表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/232

145話 再びの生放送

「美幸と玲二は、ゲーム内とはいえこんなすごい敵と戦っていたのね!」

「それにあんなに強そうな敵に勝つなんて、流石だね?」

「まあ私たちだけではなく、他にもそこにいた皆さんの力もあってなんとか勝てた、くらいですけどね」


 お母様とお父様は今の映像を見てすごく興奮した様子で、そのように言葉を発します。


 関係者である私たちからしても、なんというか映画やアニメなどの戦闘シーンのようにも感じましたし、それもわかりますけどね。


「いやぁ、これは私たちもやってみたくなるわね?」

「そうだね。海外でも出来たら良かったんだけど」


 お母様たちも映像を見てこのゲームをやりたそうな様子ではありますが、日本でしか出来ないというのがどうしても足枷となってしまっています。


 日本だけではなければお母様たちともプレイ出来たのに、と考えてしまいますが。まあそう不満を持ってもどうしようもないので我慢しないとです。


「さて、まだ帰るまでに時間はあるから、近場のどこかに皆で遊びに行かないかい?」

「あ、いいですね!私は行きたいです!」

「私もいいと思うわ!」


 一区切りついたタイミングでお父様がそのように声をあげたので、私とお母様はそれに賛成するかの如く手を上げます。


 そして唯一意思を示していない兄様へと私たち三人の視線が集まりますが、兄様はコップに入っている水を一度飲んでからそれに答えます。


「俺も大丈夫だ」

「よし、なら決まりね!」


 兄様も承諾してくれましたし、早速準備をしなくてはいけませんね!あ、でも、何処に行く予定なのでしょうか?


「お父様お父様」

「ん、なんだい?」

「どこかに遊びに行くとは言ってましたが、どこへ向かうのですか?お父様たちはお昼くらいには帰っちゃうんですよね?」


 そう、飛行機に乗る必要もあるのでお父様たちはお昼くらいには帰るために行動する必要がありますし、行く場所によっては時間が気になりますが…


「ああ、それね。僕は近くのゲームセンターでもどうかと思ったけど、二人はどうかな?」

「ゲームセンターですか。私は構いません!」

「俺も文句はないぞー」


 ゲームセンターならここから近くにありますし。それなら問題はなさそうですね!


 それにゲームセンターなんていつぶりでしょうか。最近は家でゲームばかりだったので遊びに行くこともなかったですし、ちょっとだけワクワクしちゃいます!それにお母様にお父様、兄様と家族勢揃いなので、いい機会なので全力で楽しんじゃいましょう!




「そろそろ時間ね」

「もうそんな時間ですか…!」


 そうして家族で近場のゲームセンターまでお父様の運転する車で向かい、時間いっぱい遊んでいた私たちでしたが、いつのまにかお母様たちの帰らなくてはいけない時間になっていました。


 …やっぱり、楽しいことをしていると時間の経過は早く感じてしまいますね。もう少しだけ一緒にいたいですけど、時間なので仕方ありません。


「それじゃ私たちはもう行くけど、元気でね!」

「美幸は、悠斗くんと上手く頑張るんだよ」

「はい!お母様もお父様も、また会いましょうね!」

「またな、母さん、父さん」


 ゲームセンターから家まで送り届けてくれたお母様とお父様は私たちと軽く言葉を交わした後、そのまま車で行っちゃいました。


 次に会えるのはいつになるかはわかりませんが、また帰ってきて会えるのを楽しみにしておきますか。


「美幸、確かもう少しで生放送の時間になるはずだから、このまま見ていかないか?」

「あ、もうなるところでしたか」


 両親を見送っていて私に向けて兄様がそのように声をかけてきたので、スマホで時刻を確認するともう少しで十二時になるところでした。


 もうこんな時間だったのですね?なら、早速家に戻ってその生放送を見ないと…!あ、それなら悠斗もまた家に誘って一緒に見るか聞いてみましょうか!


「兄様、悠斗も誘ってもいいですか?」

「構わないぞ」

「では、連絡してみますね!」


 よし、兄様からも許可を取りましたし、早速悠斗も誘ってみましょう!




「きたぞ、美幸」

「いらっしゃいです、悠斗!」


 そしてスマホで連絡をすると悠斗も乗り気だったので、すぐに家へと来てくれました。


「今日は生放送があるんだって?」

「はい。多分、ワールドモンスター関係についてだとは思いますけど」


 そこから悠斗に向けて簡潔に説明をすると、すぐに納得した様子です。


 悠斗は先程私たちが見たPVは見ていないようですけど、まああちらは特に目新しいものはないのでいいですね。


 っと、それよりも生放送を見るための準備をしなくては…!まずはパソコンを用意して、そこから動画サイトを開いて待機、ですね。


 それと悠斗はお菓子を持参してくれましたし、それをつまみながら見るとしましょうか。


「あ、兄様、悠斗!始まりますよ!」

「わかった」

「お、もうか」


 私は兄様たちに声をかけて呼んだくらいのタイミングでちょうど生放送が始まりだし、いつもの社長さんである天馬光輝さんが動画に映ります。


 そこからはこれまたいつも通り挨拶をした後に喋っていきますが、その内容がとても驚きでした。


 何故なら、社長さんは私たちが倒したワールドモンスターに関する情報と、システムアナウンスでも言っていたクロニクルストーリーについての言及をしたからです。


 ワールドモンスターである天災のゾムファレーズは私にとって目新しいものはなかったので、特に気にすることはありませんでした。


 しかし、私すら知らないクロニクルストーリーのことも軽く触ってはいたのですが、それに関係する情報については教えてはくれないみたいです。


 それも当然だとは思いますがね。だって、そのストーリーのようなものは間違いなくこれからのプレイヤーたちの目標になるでしょうし、自分たちで探せという方針であるはずですしね。現に、社長さんもそう言ってますし。


 それに生放送だからか流れる多数のコメントで色々な質問をされていますが、それらも社長さんは当たり障りのないことのみ答えており、詳しいことは話していません。


 ついでにPVで映っていたワールドモンスターの討伐に動いていた私たちについても結構な数の質問がされていますが、それに関しても詳しいことは教えてくれないうえ、社長さんは無理やり問いただすのはダメとも言ってます。


 …今気づきましたが、このままだったらプレイヤーたちに問い詰められていたかもしれませんね…?社長さんは無理やりはダメとはいってますが、これはちょっと警戒をしておいた方が良さそうです…!


 まあそれはいいとして、生放送はこのくらいで終わりになるみたいです。


 生放送の時間はおよそ二十分近くでしたが、情報を詳しく知らないプレイヤーの人たちにとっては結構ありがたい時間だったかもしれません。


 私はともかく、兄様や悠斗も討伐はしましたが詳しく知っていないはずなので、二人に対しても良い時間だったでしょう。


 そうして社長さんの言葉で生放送も終わり、私は何やら考えごとをしている二人を放っておいてパソコンを片付けます。


「二人は何を考えているのですか?」

「ん、ああ、これからのワールドモンスターについて考えていたんだ」

「それに、動画の内容からしてワールドモンスターはあの一体だけじゃないんだろ?」

「そうですね。確か全部で七体いるようで、今回はその一体を倒した、というところです」


 そういえば、生放送では天災のゾムファレーズについての言及はしてましたが、何体存在するかとかどんなモンスターなのかとかは言われてませんでしたね。


 なら、ついでに私の知っている情報も全て二人にも伝えておきますか。


「…なるほど、ワールドモンスターは七体もいるうえ、とある神から生まれた存在か」

「しかも、悪心に大罪ねぇ…」


 私から聞いた情報に対して二人はそう呟きながら何やら思考していますが、そうなるのも無理もありません。


 私だって初めてそのことを聞けばそうなるでしょうし、ソロさんから聞いた時もそちらに意識が向いてしまいましたしね。


 それに、ワールドモンスターの情報はおそらくこれだけではないとも思います。前に神の使徒だとは聞きましたし、ワールドモンスターたちの目的も何かは未だに把握していません。


 ですので、私が知っていることが全てではないため、もっと世界を巡って調べていかないとです。


「…まあそれはいずれ、ですね」


 あの世界を攻略していけばいずれは知ることが出来るでしょうし、神様であるクロノスさんに会うことも出来れば、自ずとわかるとは思います。


「とりあえず情報についてはおいておくとして、悠斗、この後はどうする?」

「俺ですか?そうですね、俺はそろそろ家に帰ってまたゲームでもしましょうかね」


 兄様の質問に悠斗はそう答えていますが、確かに今の時刻はまだ十二時半より少し前くらいなのでゲームをする時間はたくさんありますね。


 なら、すでにお母様たちも帰ってしまいましたし、私も一日ぶりのプレイと洒落込みますか!


 あ、それと悠斗とも一緒にやりたいですし、このタイミングでちょっと聞いてみますか!そ、それに、私たちはもう恋人なんですし、もっと一緒にいたいですしね…!


「ゆ、悠斗!もしよければ、この後一緒にプレイしませんかっ!?」

「お、いいぞ。俺も、美幸に聞いてみようと思っていたところだったんだ」


 顔を赤くしながらそう聞いてみた私へと、悠斗はほんのりと頬を赤くしつつもそのように返してきました。


 どうやら、悠斗も恋人として一緒にやりたいと思っていたみたいです。な、なら、このまま二人きりで狩りにいきますか!


「…幸せそうで何よりだ。俺はもう行くから、イチャイチャするならご自由に」

「ち、ちょっと兄様…!?」


 そんな言葉を発しながら、兄様は今いるリビングから出て自分の部屋へと行っちゃいました。


 も、もう!兄様、茶化さないでくださいよ!私だけではなく悠斗まで顔を赤くしてますし…!


 うう、第三者からそう言われると、ますます恥ずかしくなってしまいますよぉ…!


「じ、じゃあ俺はそろそろ家に戻るから、初期の街の広場で集合でいいか?」

「は、はい。大丈夫です!」

「よし、じゃあまた後でな」

「悠斗も、帰り道には気をつけてくださいね!」


 そう言って悠斗は自分の家へと戻っていくので、私は一度顔の熱を冷ましてから兄様に続くように自分の部屋へと戻っていきます。


 …よし!恋人となってからは初めての悠斗との狩りです!張り切っていくとしましょう!




「…とりあえず、このままここで待機ですね」


 そこからすぐに部屋に戻り、ヘッドギアを頭に着けてゲーム世界へとログインしてきた私は、集合場所である初期の街の広場で待機しています。


 天災のゾムファレーズを討伐した時に報酬としてもらった本の確認もしたいですけど、それは別に急ぎでもないので後回しです。


 今は悠斗との狩りが大事でもありますし、これは初デートと言っても過言ではないはずです…!ふふん、悠斗が来るのが待ち遠しいですね!


「あの、もしかして【時空姫】ですか!?」

「んむ?」


 そんな悠斗が来るまでの間に近くの屋台で買った串焼き肉を食べていると、ふとそのような声を背後からかけられました。


 なのでそちらに振り向くと、そこには赤い髪に瞳をした身長160cm前半くらいであろう女性プレイヤーが立っていました。


「確かに、私はそう呼ばれることもありますね。それで、何か御用ですか?」

「やっぱり!えっと、聞きたいことがあるの!」


 私の返事にその女性プレイヤーはそう返してきた後、話し出します。


「【時空姫】って、あのワールドモンスターとかいうのと戦ったんでしょ!?よければ話を聞かせて欲しいの!」


 そのように言いながらグイグイと迫ってくる女性プレイヤーに対して、私は困ったような表情を浮かべてしまいます。


 …ログインする前に心配していた通り、やはり他のプレイヤーからそのことを問い詰められてしまいますね…


 答えるのはやぶさかではないですけど、それでもこんな風にグイグイ来られてしまってはちょっとだけ嫌な気持ちになります…


「おい、それ以上はストップだ」

「…あ、クオン!」


 私がどうしようか困っていると、ちょうどそのタイミングでクオンが来たようで私に詰め寄っていた女性プレイヤーへと注意を促してくれました。


「あ、ごめんなさい!偶然【時空姫】を見かけることが出来たから、つい…!」

「いえ、大丈夫ですよ。でも、いきなり詰め寄るのはやめてくださいね?」

「本当にごめんなさい!」


 クオンの言葉を聞いて女性プレイヤーはすぐに離れてくれたので、よかったです…!本当に、クオンにはお世話になりっぱなしですね….…これはキチンと感謝の気持ちを伝えなくては…!


「クオンも、ありがとうございます」

「このくらいは気にするな。それで、その女性はどうするんだ?」

「あ、そうですね」


 クオンから言われて、再び女性プレイヤーへと視線を向けて考えます。


 うーん、別に情報を伝えるのがダメというわけでもないですけど、フレンドでもないうえに検証班とかいうクランとも違うようですし、教えるのはやめておきましょうか。


 別に嫌がらせで教えないというわけではなく、私がこの世界でコツコツと見たり聞いたりした情報を簡単に教えるのは違うかな、とも思うので。


「申し訳ありません。情報を伝えるのは無理です」

「そっか……なら、仕方ないね。改めて、迷惑をかけちゃってごめんなさい!」

「いえいえ、気にしないでください」


 そしてその女性プレイヤーは私たちの元から去っていったので、私はそちらに向けていた意識をクオンへと移します。


「とりあえず、どこで狩りをしますか?」

「あ、それなんだが…」


 私の問いかけた言葉に、クオンはそう前置きをしてから話し出します。


「よければ、ストアード荒野の西にある火山地帯の攻略に行かないか?」

「火山地帯ですか…」


 ストアード荒野は、確か職人都市の西に広がっている荒地の名前でしたっけ。そこの西は火山地帯のようですけど、私もまだなので向かうのは賛成ですね。


 ですが、火山地帯を目指すならそれにあった装備とかが必要でしょうか?まあ行くのには賛成ですし、とりあえず返事をしないとです。


「私は問題ありません!」

「それなら、早速行こうか。まずは職人都市に」

「はい!」


 そう言葉を交わし後、私たちは揃って今いる初期の街から職人都市へと転移を済ませ、その後はパーティを組んでから荒地へと向かいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ