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157話 南大陸

「お嬢さん方、そろそろ着くはずだ」

「あ、もうですか」


 その後も垂らしていた釣竿にかかった魚たちを釣り上げていましたが、ふと背後からかけられた船長さんの言葉に、私は一度手を止めます。


 今の時刻はすでに六時近くになっていたらしく、結構な時間釣りをしていたみたいですね?まあその分魚たちも十分釣り上げれましたし、なかなかの成果ではありますが!


「あ、レアちゃん!もうすぐで着くらしいよ!」

「みたいですね。南の大陸はどんな感じの場所なのでしょうかね?」

「さっき船員に聞いた限り、私たちのいた大陸とほとんど変わりはないそうよ?」

「そうなのですか?」


 それなら、そこまで緊張しすぎなくても良いかもしれませんね。モンスターの強さや種類は流石に変化しているでしょうけど、私たちも十分強くはあるので問題はないはずです。


「あ、レアさん!見えてきたのです!」

「おお、アレが南大陸ですか…!」


 そうして皆で集まって軽く言葉を交わしていると、ふとあげたアリスさんの声を聞いてそちらへと視線を向けると、その先に広がっている海のはるか向こうに何やら陸地のようなものがかすかに見えているところでした。


 ついに南大陸が見えてきたみたいですね!まだかすかにしか見えていないとはいえ、これは楽しみですね!ネーヴェさんは私たちのいた大陸とは特に変わっていないらしいとは言ってましたが、それでも新しいエリアはワクワクしちゃいます!


「レア、貴方は着いた後はどうするの?」

「そうですね、とりあえず流石にあるであろう転移ポイントを解放した後はログアウトしようかと思います。夜ご飯の支度もしないといけませんしね」


 まだ夜ご飯の時間まで少しだけ余裕があるとはいえ、早めに用意して悪いことはないですしね。それに兄様ではご飯の用意もできないので、私がしないといけないところもあるので。


「確かにもうそんな時間だね。なら、私もログアウトかな〜」

「少しだけ疲れたし、私もこの辺で終わりにしておこうかしら」


 ソフィアさんとリンさんも私と同じ意見なようで、そう言葉をこぼしています。


 お昼くらいからずっと船に乗っていましたし、結構な時間がかかったのでリンさんだけではなく皆さんもお疲れでしょうし、ちょうどいいタイミングですよね。


 南大陸までは無事に着けそうなため目的も完了なので、船から降りたらまずは転移ポイントを探さないとですね。




「…着きましたね」

「ですね。んー、疲れたのです…」


 そこからは特に何かが起きることもなく無事に南大陸に存在する港町に着いた私たちは、早速船から降りて一息つきます。


 乗っているだけでしたが、それでも慣れていないからか少しだけ疲れが残っていますね…


 しかもワールドモンスターとの対面と魚の群れとの戦闘もしましたし、それの疲れもありそうです。


 そして今私たちが目にしている港町は初期の街の南にある港町とそう大差はないようで、石造建築が多めらしい見た目をしています。しかしあちらとは違ったポイントもあり、それは建物や大きさです。


 こちらは全体的に大きめの建物が立ち並び、交易船などが多く来るためか倉庫のようなものも多く存在しています。


「お嬢さん方、大丈夫か?」


 そのような思考をしつつ港町を眺めていた私でしたが、船長さんからかけられた声にハッとして意識を戻します。


「あ、船長さん。はい、疲れているだけなので大丈夫ですよ!」

「それならよかった。私たちはこの後は交易に行くので、この辺でお別れだ」

「ここまで連れてきてくれてありがとうございました!また会うことがあれば、よろしくです!」

「ああ、ではな」


 私の後に続くように発したアリスさんの言葉に船長さんは微笑を浮かべつつ歩いていくので、私たちはそれを確認した後に再び会話をします。


「とりあえず、転移ポイントの解放に行こっか」

「そうね。多分広場にあるでしょうから、さっさといくわよ」

「わかりました」


 そこからネーヴェさんを先頭に港町を歩いていくと、すぐに転移ポイントらしき水晶の柱を見つけたので、私たちはすぐさまそこに手をついて登録を完了しました。


 よし、これでもう船に乗らなくてもここまで来れるようになりましたし、目的は完了ですね!


「これで目的は完了だし、この辺で解散にしようか」

「そうですね、私も疲れたのでこれでログアウトしようと思います!」

「私はまだ少しだけこの街の散策をしてくるわ」

「そうね、私もアリスと同じでそろそろログアウトしようと思ってたわ」


 ソフィアさんの言葉にアリスさん、リンさん、ネーヴェさんと続けて口にしており、まだ何も発していない私へと視線が集まります。が、当然私もログアウトしようと思っていたため、それを皆さんへと伝えます。


「私も支度があるのでこの辺で終わりにします」

「じゃあ、これで解散だね!また機会があれば遊ぼうね!」

「はい、皆さんもお元気で!リンさんは気をつけてくださいね!」


 私たちは各々のやることをするべくそのまま転移ポイント付近で解散したので、私はすぐさまメニューを開いてログアウトを選択し、一時的にゲーム世界からいなくなります。




「…ふぅ、よし、戻ってきましたね」


 現実世界に戻ってきた私は、グーっと身体を伸ばして固まっていた身体をほぐします。ワールドモンスターとの戦闘などとは違いますが、それでもずっと船に乗っていたからか結構に疲れが残っていますね。


 対した戦闘はしてないのにここまで疲れるなんて、やはり慣れていなかったからでしょうか。


 っと、そんな思考はいいとして、さっさとリビングに降りて夜ご飯の支度をしないとですね。


 私は始めに自分の部屋で入念にストレッチをして身体をほぐした後、部屋を出てリビングへも向かいます。今の時刻はもう少しで七時になるところですが、リビングにはまだ兄様は降りてきていないみたいでした。


「まあご飯を作っていればその間には降りてくるでしょう」


 そのため、私は兄様のことは置いといて冷蔵庫の中身を確認した後に夜ご飯を作り始めます。ちなみに、今日の夜ご飯はうどんにしました。


 うどんなら今日みたいな暑い日でもサッパリと食べれますし、兄様も好きなのでいいご飯でしょうしね。


「…いい匂いがすると思ったら、美幸か」

「あ、兄様!もう出来上がるので座って待っていてください!」

「了解。なら、用意だけはしておくな」


 私の言葉に兄様も支度を手伝ってくれるので、とてもありがたいです!兄様は料理を作るのは出来ませんが、それでも自分の出来る範囲で手伝ってくれるので、こちらとしてはとても助かります!


「よし。出来ましたよ、兄様!」

「お、もうか」


 そして出来上がったらうどんをテーブルへと持っていき、私たちな早速いただきます、と言ってから食べ始めます。


 うんうん、やっぱり暑い夏には冷たいうどんはツルツル食べられていいですね!それに味も濃すぎないのでパクパク食べ進められます!


「そういや、美幸」

「んむ、はい、なんですか?」


 ニコニコと笑みを浮かべながらうどんを食べていた私に向けて兄様が何やら声をかけてきたので、私は口の中のものを飲み込んだ後に聞く姿勢に移ります。


「明日の昼くらいに第二回イベントのPVが出るみたいだから、悠斗も誘って一緒に見ないか?」


 なんと、またもやPVが出るのですか!第二回イベントのものということは、無人島での映像ですね。あそこはゲーム内で一週間でしたので、結構な長さになるとは思いますが、映像として出るのならキチンと見ておきたいですね!


 それに兄様は悠斗も誘ってはどうかとも言ってますし、ちょうどいいので一緒に兄様は見ないかは後で聞いてみるとしましょうか。


「ぜひ一緒に見たいです!」

「はは、なら後で悠斗も誘ってみるか」

「はいっ!」


 よーし、兄様だけではなく悠斗とも見れるのならすごく嬉しいですし、これを食べ終わった後に一緒に家で見ないか聞くとしましょう!




『いいぞ、俺からも誘おうと思っていたからな』

「そうなのですか?」


 そしてうどんも食べ、お風呂や洗濯などの諸々を全て済ましてきた私は、部屋に戻り次第スマホで悠斗に明日に出るPVを一緒に見ないか誘ってみると、そのように返ってきました。


 どうやら悠斗も私のことを誘おうと思っていたらしいので、タイミングがよかったみたいですね?


「じゃあ、集合はまた私の家でもいいですか?」

『大丈夫だ。なら明日の昼前には行かせてもらうな』

「はい!では、楽しみに待っていますね!」

『ああ、また明日な』


 その言葉を最後に通話が切れたので、私はスマホを一度ローテーブルの上におき、予定を考えます。


「明日はお昼くらいに悠斗が来るみたいなので、午前中はゲームをしないで勉強でもしてますか」


 ゲームをしていては来たのに気づかない可能性が大きいですし、それが良さそうですね。


 とりあえずの予定を決めた私は、そういえばと今の時刻を確認します。すると、すでに八時を過ぎていたところでした。


 んー、時間は微妙ですけど、寝るまでにはまだ少しだけ余裕があります。


「…それなら、少しだけログインして夜の街の散策でもしますかね」


 夜の街を散策することはあまりありませんでしたし、この機会に歩いてみることにします。


 夜は朝や昼とはまた違った風景を楽しめるとは思うので、少しだけ心配な感じしますけどワクワクを感じている自分もいます。


 よーし、では寝るまでは散策と洒落込みましょうか!




「ここは、南大陸の港でしたっけ」


 そうしてゲーム世界へとログインしてきた私でしたが、この世界に来てすぐに視界に入るのは電灯もなく暗めになっている街並みでした。


 空からは無数の星の輝きが私のいる地上を照らしてくれているうえ、【夜目】スキルも持っているのでそこまで不便には感じませんが。


 夜の街はちょっとだけ人通りが少なくて寂しげな雰囲気を感じますが、それでも星々のおかげで不安などは特にありませんね。


 やっぱり人は明るいところの方が安心すると思いますが、私的には夜の街の雰囲気も好きですね!たまにな夜の街を歩くのも意外と乙なのかもしれません。


「さて、見てないで散策と行きますか。場所は……そうですね、久しぶりに初期の街にしましょう」


 今いる南大陸の港町は一切わからないのでもっと明るい時な散策したいですし、今は見知った街である初期の街の散策に決めました。


 では、早速転移で向かいましょうか!


「…夜ではありますが、やはりプレイヤーはこの時間が多くいるようですね」


 仕事終わりなのか大人っぽい人たちを多く見かけますし、それのせいでしょうか。


 まあ大人以外にも私と同じであろう学生らしきプレイヤーもいるため、それが全てとは言えませんがね。


「夜とはいえ人が多いでしょうし、人に集られるのも嫌なのでNPCの振りの出来る装備に変えちゃいますか」


 今はまだ注目を浴びてはいませんが、それも時間の問題でしょう。


 そのため私は一旦人のいない裏路地へと向かい、そこで前にも着たことのあるシスター服に装備を変えた後、街中を散策していきます。


「意外と初期の街も賑わっていますね」


 特に目的もなく初期の街をシスター服姿のままに歩いていってますが、やはりプレイヤーがいるおかげなのか夜にも関わらず住人も含めてかなり賑わっており、楽しげな雰囲気が強化されている私の感覚に伝わってきます。


 ここまで賑わっているのなら、また今度セレネとクリアも連れて歩きに来るのも悪くはなさそうと感じますね。


「お、嬢ちゃん!どうだ、見ていかないか?」


 そんな中突如かけられた声の方へと意識を向けると、そこには様々なアクセサリーのような物を売っている露天商のおじさまがいました。


 そうですね、特に目的もないのでちょっと見ていきますか。アクセサリーはあまり探したり買ったこともないので、これはいい機会だとも思うので。


「…色々とあるのですね?」

「おうよ!嬢ちゃんには……これなんかどうだ?」


 私が近づいてきたのを見たおじさまは、そう言って路上に置かれていた複数のアクセサリーの中から一つ手に取り、私へと見せてきます。


 今の私には目でハッキリと見ることは出来ませんが、それでも形などは把握出来るのでそれに意識を向けると、そのアクセサリーはどうやら青い宝石の付いた銀色のイヤリングのようで、何やら魔力まで私の感覚に伝わってきました。


 このイヤリングの見た目は結構オシャレでいいな、とは思いますが、それでも私はつけることがなさそうには感じます。


 それに私の場合はユニークアイテムのアクセサリーを複数持っているので、相応の物でなければ弱くもなってしまいますしね。


 なので、気に入った見た目ではあるのですけど、買うのはやめておきましょう。どうせ私が買わなくても、なかなか良さそうな商品のようなため、すぐに売れるとは思いますし。


「申し訳ありませんが、私は遠慮しておきます」

「そうか、なら仕方ないな!お嬢ちゃんもまた買いたくなったら来いよー!」


 そんな言葉と共に私を見送ってくれるので、私は手を振り返してからおじさまの露天から離れていきます。

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― 新着の感想 ―
追いついてしまいましたー 楽しく読み進めていたら これからも楽しみです
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