164話 デート
あの後からは特筆することもなく時間が経過して、今はすでに次の日である日曜日の午前八時、つまり悠斗とのデートの日です。今日は太陽も燦々と外を照らしているので、デートをするにはピッタリの天気ですね!
デートをする時間はお昼の一時からなので午前中は予定が空いてますが、流石にゲームをする気にはなりません。
それよりも、着ていく服をどうするかが今は重要です!夏祭りの時は浴衣を着ていきましたが、デートには似合わないと思うので違う服にしたいのですが、これがとても悩んでしまいます。
「うーん、スカートとブラウスで可愛くするか、パンツコーデでスタイルの良さを目立たせるか…」
私は身長139cmとかなり小さめで女性らしさも少なめではありますが、いい意味で日本人離れしたスタイルなのでパンツコーデでも悪くはなさそうですけど……ここは可愛さを目立たせるためにスカートとブラウスで揃えるとしましょう!
それでは、半袖である真っ白なリボンブラウスに黒色をしたロングのフレアスカートを合わせ、白色のパンプスで決まりですね!今は家の中なので靴は履きませんが、服に関してはこれにします。
これなら、悠斗に可愛いって言ってもらえるでしょうか…?言ってくれればとても嬉しいですが、気にしすぎないようにしておかないとですね…!
「とりあえず、服装はこれでオッケーですね。デートまでの時間は……勉強でもしてますか」
すでに朝のやらなくてはいけないことは全て終わらせていますし、夏休みの宿題も片付いてはいます。
ですが、ゲームをする気も起きないので待っている間は勉強をしておくことにします。別に宿題がなくても勉強は当然出来るので、予定の時間になるまでは、ですけどね。
そうして予定の時間までは勉強を黙々と進めていき、気がついたら時刻はすでに十一時となっていました。
「…もうこんな時間でしたか。ひとまず、お昼ご飯の用意をしないとですね」
私は一度勉強の手を止めて長時間座っていたため凝った身体を伸ばした後、立ち上がって自分の部屋から出てリビングへと向かいます。
「兄様は……まだみたいですね」
リビングに降りると、兄様がいつも通りまだだったので人がおらずシーンとしてましたが、私はそれを気にせずにキッチンへと向かってお昼ご飯の用意に取り掛かります。
私はこの後に悠斗とデートに行きますが、それは一時なので時間には全然余裕がありますし、お昼ご飯もどこかで食べるわけでもないのでしっかりと作らないといけないですからね。
…もしお昼前にデートに行くことになってたとしても、兄様は料理が出来ないので結局私が作ることになったとは思いますが。
「美幸か、もう降りてきてたんだな」
「あ、兄様!はい、もう出来るので座って待っていてください!」
そんな思考をしつつも鼻歌を歌いながらお昼ご飯である焼そばを作っていた私でしたが、背後から聞こえてきた兄様の声にそう返しつつ、出来上がった焼きそばを皿に盛ってとテーブルへと持っていきます。
今日は手早く作りたかったので焼きそばですが、兄様は特に気にしていないらしく、美味そうだな、と呟いているのでこれで大丈夫みたいです。
まあ手早く作っただけで具材もきちんと入れているので、文句をつけられるとは思わなかったですけどね。加えて私は悠斗とのデートをするため出かけるので、念のため夜の分も作っておきました。
これなら、もし帰るのが遅くなっても兄様のご飯はあるので大丈夫でしょう。
「では食べましょうか」
「ああ、いただきます」
そして出来上がった後にテーブルへと持ってきた焼きそばを私たちは食べ始めます。
念のため夜ご飯の分もしっかりと残していますが、量は多めに作っておいたので食べる分は大丈夫なはすです!
「美幸は今日はどうするんだ?」
「ふふん、私は一時から悠斗とデートに行くのですよ!」
焼きそばを食べている最中に兄様からそのように聞かれたので、私はドヤ顔をしつつそう答えます。
私の言葉に兄様は驚いた様子ではありますが、それは聞いていなかったからでしょうね。このデートは悠斗と恋人になってから初めてのものなので、私はとても楽しみにしてたのですよ!
加えてオシャレもしっかりとしていたため、それについても納得しているみたいです。
「デートか……まあ、楽しんでこいよ」
「はいっ!楽しんできますよ!あ、それともし遅くなったら夜ご飯は作り置きをしているので、先に食べていてください!」
「了解」
そこからは特は会話をすることもなく食べ終わり、私たちは使った食器などを片付けた後にそれぞれの自室へと戻ります。
「…さて、今の時刻は十二時くらいですし、そろそろ準備をしておかないとですね!」
集合場所はお互いに家が近いので悠斗が迎えにきてくれることになっています。そのため、待ち合わせで待つ必要がありません。
ですが、待たせることがないように先に支度を済ませておくのが必要なので、私は早速準備に取り掛かります。まあ着ていく服装などはすでに決めているので、日焼け止めや身だしなみ、髪のセットくらいですが。
それとメイクをするのも良いのかもしれませんが、私は自分でしたことがないため慣れていないので一応やめておきます。
そういった準備をしているといつのまにか予定の時間が迫ってきていましたが。私はなんとか無事に用意を済ませることが出来ました。
よし、これで支度は完了ですね!後は、悠斗が来るのを待つだけです…!
「…あ、来ましたね!」
そうして今か今かとワクワクしつつ待っていると、ピンポンというチャイムの音が聞こえてきたので、私はテテテッと小走りで玄関まで向かい、扉を開けます。
すると、そこには白いシャツに黒のハーフパンツを着ている悠斗が立っていました。うんうん、やっぱり悠斗は整った顔立ちをしているのでシンプルな服装がとても似合っていますね!
こんなカッコいい人と恋人になれるなんて、私は幸せ者ですね!
「美幸、待たせたか?」
「いえいえ、大丈夫ですよ!では行きましょうか!」
「そうだな。行くか」
悠斗も来てくれましたし、待ちに待ったデートに向かいましょう!今の時刻はちょうど一時くらいなので、時間はたっぷりとありますしね!
「行く場所はショッピングモールでもいいか?」
「そうですね、そこなら色々とありますし賛成です!」
そんな感じで私たちはまず行く場所を決めた後、近くのバス停からバスに乗って近所のショッピングモールへと向かいます。
どうやら悠斗は先にデートの予定などを決めていたようで、先導するかのように私を連れて行ってくれるのでとてもありがたいです!
…私も、少しは予定を決めておいた方がよかったですね。まあ今更後悔しても遅いですけど、次がある時はしっかりと考えておきますか!
「…そういや美幸。その服装、可愛いな」
「ありがとうございます!そう言ってくれるととても嬉しいです!そういう悠斗だって、よく似合ってますよ!」
そしてバスに乗って席に座ったタイミングでふと悠斗から服装を褒められ、私は嬉しくなりつつも悠斗に言葉を返します。
気合いを入れてきただけはあり、悠斗も可愛いと思ってくれたみたいですね!ふふ、準備に時間をかけただけはあります!恋人にはなりましたが、もっと好きになってもらえるように頑張りましょう!
「それと話は変わるんだが、最近はどうなんだ?」
最近はどうかと聞かれましたが、おそらく現実世界ではなくゲーム世界のことについてですよね?
悠斗と最後に会ったのは海で遊んだ時以来でしたし、そこからのことは話してはいないので私の見てきたことなどを伝えることにしますか!
「私は裏世界や南大陸に行ったりしてましたね!」
こうして改めて思い返すと、私は色々な場所に行ってきたというのがわかります。裏世界は偶然でしたが、南大陸に関してはアリスさんのおかげでたまたま船に乗れて行けましたけど、普通はここまで簡単には行けないでしょうしね。
「美幸は色々なエリアの攻略をしているんだな」
「運がよかっただけかもしれませんけどね。そういう悠斗はどうなんですか?」
「俺はいつものパーティメンバーで初期の街の北にあるルーブ高原の攻略をしていたくらいだな。ある程度攻略の目処が立ってきたから、もう少ししたらエリアボスに挑もうかと思っているところだ」
ふむふむ、悠斗は高原の先を目指しているみたいですね。兄様は火山地帯の攻略を進めていたみたいでしたが、やっぱり人によって攻略を進めるエリアは変わってくるのでしょうね。
私の場合はエリア攻略にあまり力を入れていないせいで少しだけ遅れ気味かと思ってましたけど、まだそこまで離れているわけではないみたいですね。
それに私はエルフェリンデの攻略を主に目指しているところですし、もう少し他のエリアにも目をつけてみましょうか?
「っと、そろそろ着くみたいだな」
「あ、本当ですね」
バスに乗りつつそのような会話をしていると、気づいたら目的のバス停である場所に着くところだったので、私たちはすぐさま降りて近くにあるショッピングモールに向かって足を動かしていきます。
それにしても、八月の半ばあたりにも関わらず意外と日差しが強いおかげで暑く感じますね…
家にいる時に髪をポニーテールにしておいたのでまだなんとかなっていますが、結んでいなければ暑くてやばかったでしょう。
そんな思考をしつつも、悠斗とゲームのことなどを話しながらバス停の近くにあるショッピングモールの中へと私たちは入っていきます。
「んー、やっぱりお店の中は涼しいですね!」
「そうだな。じゃあ、まずはどこに寄るか?」
ショッピングモールに着き次第悠斗からそのように聞かれたので、私は少しだけ考えます。
今はただ買い物に来ただけではなく悠斗とのデートなんですし、楽しめるものが良いですよね。…なら、まずは洋服を売っているお店に寄ることにしますか!そこなら悠斗好みの服も買えますし、もっと可愛いって褒められたくもありますしね!
それと最近はほんの少しだけ下着もキツイ感じもするので、ついでにそれの買い物もしたいですね。
「なら、洋服店でもいいですか?」
「構わないぞ。よし、行くか」
その言葉と共に悠斗は私に手を差し出してきたので私は一瞬不思議に思いましたが、それもすぐに消えます。
手を繋いでいこうということですよね…!それなら、ぜひ手を繋がせてもらいましょう!
私はほんのりと頬を赤く染めつつもその手を取ります。手を繋ぐのは少しだけ恥ずかしくなってしまいますが、私たちは恋人なんですしこのくらいは慣れないとですね…!これからも手を繋ぐことも間違いなくあるはずだとは思うので!
「見てください、悠斗!これなんかどうですか?」
「お、可愛いな。美幸には似合いそうだ」
そうして手を繋ぎながらショッピングモール内を歩いていき、洋服屋さんに着いた私たちは一度手を離してから早速服を見ていきます。
その中で見つけた一着の服を私は持って悠斗に見せてみると、そのような返事が返ってきました。
私が悠斗に見せてみた服は薄い水色をした花柄のワンピースであり、この季節にはとてもピッタリで涼しげな印象を受けるうえ、私の好みにもドンピシャなのですよ!
値段は……そこまで高くはないですね。なら、これは一応キープしておきますか!悠斗も可愛いと言ってくれましたしね!
「お、美幸、これなんかどうだ?美幸には似合うと思うが」
続けて、今度は悠斗が私に似合いそうな服を見つけたようで呼ばれたので、そちらに視線を向けてそれを見てみます。
悠斗が見せてきたその服は、白色をしたショート丈Tシャツと呼べるおへそがチラリと見えているシャツでした。
確かに可愛いですけど、お腹が見えているのは少しだけ恥ずかしくなりそうですが……悠斗はそういったものが好きなのでしょうか?
「…悠斗は、おへそが見えているのが好きなのですか?」
思わずジトーっとした視線を悠斗へ向けてしまいますが、これは仕方ありません!悠斗だって男なんですし、そういうものが気になる年頃なのかもしれませんが、それを着させられる私からしてみればどうしてもジト目で見つめてしまいます…!
ま、まあ別にこの服がダメというわけではありませんが、流石にね…?
「い、いや、そんなことはないぞ?ただ美幸には似合いそうだなーって…」
悠斗はあたふたしつつもそう言葉にしますが、別に私も責めているわけではないのですぐにジト目からニヤリとした笑みに変わります。
その表情を見て悠斗は揶揄われていたとわかったのか、少しだけ苦笑をしています。ふふ、ちょっとだけ揶揄っちゃいましたが、揶揄う側の気持ちはこんな感じなのですね…!ルミナリアとかの気持ちも今ならわかりそうです…!
…まあそれはいいとして、この服も念の為キープはしておきますか。値段もそこまで高くはないみたいですしね。




