表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
151/232

147話 邪神の過去

「邪神……あの人には、神代期の時に相思相愛の恋人がいたのです」


 クロノスさんはそう前置きをしてから、後悔の念を抱いたような表情をしながら話を続けます。


「しかし、あの人の恋人はかなりの年月がたった神代期の時に、欲深い人間の王に殺されてしまったのです」

「……」

「なっ…!?」


 私はその言葉に無表情をしつつ、対してクオンは驚愕を浮かばせながらそれに思わず反応をしてしまいますが、それも無理はありません。


 邪神の過去に、そんなとんでもないことがあるとは思いませんでした。


「そしてそのまま恋人を殺した王と国を正義で滅ぼしたのですが、あの人は恋人を亡くしてしまった影響で塞ぎ込んでしまっており、私たち仲間である神の言葉も慰めにはなりませんでした」


 クロノスさんは今もそれを後悔しているようで、無意識なのか両手を強く握ってしまって悔しさが溢れているのが伝わってきます。


 …もし、私の一番大事な人かつ恋人でもあるクオンが殺されてしまったとしたら、私はどうなるか。おそらく、その邪神と同様に塞ぎ込んでしまうとは思います。…そして、その気持ちは永遠になくならず、そのまま復讐に走ってしまうのは明らかです。


 私の隣にいるクオンも同様なのか、その顔に真剣味を浴びさせながらクロノスさんの話に耳を傾けています。


「私たちの声も一切伝わらなかったあの人は、私たちが気づいた頃にはすでに恋人を救うために禁断の力に手を染めており、司る正義から堕ち、邪悪に反転してしまったのです」


 クロノスさんから聞く限り、その神様……今は邪神となっているその人は、本当は正義の神だったみたいです。


 …正義が邪悪に反転するなんて、やはりそれほどまでに恋人を愛していたのでしょうね。私が同じ立場なら、まず間違いなく同じことをしてしまっているとは思うので、私がどうこう言うことは出来なさそうです。


「…その神様は、その後は世界を狙う邪神となってしまったのですか?」

「はい。そうして邪神となってしまったあの人は、この世界を犠牲にしてでも恋人を生き返らせようとこの世界に邪悪の限りを尽くしてきたのです」


 つまり、それがワールドモンスターが生まれる原因でもあり、世界が危ない状況になった現状に繋がるというわけですね。


 本当に、その原因を作り出した欲深い人間の王という人は害にしかなっていませんね。その人がいなければ、こんな世界が危ないことにもならなかったはずなのに…


 それに、恋人を殺されてしまったという邪神の気持ちはなんとなくではありますがわかります。私だって、クオンを目の前で殺されてしまえば精神が狂ってしまいそうでもありますし。


 ですが、気持ちが全てわかるとは到底言えません。ほんの少しならわかるかもしれませんが、私はその場面にあったわけでもないうえにクオンも無事に生きています。


 なので、私がとやかく言える立場でもありませんしね。


「これが、あの人の過去になります」


 ううむ、こんなとんでもないことを聞いてしまうと、その邪神に対して可哀想という感情と痛ましいという気持ちが湧いてしまいます。


 邪神となった原因はわかりましたが、流石にここまで重い内容だとは思いませんでしたよ…!?


 隣にいるクオンもその顔を引き攣らせていますし、ここまでの内容だとは思っていなかったのだと思います。


「だから、あの人……邪神は恋人の蘇生を目指してこの世界を狙っているのだとは思います」

「そうなんですね……でも、何故蘇生を目指すのにこの世界を狙うのですか?」

「そういえばそうだな。何かこの世界にそういうものがあったりするのですか?」


 それを聞いてふと思った疑問をクオンとの共にクロノスさんへと聞いてみると、クロノスさんは少しだけ顎に指を当てて考えた後、それに答えてくれます。


「…二人なら大丈夫でしょうから言いますが、これは絶対に広めないでくださいね?」

「…わかりました」


 そこまで言うとなれば、おそらくはそれほどまでにとんでもない情報なのかもしれません。


 私たちは先程よりもさらに真剣そうな表情を浮かべたクロノスさんに緊張した様子で視線を返しますが、クロノスさんはそこからその狙いだというものをについて教えてくれます。


「実はこの世界には、一つだけ願いをなんでも叶えてくれるという星の核があるのです」


 願いを、なんでも一つだけ叶えてくれる、ですか…!?なるほど、道理で邪神はそれを狙っているのですね。ということは、それを手に入れられてしまえばその邪神の悪さはされないとは思いますが、素直に渡してはダメなのですかね?


「それを素直に渡すのはダメなのですか?」


 どうやら私と同じ思考に辿り着いたのか、クオンはそのようにクロノスさんへと言ってますが、クロノスさんはそれに対して首を振ることで否定します。


「ダメなんですよ。その願いを叶えてしまうと、この世界を巡っている星脈の力が全て消えてしまい、この星が緩やかな滅びの道を辿ってしまうのです」


 さ、流石にそれはダメですね。ううむ、だとするとそれを渡してしまうのは止めておかないと行けませんね。なら、やはりその邪神がそれを見つける前に倒す必要がありそうですが……あんな過去を聞いてしまえば、どうしても躊躇ってしまいます…


「我々神々は全員が未だに神代期の時よりも力を失っていて、世界の管理を十二星座に任せきりで力を行使することが難しい状態なので、こうして信頼できる異邦人に頼んだりしているのです」


 ふむ……それなら、これからはワールドモンスターを全て倒し、最終的にその邪神も倒しに動くのが目標となるのは間違いなさそうです。


 未だにワールドモンスターは一体しか倒せていませんし、時間はかかってしまいそうではありますが、これは前にも思った通り最終目標になりますね!


 それと、やはりこれまた前に聞いた通り十二星座という存在に世界の管理を任せているみたいなので、クロノスさんの言った通り神様の力が失われているみたいですね?


 なら、躊躇ってしまいそうですがそれは振り切って、私たちがその神様たちの代わりとして邪神を眠らせてあげるためにしっかりと働かなくては…!


「まあ今すぐにどうこう出来るものではないので、そんなに気張らずにのんびりでも大丈夫ですよ。レアちゃんたちにもこの世界を楽しみつつ、好きになってもらってから最終的に異邦人の皆の力を合わせてあの人を救ってくれれば、それでありがたいですしね」

「そ、そうですか?」


 そんなグッと気合いを入れ直していた私に向けてなのか、クロノスさんはそう言ってきたので私はそれを聞いて張っていた力を少しだけ抜いちゃいます。


 そんなに気合を入れなくても大丈夫、と言われたように感じてしまったので少しだけ恥ずかしくなっちゃいましたが、別にいいじゃないですか!


 クオンも、そんな微笑ましそうに見つめるのはやめてください…!もうっ!


「ふふっ、では私たち神からの願いを、頼みます」

「任せてください!時間はかかるかもしれませんが、いずれはその邪神も救ってみせます!」


 邪神はただ恋人を元通りにしたいだけのようですが、それでもこの世界を犠牲にはさせません!なので、悲しくとも、後悔しようとも、この手で眠らせてあげる必要があります…!


 それに、いずれ相見えるだろう邪神の心も、どうにか救えるといいですね…!


「頼みますね。これで伝えるべきことは伝えましたが、他に聞きたいことなどはありますか?」


 他に聞きたいことですか。うーん、聞いておきたいと思っていたことはクロノスさんが先に話してくれてましたし、なさそうですけど……あ、そういえばあれがありましたね!


「そうですね、なら一つだけあるのですけど…」

「なんですか?」


 私はそう前置きをしてからクロノスさんへと一つだけ残っていた聞きたいことを聞いてみます。


「クロノスさんから渡されたりした本に載っていたとある人の過去、あれは誰なのですか?」


 クロノスさんは神域からちょくちょく私のことを見ていたと言ってましたし、対象の過去を見れる私のユニークスキルについても把握しているでしょう。なら、細かくは言ってませんが多分わかるはずです。


 それに、そのユニークスキルを知っていなければサジタリウスくんを通してあの本を渡さないとも思いますしね。


 まあ、今ここで聞いたことからしてもなんとなく想像はつきますが、念のため聞いておくのは大事でもあるので!


「そのことですか。それはレアちゃんも想像は出来ているとは思いますが、あの記憶は全てあの人、邪神の記憶です」

「…やはりそうでしたか」


 まあ予測は出来ていたので驚きはわずかですが、それでも少しは感じてしまいます。


 今までに何回か見たりしてきましたが、あれらがすべて邪神の記憶だとするなら、そこに映っていた私と似ている白髪金眼な女性が邪神の恋人なのでしょうね。


「…あ、それともう一つだけ聞きたいことがあったのでした!」

「大丈夫ですよ、なんですか?」

「まあそこまで大事なことではないですけど、私の装備しているこの時計、これについている"時空神の運命"とはどういう物なのですか?」


 今まで装備し続けていてもどういう効果かはハッキリとしていませんでしたし、そこまで重要ではありませんが気になったので聞いてみると、クロノスさんは簡単に教えてくれました。


「それは私の神の力の一端で、遍く運命の時空を超え、自身の元に手繰り寄せて収束させる力を持っているのです」


 …なる、ほど?難しい説明でなんとなくしかわかりませんが、とりあえず悪い効果ではないようですし、気にしなくても良いかもしれませんね。


 それに運命を手繰り寄せると言ってましたし、もしかして特殊なクエストや住人と出会ったりするのもこれの効果だったりもしそうですね?


「これで聞きたいことは終わりですか?」

「…そうですね、私は特にありません!クオンはどうですか?」

「俺も大丈夫だ」


 まあクオンはそこまで詳しくなかったのに突然大量の情報量によるパンチを喰らって疲れているみたいですし、気になることもないみたいです。


 クオンについてはいきなりの情報でしたしね。


「それでは、この辺でお別れとさせてもらいましょうか」

「クロノスさんも、こんな重要そうな情報をありがとうございました!」

「いえいえ、このくらいは頼む立場でもあるので気にしないでください。それでは、また会えるのを楽しみにしてますよ」


 クロノスさんはそう言って指パッチンをした瞬間、私たちは空間の狭間に入る前の場所へといつのまにか移動をしていました。


 多分、転移の力で私たちを元いた場所へと送ってくれたようです。クロノスさんは気が利きますね!これならいちいち歩かなくて済んだので楽ちんです!


 そして私たちの背後にあった空間の狭間は、役目を終えたかのようにすぐさま消えてなくなってしまいました。


「…戻ってきたみたいだな」

「ですね。まさか、空間の狭間がクロノスさんのところと繋がっているとは夢にも思いませんでした」


 クロノスさんは私たちを招くためにここに空間の狭間を作ったと言ってましたが、それにしてもこんなに早く出会うことになるなら思いませんでした。


 しかも、そこで聞いた情報が邪神についてのことだったので、これは私たちだけではなく全プレイヤーにも関係するだろうというのがわかります。


 …なら、前に出会った検証班という組織に属しているらしいイブーさんにもこのことを伝えてみるのが良さそうですかね?あ、でもフレンドは交換してませんでしたし、どうやって伝えましょうか…?


 まあそれはおいおいでもいいですね。とりあえず、今は聞くことも終わって戻ってきた状況なので、今はクオンと火山地帯を目指すという目的に戻らないとです…!


「クオン、とりあえず今は火山地帯を目指すのに動きませんか?」

「そうだな。クロノスさんも今すぐにどうこうなるものではないと言ってたし、これについては置いといても良さそうだしな」

「ウォフ!」

「……!」

「キュッ!」


 私に向けて返してきたクオンの言葉に続くように、今まではほとんど空気であった三匹のこの子たちもそれに賛同するかのように声に出しているので、早速向かいましょうか!




『ストアード荒野のエリアボス〈ドレイク〉を討伐しました』

『ストアード荒野のボスを討伐した事により、次のエリアが開放されました』


 そうしてそこからは荒地を二人と三匹で進んでいき、今は火山地帯に入るために門番代わりのエリアボスであるドレイクを倒したところです。


 …エリアボスのドレイクに関して、ですか?それはですね、特に苦戦することもなかったので話すことはあまり少ないんですよね。


 見た目は翼のないトカゲみたいな感じで、大きさについては一軒家くらいあって力も耐久も強かったのですけど、それでもその代わりとしてスピードが遅かったのです。


 なので、私は当然そんな遅い攻撃に当たるはずがない、クオンに関してもテイムモンスターであるフェルくんに乗って戦っていたので、戦闘については硬さが面倒くさかっただけで特に困ることはありませんでした。


「レア、転移ポイントがあったから解放したらどうだ?」

「あ、わかりました!」


 そんな中、クオンからそのように声をかけられたので、私はクオンの示していた転移ポイントである小さめな水晶の柱に触れることで解放をしておきました。


 よし、これでいちいち荒地を越えなくてもここへ来れそうですね!


「レア、この後はどうする?」

「そうですね…」


 クオンはそう聞いてきたので、私は少しだけ考えます。今の時刻は色々あったとはいえまだ四時くらいですが、ここからこの火山地帯の攻略に行くのには時間が足りなくなりそうです。


 お母様たちはすでにいないので私が夜ご飯の支度もしないといけませんし、それをする時間も考えると今日のクオンとの攻略はこの辺で終わりにしとくのが良さそう、ですかね…?


 クオンと別れてしまうのはほんの少し寂しく感じてしまいますが、別にいつでも会おうと思えば会えますし、また次の機会を待つとしましょう!


「時間も微妙ですし、この辺で解散でもいいですか?」

「構わないぞ。なら、俺は先にこのエリアの情報でも集めているな。その情報はまた今度レアにも伝えるな」

「ありがとうございます!では、楽しみにして待ってますね!」


 私たちは一度そこでパーティを解散し、互いに別れの言葉をかけてからそれぞれ動き出します。


 クオンは火山地帯の攻略に向かうみたいなので、私はこの時間は最近はしてなかった【錬金術】スキルで生産でもするとしますか!素材もこれまでの冒険で結構集まってもいますしね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ