「じゃあ、行くか」
「はい」
そうして私たちは今いるカフェから出て、そのままショッピングモールも後にしてバス停へと向かい、乗り込みます。
その帰り道は時間も遅いからか日が暮れてきており、夕日が私たちを照らしていて少しだけムードが出てきています。
ま、まあ私たちはすでに恋人であり、今も手を繋いでいるので何かが起きるというわけでもないですが、それでもこの時間帯はドキドキしてしまいます…!
「そうだ、美幸に渡したいものがあったんだ」
「渡したいもの、ですか?」
そんなバスも降りて家までの帰り道で、ふと悠斗がそのように声をあげて私に対して渡したいものがあると述べましたが、一体なんでしょうか…?
私から送るのなら誕生日プレゼントとして理解出来ますけど、悠斗から渡したいものがたるなんて、一体全体なんなのかはさっぱりですね?
「これ、美幸に似合うかなと思って買ったんだ。よければ受け取ってくれないか?」
そう言いながら私へと見せてきたそれはどうやらアクセサリーのようで、銀色をしたシンプルなチェーンに同じく銀色をした花のような飾りが付いたネックレスでした。




